ワシントンハイツ :GHQが東京に刻んだ戦後 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (545ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101359861

作品紹介・あらすじ

終戦からほどなく、東京の真ん中に827戸を擁する米軍家族住宅エリアが出現した。その名も「ワシントンハイツ」。「日本の中のアメリカ」の華やかで近代的な生活は、焼け野原の日本人にアメリカ的豊かさへの憧れを強烈に植え付けた。現代日本の「原点」ともいうべき占領期を、日米双方の新資料と貴重な証言から洗いなおした傑作ノンフィクション。日本エッセイスト・クラブ賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 日本は戦後から半世紀にわたつて、アメリカ合衆国に憧れを抱いてゐたと申せませう。無論「俺は違ふぞ」といふ人もゐるでせうが、まあ多数の人はさうであつて、米国を見本にし、日本もあんな素晴らしい国にするのだ、と先達は頑張つたのであります。

    東京の人にとつて、この『ワシントンハイツ』も米国への憧れを増幅させるものでありました。これは米軍関係者の住宅エアリアなのですが、その生活ぶりは日本人に羨望を抱かせるのに十分なものでした。同時に、戦勝国と敗戦国の彼我の差を見せつけられて、近隣の日本人は複雑な感情を持つたと想像されます。「日本の中のアメリカ」として、日本人の立ち入りも禁止されました。

    本書冒頭にワシントンハイツの全容がわかる写真が載つてゐます。昭和30年の写真といふことですが、まだ焼け跡の雰囲気が残つてゐます。高層建築などは一切目に入りません。一層ワシントンハイツの威容が強調される形となつてゐるのでした。

    「あとがき」によると、GHQは日本側にハイツ内の什器類に関して、相当の要求をしてゐたのですね。電気冷蔵庫・アイロン・電気掃除機・扇風機・電気洗濯機・電子レンジなど、日本人が見た事もないものも含まれてゐました。
    当然相当の電力を使ふのですが、一方日本人庶民の生活は貧窮を極め、停電も頻繁に起きてゐたさうです。

    ワシントンハイツは昭和37年以降徐々に日本側に返還されてゆきます。昭和39年の東京オリムピックの際には、選手村などとして開放され、五輪後にはあつけなく解体されました。その後、当地にはNHKが新社屋を建てたといふことです。

    ワシントンハイツの歴史は東京の戦後史そのものといつても過言ではないでせう。秋尾沙戸子さんが渾身の力を込めて世に問ふた骨太の一冊と申せませう。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-781.html

  • なぜ日本がここまで親米国になったのかについて、終戦後の占領から読み解くもの。主に現在の六本木、青山、原宿、渋谷、代々木あたりに存在した占領軍(=米軍)の様々な施設とその関係者を丁寧に取材し、米国式の生活や文化がいかにその後の日本人に影響を与えたかがよくわかる。本のタイトルにもなっている「ワシントンハイツ」とは、米軍の将校らが住んだ団地(というより「町」)で、そこから発信される庭付き住宅、休日のレジャー、スポーツ、ジャズやダンス、生野菜を食べる習慣、大量生産大量消費を美徳とする考え方などが、自由な生活に飢えていた日本人にあっという間に広まった様子がよくわかる。実はかなり政治的・軍事的な意味合いも合ったようで、綺麗なことばかりではないことも。また、白洋舎やkinokuniya、ジャニーズなど、新しい商売が生まれたきっかけにもなっていて、興味深い。ただ、新しいもの、欧米のものを無条件に良いものと有り難がる傾向、古き良きもの、日本独自のものを軽んじる傾向は、ここから始まったのかと思うと、現代の私たちはそれほど賢くなっていないのかとも思う。

  • 六年に及ぶ取材で戦後の原風景を描いた文庫500ページ超の力作。
    タイトルは『ワシントンハイツ』となっているが、それに触れているのは一部に過ぎず、むしろサブタイトルの『GHQが東京に刻んだ戦後』の方が本書の内容をよく表している。「洗浄野菜販売店」第一号として紀ノ国屋に触れたのはまだ予想の範囲内だったが、白洋舎、ジャニーズが出てくるとは…。東京大空襲直後の表参道の様子、アイゼンハワー大統領来日中止の背後にいた諜報部員など、どれも豊富で丹念な取材に裏打ちされていて読む手を止められなかった。
    著者は米国による占領を是と考えたのか非と考えたのかという観点で考えると、その軸は少しぶれている印象がある。でも、そのぶれがこの本の価値を下げることには全くならない。

  • 杏のおすすめ本。

    彼女のオススメの背景には、多分に青山で育った環境に影響を受けているのでは?

    私にとっては、青山・表参道は特別な場所ではない事もあって、一戦争の記録としての読み方しか出来ないが、やはり色々あったんだな〜と思わされる。

    ジャニー喜多川さんの話は、へぇ〜って感じですね…それぞれ色々な生活経験の中で道を見つけていってるのですね。

  • 20歳をいくつか過ぎた頃に勤めていた事務所は青山にあった。通勤
    途中で前を通る店舗が気になっていた。ある日、勇気を出して店内
    に足を踏み入れてみた。

    カルチャーショックだった。スーパーマーケット「紀ノ国屋」は、それまで
    知っていた大手スーパーとは何もかもが異なっていた。なんだ?この
    品揃えは?こんな野菜、見たことないぞ。この果物はなんだ?

    面白くて、珍しくて、商品を次々とカートに放り込んで行ったら会計が
    1万円を超えていたのを覚えている。ただ、その金額を「もったいない」
    と思えないくらいに、店内は私にとってワンダーランドだった。

    このスーパー「紀ノ国屋」も太平洋戦争敗戦後に日本に進駐して来た
    アメリカ軍の要望を満たす為に生まれたのだと、後日知った。

    1945年8月15日正午の玉音放送、そして敗戦。進駐軍を受け入れること
    によって、日本にはアメリカ文化の波が押し寄せて来た。

    都心の主な建物を次々と接収した進駐軍は、軍人とその家族の為の
    住宅建設を要望する。目をつけられたのは代々木練兵場だった。

    明治神宮北参道の辺りから現在のNHKが建つ場所まで。涙型に広
    がる場所に「アメリカ」が出現した。その名も「ワシントンハイツ」。

    本書はその「ワシントンハイツ」を中心に据え、5月の「山の手空襲」
    を体験した日本人、「ワシントンハイツ」に暮らした元アメリカ兵、終戦
    後に進駐軍と日本政府との懸け橋になった日系二世、日本国憲法の
    作製に係わった人等の証言を集め、東京の戦後史を綴っている。

    占領期を知らぬ私が「紀ノ国屋」店内でカルチャーショックを受けたの
    だから、「贅沢は敵」だの「欲しがりません勝つまでは」なんてスローガン
    の下で暮らして来た戦中の人たちが、なにもかもが豊富にあるアメリカ
    の文化に触れたこは価値観が大きく変わったことだろうと思う。

    だって、真冬なのにワシントンハイツのなかではTシャツ1枚で暮らせる
    のだものな。どこにいようとも「本国にいるのと同じ生活を」が基本になっ
    ているアメリカらしいと言えばそうなんだろうけれどね。

    玩具店の「キディランド」、土産物屋の「オリエンタルバザー」なんかも
    「紀ノ国屋」同様、ワシントンハイツに住むアメリカ人の需要を満たした。
    だから、表参道や青山周辺には似たような店が今もあるのかもな。

    1964年の東京オリンピック開催を機にワシントンハイツは日本に返還
    され、選手村として利用された。その準備過程でクリエイターの多くが
    表参道周辺に事務所を構えるようになった。これは今も同じような感じ
    だね。デザイン事務所だとか、編集事務所が多いもの。

    戦後の東京と、アメリカに対する日本人の気持ちの変遷を知るには
    いいのだが、登場する人物の多さと多岐にわたるテーマでまとまりの
    なさを感じるのが残念。出来れば副題をタイトルにした方がよかった
    のではないかと思う。

    ワシントンハイツは既になくなったけれど、東京には今でも「アメリカ」
    が存在する。日本人お断りのニュー山王ホテルと、六本木ヘリポートを
    擁する赤坂プレスセンターだ。

    他の在日米軍基地ほど話題に上らないけれど、こういうのを考える
    と未だ日本は占領期って感じだわ。

  • 第2次大戦に日本が敗戦し連合国へ降伏したことにより、東京へ進駐してきたアメリカ軍家族のために造られた住宅地「ワシントンハイツ」について綴った本の筈ですが、タイトルと内容とのギャップが大きく、全体の2/3位が戦中の渋谷・代々木近辺の郷土史で、殆ど「ワシントンハイツ」に関する記述は見られず、アメリカ軍統制下の東京の諸相について書かれたものため、「ワシントンハイツ」について掘り下げたものを期待するとガッカリする内容です(2011/08/01発行、497E)。

    その上、著者の秋津沙戸子は、アメリカに色々含むところがあるようで、アメリカの建築家アントニン・レーモンドが大戦中、空爆の効果を調査するために日本家屋を建て実験に協力したことを功罪としていたり、「ワシントンハイツ」が建てられた代々木練兵場近辺について「乗っ取られた代々木原宿」と書くなど、少し悪意を感じる記述がところどころ見られるのには辟易させられました。
    本書は「ワシントンハイツ」に関するノンフィクションと云うより、代々木近辺のアメリカ軍統制下の東京についてゴチャゴチャ書かれているだけで、この本を読んでも「ワシントンハイツ」とは何であたのか結局よく判りません。

    いったい著者の秋津沙戸子は「ワシントンハイツ」の何を伝えたかったのか、又、どの内容を認められ本書は傑作ノンフィクションと謳っているのでしょう。 正直、どこが傑作ノンフィクションなのか全く分からない本でした。

  • いくつか興味深いエピソードもあったけど、東京の地理がわからない人間には、知っている人にはわかったであろうことが朧げにしか理解できず残念に感じます。

  • この著者と同じで、六本木ヒルズ展望台から見たアレが気になってました、、、
    80年代憧れてたTOKIOの風景やあんなことやこんなことがこういうふうに繋がるのか、と新たな発見。
    松任谷由実の「LAUNDRY-GATEの想い出」のランドリーゲートってそういうことか。と合点。

  • アメリカとの関係って切っても切れないんだけど、そのベースになるのは第二次大戦の戦勝国と敗戦国というものであること案外忘れているよね。サンフランシスコ講話条約を締結するまでは日本はアメリカの占領下であったわけだけど、そのアイコンたるワシントンハイツの成り立ちを詳しく述べた本。アメリカとの関係を考えるに当たってこういう俯瞰的な視点って必要だよね。目の前のことだけ見てるのではなく。

  • 今の職場にまつわる、今まで知らなかった歴史を知ることができた。日本再生の鍵が鎮守の森にあるという結論で良いのか?

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