なんくるない (新潮文庫)

  • 新潮社
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本棚登録 : 2474
レビュー : 310
  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101359298

作品紹介・あらすじ

沖縄には、神様が静かに降りてくる場所がある-。心ここにあらずの母。不慮の事故で逝った忘れえぬ人。離婚の傷がいえない私。野生の少女に翻弄される僕。沖縄のきらめく光と波音が、心に刻まれたつらい思い出を、やさしく削りとっていく…。なんてことないよ。どうにかなるさ。人が、言葉が、光景が、声ならぬ声をかけてくる。なにかに感謝したくなる滋味深い四つの物語の贈り物。

感想・レビュー・書評

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  • どこまでも続く真っ青な空。

    強く照りつける日差し。

    キラキラと輝く
    エメラルドグリーンの海。

    日に焼けた肌の痛み。

    秋の匂いと
    そこはかとなく漂う淋しさ。


    まるで沖縄にトリップしたかのように
    ゆったりとした時間の流れさえも
    肌で感じられるこの心地よさ。


    崩壊した家族を離れ
    沖縄で暮らす少女の成長を描いた
    「ちんぬくじゅうしい」

    30代後半の恋人同士と
    那覇の浜辺に暮らす
    仲睦まじい夫婦の
    儚くも夢のようなひとときを描いた
    「足てびち」

    離婚の傷を引きずるイラストレーターは
    ふらりと入ったイタリア料理店で
    運命の男トラと出会う…
    「なんくるない」

    父と共に自転車で放浪する少女に
    翻弄される旅行者の男を描いた
    「リッスン」

    など沖縄を舞台にした4つの短編集。


    ばななさんの小説の魅力は
    想像力の余白を残した文体だと思う。

    どんな匂いなのか
    どんな風が吹いたのかを
    切なさを内包した独特な言い回しが
    読者の想像力を育んでくれる。

    そして
    悲しくて切なくて
    幸せだったひとときを描くのが
    本当に上手い。


    実話だという
    未来少年コナンの
    コナンとラナみたいな自然と対になってる夫婦の揺らぎない強さや、

    バカ正直で純粋な
    ダメ男のトラの優しさ、

    放浪する少女の
    片方の目がうんと細くなる笑い方にも
    否応なく惹きつけられてしまう。


    涙が出るくらい美味しい
    おばさんが作ってくれたオムレツ。

    ゴーヤーチャンプルーにソーキそば、豚足(足てびち)、魚のマース煮、泡盛、アメリカ風ピザなど、
    食べることが好きな
    ばななさんだけに
    この小説でも
    様々な料理が人を繋いでいく。



    トラ、俺も思うよ。

    悲しいことやツラいことや
    見えない悪意が人生にはふんだんにあって
    それと戦うために、

    人は好きなものや
    好きな人を沢山作って
    自分の「好き」を武器に
    運命と戦っていくもんなんやって。

    ちっぽけでくだらない自分の人生を
    誰にも渡さないために。


    沖縄の匂いを感じたい人や
    旅人の気分を味わいたい人、
    都会のサイクルに疲れてる人、
    オススメです。

    • まっきーさん
      こんばんは。

      いつも花丸ありがとうございます♪

      素敵な心温まるレビューですね(*・▽・*)
      実はこの本、私の本棚にもあります。
      買った...
      こんばんは。

      いつも花丸ありがとうございます♪

      素敵な心温まるレビューですね(*・▽・*)
      実はこの本、私の本棚にもあります。
      買ったはいいけど積んでいて、ずっと機会がなくて
      読まずに売ろうかな。。。と考えて迷っていました。

      でも円軌道の外さんのレビューが、本の神様からの「読みなさいよ^^」の
      メッセージなんだと思いました(o^∀^)

      本や好きな音楽を通して繋がっているって不思議ですが
      とても楽しいことですね(〃^∇^)
      ありがとうございました(´・ω・`)ゞ


      2013/05/09
    • 円軌道の外さん

      MOTOさん、
      コメントありがとうございます!

      魔法の言葉って分かるなぁ〜(^O^)

      自分も10年ほど前に沖縄に行った時...

      MOTOさん、
      コメントありがとうございます!

      魔法の言葉って分かるなぁ〜(^O^)

      自分も10年ほど前に沖縄に行った時に
      現地の人たちの優しさやあったかさに
      心から来て良かったと思ったし、
      考え方も変わりました。

      都会で暮らしてると
      時間に追われて
      仕事に疲れて
      何のために生きてるんやろって
      自分を見失ってしまいがちやけど、

      沖縄ののんびりとした雰囲気の中にいると
      肩の力が抜けて
      みるみる力が湧いてきたんですよね。


      ばななさんの小説は
      全編切なさの塊なんやけど、
      沖縄と同じく
      なぜか読んだ後は
      生きる気力が湧いてくる不思議な力を持ってるので
      是非是非トライしてみてくださいね(^_^)v

      てか、ウクレレを爪弾きながらの島唄
      聴いてみたいなぁ〜♪

      2013/05/12
    • 円軌道の外さん

      まっき〜♪さん、
      コメントありがとうございます!

      いや、実は自分も同じく
      半年くらい寝かしていた本なのです(笑)

      本や...

      まっき〜♪さん、
      コメントありがとうございます!

      いや、実は自分も同じく
      半年くらい寝かしていた本なのです(笑)

      本や音楽や映画って
      その時の環境や心の在り方や経験が
      感動を左右するので、
      賞味期限はないけど
      出会うべきタイミングってあると思います。

      自分に響いたから
      まっき〜♪さんにも響くとは限らないけど、
      ここでこの本にまた出会ったことは
      やはり何かの縁なのかもしれないですよね(^_^)

      特別なことが次々と起こるような
      ドラマチックな話ではないけど、
      読めばこれからの季節
      南の島に行きたいなぁ〜っと
      旅心がうずくのは確実です(笑)

      また感想楽しみにしてますね(笑)


      2013/05/12
  • 沖縄を舞台にした4つの物語。

    久しぶりのばななさん。
    ゆるやかに時間が流れる沖縄で、ばななさん特有の色彩豊かな物語でした。全ての物語の根底にある、ぽつん、とした空気感が沖縄の風土と意外な程合って新鮮でした。
    どれもすこしだけ、ぎゅっと胸が締め付けられます。

    自分の力ではどうにもならないことは、たくさんあるけど、そんな「なんくるないこと」に対して、なんくるない、と言ってくれる自然な優しさに癒されました。
    ばななさんの描写は、とにかくいつも優しくて、ばななフィルターを通して見た世界が大好きです。

    「目の前に広がる景色があまりにもきれいすぎて、その透明な水の中に住んでいる魚たちの色がまるで宝石みたいに海にちりばめられているさまも、空と海が混じることなく似た色でどこまでも続いていることも、悲しく思えた」
    なんて、きれいな言葉。胸がぎゅっとします。

    私は沖縄に行ったことがありませんが、沖縄に魅了された友人はみんなこぞって沖縄に通っています。1度行ったら満足、というのではなく、何度でも行きたい、むしろいっそ住み着いてしまいたい、という魅力に溢れている土地なのでしょうね。

    読んでいて心が浄化されるかのようでした。
    ひさびさのばななワールドを堪能できました。

  • 親友が沖縄に嫁いで以来、沖縄は、私にとって単なる旅行以外に行く目的のある場所となった。
    先日彼女の結婚式で沖縄へ行ったが、まだ4月だというのに物凄い湿気だった。湿度の高い沖縄では毛穴が開きやすく、そのせいで肌がベタベタし、荒れる人も多いらしい。親友は過乾燥気味の肌質なので、むしろその気候のおかげで肌が潤い調子が良いと言っていた。沖縄に歓迎されているのだろう。

  • 沖縄旅行のお供に購入。「ちんぬくじゅうしい」は好きだったが、他の作品はなんとなくむかむかした。よしもとばななの作品に出てくる浮世離れした自然体のひとたち、素敵だなあと思える時期もあったがいまはなんとなくいけ好かない。「沖縄のパワー」とかいうのもよくわからない。わたしはどんなに病んでいたとしても都会の中でくさくさしながらなんとか生きているひとたちが好きだ。

  • 大丈夫だ、と思った。


    この本を読んで、ああ大丈夫だと思えるような精神状態でいたいなと思う。

    あてられて参ってしまってはいけないし、何も感じなくなるのも嫌だ。



    「この世の中は、こういうふうなことでいっぱいなんだ。」

    「そういうのが混乱していたから、おかしくなったんだわ、と私は思った。」


    「ああ、ここがいっしょなら大丈夫だ、この世の荒波のなかで、ここの考えがいっしょなら、まだいっしょにいられるんだ、私はそう考えた。」

  • 何かを求め、何かに惹かれ、何かを棄てに、沖縄に旅する人の物語4篇です。

    ふらりと入ったイタリア料理店で知り合った頼りない年下の男との恋、
    両親の離婚を機に、沖縄のおばに預けられた女性の回想、
    海辺の家でシンプルに暮らす、この組み合わせしかない夫婦、
    父親に付き合って自転車で旅する少女との、浜辺での対話。

    旅先で何かを求めて訪れたところで、答えはありません。

    土地の光景に出逢い、その土地の人ならあたりまえに持つ視線とか、自分が知らずしらず抱えていたこだわりを気づかせてくれます。

    「かけがえのないことはどんどん変化していく」

    周りの人との何気ない日常のひとこまも、その人と離れてしまったり、その人の気持ちに重ねられる歳になったりすると、その情景の色合いは、セピアに褪せるどころか、豊かに彩りを増します。

    旅先でそんなことを想い起こす場面に出逢えたら、旅の Fine Play です。

  • 私はまだ沖縄に行ったことがありません。
    よって、この本を読むと、
    未知の沖縄への憧れが湧き起こります。

    好きなのは「足てびち」。
    切ないのですが、すてき。
    ああいう夫婦がいる土地だとしたら、
    本当に沖縄はすてきな土地だと思います。

  • なぜこの人は

    私が上手に表現できない心の声を

    こんなにもぴったり、あらわしてくれるのか。

    心と素敵な言葉が結びついただけでも

    とても満足いく一冊ですが、

    沖縄のやさしくて、力強くも美しい自然と

    独特のゆったりした人の良さを

    ふんだんにちりばめてあって、

    沖縄がただ単純に
    「狂ったように働く日本人にとってのオアシス」という印象でなくて

    「現代社会で生きていくために必要なものが見つかる場所」

    っていう人が浄化されてく感じを書いてるところがすき。

    個人の恋愛にとどまらず、

    家族や人間関係に関する問題を風刺してるとこも相変わらずで

    精神的に成長していく過程が

    これまで私が経験してきたことに

    かなり近いところまで

    ピタッと確かな言葉で代弁してくれてる。

    沖縄に行きたくなることはいうまでもないけど。

  • 沖縄を訪ねる人たちの、ささやかな物語が4篇つづられています。

    無意識のうちに蓄積した、ゴワゴワした心の強張りを手放して、緩んでいく姿が描かれています。


    あとがきにある、

    「私はあくまで観光客なので、それ以外の視点で書くことはやめた。これは、観光客が書いた本だ。」

    という、この姿勢が誠実で好きです。


    「沖縄を訪ねる」ということは、いつかは元の場所へ戻ると分かっている、ということ。


    ちなみに、「なんくるない」は沖縄の言葉で「何とかなるさ、大丈夫だよ」という意味として知られていますが、本来は「まくとぅそーけーなんくるないさ」という定型句なんだそうです。


    「まくとぅーそーけー」は「正しいこと、真(誠)のこと」という意味。


    まくとぅそーけーなんくるないさ。

    正しい道を歩いていけば、きっと大丈夫。

    (かんちゃんさん)

  • 俗に言う、「良い話」でした。

    例えようのない‘‘生きにくさ’’とどう闘っていくか、
    向き合っていくかを教えてくれた気がします。

    よしもとばななさんのデビュー作「キッチン」の織りなす言葉に驚かされ今回、「なんくるない」にも思わず手を出しました。

    朝の光についてこう表現しています。
    「できれば起きたくない体を床から引き剥がすだけのものだった」...
    小さな小さな、気づこうとも思わない、気づいて何か変わるのかも分からない、そんな当たり前を細かく素直に表現したこの言葉使いが好きです
    こんなにも素直な言葉で人の心を掴むよしもとばななさん凄い。

    そして自分の経験からも共感できた言葉は
    「行き場のない悲しみよりも
    行き場のない感謝のほうが好きだ」
    と言う言葉。
    部活をしていた時、コーチに支えられて寄り添ってもらって、行き場のない感謝をどう伝えれば良いか悩んだ時期がありました。
    言葉はいらない、表情に溢れるあの想いを思い出して
    心に水と栄養を補給した気分になりました。

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著者プロフィール

吉本ばなな(本名:吉本 真秀子 よしもと まほこ、旧筆名:よしもと ばなな)
1964年、東京都生まれの作家。日本大学芸術学部文芸学科卒業。卒業制作の「ムーンライト・シャドウ」が日大芸術学部長賞を受賞。また「キッチン」で第6回海燕新人文学賞を受賞、デビュー作となる。
1989年『TUGUMI』で山本周五郎賞を受賞。1996年イタリアのフェンディッシメ文学賞(35歳以下部門)、1999年イタリアのマスケラダルジェント賞文学部門を受賞。2000年『不倫と南米』でBunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。その他代表作に、映画化された『アルゼンチンババア』などがある。
海外での評価が高く、著作が多くの国で翻訳されてきた。

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