みずうみ (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101359328

感想・レビュー・書評

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  • 切なく、儚く、でも永遠に残るを感じる作品でした。
    全体的にとても好きです。

    飛行機の中で、光る雲の海を見ているような…
    きれいすぎて悲しい気持ちととてもよく似ている。
    自分がこの世界にいられるのが、大きな目で見たら実はそう長い時間ではないと気づいてしまうときの感じに、よく似ている。

    このくだりがいいです。

  • 過去に傷を負った2人がお互いを癒しながら静かに再生していく物語。ちひろも中島くんも、慎ましく誠実で嘘がない。不完全なところが人間らしい。
    『読み取れる感受性だけが宝なのだ。』物理的な距離感や言葉を伝え合うような目に見えることだけが真実ではない。お互いの感受性によって確かに感じられる繋がりや絆は尊い。
    私はいつも心が落ち着かない時、なかなか本が読めない。よしもとばななさんの本は心を静かに整えてくれるので、むしろそんなときにこそ読むべきなのだろうと思う。

  • 久々のばなな先生。
    「傷を負った人の再生」…みたいな、扱うテーマは毎回似ているのに、読後感はそれぞれ作品ごとに異なる。やっぱり近作は昔程のどんより感は減った気。

    「心配しあって、抱き合って、いっしょにいたがるだけではなくて、じっと抑えているからこそ伝わってくるもの。(中略)読み取れる感受性だけが、宝なのだ。」

    主人公ちひろが、恋人中島くんに対してこう思えたことにじんわりきた。
    お互いがお互いをきちんと必要としている。まさしく、みずうみのごとく、2人は寄り添ってたゆたうのだろう。

    心にしみ込んでくる一冊。

  • 休みの日に部屋でゆっくり紅茶でも飲みながら、しずかに読みたい本。

    内容は重めではあるのだけど、文体や浮かんでくる風景がとてもきれいで、私はとても好き。
    本の随所に、人生で大事なこととか人間の本質が詰まっている気がして。
    それを読み漏らさないように、じっくり噛みしめて読みたくなる。

    誰かと本気でつきあうこととか、人を愛すること…
    それは恋人でも、母と娘、父と娘、母と息子、見ず知らずの子どもに対するものでも、
    それぞれの愛の形や表現があって、
    どれも素晴らしいものだね。

    この本を読んだら、
    私は誰かを本気で愛せたことがあったのか?
    子供が生まれたとして、ここまで全力で愛せるのか?

    今まで私が愛していたと思ったことなんか、生ぬるくも感じるけど
    今は未熟だったとしても、いつかそんなふうに本気で人を愛せるようになりたいなと思う。

    その人にどんなに深く壮絶な過去があったとしても、その人が好きならば
    ちゃんと今を見て、向き合って、
    良いも悪いもなく、その人のすべてを受け止められる懐の深さを持ちたい。


    あと、本の中の大事な場面で
    登場人物が馬に出会って、馬にとても心動かされ救われ、感謝するというところがあるのだけど
    その部分がとても好き。
    馬は本当にそういう生き物だと思う。
    馬も愛だ。
    そんな馬を愛せた登場人物も好き。

  • いままで急激な展開とか、人間関係の複雑なものとかを読んでたから、落ち着いた。
    同調する、結婚する、sexする、なんかそうしないといけないみたいな、パートナーってのはそういうものと決めつけられてる気がしてすごい嫌だったけど、自分の求めるパートナーのあり方を肯定された気がしてすごい嬉しかった。
    焦らなきゃ行けないと思ってたけど、焦る必要は全くないなって思った。

  • 久しぶりに吉本ばななさんの小説を読みました。

    この小説に限ったことではないけれど、吉本ばななさんの本を読むと『そのままの自分でいいんだよ』って閑かに肯定してもらえたような気持ちになる。
    すごく感動して涙したり、幸福な気分に包まれるような読書体験とはまた全然違った独特の甘みみたいなものが残る。


    この小説の中では特に、主人公二人の出会いからお互いを気にかけるまでの描写がとても好きだった。昔、同じような経験をしたことがあったけど、その自分の経験までも、より一層美化されるような感じがした。

  • 人と人が見つめ合うとき、それは宇宙と宇宙が見つめあっている。暗い宇宙を見つめるとき寂しい感じがするように、深い寂しさを感じるのは普通のことだ。
    ばななさんの小説を読むと、自然に生かされているというか、決してひとりでこの世界にいるのではない、人も草も虫も過去も未来も繋がっているという気持ちになる。人が曖昧に納得したふりをしていることや、揺れているのに立ち位置を決めているふりをしていることを、暴きながら許している。

  • 表紙が美しい。持っているだけで良い気持ちになる。
    「いつでもおへそをあったかくして それは権利なんだよ。生きているうちに必ずできることなの。」ちひろの母は希望のある言葉を言っていたけれど、それは中島くんにも当てはまるのだろうか。この世に沢山いる、継ぎ接ぎ人間達にもその権利はあるのだろうか。

    最後に中島くんが語った過去が、印象に残った。「誘拐されるって、どういうことかわかる?誘拐した人たちを好きにならなくちゃいけないんだよ。それがどういうことかわかる?」責めるような言葉が胸に刺さった。自分がこの世にいちゃいけない、その感覚は簡単に抜けるものじゃないだろう。悲しい過去ばかりが目立つけれど、中島くんやミノくんやチイは彼らなりに生きている 生活し続けているのだ。貫くものがなければ、ただの世捨て人になってしまう。ちゃんと大学に入って、頑張ってるのねってチイに言われて、恋人とパリへ行くのだ。私達はもう決まっている運命にはめられていて、奴隷のようにグルグル回るだけ…それでも生きていくしかないのだ。チイが歩いて、喋れるようになる日 そんな希望を夢見て、生きていく。

    誰にでも悲しい過去がある。あっただけ。それだけ。
    これからも生きていく。おへそをあったかくして。
    それだけ。

    もう一度読み直したい あまりにも重い きちんと向き合いたい。

  • 久々に読んだばななワールド…うーん、やっぱり素晴らしい

    吉本さんの小説には少しだけ欠陥のある人々がよく出てきますが、今回の中島くんはなかなかの重さ。笑
    けれど主人公のちひろが本当にいい味出してる!
    中島くん、両親、周りを取り囲む人々をことごとく「許して」いく様が特に良い。
    それが決して諦観から来る感情でなく、彼女なりの哲学で理屈っぽく「許して」いくので、いちいち納得してしまう。
    おおー久々にどっぷり読みふけった!さすが吉本の血だー
    特に好きな149頁

    「ものごとはそれぞれの立場でごく普通に違うものだ。違いを正すために戦うことだけが大切なのではなく、違うということを知りぬき、違う人々の存在理由を知るのがいちばん大事なのだと思う。
    私は、私の立場を貫くのが仕事で、そのためにはもっと技を磨かなくてはいけない。知名度がいくらあがっても、永遠にその食い違いは続くので、根本のところでは私の絵が下手なのはあまり問題に関係ない。

    でも、違う。自分に自信があれば、違いをもっとすっと貫けるのだと思う。
    そこが大切なのだ。」

    確かに確かに確かに、そこが大切なのだ!

  • 夢の話のよう。
    人のみた夢の話を聞いた。そんな後味。

    不思議で、夢みたいなんだけど、そうゆう生活・人生を送ってる人(自分と同じ時代なのに違う世界)もいるんだろうなと思ってしまう。

    そうゆう人となかなかお話する機会がないから、「本」になるのかなって思ってしまいました。

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著者プロフィール

1964年07月24日東京都生まれ。A型。日本大学芸術学部文藝学科卒業。1987年11月小説「キッチン」で第6回海燕新人文学賞受賞。1988年01月『キッチン』で第16回泉鏡花文学賞受賞。1988年08月『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞受賞。1989年03月『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞受賞。1993年06月イタリアのスカンノ賞受賞。1995年11月『アムリタ』で第5回紫式部賞受賞。1996年03月イタリアのフェンディッシメ文学賞「Under 35」受賞。1999年11月イタリアのマスケラダルジェント賞文学部門受賞。2000年09月『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞受賞。『キッチン』をはじめ、諸作品は海外30数カ国で翻訳、出版されている。

「2013年 『女子の遺伝子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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