殿様の通信簿 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.96
  • (38)
  • (55)
  • (39)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 459
レビュー : 74
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101358710

作品紹介・あらすじ

史料「土芥寇讎記」-それは、元禄時代に大名の行状を秘かに探索した報告書だったのか。名君の誉れ高い水戸の黄門様は、じつは悪所通いをしていたと記され、あの赤穂事件の浅野内匠頭は、女色に耽るひきこもりで、事件前から家を滅ぼすと予言されていた。各種の史料も併用しながら、従来の評価を一変させる大名たちの生々しすぎる姿を史学界の俊秀が活写する歴史エッセイの傑作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 『武士の家計簿』の作者で歴史家の磯田道史さんは、様々な古文書をひもとき昔の人たちの生活をわかりやすく解説してくれる方です。本書『殿様の通信簿』は、元禄時代に編纂された書物をもとに、大名たちの知られざる素顔に迫るという趣向。

    冒頭、黄門様で有名な水戸光圀の悪所通いが紹介されます。大日本史の編纂など堅苦しいイメージの光圀が悪所通いとは!と驚くのですが、光圀の名誉のため、政治はおろそかにしなかったことも併せて示されています。磯田さんの見立ては、昔の大名は行動が制約され、唯一、人と自由に会えたのが当時のサロンだった遊郭で、そこへの出入りがほうぼう出歩くという評判となり、後年の黄門伝説につながったというもの。なるほど。

    また、赤穂浪士で有名な浅野内匠頭。色白で線の細い青年大名というイメージを持っていましたが、実際には女色に耽ること甚だしく全く政務を顧みない問題人物だったそう。浅野家は内匠頭の代でつぶれるとまで酷評されていたというから驚きです。やはり事件が起こるにはそれだけの前提条件があったんだなと、妙に納得しました。

    磯田さんの筆は、加賀前田家の項に至ってますます冴えわたります。
    前田家はもともと織田家臣団から起り、初代の利家が秀吉の盟友として天下道を伴走したことから、大名間で重きをなした家。利家もつねづね「家康が豊臣家を攻めるようなことがあったら前田は断固として戦う」と広言し、その行動律は二代目の利長にも受け継がれていた由。関ケ原合戦後、天下を握った家康が最も気にしたのは天下第二の勢力を誇る前田家の動向で、前田を味方につけるため、利長の養子(利家の庶子)利常を秀忠の娘婿に取り込みます。家康の豊臣攻めが迫るなか、利家の遺訓と家の存続という両立しえない課題に直面した利長がとった手段とは…
    このあたり、司馬遼太郎さんの見立てとは違った歴史の一側面を教えてもらえます。

    平和な現代から戦国時代をみれば、信長や秀吉、謙信ら英雄が闊歩するロマンあふれる時代に映りますが、実際には大名それぞれが必死で生き残りに知恵をしぼり、政略を巡らせるすさまじい時代だったことがわかります。掛け値なしに面白い。

    2011年の東日本大震災以降、震災関連の文書の発掘にも力を入れられて、この国と災害の関わりについて貴重な知恵を伝えてくれます。今後もどんな古文書を発掘され、新しい知見を私たちに示してくれるのか、楽しみです。

  • 4月10日読了

  • 歴史書から殿様達の生き方、性格などが浮かび上がってくるのが非常に面白い。昔の話ではなく日本人としての生き方や生活が現代に共通する部分も多く感慨深い。

  • とても歴史に興味がわく本でした。
    そうかー、大名ってのはたくさんいたんだなぁ。
    そういうのもいろいろ調べてみたくなりました。
    忠臣蔵のお話、私は詳しくは知らないのだけど、浅野さんが実はそんな人だったとはな~!!
    それを知ると忠臣蔵、見てみたくなりました。

  • 俊英の史家【磯田道史】が、江戸時代の殿様らの行状を古文書から紐解いた、小説の面白さを超えた歴史エッセイです。後世において脚色された殿様像を覆す、生々しい姿を垣間見ることができる秀作本です。徳川家康の家臣だった本多作左衛門(ほんだ さくざえもん)は、特に印象に残る武将でありました。

  • はじめに
    徳川光圀――ひそかに悪所に通い、酒宴遊興甚だし
    浅野内匠頭と大石内蔵助――長矩、女色を好むこと切なり
    池田綱政――曹源公の子、七十人おわせし
    前田利家――信長、利家をお犬と申候
    前田利常 其之壱――家康曰く、其方、何としても殺さん
    前田利常 其之弐――百万石に毒を飼うべきや
    前田利常 其之参――小便こらえ難く候
    内藤家長――猛火のうちに飛入りて焚死す
    本多作左衛門――作左衛門砕き候と申されよ
    あとがき
    文庫版あとがき

  • この書籍では、歴史研究家・歴史解説者の磯田道史が江戸時代の藩士や藩主を著者なりの通信簿風解説になっています。
    水戸黄門で有名な「水戸藩藩主 徳川光圀」や赤穂藩や加賀前田家など書かれています。

  • 徳川光圀、浅野内匠頭と大石内蔵助、池田綱政、前田利家、前田利常、内藤家長、本多作佐衛門を取り上げ、戦乱の戦国時代から太平の江戸時代へと移り変わる中で、大名たちがどのように変節していったかを綴った人物評伝。大名たちの内情が綴られた元禄期の書物「土芥寇讎記」などをベースとしている。

    著者はあとがきで、「豊かになれば、人間というものは、歌舞音曲と恋愛と宗教にしか興味をもたなくなる」と書いている。大名たちの暮らしぶり・生きざまに、飽食の時代を生きる現代人にとっての(反面教師としての)ヒントが隠されているのかもしれない。

    各大名家には祖先の武勲や家風としての戒めが代々受け継がれ、いい意味でも悪い意味でもそれに縛られている、というのも興味深かった。

    赤穂事件の原因分析もなかなか面白かった。「足利・織田の子孫は優遇する。豊臣の子孫は殺す」との徳川家の方針により高い官位を与えられたが「本家筋の足利(喜連川)家とちがって、大名の格を与えられ」なかったために官位の高さにことさら拘るようになった吉良、三代将軍に赤穂城築城を命ぜられたことから「城持ち大名」として強い自意識を持つようになった浅野。この両者のプライド、自意識が城中での刃傷沙汰に繋がったのだという。

  • 配置場所:2F文庫書架
    請求記号:281||I 85
    資料ID:C0028989

  • 史料「土芥寇讎記」とは元禄期に書かれた書物であるが、これは書物というよりも幕府隠密の「秘密諜報」であり、いまの表現で言えば作者の磯田先生の「殿様の通信簿」なのである。

全74件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

磯田道史(いそだ みちふみ)
1970年、岡山県生まれの研究者。茨城大学、静岡文化芸術大学などを経て、国際日本文化研究センター准教授。専攻は日本近世・近代史・日本社会経済史。
実家は備中鴨方藩重臣の家系で、古文書が豊富にあった。高校生のとき実家と岡山県立図書館の古文書を解読している。京都府立大学文学部史学科、慶應義塾大学文学部史学科を経て、慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。「近世大名家臣団の社会構造」で史学博士号取得。
2003年刊行の『武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新』が第2回新潮ドキュメント賞を受賞し、2010年森田芳光監督により『武士の家計簿』のタイトルで映画化し大ヒット。2015年には『天災から日本史を読みなおす』で第63回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。その他代表作に『日本史の内幕』などがあり、多くの新書がヒット作となっている。

殿様の通信簿 (新潮文庫)のその他の作品

殿様の通信簿 単行本 殿様の通信簿 磯田道史

磯田道史の作品

殿様の通信簿 (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする