自転しながら公転する (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (672ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101360638

感想・レビュー・書評

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  • なんともリアリティがあって好みの小説だった。
    主人公がいい人って訳でも応援したい訳でもない感じがまた笑。
    もっとハッキリしろよ!自分の人生なんだから!!と言いたくなりつつ、うーんでもわかるなぁなんて部分もあって。
    解説に、始めと終わりにあるエピソードが賛否両論という内容が書かれていた。だろうなぁと思う。ない方が良い気もする、でもこれがある事でより人間らしさがあるというか。
    この本の中のエピソードについてどう思うかで永遠と誰かとあーだこーだ話したい、そんな小説。

  • 「幸せにならなきゃって思い詰めると、ちょっとの不幸が許せなくなる」

    先の見えない不安の中で、幸せになりたい、幸せにならないと思う。
    その幸せは自分が思う幸せなのか、他人が思う幸せなのか。
    そもそも幸せって何なんだろう。

    「地球はな、ものすごい勢いで回転しながら太陽のまわりを回っているわけだけど、
    ただ円を描いて回ってるんじゃなくて、こうスパイラル状に宇宙を駆け抜けているんだ」

    ぐるぐると思い悩む都を自分に重ね、自分の弱さや今までの葛藤を思い出す。
    人から見れば全てが好転したとまではいかなくても、保守的で世間知らずだった私も、状況を変えようと行動して、だんだんと考え方が変わって、肩の力が抜けてきたなと思う。
    家族、恋人、友達、仕事、それぞれに悩みや葛藤があって、幸せがある。
    悩みや葛藤がある時は苦しくて、その時点の事しか見えないけれど、長い人生その悩みや葛藤が小さな幸せの種だったりするのかもしれない。

    「何かに拘れば拘るほど、人の心が狭くなっていく。
    幸せに拘れば拘るほど、人は寛容さを失くしていく。」

    理想的な幸せだけでなく、思い通りにならないこと、完璧ではないことを引き受けるということ。
    その中で、毎日の小さな幸せをちゃんと噛みしめて生きていけることが出来れば、それはそれで幸せ、
    自分がいてくれて良かったと思ってくれると人がいれば、それで幸せ、
    と思わせてくれたお話でした。

  • 600ページ以上あるなかなかの大作だったがスラスラ読めた。
    主に主人公の都(みやこ)目線で描かれているのだが、男性の自分でも共感出来るところがたくさんあった。
    話の内容としてはそこまで波瀾万丈過ぎず、絶妙なラインだったと思う。

  • 想像より何倍もおもしろく、長さを感じさせずページをめくる手が止まりませんでした。
    どこにでもいそうな女の子の、どこにでもありそうな日常生活の話なのに、なぜこんなに面白いのか、山本文緒さんすごすぎます。(登場人物の描写、物語の構成等きっと色々あるのでしょう)
    女性と男性の本質というか、考え方の違い等がよく捉えられてると思います。特に20代30代女性は共感し、心にささるのではないかと。

    エピローグの「別にそんなに幸せになろうとしなくていいのよ。幸せにならなきゃと思い詰めると、ちょっとの不幸が許せなくなる。思い通りにはならないものよ」
    の一文が物語の全てを表している気がしたし、優しいメッセージに最後まで読んでよかったと心から思いました。

  • 解説の内容、そして読書レビューを読む中で
    女性からの「共感する」が印象的だった。
    自分は男性なので都や他の登場する女性キャラ達に対し完全に共感することはできない。
    が、現実世界での自分と女性との関係性を振り返った時、恋人や女友達などの葛藤や苦悩をこの本から感じ取り、あのときあの人はこんなことを思っていたのかもしれないなと感じ取ることはできる(かもしれない)。そういう意味では男性でも共感できる部分はあるのかなと思う。

    プロローグを読み、本編を読み進めていく中で貫一が少し不憫にも思えた。
    「だってプロローグ読んだから!!!」
    どうせ貫一と別れ、ニャン君と結婚するんだという前提で読み進めるのがちょっと辛かった。「あーやっぱ最後はお金だよ学歴だよ家柄だよ、これが現実、知ってる知ってる」てな具合に。

    500ページ付近まできて最終盤だというのにずっと煮え切らない都に苛ついたりもした。早くニャン君との結婚までの流れ書かないとページ数足りないよ!?的な。
    だがエピローグでどんでん返しをくらう。
    女性読者はこの展開を予想できたのか気になるところ。
    女心がわからないのね!と言われればそれまでだが。

    都がボランティアに行き、その帰りに貫一の店に寄って会話で終わるところ。個人的にはすごく好きでした。プロローグエピローグがなかったとしても、その後を想像させてくれるような余韻の残る良い終わり方になったと思う。

  • ■印象的な科白

    ・父が都に対して
    「お前の人生に家族は必要ないっていうなら、この先死ぬまでひとりで生きていけ。もしこの家を出て、結婚して新しい家庭を作ったとしても、やっぱりお前は何かあったら逃げるんだろう」


    ■印象的な場面

    ・求職中の貫一から都に ティファニーのオープンハート
     上野駅浅草口 ホテル1F ビストロ風の店


    ・熱海の海
     都「茨城のの海とは違うね」
      「茨城の海はただうわーって広いだけだもんね」


    ・貫一お宮像
     学生服にマントを羽織った貫一が足を上げてお宮を蹴ろうとしている
     お宮は地面に片手をついてよろけている

     次々とカップルや家族連れが記念写真を撮っていく
     像の真似をする場合、必ず男性が蹴られてよろめいている


    ■感想
    ・都が 家事 家族の体調 仕事などでテンパっている(貫一的に言うと“自転公転している”)ところや
     貫一と紆余曲折するところ
     登場人物の さまざまな角度からの視点とか意見とか
     なかなか おもしろかったから
     身近にいる 結婚していない若い娘に この本を勧めたいと思ったよ

    ・いつか また 自分も再読しても いいと 思ったよ


    文章も 堅苦しくなくて読みやすいし
    山本文緒さん 初めてだったけど よき

  • 読み終えるのに思ったより時間かがかったけど、半分あたり読み終えたところで急速に面白くなって、時間を忘れてページをめくってた。

    結婚を考えないのであれば、貫一はいい恋人。

    20代後半から30代にかけて、こーいうことを考えることが増えるんだろなぁ、実際にいまも考えることあるなぁ、と思って、時々共感さにしんどくなった…。

    主人公の発言や行動にイラっとしたこともあったけど、でも同じ立場になれば私も同じことしてるかな〜とか、分かりたくないけど分かるな〜、自分がうまくいってないときに人の幸せをみるのしんどいよな〜とか色々考えさせられた。

    傲慢と善良みたいな小説で重たい気持ちになるけど続きが気になる小説。

    最後は結婚していてよかった。

    プロローグとエピローグは誰目線か最初分からなかったけど、なるほど、となった。

  • ドストライク物語!読む手が止まることはなかった!

    幸せって本当は人それぞれのはずなのに、誰かと分かち合う必要がどっかにあるって思っちゃってて、それが生きづらさに繋がるよなぁ
    自分の価値基準だけで決断できるほど人間は強くないし強くなれる社会にはなってないよなぁ

    プロローグの存在はでかいね
    あれがあるからこそ、のめり込める

    結婚して子育て!自立して自分の時間も大切に!
    両極端にある考え方を肯定も否定もしていなくて、思慮深さを感じるし、自分もそうありたいと思った

    何はともあれ、自分で決めるしかない
    嫉妬も不安も羨望もある、私たちは紛れもなく人間だーーーーー

    読んで良かった!

  • 30代の女性の本音が赤裸々に語られて、そうだよなーと共感する部分も多かったけど、それほどのめり込めはしなかったかな。
    価値観の違う男女が出会って、ぶつかり合いながらも、自分とは違う部分を分りたいと思い、歩み寄る過程で成長していく。
    人との出会いで成長はあるんだな。

  • よくいる普通の女性が主人公。
    共感する女性は多そう。
    ベトナムでの結婚式のシーンからいきなり牛久大仏のシーンに変わって、えっ?!となるけど、最後まで読んでなるほどーと。
    基本的には主人公目線で話が進みますが、途中母親目線になるので、それが面白いです。

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著者プロフィール

1987年に『プレミアム・プールの日々』で少女小説家としてデビュー。1992年「パイナップルの彼方」を皮切りに一般の小説へと方向性をシフト。1999年『恋愛中毒』で第20回吉川英治文学新人賞受賞。2001年『プラナリア』で第24回直木賞を受賞。

「2023年 『私たちの金曜日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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