新編 あいたくて (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (142ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101358215

作品紹介・あらすじ

「だれかにあいたくてなにかにあいたくて生まれてきた-」。心の奥深く分け入って、かけがえのない存在に触れてゆく言葉たち。多くの人びとに愛誦されてきた名詩「あいたくて」をはじめ、48編の詩が奏でる生きる歓び、温かくやさしい気持ち…。絵本『のはらうた』で日本中の子どもたちに愛される童話作家と『100万回生きたねこ』の絵本作家がおくる、心を元気にする詩集。

感想・レビュー・書評

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  • 読んでいると、胸が痛くなるほど、共感できる詩が、あった。生きる歓び、温かくやさしい気持ち……そんな詩、よりも、切ないような、心が痛くなるような、そんな詩に、共感した。
    佐野洋子さんの、あどけない絵が、素敵。


    、、、心惹かれた詩

    なぜ?

    べんきょうは
    なぜ しなくてはいけなくて
    ひろった犬は
    なぜ すてなくては いけないのかなあ

    あの日 犬とわたしは 目があった
    目があえば カナブンでも毛虫でも 見すててはいけない
    あれは 生き物の合図だから
    だいて帰るあいだだけ 犬もわたしも わらった
    「せめて食べさせてから すてましょう」
    と おとながいった
    いけない それは断じてやさしさではない
    愛ではない
    ーーおなかをパンパンにふくらませて
      しっぽをふっていた子犬よ!ーー
    その夜わたしは 世界じゅうと 他人になった

    歯は
    なぜ みがかなくてはいけなくて
    ひろった犬は
    なぜ すてなくてはいけないのかなあ




    猫よ


    とおくにいっちまった 猫よ
    また 春がきたよ
    おまえが いなくなってからも
    春は きちんとやってくる

    とおくにいっちまった 猫よ
    おまえのいない わたしの春は
    みんなのところに くる春と
    すこしちがう気がするのだけれど

    とおくにいっちまった 猫よ
    わたしが いなくなっても
    春は いつもきっと
    だれかのところへ いくのだろうね

    とおくにいっちまった 猫よ
    おまえと わたしの いなくなった
    春のそらには
    どんな風が 吹いているだろうね

    猫よ



    、、、「猫よ」の詩を読んで
    先日、実家に一泊した。日曜日の朝、近くの河川敷を、散歩していて、どうしようもなく、切なくなった。今は一匹もいなくなっちゃったけれど、一緒に暮らしてきた猫たちと、よくここを散歩したものだ。…「猫よ」と、私もいいたくなった。
    涙が滲みそうになったが、がまんした。







    あいたくて

    だれかに あいたくて
    なにかに あいたくて
    生まれてきたーー
    そんな気がするのだけれど

    それが だれなのか なになのか
    あえるのは いつなのかーー
    おつかいの とちゅうで
    迷ってしまった子どもみたい
    とほうに くれている

    それでも 手のなかに
    みえないことづけを
    にぎりしめているような気がするから
    それを手わたさなくちゃ
    だから

    あいたくて





    こころ


    「こころが くだける」というのは
    たとえばなしだと思っていた ゆうべまで
    今朝 こころはくだけていた ほんとうに

    ひとつひとつ かけらをひろう
    涙がでるのは
    かけらに日が射して まぶしいから

    くだけても これはわたしの こころ
    ていねいに ひろう








    • りまのさん
      湊川晴斗さん こんばんは。

      コメントありがとうございます (^^)
      こんな深夜に、ごめんなさい。早く眠ってしまったので、今眼が覚めたので...
      湊川晴斗さん こんばんは。

      コメントありがとうございます (^^)
      こんな深夜に、ごめんなさい。早く眠ってしまったので、今眼が覚めたのです。 (_ _;)

      ……この詩集、元気が出るような詩も、たくさんありました。
      でも、なぜ? という詩は、強烈に、心切なく、痛くなり、忘れられなくなりました。リアルです。
      こころ という詩は、私も、とても好きです。…特にラスト2行に、心打たれました。感ずること、多くありました。

      自分も、これから、こころがくだけるような事があっても、ていねいに拾い集めていこう、と、思えました。

      それでは、ありがとうございました。
      おやすみなさい。。。

      2021/08/05
  • 詩への理解度向上挑戦第一弾。
    workmaさん、ご紹介ありがとうございました。図書館で予約できたものから、読んでみてます。
    工藤さん、「あいたくて」が有名な作品かと思います。私もどこかで読んだことがあります。
    詩の良さは、自由であることなのかなと思う。形式も表現も文字の形までも。ただ、最近は小説でも、そういう手法をとってくる方もいるので、一概に括れないですかね。
    詩は、自身の感情から溢れる言葉といった認識でしたけれど、詩人という作家となると、その作品にどれだけ共感者を得るか、凡庸でなく汎用性の高い感情を表現できるかということになるのでしょうか。
    ちょっと違うか?
    あまり説明しないところに感情の幅を持たせているのかな。読者の思考の余白を残すという技術なのかしら。
    ・・・これじゃあ、駄目だ。詩に感情移入してない。りまのさんとまことさんのレビューが眩しすぎる。

    • まことさん
      おびのりさん。こんにちは♪

      名前を出してくださり、ありがとうございます。
      これから、詩を読まれるのですか?
      工藤直子さんも、素敵な詩がたく...
      おびのりさん。こんにちは♪

      名前を出してくださり、ありがとうございます。
      これから、詩を読まれるのですか?
      工藤直子さんも、素敵な詩がたくさんありますが、おびのりさんだったら、谷川俊太郎さんが、いいんじゃないかなあ?と思いました。
      もし、未読でしたら、「二十億光年の孤独」が最初に読まれるにはおすすめです。
      あとは、長田弘さんも、いいですよ。
      私の本棚にほとんど全部載せているので、よかったら覗いてみてください。
      2022/12/17
    • おびのりさん
      まことさん、こんにちは、
      コメントありがとうございます。
      いつも素敵なレビュー読ませていただいています。
      本棚お邪魔して、谷川俊太郎さんの作...
      まことさん、こんにちは、
      コメントありがとうございます。
      いつも素敵なレビュー読ませていただいています。
      本棚お邪魔して、谷川俊太郎さんの作品も見させていただきました。
      少しずつ挑戦していきます。
      時々、つぶやいてしまっているのですが、詩が苦手なんですね。どうしてなのかなってところも、考えたりするのですが。
      まことさんやりまのさんのレビューを拝見して、私には素直さも足りないのかなあと思ったりします。もちろん、柔らかめの感受性の欠如も原因かとも。
      詩集を読むこともなかったので、読まず嫌いは克服しようと思いました。何故か、子供の頃から、詩の読み取りが出来なかったんですよ。しばらくは、挑戦してみます。
      ありがとうございました♫
      2022/12/17
  • 「あいたくて」
    だれかに あいたくて
    なにかに あいたくて
    生まれてきたー
    そんな気がするのだけれど

    それが だれなのか なになのか
    あえるのは いつなのかー
    おつかいの とちゅうで
    迷ってしまった子どもみたい
    とほうに くれている

    それでも 手のなかに
    みえないことづけを
    にぎりしめているような気がするから
    それを手わたさなくちゃ
    だから

    あいたくて


    この詩集のなかでは、この「あいたくて」という一編がもっとも共感をいただき、多くの方が自分が書いた詩のようだ、と書き送ってくださり励まされたと、文庫版あとがきで工藤直子さんはおっしゃっています。
    そして、二十年前、詩集のなかのほとんどの詩を書き終わり、(「言い残した」ことはないか)と最後に書いた詩がこの「あいたくて」だそうです。
    いまだに「みえないことづけ」を手の中ににぎりしめている気がするそうです。
    私もこの詩には共感する部分があります。
    やはり、この詩を読まれた読者の方も同じ思いで、工藤さんにメッセージを送られたのだろうと思います。

    他の詩では「はじめて」「痛い」「手をください」「思い出」「うたう」「手ざわり」「また あいたくて」もよかったです。
    佐野洋子さんの鳥や花、女性、少女のエッチングの絵もアースカラーでとても素敵です。

  • わたしは、なんでうまれてきたんだろう
    この世に、どんなご用があるのだろう
    わたしにもできる「この世のご用」はあるのだろうか
    あるとしたら、それは、どんなご用だろう

  • 「あいたくて」、「痛い」、「手をください」、「会合」、「!(びっくり)」、
    「ひかる」、「どちらへ?」
    が特に気に入りました。
    女性の詩は、なんだろう感覚に訴えるものが多くて、
    この詩集のなかの詩をすべて受け止めきれない
    感じです。
    いい詩集です。

  • 工藤さんは、地球を見つめて、恋文を書き続けるために生まれて、そのご用を果たし続けたいのらしいです。

    ほんとに、簡単なことばしか使っていないのに、びっくりするくらい瑞々しく生々しい詩たちに、心洗われました。

    人間の内面を見つめたやつもいいし、目に映るものたちを書きとめたやつもいい。全部好き。
    いつか、子どもを膝にのせて、一緒に読むんだーぃ

  • 工藤直子さんの詩に、佐野洋子さんのエッチングを組み合わせた
    持っていると嬉しくなる本。

    「生きる」事の意味について、「自然」について、時にはにニヤリ、時にはホロリとしながら読める詩がたくさん。

     あとがきもとても良かった。

  • 小学生の時に熱中した詩集
    多分5回くらい図書室で借りた

    すごい良い作品が詰まってます
    特に「だれですか」がすごい印象的で
    私は読んでるだけで心臓がバクバクしたのを覚えてる

  • 工藤直子さんの詩に、佐野洋子さんの挿絵がついた、とても贅沢な本です。〝新編〟となっているのは、1991年に出版された詩集『あいたくて』が文庫化されるにあたって、その後書かれた詩をいくつか追加したり、入れ替えたりしているからなんだそうです。
    これを読めば、胸の中にタンポポの花が咲いたような、やさしい心持になりますよぉ。

  • 詩を読むことはあまり得意ではないのだけど
    この詩集は、すらすらと読めて
    心があたたかくなり、少しおかしくて
    生き物や地球,風景を見る目がとてもやさしい感じがする
    そして、挿絵の佐野洋子さんの絵が、す〜っごく素敵

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