- Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101355528
感想・レビュー・書評
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道尾作品を読み漁っております。
今回はどんでん返しというよりも
あぁ!そういうことか!という伏線回収が見事。
概ね3時間で一気に読了、良作です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
連続で道尾秀介作品。
『ファントム探偵事務所』を開業している三梨幸一郎。
彼はある楽器メーカーから、ライバル会社の調査を依頼されていた。
どうやら、楽器開発の極秘情報が盗まれているらしい。
そこで彼は自身の持つ特殊な“耳”を使い、盗聴を続けていた。
そんな折、“千里眼”を持つ女の噂を聞きつけた三梨は、
早速彼女を探偵事務所の所員としてスカウトする。
「冬絵」と名乗るそのサングラス姿の女はあっさりとOKするが、
その裏には大手探偵事務所・四菱エージェンシーの影がちらついていた。。。
毎回毎回異なるタッチの小説で、道尾秀介という作家の多彩さに驚かされる。
今回は非常に軽い感じのノリで、読んでいて楽しくなる。
主人公・三梨の“異様な姿”とその特異な能力に興味を持って読み進めると、
次から次へと奇妙な仲間が登場してくる。
彼らは皆個性的で、それがこの小説の心地良い「軽さ」の要因であろう。
また、三梨の過去の同居人・秋絵がなぜ自殺してしまったのか、という謎解きと
冬絵の行動の怪しさが絶妙に絡み合って、最後まで飽きさせない内容になっている。
が、最後の種明かしの部分は何だか作者が得意気になっているように思えてしまった。
物語中では語られない(もしくは巧妙な言い回しで気付かせない)部分を最後に一気に放出し、
「これ、わからなかったでしょ?」
と言っているような雰囲気。(穿ち過ぎかもしれないが)
ミスリード・ミスディレクションが巧み、という言い方も出来るが、
全てがこのオチの為だけに用意された舞台設定のような気がしてたまらない。
(ただし、いわゆる『主題』については納得)
この作者はこういう、読んでいる途中で前のページに戻って読み直させるような書き方が好きなのだろうな、
と感じる。
話を作るのは上手いので、もっと真正面から小説を書いて貰えると嬉しい。
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「向日葵の咲かない夏」で道尾秀介にハマり、本作を手に取った。
「向日葵の咲かない夏」と同様、今作にも見事な叙述トリックが仕掛けられており、伏線もかなり仕込まれている。
しかし今作は「向日葵の咲かない夏」と違って、 全体的にライトな作品であり、道尾秀介が伝えたいことも分かりやすくなっている。
ミステリーを普段読まない人にも読んでほしい作品。 -
ミステリとしての種明かしもさることながら、最後に明らかとなる人物造形についても、してやられた感じ。ただ、取ってつけた感は否めず、それを言い出したらいくらでも…とは思えてしまう。物語そのものが面白かったから、そんなに気になる問題ではないんだけど。
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とても良かった!犯人が想像ついてしまっていたので、そこは少し残念だったけど、それよりも主人公の心情や周囲の人たちとの関係がとても良かった。
大好きな叙述トリックでいえば、もう最初の章から騙された。そしてそれを知った後も勘違いしていたとは…うまいなぁ
冬絵と同じ悩み持ってる… -
「道尾秀介」の長篇ミステリ作品『片眼の猿(One-eyed monkeys)』を読みました。
『シャドウ』に続き「道尾秀介」作品です。
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『向日葵の咲かない夏』で大ブレイク。
盗聴専門の私立探偵が遭遇した「事件」。
「道尾秀介」を信じるな!
「道尾秀介」を信じろ!!
盗聴専門の探偵、それが俺の職業だ。
目下の仕事は産業スパイを洗い出すこと。
楽器メーカーからの依頼でライバル社の調査を続けるうちに、「冬絵」の存在を知った。
同業者だった彼女をスカウトし、チームプレイで核心に迫ろうとしていた矢先に殺人事件が起きる。
俺たちは否応なしに、その渦中に巻き込まれていった。
謎、そして……。
ソウルと技巧が絶妙なハーモニーを奏でる長編ミステリ。
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タイトルに十二支が組み込まれている「十二支シリーズ」第一作です。
これまでに読んだ「道尾秀介」作品とは異なり、明るい雰囲気を感じさせる軽い文体で描かれた作品、、、
軽ハードボイルド… って感じですかね。
目次のタイトルも、ちょっと軽そうな印象です。
■1 どうして犬は
■2 新しい友達
■3 可愛いと思う
■4 何でもやるのね
■5 拭けない場所がある
■6 ローズ・フラット
■7 大きさだけが違っている
■8 口は災いの元
■9 美術部に移れば
■10 トウヘイの技
■11 ハートのキング
■12 ジョーカーとスペードのエース
■13 ダイアのクィーン
■14 どんな基準で
■15 トウヘイのクイズ
■16 眼のサイズ
■17 穴のあいた招き猫
■18 目立つもんで
■19 何かに巻き込まれた
■20 禁じ手
■21 どうして答えない
■22 お別れ会
■23 深海魚の話
■24 僕は見ていました
■25 叫びは急速に遠のいて
■26 信ずる者は救われる
■27 ○○○○って
■28 細かいことはあとで
■29 殴られっぱなしは嫌
■30 ものすごい顔ぶれ
■31 ねじくれた感情
■32 姿かたちとそぐわない物
■33 片眼の猿
■34 ジョーカーの正体
■35 我慢の限界はいとも容易く
■36 大きなお世話
■37 愚者
■解説 佐々木敦
相変わらず巧く読者をミスリードさせる展開でしたねぇ、、、
しかも、本作品は事件の真相ではなく、登場人物の身体的な特徴が判明したときの驚きが半端じゃないですね。
序盤の盗聴シーンでの何気ない会話…
「どうして犬は人間の数万倍も鼻が利くのか?」
「答えは、その顔のつくりにある。犬はな、鼻が大きいんだ。犬ってのは、顔の半分が鼻なん世術
この世間話が、頭にこびりついていて、、、
○耳が良く聞こえる=耳が大きい
⇒大きな耳を隠すために大きなヘッドフォンを付けている
○眼が良く見える=眼が大きい
⇒大きな目を隠すために大きなサングラスを付けている
と思い込んじゃったんですよね。
しかも、二人とも超常的な能力を持っているかのようにミスリードさせられているので、ファンタジー(もしくはSF)的要素も含んだ物語だと思い込んで読んでいました。
これが二人だけじゃなく、探偵事務所ファントムの事務員「帆坂くん」、ローズフラットの住人の「野原の爺さん」、「まき子婆さん」、「トウミ」、「マイミ」、そして、主人公「三梨」の恋人?「秋絵」までもが、身体のハンディを抱えていたことには驚きですね。
これも叙述トリックのひとつなんでしょうが、、、
新鮮なトリックで愉しめました… でも、残念ながら映像化作品にはできないだろうなぁ。
エンターテイメント性が高くて愉しめたし、ローズフラットに住む個性的で優しい仲間たちと迎えるハッピーエンドも良かったので、すっきりした読後感でしたね。
備忘用に主な登場人物を記録しておきます。
≪探偵事務所ファントム≫
三梨幸一郎
盗聴専門の私立探偵
夏川冬絵
三梨が盗聴中に冬絵の話を聞き、自らの探偵事務所にスカウトした
帆坂くん
事務員 地図好き
≪ローズフラットの住人≫
野原の爺さん
三梨の探偵の師匠
まき子婆さん
ローズフラットの古い住人
トウヘイ
神様が脳みそをいじったことで、トランプマジックと予知能力?の持ち主となった
トウミとマイミ
小学生の双子の姉妹
ジャック
犬
秋絵
7年前まで三梨と暮らしていたが、ふらりと家を出て自殺してしまった
≪四菱エージェンシー≫
四菱
悪質な探偵事務所の経営者
≪谷口楽器≫
刈田
三梨のクライアントの部長
≪地下の耳≫
マスター
ほかに客がいるのをみたことがないという、三梨の行きつけのバーのマスター