アムリタ(下) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 216
  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101359151

作品紹介・あらすじ

サイパンの心地よい生活、そして霊的な体験。親しんだバイトとの別れ。新しいバイトの始まり。記憶は戻り、恋人は帰国し、弟は家を出る。そして新たな友人たちとの出会い-。生と死、出会いと別れ、幸福と孤独、その両極とその間で揺れ動く人々を、日々の瞬間瞬間にみつけるきらめきを、美しさを、力強く繊細に描き出した、懐かしく、いとおしい金色の物語。定本決定版。

感想・レビュー・書評

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  • 1995年紫式部文学賞受賞作品。

    「吉本」ばななさん時代の本。
    文庫化して初版平成9年のもの。
    久しぶりに押入れから出した。

    夏になるとよしもとばななさんの本が読みたくなる。しっとりした空気、キラキラ輝く太陽…夏特有のこの雰囲気を的確な言葉で表してくれるのは、ばななさんだけという気がして。

    『アムリタ』を初めて読んだのは大学生のころ。23年も前なんだ…

    この物語を読みながら友達との楽しい遊びや旅行、一日が終わる夕日の物悲しさと最大級の美しさ、二度と訪れない儚さや切ない感覚にキューンと胸が締め付けられたり。
    読みながら忘れていた感覚が蘇った。

    今は夕日が沈む頃バタバタと食事の用意している。日常生活を刻むことに必死でキューンとする時間はない。
    でもね、子供が独り立ちするまで期間限定。後で振り返ればこれも貴重な懐かしい甘い時だったとなるのだろう。

    主人公朔美は、今まで何気に過ごしてきたことも妹の死や強く頭を打った事故によってそれらを機に思考が変わり出す。
    当たり前のことなんてなくて、様々な出来事も人との出会いも縁や何か力が働いている。
    人生辛いこともある。でも時々人生の中で出会う幸福感を得られるもの=甘露、アムリタなのかな…と。
    ハッと気付かされたのは何気に飲んでいる水も命を繋げるものだということ。ほんとうに何気に自分自身を大切にしているんだ、私は私が愛おしいんだって気付いた。
    ばななさんの物語を読むと日常生活の一つ一つのことに意味があって美しさを感じられる。丁寧に生きたいと思う。

    『アムリタ』を初めて読んだときの日記はもう捨ててしまったけれど、どんなことを書いていたんだろう。当時の恋人とも別れ、親や妹とも離れ、全く違う生活を営んでいる。
    ただもう今は、摂食障害に悩んでいた自分自身が大嫌いな私ではない。

    次読み返すとき、私は何を思うだろう。

  •  「人間のしくみはたいていとても単純でよくできている。複雑にしてしまうのは心と体がバラバラに働き、心のほうが暴走してゆく時だけだと思う。そういう時に、人間は何かの隙間を見る。その隙間には世にも美しいものも、戻れないくらいに恐い闇もつまっている。それを見るという体験は、幸福でも不幸でもないが、その思い出は、幸福な感じがすることが多いのだと思う。」p298

    「そんなふうに、何が起ころうと私の生活は何も変わらないまま、とどまることなく流れてゆくばかりだ。」p304

  • 洪水のように大事な言葉が流れてきた。

    生きることについて、しんどさを感じさせず、清らかな言葉遣いで考えさせられた。

  • 吉本ばななさんをこれまでもいくつか読んできたが、長編(?)作品はこれが初めて。これまで吉本さんから感じ考へてきたことのすべてがこの中にちりばめられてゐる。
    もう魂はかうでしかないと知つてしまつた時、時間の水平線から垂直に立ち上がつてしまつた時、それでも、生ある限り、再び流れに身を任せるしかできない。忘れては思ひ出し、別れては出会ふ。しかし、ひとは後戻りできない。生まれたからには、死に向かふばかり。
    誰かと共に生きていく。そこに見えない何かがまるであるかのやうだ。記憶、時間、目に見えないものが確かに生まれ、積み重なつていく。
    だからこそ、水を飲み干すやうに生命を飲み干すのだ。アムリタは、一度飲んだら終りの不老不死の妙薬などではなく、この過ぎゆく時間の中で、いつも飲み干し続ける、生命そのものではないか。
    沈む夕陽も、揺れる木々も、大切なひとの声も、突き刺す風の冷たさも。妹真由はさうした淵にたつて、いつも震えてゐた。失くしてしまふのが怖かつたのではない、再び出会つてしまふのがたまらなく、苦しかつたのだ。
    朔美と彼女を取り巻くひとたちとの時間は、変化しない事実と、変化していく現象によつて紡がれていく。ただ生命が生命であるやうに紡がれる。あとがきで筆者本人は稚拙だと自嘲するが、それは、小説とは言へこれがあるがままの端的な事実だからに他ならない。

  • 再読、その二。
    朔美は、ふとしたきっかけで記憶をすべて取り戻す。
    弟は別の学校へ編入。純子さんの裏切り。竜一との流れていく関係。メスマときしめんとの一期一会。そして父親とのささやかな思い出の喫茶店。
    どんな状況の中でも、日々は進み、そのなかでの繰り返しのいとおしさ。その強さ。
    吉本さんの大事なものがしっかり詰まっている一冊。
    文庫のあとがきがすき。

  • 琴線に触れるフレーズがいろんなところにあった。以前はあまりどうとも思わなかった作家さんの作品を読み返して、今の自分の心にじんわりと染みこんできたことに気づき、驚きとうれしさを感じました。

  • 『 会いたい。
    会って、いろんなことを話したい。
    話したい、という気持ちを
    持ち続けたい。
    はぐれたくない。
    いつも伝え続けたい。
    だれにもわかってもらえなくていい、 この気持ちを。
    でも、伝えようとしたい。 』



    『ああ、なんて人間って
    ばかばかしいんだろう。
    生きていくということや、
    懐かしい人や場所が増えていく
    ということはなんてつらく、
    切なく身を切られることを
    繰り返していくんだろう、
    いったいなんなんだ。

    夢の勢いにかられるように
    ただただ、そう思った。 』

  • 自分の日記を読んでいるようだった。
    生きるって、当たりまえのことだし、毎日が楽しいわけじゃないし、地味なことだし、思い通りじゃないし、無性に涙がでるし、ただ生かされていると感じるときもあるけれど、
    それでも生きるって、あたたかい光に満ちているんだ。

    水みたいに、日の光みたいに。
    定期的に読み直して、人生の糧にしたい作品。

  • 当たり前のように生きていることが、実はすごく微妙なバランスの上になりたっていて、とても危うい世界の中を、奇跡のように歩いているんだ という気持ちになる小説。
    過去の 良いことも悪いことも すべて繋がって今の自分を作っている。目の前を流れていく膨大な出来事を ひとつひとつ 丁寧に手ですくって そして手放していく そんな連続が人生になっていくんだなあ と

  • 感想は上巻と同じ。
    まだ「アムリタ」と「キッチン」しか読んだことがないけど、彼女の作品は設定や話の流れはそれぞれ違えど、書かれてる内容はどれも同じなのかな。
    引用になってしまうけど、こんな悩みや不安や自分自身のテンションの上下に日々振り回されて、「もう生きていくのがめんどうくさくて死にたいような気もするし、面白いから続けたいような気もする」し、生きていくってその連続なんだな、って彼女の作品を読むと強く思う。
    今回はそのことを語るのに、あまり私が得意としない、霊感やスピリチュアルといったものが用いられている。でもそれを用いたところで現実味が薄れることなく、描かれているのはあくまでも日常やリアルな感情の描写。不思議なよしもとばななマジック。やっぱり好き。

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著者プロフィール

作家。1964年、東京都生まれ。A型。日本大学芸術学部文藝学科卒業。87年、小説「キッチン」(第6回海燕新人文学賞)でデビュー。おもな著作に『ムーンライト・シャドウ』(泉鏡花文学賞)『うたかた/サンクチュアリ』(第39回芸術選奨文部大臣新人賞)、『TUGUMI』(第2回山本周五郎賞)、『アムリタ』(第5回紫式部文学賞)、『不倫と南米』(第10回ドゥマゴ文学賞)『ハゴロモ』『どんぐり姉妹』『鳥たち』『サーカスナイト』『ふなふな船橋』『イヤシノウタ』『下北沢について』など。諸作品は海外30か国以上で翻訳され、イタリアのスカンノ賞やカプリ賞を受賞するなど、海外でも高い評価と多くの読者を獲得している。

「2022年 『人生の旅をゆく 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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