向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 2449
  • Amazon.co.jp ・本 (470ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101355511

作品紹介・あらすじ

夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。

感想・レビュー・書評

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  • ミステリ、といっても、王道なミステリではない。造語で語るなら、ダーク・メルヘン・ミステリ、というところか。

    あらすじ。物語は、小学生の主人公であるミチオが、夏休み前の終業式の日に、クラスメイトであるSくんの首吊り死体を見つけるところから始まる。しかし、大人や警察が到着したときには、あったはずの死体が忽然と消えてしまっていた。死体はどこへ消えたのか? そんな不可思議から始まった夏休みのある日、Sくんが、クモに姿を変えて現れる。「僕は殺された。死体を見つけてほしい」……、そうして、ミチオとその妹ミカは、独自に事件を追い始める。

    これだけ聞くと、「ぼくのなつやすみ」みたいな、あの夏の日の思い出、……のような草の匂いが強くけぶるノスタルジック作品にも思えますが。

    とんでもない。

    登場人物がみんな異常という、引き笑いの出る陰鬱小説。

    ミステリとしては、真相が特段におもしろいわけではないし、謎解きのシーンにかなりの無理があると感じる。だって主人公は小学生だし。あんな推理無理だし。お前はコナンか。

    ただ、この物語の真髄はそこではなく、物語全体に散りばめられた病的な異常性と、不自然なほどの違和感(=作品に仕掛けられたトリック)だと思っています。amazonのレビューでは、

    ”不自然さを不自然さと感じさせる時点で仕掛けとしてイマイチのような?”

    と述べている方がいらっしゃいましたが、読み終わってみると、ちょっと違うかな、と感じました。どちらかというと、作者はあえて不自然さをわかりやすく、感じやすく全編に溶け込ませている。読者が不自然と気づくのは必然で、その異常性や違和感からくる気色悪さが、ラストの更なる異常性へと結実していくようにできているのではないかと。

    まぁ、それはそれとして、おもしろいかつまらないかといえば、フツーだったかな。本編中の違和感とは別に、設定自体に無理とアラが目立ちました。

    とにかく、夏休み、小学生……というキーワードから通常連想させるミステリを期待して読んではいけません。ここでもamazonのレビューを引用させてもらうならば、

     ”王道のミステリーがあるとすれば、これは邪道のミステリーです。”

    これが非常に的確だと感じました。

  • しばらく積読していたものから。
    最近は人の死なないミステリーばかり読んでいたので、最初の同級生の死で「え!(あまちゃん風に言うと「じぇ!(‘ j ’)/」)」となり、続いて“僕の家はゴミだらけだった”で「え!え!」となり…あっという間に引き込まれ、一気に読んでしまった。
    ミステリーの中に不思議な要素も入っていて読み進む度に驚きの連続だった。妹の事は途中から薄々勘付きはしたが…恐ろしい真実、そして衝撃の結末!これは忘れられない一冊になりそうです。

  • これぞ道尾秀介ってあらすじ。
    主人公の名前がミチオだし、死んだ同級生の名前はS君だし。笑。

    タイトルが「夏の庭」っぽいのと、文庫本の裏表紙のあらすじ書きが小学生の冒険譚みたいな感じに書かれてるので、「夏の100冊!」みたいな、夏休みに読むべきさわやかなやつだと期待して読むと、結構キツイと思う。

    でも、私は好きだ。
    こういう倒錯した話。
    3歳の妹があんなに理路整然と話すわけないのと、ミチオがとっさにつく嘘がうますぎて、当初からミチオおかしい…と思うので、「騙されたぁ」感はそれほどないものの、いい具合に倒錯してるよなぁ。

    最後まで読んでから、また最初に戻ってプロローグを読むことをオススメしたい。

  • 「臭い、貧乏」などと陰口を言われ、学校で疎外されていたS君。
    終業式の日、不登校のS君の家を訪れたミチオは彼の首吊り死体を見てしまう。
    だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。痕跡だけを残して・・・
    一週間後、あるものに姿を変えて現れたS君にお願いされ、ミチオは妹のミカと共に彼の無念を晴らすため、事件を追うのだが・・・

    乙一氏の「夏と花火と私の死体」のようにあらかじめ死体があるところから物語は始まる。S君の死の真相と死体を追ううち、ある人物に疑いの目が向けられるのだが・・・

    ミカだけを溺愛し、ミチオに対して憎悪の感情を募らせる母親、カメに似たことなかれ主義の父親、ミチオの話を信用していないような教師や刑事たち。トコお婆さんや同級生のスミダさん、百葉箱の古瀬老人。町内で続く犬猫の虐待死事件。

    どこかおかしい、狂った世界の中でまともなのは誰なのか。なんとも後味の悪い、しかし忘れがたい衝撃の一冊。なんでも、リンゼイさん事件の市橋容疑者が身柄確保時に所有していたそうな。貴志祐介氏の作品でもそういうことはあるみたいだし、まぁ作品に罪はないですが。要はそれくらい話題になった本だということ。

    この狂った感じは岡崎隼人氏の「少女は踊る暗い腹の中踊る」にも似ているような気がします。

  • 好き嫌い別れるて言うけど、好きも嫌いもない。ただ読後が悪いの意味はわかる。この終わりかただと手元に取っておきたいとは思わないけど、話の作りはよく練られてるなとすごいなと思う。終わりに納得いかない人が多いようだけど、これは事件すっきり解決とかを目指してないよね。色んな考察あるけど、ミチオの境遇ならああなることも考えられて、本当は会話の半分くらいが空想ではないかと感じた。あの夏の出来事の首謀者は実は彼本人なんてことないかな。狂っていた夏の罪の意識を背負ったまま彼は大人になったけど、少しはまともな心理状態になってるのかな。あの夏向日葵が咲いていたら神様が助けてくれたかもしれないのにね。

  • 最初は本当、ミステリー。誰が犯人?みたいな気持ちで読んでいけました。犯罪が一転、二転するというのか、途中まで描かれている犯罪が実は……と、違ってくるのが怖くて面白い。
    読んでいる間は、先を知りたくて読んでいたんですけど。
    昆虫系がでてくるあたり、気持ち悪いかな。犯罪者の一般人には理解できない心理描写は凄いと思う。
    なんとなく、妹の存在もわかりかけてきてしまうラストが、ちょっと残念だけど、不思議なお話で引き込まれる要素はあります。

  • 太陽に向かってひた向きにまっすぐ咲く向日葵は正義の象徴と言われている。そういった経緯から弁護士のバッジには公平・公正を表す天秤の背景に向日葵が描かれている。

    しかし、そんな難しい概念を考えなくても、世間一般のイメージでは、向日葵と言えば夏、夏と言えば向日葵で事足りるだろう。
    夏の風物詩として向日葵は必要不可欠な存在であり、私たちの夏の思い出には必ず側に向日葵があるのである。

    そんなことを考えたうえで、本作のタイトルを見る。実に爽やかで青春ストーリーが展開されるのかな?と思う読者もいるかもしれない。
    そして、あらすじを見る。


    一学期の終業式の日、欠席したS君にプリントを届けるためにS君の家を訪れたミチオ。呼び鈴を鳴らしても応答がなく、中に入ってみると、S君は首を吊って死んでいた。

    急いで学校に戻り、担任の岩村先生に伝え、ミチオは一旦家に帰される。その後、岩村先生と2人の刑事が家に来るが、ミチオにもたらされたのは、“Sの死体なんてなかった”という知らせだった。「嘘じゃない、確かにS君の死体を見た」と懸命に主張し、結局行方不明事件として捜査されることとなった。

    それから1週間後、ミチオの前にS君があるものに姿を変えて現れ、“自分は殺されたんだ”と訴える。ミチオは妹のミカと共に、S君を殺した犯人を探すこととなる。

    タイトルとあらすじだけを見ると、ストーリーは夏休みを迎えた小学生の爽やかな冒険物語、不思議な一夏の思い出辺りなのかな?って思うかもしれない。しかし、そんな先入観を持って本作を読み始めると肝を潰される。

    内容は極めて陰惨である。動物虐待に家庭内暴力。そして、登場する人物はどこか異常な性癖を持っている。ツッコミどころ満載の展開は二転三転し、事件は非常に複雑怪奇で読んでる途中にげんなりするはずだ。

    そして、ラストーー。
    どんでん返しに次ぐどんでん返しだったから、最後のシーンではすっかり免疫ができてしまいそれほど驚くことはなかった。というか、その時点では、ん?これはどゆこと?と理解できない点があり、半ばモヤモヤした状態で読み終えてしまった。そして、考察サイトを見て本当の結末を知り、またもや驚愕した。自分はまったく違う捉え方をしていたのだ。

    本作は好き嫌いの分かれる作品だと思う。そもそもミステリーとして、評価すべきなのかどうかも疑わしいところだ。本作の肝を成すギミックをアンフェアだと指摘する者もいるだろう。

    けれど、そういった論争の枠組みから外に出て、一つの作品として向き合ったとき、本作は間違いなく名作だと断言できよう。

    グロテスクやサイコパスな描写も度々あるので、決して万人に共感される小説ではないかもしれないが、作品に隠されている秘密やそれが暴かれていくカタストロフは、多くのミステリーの小説のそれを凌駕するものであると断言できる。

  • 主人公の動向がおかしいシーンがあったり、死んだ人間が生まれ変わることを自然に受け入れてたり、3歳の妹が妙に大人びていたりなど、違和感を抱かずにはいられない展開が続くが、最終的にはそれらの謎はすべて解ける。
    どんでん返しというほど衝撃的なものでこそないが、主観と客観の違いをミステリー風に活かし、そのうえで人間の弱さを描いた作品。

  • かなり期待外れ
    作者は何をやりたいのか全くの意味不明…

  • 本屋で何気なく手にとって最初の2,3ページを読んだときに、「これは!」と思わせる秀逸な文章。即購入しました。一気に読める本でした。
    …ただ、なんといいますか、描写が上手すぎて気持ち悪くなった人は私だけではないはず。想像力豊かで気持ち悪いものが苦手な人は読む前にためらうべきかもしれません。
    なにはともあれ、それだけ文章が上手です。

    こういった二転三転するストーリーは大好きです。謎解きのための、違和感のようなヒントはいくらか隠れているのですが、素直で想像力豊かな人は自分の想像力で真実が見えなくなります。疑ってかかりましょう。

    気持ち悪くなること覚悟でまた読みたいです。

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著者プロフィール

道尾 秀介(みちお しゅうすけ)
1975年、兵庫県生まれの小説家。玉川大学農学部卒業。会社員生活を続けながら小説を執筆しており、2004年『背の眼』で第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞しデビュー。
2007年『シャドウ』で第7回本格ミステリ大賞(小説部門)受賞。2009年『カラスの親指』で第62回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)受賞。2010年、『龍神の雨』で第12回大藪春彦賞受賞。『光媒の花』で第23回山本周五郎賞受賞。2011年、『月と蟹』で第144回直木賞受賞。直木賞にはこの作品で5回連続のノミネートだった。
その他代表作として『向日葵の咲かない夏』があり、文庫版は100万部を超えるベストセラーになった。『カラスの親指』は映画化された。
ほか、横溝正史ミステリ大賞、新潮ミステリー大賞の選考委員を務める。

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