- Amazon.co.jp ・本 (167ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101361277
感想・レビュー・書評
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主人公であり刑務所看守の私の逃れられない苦しみと、その原因をつくった受刑者である花井。
なんともカオス。
そして花井がサイコパス過ぎて怖い。
どうなるの?
この先はどうなるの?と夢中になって読んでしまった。
お互いに制裁を加えたい。
だけれどもお互いに罪悪感の中で生きていて、
それを償うように生きている。
「お前はお前らしさを見つけて、強くならなければ駄目だ」
だれしもそれがわからなくてもどかしく生きているのではないかと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
'97芥川賞受賞作
看守を務める函館の刑務所に、小学校の同級生が受刑者として入ってきた。
優踏生の仮面を被った卑劣な奴は、18年たった今も変わってはいなかった。
立場が逆転した主人公の心の内
しかし、強烈な過去の敵愾心が逆に執着となり感情が囚われる。
登場人物の感情を直接表現せず、ただ見せるという文章で、読者の想像力に訴えてくる。
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終わり方がなんだか不気味でも、そこに不思議な魅力とかっこよさを感じる。
文量的にも読みやすいです。 -
流石の芥川賞受賞作。
江國香織の後書にあるとおり、『極めて純度の高い文章で構成されて、あちこちに詩情を出現させてる。ここでは、何かがあって、それを表現するために言葉があるのではない。まず言葉があり、言葉が何かをつくりだすのだ。』
やっぱり、本を読むという事って良いな。
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色々な表情があるのが海。
暗く、重苦しい、冬の海もある。
函館の刑務所の看守官として働く主人公。子どものころに酷いいじめで苦しめたやつが受刑者となり、自分の前に現れる。自分を虐げたものへの憎しみ、過去の辛い記憶、看守とゆう立場になり、貶めたいと思う心に、苛まれる。
全編を通じて、『私』視点で描かれている。私の鬱々とした心の闇を、仄暗い海を背景にしてスケッチされている。
辻仁成はすかした感じで、好きではない。多分、読むことはないと思っていたけど、重厚な文体がなかなかよかった。 -
花井のことを、なんとなく理解できなくもない自分がちょっと悲しい。
闇の中に光を見出す…のは嫌だな。 -
辻仁成さんの本を読んでみたくて読みました。
全く勝手に持っていた印象と違う作家さんでした。
重い話ではありましたが、文章が美しかったです。 -
支配する側も支配される側も、置かれた環境はただの手段でしかない。精神的マウントは一生互いを縛り付ける。おかしなもので、そういった世界から逃げようとすればするほど、なぜか惹きつけられてしまう。人間関係の最も不気味で恐ろしい側面を感じる。
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スラスラと読み進んで、終わり方も良かったです。
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読書開始日:2022年1月22日
読書終了日:2022年1月24日
所感
面白かった。
あっという間に読めたし、読みやすかった。
花井修は誰にも邪魔をされず悟りたかった。
どこへ行ってもエリートで手のひらでなにもかもを踊らすことができることに、逆に嫌気が刺したのか。
房の中で、大仏となった。
これは、斉藤の視点に立ってみたとき。
ここからは、自分の視点。
花井修は恐らく小学校の時点で成長が止まった。函館をでた時点で成長が止まった。
自らが手のひらで踊らせられるステージに戻った。
羊蹄丸の廃航の様に、花井修も娑婆を諦めた。
だからこそ房にこだわった。
最終的に斉藤を昔みたいに利用して仮釈放の権利をお釈迦にした。
花井は隠居したかった。
トラウマを植え付けられた斎藤からしたら、いけるところまで花井に飛躍して欲しい深層心理があるが、それすら蔑む花井。
それでも最後は斉藤が、ある種憧れてた花井に、ただのジジイとレッテルを貼れた。
舌鋒
ガラスを握りしめる手元が言葉よりもはっきりと私を責め立てる
肌色の旗が翻るような舞
風光絶佳
海中に差し込んでくる光の鋭角な瞬き
大動脈、細い血管
話題がなくなった退屈な時間
カタルシス=清浄なものにすること、浄化、正当化
巧言
挙措
焦慮
心の整理が十分癒されきったかさぶたの色には見えなかった
すごく泣きたいのにさ、溢れてくるものがなくて、それで手首を切っちゃった
無性に誰かを信じてみたかった
静は小さく震えた声で私の真意を覗き込もうとした
森厳な美しさ
何かを語れば、それが彼女の未来を決定してしまう気がして怖かった。希望も絶望も全て海峡の光の中にあると思った
ロシアから吹き付ける凍てついた風
雪と血
間雲孤鶴