アムリタ(下) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101359151

作品紹介・あらすじ

サイパンの心地よい生活、そして霊的な体験。親しんだバイトとの別れ。新しいバイトの始まり。記憶は戻り、恋人は帰国し、弟は家を出る。そして新たな友人たちとの出会い-。生と死、出会いと別れ、幸福と孤独、その両極とその間で揺れ動く人々を、日々の瞬間瞬間にみつけるきらめきを、美しさを、力強く繊細に描き出した、懐かしく、いとおしい金色の物語。定本決定版。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルのアムリタ。
    本棚にもう一冊ありました。野崎まどさんのアムリタ。
    これも結構好きでした。
    アムリタの何たるや、ですが。読み進めて、昔利尻岳登山をした時を思い出しました。麓に日本最北の甘露水があります。

    あとがきまで読んで。
    ばななさんは当時いろいろとあったのでしょう。
    そこで生まれた本書なのだと思います。が、なかかなどうして。異次元感が味わえます。でも、それは本当に異次元なのでしょうか。異次元は存在するのでしょうか。
    最近2冊続けて読んだ、オムネクの世界を彷彿とさせます。
    ばななさんは何かを感じていたのだと思います。

    「哀しい予感」は、私にとってインパクトのあるお話でした。わかっていて、それでいてどうすることもできない展開が待っています。
    「アムリタ」でも不思議な世界が待っています。

    弟さんが成長とともに能力を失っていきます。
    私たちも、幼いころの記憶は、失ってしまうことが普通です。

  • 読み途中で本を閉じるとき、これまでにない幸せを感じた。不思議でキラキラした世界に包まれ、まだ少しその世界が残っているあいだの贅沢感がたまらない作品だった。

  •  「人間のしくみはたいていとても単純でよくできている。複雑にしてしまうのは心と体がバラバラに働き、心のほうが暴走してゆく時だけだと思う。そういう時に、人間は何かの隙間を見る。その隙間には世にも美しいものも、戻れないくらいに恐い闇もつまっている。それを見るという体験は、幸福でも不幸でもないが、その思い出は、幸福な感じがすることが多いのだと思う。」p298

    「そんなふうに、何が起ころうと私の生活は何も変わらないまま、とどまることなく流れてゆくばかりだ。」p304

  • とてつもない悲しみも逆に喜びも同じ熱量でいつまでも続くものではなくて、だからこそ毎日そこにある当たり前の暮らし、日常の力はとてつもなくて、どんなに深い傷を負っても人類がここまで生命を繋いでこれたのはそのおかげなのか、と思った。それさえあれば生きていけるというのは本当だと思った。
    このお話ではサイパンのように、日常とはかけ離れたところにある、時間の流れが日本の自分の日常とは全く違うゆっくりしたところで人生のいっときを過ごすというのも、自分の中に確固たる日常生活があるからこそ素晴らしい体験なのだと思った。後からその記憶を思い返すときに、その時に隣にいた人の記憶ごと懐かしめることは素敵なことだと思う。

  • 枯渇して潤す
    それを繰り返すその過程をつねに愛おしくおもう

  • ばななさんは表現の仕方が美しいですね。

    妹が自殺して、主人公は頭を打って記憶喪失になり、弟は不思議な能力に目覚め不登校になり、主人公は亡くなった妹の彼と関係を持ってしまう。
    登場人物の皆が、なかなかな背景があるのに重すぎない。

    主人公が前向きと言うか、日々の暮らしの中で幸せを見つけるのが上手い。
    主人公が記憶を失った時の過去と今の自分とのちぐはぐ感や、記憶と自分が繋がった時の喜び。
    私は記憶を失った経験はないがすごくリアルに感じました。

  • 1995年紫式部文学賞受賞作品。

    「吉本」ばななさん時代の本。
    文庫化して初版平成9年のもの。
    久しぶりに押入れから出した。

    夏になるとよしもとばななさんの本が読みたくなる。しっとりした空気、キラキラ輝く太陽…夏特有のこの雰囲気を的確な言葉で表してくれるのは、ばななさんだけという気がして。

    『アムリタ』を初めて読んだのは大学生のころ。23年も前なんだ…

    この物語を読みながら友達との楽しい遊びや旅行、一日が終わる夕日の物悲しさと最大級の美しさ、二度と訪れない儚さや切ない感覚にキューンと胸が締め付けられたり。
    読みながら忘れていた感覚が蘇った。

    今は夕日が沈む頃バタバタと食事の用意している。日常生活を刻むことに必死でキューンとする時間はない。
    でもね、子供が独り立ちするまで期間限定。後で振り返ればこれも貴重な懐かしい甘い時だったとなるのだろう。

    主人公朔美は、今まで何気に過ごしてきたことも妹の死や強く頭を打った事故によってそれらを機に思考が変わり出す。
    当たり前のことなんてなくて、様々な出来事も人との出会いも縁や何か力が働いている。
    人生辛いこともある。でも時々人生の中で出会う幸福感を得られるもの=甘露、アムリタなのかな…と。
    ハッと気付かされたのは何気に飲んでいる水も命を繋げるものだということ。ほんとうに何気に自分自身を大切にしているんだ、私は私が愛おしいんだって気付いた。
    ばななさんの物語を読むと日常生活の一つ一つのことに意味があって美しさを感じられる。丁寧に生きたいと思う。

    『アムリタ』を初めて読んだときの日記はもう捨ててしまったけれど、どんなことを書いていたんだろう。当時の恋人とも別れ、親や妹とも離れ、全く違う生活を営んでいる。
    ただもう今は、摂食障害に悩んでいた自分自身が大嫌いな私ではない。

    次読み返すとき、私は何を思うだろう。

  • 琴線に触れるフレーズがいろんなところにあった。以前はあまりどうとも思わなかった作家さんの作品を読み返して、今の自分の心にじんわりと染みこんできたことに気づき、驚きとうれしさを感じました。

  • 私も、長期間何処かでぼーっと過ごす時間を持ちたい。そこで何かを得る/得ないは気にせずに
    頭を空っぽにしてただ時間に身を任せたい。

    上巻読んだ時はこの人の作品あってないな、もう読まないなと思ってたのに 人生が楽しく豊かなものに思えた

  • 吉本ばななと河合隼雄の対談集『なるほどの対話』を読んで、読んでみたいと思った本、これで全部読めた!良かった。

    吉本ばななが、この小説をかなり辛い時期に書いていたということが、あとがきに書いてあるのを見て、すごく腑に落ちた。
    この小説を読んで、自殺を数時間でも思いとどまってくれる人がいれば…との筆者の願い通り、しんどい気持ちを抱えている人が読むと、幾分か救われる部分は確かにあると思う。それと同時に、吉本ばなな自身も、この小説を書くというか、産み出すというか、表現するという作業で、自分をなんとか保っていたのではないかなと想像してしまった。
    あらすじだけ書くと、朔ちゃんのメモみたいに
    ・妹の死
    ・頭を打って手術
    ・記憶が混乱
    ・弟がオカルト小僧になる

    と、ただただ悲惨な話に見えてしまうのだけど、なんでこう、救われる感じがあるのだろう。
    今回は図書館で借りてきたけど、買ってでもまた、ゆっくり読み返したい本。

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著者プロフィール

1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で第6回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で第16回泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞、95年『アムリタ』で第5回紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞(安野光雅・選)、2022年『ミトンとふびん』で第58回谷崎潤一郎賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、イタリアで93年スカンノ賞、96年フェンディッシメ文学賞<Under35>、99年マスケラダルジェント賞、2011年カプリ賞を受賞している。近著に『吹上奇譚 第四話 ミモザ』がある。noteにて配信中のメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた文庫本も発売中。

「2023年 『はーばーらいと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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