キッチン (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.88
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本棚登録 : 7138
感想 : 862
  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101359137

作品紹介・あらすじ

私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う-祖母の死、突然の奇妙な同居、不自然であり、自然な日常を、まっすぐな感覚で受けとめ人が死ぬことそして生きることを、世界が不思議な調和にみちていることを、淋しさと優しさの交錯の中であなたに語りかけ、国境も時もこえて読みつがれるロング・ベストセラー、待望の定本決定版。"吉本ばなな"のすべてはここから始まった。

感想・レビュー・書評

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  • R1.8.31 読了。

     ずっと気になっていた作品。大切な人を失くした空虚感にあったみかげを雄一とえり子親子に声を掛けられて同居することになり、徐々に新たな大切なものを見つけていく。
    キッチン、キッチン2は、悲しみも苦しさも誰かを想ういとおしさも優しい気持ちも同時に味わえた。また、みかげが強く生きようとしている姿から勇気ももらえた。
     ムーンライト・シャドウも不思議な感じはしたが、内容は良かった。

    ・「それでも彼女は圧倒的だった。もう一回会いたいと思わせた。心の中にあたたかい光が残像みたいにそっと輝いて、これが魅力っていうものなんだわ、と私は感じていた。」
    ・「なにが悲しいのでもなく、私はいろんなことにただ涙したかった気がした。」
    ・「本当にひとり立ちしたい人は、なにかを育てるといいのよね。子供とかさ、鉢植えとかね。そうすると、自分の限界がわかるのよ。それからがはじまりなのよ。」
    ・「まあね、でも人生は本当にいっぺん絶望しないと、そこで本当に捨てらんないのは自分のどこなのかをわかんないと、本当に楽しいことがなにかわかんないうちに大っきくなっちゃうと思うの。」
    ・「もっともっと大きくなり、いろんなことがあって、何度も底まで沈み込む。何度も苦しみ何度もカムバックする。負けはしない。力は抜かない。」
    ・「偉大な人物はいるだけで光を放ち、周りの人の心を照らす。そして、消えた時にどうしようもなく重い影を落とす。」
    ・「幸福とは、自分が実はひとりだということを、なるべく感じなくていい人生だ。」
    ・「人の心には宝石があると思わせる。」
    ・「本当のいい思い出はいつも生きて光る。時間がたつごとに切なく息づく。」

  • 人はいつも明るいわけじゃない。
    寂しい時、悲しいときだってある。

    大切な人を亡くしてしまった人たちの悲しみと、それを乗り越えるさまに引き込まれます。楽しい時、充実している時間を大事にしたいですね。

    夢の中で会えるひとがいます。夢だとわかっているから、目覚めたくない。
    現世って何だろう。
    現世のほうが夢かもしれないし、夢のほうが現世かもしれない。
    時空のゆがみから何かがみえてくるけれど、それは本当かもしれない。
    いま、ここに生きている、ってとても繊細な空間で、壊れそうなもの。
    それは人の気持ちで動くものなのかもしれない。
    (みんな想いが強そうだったし…願えば会えるものなのかも)

    見えているものがすべてではないし、科学が万能でもないよね~、と考えながら読みました。なにかとても染みました。ひとを想う気持ちは大事ですね。

    これは再読すべき本です。世界中で読まれているだけのことはあります。

  • 人の死が何度も出てくるのに、その表現が幻想的で、現実と空想の世界を行ったり来たりしているような、不思議な感覚を覚える。
    サラサラと読めるのに、さりげなく腕をとって振り向かせるような表現が素敵。
    幻想的なのに現実的。ロマンティックな情景の描写が、人の心を打つ瞬間を捉え、登場人物の心情が波のように伝わってくる。

    心通じてしんみり温かくなる、そんな後味のする小説だった。

    • ikedazuさん
      「さりげなく腕をとって振り向かせるような表現」という表現
      とてとしっくり来ました。
      「さりげなく腕をとって振り向かせるような表現」という表現
      とてとしっくり来ました。
      2020/06/30
    • Danielさん
      コメントに共感してくださって嬉しいです( ´∀`)
      キッチンを読み終えた今でも、雨上がりのようなしっとりとした感覚が残っています。
      さりげな...
      コメントに共感してくださって嬉しいです( ´∀`)
      キッチンを読み終えた今でも、雨上がりのようなしっとりとした感覚が残っています。
      さりげない文章に心ひかれて、また読み直すのもいいなと思いました。
      2020/07/02
    • ikedazuさん
      もう10数年近く前に読んだのですが、もう一度読みたくなりました。
      返信ありがとうございます。
      もう10数年近く前に読んだのですが、もう一度読みたくなりました。
      返信ありがとうございます。
      2020/07/02
  • ようやく読めた『キッチン』。
    ずっと気になっていたのに何故か読めなかったよしもとばななさん。
    最初の数ページを読んで「そういうことだったのか」と納得した。
    まだ私にはこの物語は早かったんだな。きっと。
    本当は今だって機が熟したとは言えない。
    少しフライングで読んでしまったと思う。

    主人公の経験した喪失を私は知らない。
    でもそれは回避不可能なものなのだろう。
    今息絶えることが出来るなら知らないまま生涯を終わらせることが出来る。
    でも私にはその道を選ぶことが出来ない。

    幼い頃から何度も想像してきた。
    その度に涙を流して私には耐えられないと結論付けてきた。
    この小説に描かれているのは喪失そのものとそこからの生き方だった。

    深く傷つきながらも周囲の人に光を見出す主人公達が私には眩しい。
    いつか私が運命に捕まる日が来たら、その時私はどこかに光を見いだせるだろうか。
    こういうことには心の準備なんて出来ないのだと思ってきたけれど、光を見つけることはもしかしたら出来るのかもしれない。
    そう思った。

  • 今読んでよかった。もしもう少し若かったら、わたしは一生雄一を探し続けただろうし、みかげになろうとしていたと思う。
    喪失は埋まらない。それでも食事をして暮らしていくしかない。

  • 偶然にも本書を読み始めたのが、祖母が亡くなった日で、過剰投影しながら読んでしまった。

    祖母は静かに、穏やかに、眠るように息を引き取った。それを家族とともに見届けることができた。このご時世に、その場に立ち会えたことが幸福で、死ぬのが怖かった私に「そんなに怖いものではないのよ」と祖母が身をもって示してくれたように感じられて、私は寂しかったけど、同じくらい感謝と温かさにも包まれた。

    そんな自分の感覚が主人公に押し寄せる孤独感とずれていて、感受性豊かに書かれた文章がところどころ理解できなかった。本当は主人公の喪失感に寄り添って読み進めるべきだったんだろうけど、今の私は受け取れる状態ではなかったように思う。

    風景描写がすごく綺麗で透き通っていることと、お茶の暖かみが印象に残った。

    引用
    59p 本当にひとり立ちしたい人は、何かを育てるといいのよね。子供とかさ、鉢植えとかね。そうすると、自分の限界がわかるのよ。そこからがはじまりなのよ。

    111p 世界は別に私のためにあるわけじゃない。だから、いやなことがめぐってくる率は決して、変わんない。自分では決められない。だから他のことはきっぱりと、むちゃくちゃ明るくしたほうがいい

    135p 本当のいい思い出はいつも生きて光る。時間がたつごとに切なく息づく。

  • ときどき読みたくなる作品。何度読んでもじわじわと心に浸透するものがある。今回は、みかげと雄一よりもママのえり子さんの言葉が胸にしみた。

    「本当にひとり立ちしたい人は、なにかを育てるといいのよね。子供とかさ、鉢植えとかね。そうすると、自分の限界がわかるのよ。そこからはじまりなのよ」59ページ
    「私、私の人生を愛してる」75ページ

    自分の人生を愛している、と堂々と宣言できる人が世の中にどれだ存在しているだろうか。こう言い切れるえり子ママは太陽の光のような人だと思えた。
    作品中、力強くってまぶしくってあたたかい言葉であふれている。陰と陽でもないけど、朝が来て夜が来る。作品内に太陽と月がある物語。

    ほかにも元カレのセリフの「しっかり生きろよ」とか。本から栄養がもらえる、そんな気がする。デビュー作だから青さとか若さとかそういうのは仕方がないけど、いつ読んでもいいものはいい。必死に、懸命に生きることの素晴らしさを教えてくれている作品だと思うのです。

    2019年積読本消化22冊目。

  • 『キッチン』読了。
    すごく優しくて、すごく温かいお話でした。登場してくる人たちは大切な人を亡くしてひとりになってしまった孤独や死について向き合うことになるんだけど。
    そこでどう生きるか、どう乗り越えるか、その過程が美しく温かい気持ちになった。
    カツ丼デリバリーがよかった。あの瞬間、みかげは落ちかけていた雄一を助けたんだと思う。
    大切な人がいた生活に食事があった。失ってからも食事をする。その象徴が台所だったんだろうな。
    思い出は消えない。人は生きていくために食べていく。食べることで元気をもらって立ち上がるのかもしれない。
    そしてなによりも、最後の最後に大切な人にありがとうを言えたらなんて幸せなんだろう。本望に近いと思う。
    まだ言ったことがない。けど、何度か無意識に言っていたかもしれない。よく分からない。もし、そんな時が私にも来たら、心ん中で静かにそう言ってお別れできるといいなと思う。

    2021.1.6(1回目)

  • この本には、「キッチン」、「満月-キッチン2」、「ムーンライト・シャドウ」が収録されている。
    私は、この中の「キッチン」だけを読んだ。
    映画化されている作品だけに、あらすじは検索すればすぐにわかるので割愛。

    著者は1964年生まれで、「キッチン」は1987年発表なので、23歳位の時に書かれた作品になる。

    「キッチン」は、第6回の海燕新人文学賞を受賞している。
    この海燕新人文学賞だが、これは、福武書店(現 ベネッセコーポレーション)が発刊していた文芸雑誌『海燕』の新人文学賞で、1982年から1996年まで続いたもの。
    したがって、既に『海燕』は廃刊になっており、海燕新人文学賞も自然消滅している。

    この時代を自分の年齢と重ねると、21~35歳になる。
    良い時代だったなと、今になって思い出される。

  • 人の温もりを求める女の子と男の子が、どちらもそれぞれ硝子のような脆い心を擦り合わせて、悲しみを乗り越えようとする。二人の心にあるのは、恋とは違うもの。でも、どんなかたちにせよ、二人は寄り添っていく予感がする。

    持て余した感受性と、若さゆえ感じる孤独に苛まれても
    「時」と「経験」と、つまり、「生きていくこと」で、「この世界、まんざらでもない」と知るようになる、
    世界は美しいとわかる。

    「みなは幸せなのに、私だけが不幸」、そのような可愛い勘違いをしている若者に寄り添う1冊だ。

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著者プロフィール

一九六四年東京都生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。八七年「キッチン」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。八九年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で山本周五郎賞、九五年『アムリタ』で紫式部文学賞、二〇〇〇年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞を受賞。著作は三十カ国以上で翻訳出版されており、海外での受賞も多数。noteにてメルマガ『どくだみちゃん と ふしばな』を配信中。

「2021年 『大きなさよなら どくだみちゃんとふしばな5』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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