海峡の光 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.26
  • (68)
  • (134)
  • (407)
  • (53)
  • (20)
本棚登録 : 1680
感想 : 165
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (167ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101361277

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 主人公であり刑務所看守の私の逃れられない苦しみと、その原因をつくった受刑者である花井。

    なんともカオス。

    そして花井がサイコパス過ぎて怖い。

    どうなるの?
    この先はどうなるの?と夢中になって読んでしまった。

    お互いに制裁を加えたい。
    だけれどもお互いに罪悪感の中で生きていて、
    それを償うように生きている。

    「お前はお前らしさを見つけて、強くならなければ駄目だ」

    だれしもそれがわからなくてもどかしく生きているのではないかと思った。

  • '97芥川賞受賞作
    看守を務める函館の刑務所に、小学校の同級生が受刑者として入ってきた。
    優踏生の仮面を被った卑劣な奴は、18年たった今も変わってはいなかった。
    立場が逆転した主人公の心の内
    しかし、強烈な過去の敵愾心が逆に執着となり感情が囚われる。

    登場人物の感情を直接表現せず、ただ見せるという文章で、読者の想像力に訴えてくる。

  • 終わり方がなんだか不気味でも、そこに不思議な魅力とかっこよさを感じる。
    文量的にも読みやすいです。

  • 流石の芥川賞受賞作。
    江國香織の後書にあるとおり、『極めて純度の高い文章で構成されて、あちこちに詩情を出現させてる。ここでは、何かがあって、それを表現するために言葉があるのではない。まず言葉があり、言葉が何かをつくりだすのだ。』
    やっぱり、本を読むという事って良いな。

  • 色々な表情があるのが海。
    暗く、重苦しい、冬の海もある。

    函館の刑務所の看守官として働く主人公。子どものころに酷いいじめで苦しめたやつが受刑者となり、自分の前に現れる。自分を虐げたものへの憎しみ、過去の辛い記憶、看守とゆう立場になり、貶めたいと思う心に、苛まれる。

    全編を通じて、『私』視点で描かれている。私の鬱々とした心の闇を、仄暗い海を背景にしてスケッチされている。

    辻仁成はすかした感じで、好きではない。多分、読むことはないと思っていたけど、重厚な文体がなかなかよかった。

  • 花井のことを、なんとなく理解できなくもない自分がちょっと悲しい。

    闇の中に光を見出す…のは嫌だな。

  • 辻仁成さんの本を読んでみたくて読みました。
    全く勝手に持っていた印象と違う作家さんでした。
    重い話ではありましたが、文章が美しかったです。

  • 支配する側も支配される側も、置かれた環境はただの手段でしかない。精神的マウントは一生互いを縛り付ける。おかしなもので、そういった世界から逃げようとすればするほど、なぜか惹きつけられてしまう。人間関係の最も不気味で恐ろしい側面を感じる。

  • スラスラと読み進んで、終わり方も良かったです。

  • 読書開始日:2022年1月22日
    読書終了日:2022年1月24日
    所感
    面白かった。
    あっという間に読めたし、読みやすかった。
    花井修は誰にも邪魔をされず悟りたかった。
    どこへ行ってもエリートで手のひらでなにもかもを踊らすことができることに、逆に嫌気が刺したのか。
    房の中で、大仏となった。
    これは、斉藤の視点に立ってみたとき。
    ここからは、自分の視点。
    花井修は恐らく小学校の時点で成長が止まった。函館をでた時点で成長が止まった。
    自らが手のひらで踊らせられるステージに戻った。
    羊蹄丸の廃航の様に、花井修も娑婆を諦めた。
    だからこそ房にこだわった。
    最終的に斉藤を昔みたいに利用して仮釈放の権利をお釈迦にした。
    花井は隠居したかった。
    トラウマを植え付けられた斎藤からしたら、いけるところまで花井に飛躍して欲しい深層心理があるが、それすら蔑む花井。
    それでも最後は斉藤が、ある種憧れてた花井に、ただのジジイとレッテルを貼れた。

    舌鋒
    ガラスを握りしめる手元が言葉よりもはっきりと私を責め立てる
    肌色の旗が翻るような舞
    風光絶佳
    海中に差し込んでくる光の鋭角な瞬き
    大動脈、細い血管
    話題がなくなった退屈な時間
    カタルシス=清浄なものにすること、浄化、正当化
    巧言
    挙措
    焦慮
    心の整理が十分癒されきったかさぶたの色には見えなかった
    すごく泣きたいのにさ、溢れてくるものがなくて、それで手首を切っちゃった
    無性に誰かを信じてみたかった
    静は小さく震えた声で私の真意を覗き込もうとした
    森厳な美しさ
    何かを語れば、それが彼女の未来を決定してしまう気がして怖かった。希望も絶望も全て海峡の光の中にあると思った
    ロシアから吹き付ける凍てついた風
    雪と血
    間雲孤鶴

著者プロフィール

東京生まれ。1989年「ピアニシモ」で第13回すばる文学賞を受賞。以後、作家、ミュージシャン、映画監督など幅広いジャンルで活躍している。97年「海峡の光」で第116回芥川賞、99年『白仏』の仏語版「Le Bouddha blanc」でフランスの代表的な文学賞であるフェミナ賞の外国小説賞を日本人として初めて受賞。『十年後の恋』『真夜中の子供』『なぜ、生きているのかと考えてみるのが今かもしれない』『父 Mon Pere』他、著書多数。近刊に『父ちゃんの料理教室』『ちょっと方向を変えてみる 七転び八起きのぼくから154のエール』『パリの"食べる"スープ 一皿で幸せになれる!』がある。パリ在住。


「2022年 『パリの空の下で、息子とぼくの3000日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

辻仁成の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三島由紀夫
ヘルマン ヘッセ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×