キッチン (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.85
  • (779)
  • (742)
  • (974)
  • (75)
  • (16)
本棚登録 : 5644
レビュー : 753
  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101359137

作品紹介・あらすじ

私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う-祖母の死、突然の奇妙な同居、不自然であり、自然な日常を、まっすぐな感覚で受けとめ人が死ぬことそして生きることを、世界が不思議な調和にみちていることを、淋しさと優しさの交錯の中であなたに語りかけ、国境も時もこえて読みつがれるロング・ベストセラー、待望の定本決定版。"吉本ばなな"のすべてはここから始まった。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • ようやく読めた『キッチン』。
    ずっと気になっていたのに何故か読めなかったよしもとばななさん。
    最初の数ページを読んで「そういうことだったのか」と納得した。
    まだ私にはこの物語は早かったんだな。きっと。
    本当は今だって機が熟したとは言えない。
    少しフライングで読んでしまったと思う。

    主人公の経験した喪失を私は知らない。
    でもそれは回避不可能なものなのだろう。
    今息絶えることが出来るなら知らないまま生涯を終わらせることが出来る。
    でも私にはその道を選ぶことが出来ない。

    幼い頃から何度も想像してきた。
    その度に涙を流して私には耐えられないと結論付けてきた。
    この小説に描かれているのは喪失そのものとそこからの生き方だった。

    深く傷つきながらも周囲の人に光を見出す主人公達が私には眩しい。
    いつか私が運命に捕まる日が来たら、その時私はどこかに光を見いだせるだろうか。
    こういうことには心の準備なんて出来ないのだと思ってきたけれど、光を見つけることはもしかしたら出来るのかもしれない。
    そう思った。

  • R1.8.31 読了。

     ずっと気になっていた作品。大切な人を失くした空虚感にあったみかげを雄一とえり子親子に声を掛けられて同居することになり、徐々に新たな大切なものを見つけていく。
    キッチン、キッチン2は、悲しみも苦しさも誰かを想ういとおしさも優しい気持ちも同時に味わえた。また、みかげが強く生きようとしている姿から勇気ももらえた。
     ムーンライト・シャドウも不思議な感じはしたが、内容は良かった。

    ・「それでも彼女は圧倒的だった。もう一回会いたいと思わせた。心の中にあたたかい光が残像みたいにそっと輝いて、これが魅力っていうものなんだわ、と私は感じていた。」
    ・「なにが悲しいのでもなく、私はいろんなことにただ涙したかった気がした。」
    ・「本当にひとり立ちしたい人は、なにかを育てるといいのよね。子供とかさ、鉢植えとかね。そうすると、自分の限界がわかるのよ。それからがはじまりなのよ。」
    ・「まあね、でも人生は本当にいっぺん絶望しないと、そこで本当に捨てらんないのは自分のどこなのかをわかんないと、本当に楽しいことがなにかわかんないうちに大っきくなっちゃうと思うの。」
    ・「もっともっと大きくなり、いろんなことがあって、何度も底まで沈み込む。何度も苦しみ何度もカムバックする。負けはしない。力は抜かない。」
    ・「偉大な人物はいるだけで光を放ち、周りの人の心を照らす。そして、消えた時にどうしようもなく重い影を落とす。」
    ・「幸福とは、自分が実はひとりだということを、なるべく感じなくていい人生だ。」
    ・「人の心には宝石があると思わせる。」
    ・「本当のいい思い出はいつも生きて光る。時間がたつごとに切なく息づく。」

  • ときどき読みたくなる作品。何度読んでもじわじわと心に浸透するものがある。今回は、みかげと雄一よりもママのえり子さんの言葉が胸にしみた。

    「本当にひとり立ちしたい人は、なにかを育てるといいのよね。子供とかさ、鉢植えとかね。そうすると、自分の限界がわかるのよ。そこからはじまりなのよ」59ページ
    「私、私の人生を愛してる」75ページ

    自分の人生を愛している、と堂々と宣言できる人が世の中にどれだ存在しているだろうか。こう言い切れるえり子ママは太陽の光のような人だと思えた。
    作品中、力強くってまぶしくってあたたかい言葉であふれている。陰と陽でもないけど、朝が来て夜が来る。作品内に太陽と月がある物語。

    ほかにも元カレのセリフの「しっかり生きろよ」とか。本から栄養がもらえる、そんな気がする。デビュー作だから青さとか若さとかそういうのは仕方がないけど、いつ読んでもいいものはいい。必死に、懸命に生きることの素晴らしさを教えてくれている作品だと思うのです。

    2019年積読本消化22冊目。

  • こないだ自室の本棚の本を50音順に並び替えたのだけど、そしたら懐かしい本もたくさん目に入って、何度か読んではいるけどブクログにレビューを書いてない本もけっこうあったから、積読を読む合間にそれらも読んでみようかなと思った。
    この小説は、その中の一冊。
    出逢いは高校生の時で、それから何度か読んでるけれど、今回はけっこう久しぶりに読んだ。
    やはりこの一冊は特別というか、吉本ばななさんの原点だと思う。
    “大切な人の死”“特別な出逢い”“悲しい時間をどうにか乗り越えて行くこと”“不思議な力”全部詰まった小説。
    読むと無条件に悲しくなって、そして優しい気持ちになれる。
    人と人の特別な出逢い。に、期待したくなる一冊。

  • キッチンの冷たくて無機質な感じと、人の温もりが伝わってくる。
    久しぶりに再読したら、とても新鮮だった。

    「ムーンライト・シャドウ」もよかった。
    人はいつか、孤独や暗闇から抜け出して、前を向いて生きて行けるものなのだ。
    文章が優しくて、心打たれる。

  • 今、閲覧室の一つの机の上に「S短期大学合格生用課題図書」というコーナーを設けています。
    7名の作家の中から、好きな作家を選んで読書感想文を書きなさいという課題が、上の短大から出ているからです。(附属高校ということもあり、毎年数十名が上の短大に進みます)
    その7名の作家というのが、芥川龍之介、太宰治、夏目漱石、村上春樹、吉本ばなな、司馬遼太郎、渡辺和子なのですが、正直、もうそろそろ作家を変えてあげて頂けないものかと、内心思っております。私が勤めてから、5年間同じです。
    石田衣良とか東野圭吾とか伊坂幸太郎とか恩田陸とか湊かなえとか梨木果歩とか湯本香樹実とか瀬尾まいことか重松清とか星新一でも小野不由美でも上橋菜穂子もいるし・・・。生徒が読みやすく、書きやすい作家に変えて頂けないものかと。
    司書としては毎年同じですので簡単でよいのですが。急いで揃える必要もありませんし。毎年同じなら・・・・。
    でも、生徒のことを思うと。。。
    あっ、自分で好んで読む作家はほっておいても読むから、あえてこうされているのかもしれませんね。
    すみません。差し出がましいことを書いてしまいました。

    生徒から「何が読みやすいですか」と聞かれた時には、締め切り間際に聞いてくる生徒もいますので、そんな時には「内容知ってる小説あるでしょう。こころとか羅生門とか坊ちゃんとか。そんなところからでもいいし、読みやすいのだったら吉本ばななとかは?」
    この課題が出ると、今まで借りたことのない生徒も来てくれたりしますので、高校の図書室としてはうれしい課題です。
    提出された感想文を読まれる短大の先生方は大変でしょうが、続けて頂ければと思います。
    合格した生徒の気も引き締まりますし。

    では、その中の1冊
    吉本ばななさんの 「キッチン」

    「簡単に読めて、面白いのだったらこれがお薦め」といいながら紹介しています。
    おばあちゃんと二人暮らしだった女子大生が、おばあちゃんが亡くなって一人になってしまった時に、同じ大学の男子学生に拾われて(?)その男子学生の母親含め三人で暮らすことになったんだけど、実はそのお母さんは、お父さんで・・・・、とこの辺りまで紹介すると、「あっ、面白そう、それ読んでみる」と借りていってくれます。

    文庫本の裏表紙の紹介文から。
    『私がこの世で一番好きな場所は台所だと思う。
    祖母の死、突然の奇妙な同居、不自然であり、自然な日常を、
    まっすぐな感覚で受け止め、人が死ぬことと生きることを、
    そして世界が不思議な調和に満ちていることを、
    あなたに語りかけるロング・ベストセラー』

    『生きることは淋しい、でもどこまでも美しい』

    分類 913/ヨ

  • 読んでると、たまに分かりづらい文章があって何度も読み返してしまう部分もあったかな…独特ですね。
    要は抽象的なのかなあと。
    重い現状なのに、救いとあたたかさを感じます。

    遥か昔(小学校時代)に読んだ作品だったので、
    まったく新しい気持ちで読めました(*^^*)

    ひとまわり、もしくはふたまわり歳を取ったらまた読んでみよう。

  • 表題作は吉本ばななのメジャー・デビュー作。
    新潮文庫版は、これに「満月-キッチン2」、「ムーンライト・シャドウ」を合わせ、全3編の中編を収める。

    いずれも身近なものの死、その対極にあるような生を支える飲食、(LGBTを含めた)少しクィアな人々を描く。生々しくどろどろしても不思議はないような題材を、独特の透明感と軽さで仕上げたその手腕は、吉本ばなな天性のものだろうが、同時に、若くなくては書きえなかったであろう純粋さを感じる。
    息苦しくて、でもきらきらした、生きることの苦さを知りつつも汚れ切ってはいない、稀有な若さの数年間。
    誰もが経験するわけではない、特異なエピソードを描きつつ、その根底には、誰しもが心に秘める、澄んだ若きまなざしがある。

    「キッチン」発表は1987年。
    バブル真っ只中とはいえ、これが永遠に続くはずはない不安はあった頃。熱狂的な時代、しかしそれに乗り切れず、どこか冷めた目で見ていた人は多くいたはずである。
    本作のヒットには、あるいはそんな「ギラギラ」しない人たちの想いを掬い上げた面もあったのではないか。
    同時に先駆的にLGBTを描いた本作は、「自分らしく生きる」ことの意味を、現在もなお問うているようにも読める。
    今、読んでも新しい。それがロングセラーの所以でもあろう。

    自分自身のことを言えば、本作を読んだのは、確か、大ヒットした当時ではなかったはずだ。へそ曲がりだったから、ほとぼりが冷めた、数年後に(いささか斜に構えて)読んだのだったと思う。メジャーを外したものが大ヒットしすぎて逆にメジャーとなるのは皮肉なようでもあるが、ままありがちなことでもある。今にして思えば、自分にとっての「読み時」は、もしかしたら発表当時だったのではないかと若干残念な気もするが、それも含めてのめぐりあわせだろう。

    文庫版のあとがきで、ばななは
    この小説がたくさん売れたことを、息苦しく思うこともあった。
    という。過度な注目は、望まぬものも連れてくる。大きな反響の中には、必ずしも著者の意に染まぬものもあっただろう。さまざまな解釈があったであろう中で、彼女の友達の言う
    「吉本のあの小説で、この世の女の子のマイナー性が一気に花開いて、表に出て来ちゃったんだよな」
    という評はなかなか興味深い。

    やはり、記念碑的な作品だと思う。

  • 突然、大切な人を亡くした。それでも世界は、日常は続いていく...
    大切な人を亡くし、残された人達の再生への物語。
    絶望的な描写はなく、儚くも温かいお話。
    行き場のない感情と言葉たちに胸を打たれた。
    “ちゃんとお別れを“この言葉がズシンと残る。
    早くも再読したい。ストーリーだけでなく、言葉を噛み締めたいと思った読後。

  •  ときおり、ぐっと胸をつくような表現がありました。特に、「ムーンライト・シャドウ」だよかったです。大切な人を失った二人が、その人の死の重みになんとか耐え、生きていこうとする姿が胸に迫りました。その描き方が本当にいい。

全753件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

吉本ばなな(本名:吉本 真秀子 よしもと まほこ、旧筆名:よしもと ばなな)
1964年、東京都生まれの作家。日本大学芸術学部文芸学科卒業。卒業制作の「ムーンライト・シャドウ」が日大芸術学部長賞を受賞。また「キッチン」で第6回海燕新人文学賞を受賞、デビュー作となる。
1989年『TUGUMI』で山本周五郎賞を受賞。1996年イタリアのフェンディッシメ文学賞(35歳以下部門)、1999年イタリアのマスケラダルジェント賞文学部門を受賞。2000年『不倫と南米』でBunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。その他代表作に、映画化された『アルゼンチンババア』などがある。
海外での評価が高く、著作が多くの国で翻訳されてきた。

キッチン (新潮文庫)のその他の作品

キッチン (福武文庫) 文庫 キッチン (福武文庫) 吉本ばなな
キッチン Kindle版 キッチン 吉本ばなな
キッチン (角川文庫) 文庫 キッチン (角川文庫) 吉本ばなな

吉本ばななの作品

キッチン (新潮文庫)に関連する談話室の質問

キッチン (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする