ハゴロモ (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (185ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101359274

感想・レビュー・書評

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  • 羽衣を奪われた天女は空へ帰れなくなり、男の妻となり人間界で暮らす。
    18歳で愛人関係という「ハゴロモ」を手にしたほたるは売れっ子カメラマンの彼に与えられた都内のマンション暮らし。8年間続いた関係は彼からの一方的な決断で終わり、「ハゴロモ」を失った彼女はふるさとに帰ることにした。

    大きな川の流れるその町で、これまでに失ったもの、忘れていた大切な何かを取り戻すまでの再生の物語。

    それぞれ大切な誰かを失った人たちが、寂しさや後悔を乗り越えて、べつの誰かに優しい気持ちを向ける。
    ばななさんらしい優しいおとぎ話。

  • 「もしも自分が本当に弱っていて、でもそれが病気や事故など命に関わることではなくって、そんなことでこんなに弱っている自分も情けない……という気持ちのときにこんな小説を誰かが書いてくれたらいいな、と再読して人ごとのように思った。そういう小説だと思う。弱っているときにしか価値がないともいえるが、弱っているときにじんわりとしみてくる気がする。」

    文庫版あとがきにある文章ですが、私がこの本について思ったことそのものでした。弱っているときにしか価値がないとは思いませんが、弱っているときには、救いになる一冊です。

    「ハゴロモ」というお話は、主人公が8年間の不倫の末に失恋をして故郷に戻るところから始まります。
    失恋というものは世の中にいくつも溢れていますが、当事者からしたら人生レベルで大きな出来事になりえるものです。他人からしたらくだらなく見えるような失恋であったとしても、本人にとってはこの世の終わりだと思うくらいのときも多分あります。その時の痛々しい感情がちょっと苦しくなるくらいリアルに描かれています。主人公はその苦しみから立ち直っていくのですが、無理をしていないところがとてもいいなと思います。無理をして立ち直ってしまうとだめみたいなので。

    弱ったときに読む本として本棚にこの本を置いておけることが、小さな安心をもたらしてくれるような気がします。

  • ばななは「マリカのソファー」のように太陽の光で殺菌してくれたり、「ツグミ」のように温かい風で吹き飛ばしてくれたり、そして「ハゴロモ」のように暗闇に光を灯してくれたり形は変われど一貫して人を癒し、再生を後押しする。ラーメンの暖かさに涙しそう。ラーメン食べたい

  • 「私の帰る場所はどこなのだろう。」主人公の女性は悩みます。この問いは、同時に私自身が抱えているものでもあります。
    恋人と一緒にいる時間は、自分の輪郭がはっきりとし存在の全てが彼のために使われます。そういう女性が恋人という立場を失った時、何も残っていない自分に気がつきます。
    東京の街中でそれなりに楽しく生活してきていた事実は、自分の見た世界を自分で構築したのではなく、ただしがみ付いていただけ…。
    そんな嘆きは、この先生きていれば何度か直面するかもしれません。その時誰が支えてくれるのでしょうか?それは、この物語です。
    別れの悲しみにもがいた時、時間のもたらす諦めが私を救ってくれます。そして新しい顔や環境が今までと異なる私を作り出すのです。少し流れに身をまかせるのも悪くは無いなと思うはずです。
    辛さ悲しみという感情を人間は感じてしまう生き物です。だからこそ、重い症状なら処方薬が必要なこともあります。もしあなたがそんな状況なら読んで見てはいかがでしょうか?

  • 失恋してふるさとに戻った主人公がすこしずつ回復していく話。まだ大丈夫じゃないときに、無理して大丈夫になろうとすることが一番よくない、無理して元気になろうとしなくていい、と言われて、ほっとした。

  • 単に生きていくことさえもぎこちなくなってしまうほどの悲嘆に暮れても、大丈夫なのだな、時間がかかっても良いのだな、と思える物語だった。
    作者も書いているように、これはおとぎ話だと思うけども、その中で主人公が少しずつ、自然に癒されていく、その描写がとても優しい。

    「人の、意図しない優しさは、さりげない言葉の数々は、羽衣なのだと私は思った。いつのまにかふわっと包まれ、今まで自分をしばっていた重く苦しい重力からふいに解き放たれ、魂が宙に気持ちよく浮いている。」
    特にこの一節は胸をついた。人との繋がりの捉え方が美しい。

  • がんばれない時に読みたい本。
    それでいいんだよ、って包み込んでくれるような、ゆっくり時間をかけて休んでいいんだよ、って頭を撫でてくれるような、優しいお話。

  • ばななさんがあとがきでも書いてたけど、弱ってる時にとても心地よい雰囲を持ったお話でした。
    ただ、今はちょっと落ち着いたけど、しんどさピークだったら同じ様に思えたのかなぁとも思ったり。

    こんなこと起こって良いよなぁとかひねくれて思ってしまいそうな自分がちょっと嫌やなぁと思ったり。

    けど、未来の自分に恥じない様に、日々真っ直ぐ生きたいものです。

  • 痛みと、そこから癒されていく様をゆっくり丁寧に、優しくあたたかく書かれている雰囲気で、こころ穏やかな気持ちになれました。

  • 久しぶりの読書だったので、リハビリ代わりのばなな。

    ばななの小説は読みすぎて、パターンがわかってきた感じがする。

    この小説も、水・不思議な透明感のある少女・自分のなかに空虚さを抱え、苦しみと戦う主人公・育ちのいい男の子、がでてくる。

    そしてやっぱり、みな優しくて暖かい。

    この感想は、決してばななの小説がどれも同じだとけなしているのではなくて、私にとってはふるさとのような、ここに帰ってくると必ず暖かさを感じられるという安心感があるという意味だ。

    読み終えたあとは、すっかり心があたたかく清々しくなって、また別の小説も読みたくなる。それがばななの小説だと思う。

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著者プロフィール

吉本ばなな(本名:吉本 真秀子 よしもと まほこ、旧筆名:よしもと ばなな)
1964年、東京都生まれの作家。日本大学芸術学部文芸学科卒業。卒業制作の「ムーンライト・シャドウ」が日大芸術学部長賞を受賞。また「キッチン」で第6回海燕新人文学賞を受賞、デビュー作となる。
1989年『TUGUMI』で山本周五郎賞を受賞。1996年イタリアのフェンディッシメ文学賞(35歳以下部門)、1999年イタリアのマスケラダルジェント賞文学部門を受賞。2000年『不倫と南米』でBunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。その他代表作に、映画化された『アルゼンチンババア』などがある。
海外での評価が高く、著作が多くの国で翻訳されてきた。

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