日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 435
  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101363516

作品紹介・あらすじ

お茶を習い始めて二十五年。就職につまずき、いつも不安で自分の居場所を探し続けた日々。失恋、父の死という悲しみのなかで、気がつけば、そばに「お茶」があった。がんじがらめの決まりごとの向こうに、やがて見えてきた自由。「ここにいるだけでよい」という心の安息。雨が匂う、雨の一粒一粒が聴こえる…季節を五感で味わう歓びとともに、「いま、生きている!」その感動を鮮やかに綴る。

感想・レビュー・書評

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  • 森下典子『日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』新潮文庫。

    著者の25年間に亘る『お茶』のお稽古と様々な気付きによる精神的な成長に触れ、読み手の心や魂、精神までもが清められていくような作品だった。読んでいて、心地よく、ゆったりした気分になるのだ。四季や自然と共に育まれる『お茶』の世界……深い。

    森下典子と言えば、ドラマにもなった『典奴どすえ』を書いた方。あれから余り作品に触れる機会は無かったが、最近『いとしいたべもの』を読み、知らぬ間に素晴らしいエッセイストになられていたことに驚いた。やはり『お茶』だろうか。

  • いい本に出逢えたとしみじみ思います。

    まず”第一章「自分は何も知らない」ということを知る”
    この言葉に引き込まれました。
    茶道のお稽古を通して感じた、さまざまな気づき、続けることの意味や大切さが書かれています。

    また、出てくる四季折々のお茶菓子が、とても美しくておいしそう。
    (和菓子好きにはたまりません♪)

    そしてお茶会で出会った「水仙」の花を思わせる、楚々とした老婦人。
    グループで動く女性が多い中で、清々と一人で行動されていて
    「お勉強って、本当に楽しいわね」とチャーミングに微笑まれた。
    森下さんも(こんなふうになれたらいいなあ)と思われたようですが…同感です。

    立ち姿や、おじぎの綺麗な女性に、とても憧れます。
    自然と身に付いた所作というものは、
    その人の、人となりを表しているような気がして。

    『日日是好日』毎日がよい日…。
    今の自分に足りない何かを教えてもらった気がします。

    梅雨の季節に「雨の日は雨を聴くこと」を読めたことに”感謝”です。
    折にふれ、何度も読み返すと思います。

  • ブクログ仲間さんたちのレビューを拝見して、読んでみたくなりました。
    以前読んだ『デジデリオ·ラビリンス』(集英社)もとてもおもしろかったのですが、この本もとても大切な1冊になりました。

    著者が茶道を習い始めたのは20歳のころ。
    それから25年間、お茶を通じて著者が気付いたことを瑞々しい文章で伝えてくれます。

    まず感じたのは、とても良い先生に出会えたのだなぁということ。
    習い始めたばかりの著者に、先生は茶道のふるまいを教えますが「なぜそうするのか」ということは教えてくれません。
    それにやっと覚えてきたと思ったら、今度は手順の異なる「冬のお茶」。
    なかなか覚えられない自分にも、「なぜでもいいからこうするの」と教える先生にも、もやもやする著者の気持ちがとてもよくわかります。
    それでも、何度も注意されながら、何年も繰り返しお手前をする中で、著者は感じ始めるのです。
    雨の匂い、身の回りにあった小さな花々、季節の移ろい···。
    柄杓から茶碗に注ぐときに水とお湯では音がちがうと気付いたとき。
    「瀧」の字が書かれた掛軸から水しぶきを感じたとき。
    著者が一つ発見するたびに私も喜びを感じ、その発見をすることができた著者を羨ましくも思いました。

    作法の理由を説明せず、器や掛軸の感じ方も生徒の気付きに委ねる。
    生徒が気付いても気付かなくても、毎回季節を感じられる仕掛けを用意する。
    そんな先生の在り方がとてもすてきで、「教える」ということの真髄を見たように思います。
    「教えるってことは、いろいろなことを教えてもらえることよ」と言う先生の言葉が、またすてき。

  • 頭で考えず自分の手に従う。
    「今」を五感全てで感じ取り、分からない時はお茶に聞く。
    無の自分と正面から向き合う。
    お湯と水の音の違いや季節による雨音の違い、風や水や雨の匂い等、自分の周りにある自然と向き合い感じる力。
    普段見過ごしていた、当たり前にあるものに対峙する心の余裕をしみじみ思う。

    森下さんが週に一度のお茶の稽古を何十年も続けることにより気づいたことは「長い目で今を生きる」こと。
    森下さんに対する武田先生の無言の教えが私の心にもじっくりと染み渡る。
    この本はこれからも手元に置いて何度でも読み返していきたい。

    何も思わない、何も考えない。頭の中に、眠りよりも深い安息の数秒が訪れた。
    「雨の日は、雨を聴きなさい。心も体も、ここにいなさい。あなたの五感を使って、今を一心に味わいなさい。そうすればわかるはずだ。自由になる道は、いつでも今ここにある」

  • 『花が咲いたら、祝おう。恋をしたら、溺れよう。嬉しかったら、分かち合おう。』

    『してはいけないことなど、何もない。
    しなければいけないことも、何もない。
    足りないものなど何も
    ない。』

    「日日是好日」
    人間はどんな日だって楽しむことができる。
    そして、人間はそのことに気づく絶好のチャンスの連続の中で生きている。

    素敵な言葉が散りばめられた、宝箱のような本。
    お茶の世界を通して、色々な事に気づいた森下さん。
    それを無言で語って、自分で発見するのを、待っていてくれた武田先生。

    私も広い世界と心を持って生きていきたい。

  • 映画化された作品主演の黒木華さん、とても素敵な方と思う。読み進めていって、ぼくは残酷な男だと思う。いちいち『なぜ?』って聞きすぎた。実際には、聴きたくなるくらい、好きだったのか、それとも不安にさせるくらい、じゃじゃ馬だったのか。長い間、一緒にいられたら、理解出来たのかな。お茶の作法に涵養という言葉を思い出した。

    「成長を待つこと」

    個性を重んじる学校教育の中に、人を競争に追い立てる制約と不自由があり、厳格な約束事に縛られた窮屈な茶道の中に、個人のあるがままを受け入れる大きな自由がある。

    学校は、いつも他人とくらべ、お茶は昨日までの自分とくらべる。どちらも目指しているのは、人の成長なのに。

    いまなら、この本の魅力がよくわかる。ボロボロ泣いた。まずしっかりと一人ひとりのこどもの顔を毎朝見たいと思った。改めて、私が大好きだった人の書評を読み返すと、周りの環境も、住んでいる世界も、ぼくとはあまりにもかけ離れていることに気づく。周囲の環境に価値を求める君と、自分の中にあるものに、君の中にある価値を見いだそうとするぼく。人生の本質とは、なんだろうか?ぼくは、だいじな人と、共に食べ、共に生き、だんらんをかみしめたい。いったい君はなにと競っているんだろう。

    だれでもない。だいじな人に、あなたに認めてもらえたら、ぼくは、がんばったと思える。ただの人に、尊敬と信頼を感じたとき、スピリットが尊重されてくる。そこには、人柄がにじみでる。だいじな人とは、涵養に振動し、キラキラと輝き温かくなる。それは、ギフトだと思う。そういうものがなかったのだから、愛でも、恋でも、友達ですらなかったのだと思う。

    はやくあなたから旅立ちたい。

    読み終えると、ここからはじまるんだと背中を押される一冊。読後感が、すばらしい。ぜひともおすすめしたい。

  • 雨を聴く。
    季節を感じることっていいなぁと思える本でした。
    私は茶道を習い始めて7年。
    まだまだだけど、
    あー確かに茶道以外に他のことで
    時間つかえるだろうなぁとか思っちゃうけど
    なんとなく教室に来てしまうし、
    来て良かったなぁと思う時ばっかり。

    軸の言葉、文字の形、
    お釜の沸く音、水の音
    どれも繊細に書かれてて
    読んでる間お茶が飲みたくなって
    しょうがなかった。

    感想簡単に書ききれない、、笑
    ノートに書くことにしよう。

  • 共感と納得の爽やかな読後感。

    著者がお茶の稽古に通う25年間で、心もちの変化や気づきを得ていく様子を15の章で綴っています。
    お茶の所作・ルールをひたすら反復して習うことを通じ、「今」を大切に生きることや、五感を研ぎ澄まして季節の移ろいを感じ、さらにはその中に身を置く自分自身を見つめることができるようになった、と著者は語ります。しかも、それは、先生から口伝で教わるものではなく、少しずつ少しずつ自分で気づき、実感するとのこと。だからこそ自分のものになると。

    私自身、お茶の心得がなく、お薄茶を見よう見まねでいただいたことがあるだけなのですが、著者の言葉の一つ一つは、私が下手の横好きで続けている生け花のお稽古で感じてきたことに、見事にぴったり当てはまるものでした。花材の変化で感じる季節の訪れ、お花に触れて感じる冷んやりした瑞々しさや、枝ものを矯める手に伝わる木の軋み、これから芽を出そうと控えている未生の葉など、心をシンと静めないと聴こえないことがあるし、繰り返しても必ず新鮮な気づきがある。お稽古でご一緒する人たちとの、絶妙な距離感と思いやりとに満ちたあったかい時間も。なぜ、下手なのに細々と続けているんだろう?と自問自答してしまう答えを、言葉にして見せてもらえているような、そんな気分になる本でした。

    そして、本編ではないのだけれど・・・柳家小三治さんの解説が、最高!

    • bobironmanさん
      「自分で気づくことで自分のものになる」に大いに共感
      「自分で気づくことで自分のものになる」に大いに共感
      2018/10/01
  • これは、ものすごくよかったです。
    20歳から25年お茶を続けた著者が綴った、お茶の世界。小難しい話は一切なくて、始めたばかりの頃の「なぜ?」という疑問や驚き、少しずつ広がりを見せていくお茶の世界、研ぎ澄まされていく五感…縁のなかったお茶の世界を知れて、その深さにとても感動しました。
    読み返そうとして、鳥肌が立ってしまうくらい。

    追体験したお茶の世界は、とっても不思議。
    「頭で考えない」「覚えない」と、お茶の先生が言うことは、学校の先生が言うこととはまったく違う。
    後にそれは、10年20年の流れで物事を見ているからだと気づかされます。詰め込みで知識や解法を頭に入れるのではなく、自分で気付く学びの喜びを知る。
    生き急いでいては思いもつかないくらい長く、優しい目で人の成長を見守る視点に、なんだか尊いものを感じました。

    それから季節のこと。
    「春夏秋冬」の四季は、古の暦では24に分けられていたんですよね。
    肌で季節を感じられるようになると、実際に季節は4つではなく、日々移り変わっているのを感じられるようです。道に咲く花や空気の湿り具合、空の高さなど、季節を感じるものはこんなにも溢れていたのに…意識を向けるだけで肌に感じるものが全然違うんですね。

    季節が巡るように、暑い日や寒い日も人生にはあって、同じ日は1日もない。
    どんな日も、その日を存分に味わう。
    日日是好日…毎日が、いい日。
    最後にその言葉が染み込んで、心が震えた。

    読めて本当に幸せでした。

  • 本も映画もよかった、と友人にお勧めされたので読んでみました。

    主人公が、お茶とともに歩んだ25年の日々を綴ったエッセイ的作品です。

    私自身は今までの人生で茶道との接点はなく、無理やりこじつけてみても千利休の本を何冊か読んだことがあるくらい。。
    それくらいお茶は遠い存在でしたが、五感を使って今を一心に味わい、日本の四季に癒されながら心を解き放ち自由になる哲学的な文化なんだと、この本を読んで初めて知りました。

    今流行りのマインドフルネスの一種とも言えるのではないでしょうか。
    戦国時代にも現代にも必要な文化だと感じました。

    哲学的なお茶の世界をなにげに受けとめやすく表現してくれるので、心にスッと沁みました。なので読みながらフセン貼りまくり(笑)
    忘れたくないのでちょっと書いておきます。。
    ・人間はどんな日だって楽しむことが出来る。そして人間は、そのことに気づく絶好のチャンスの連続の中で生きている。
    ・私たちはいつでも、過去を悔んだり、まだ来てもいない未来を思い悩んでいる。過去や未来を思う限り、安心して生きることはできない。今を味わうしかない。ただこの一瞬に没頭できた時、人間は自分がさえぎるもののない自由の中で生きていることに気づくのだ。
    ・学びとは、教えられた答えを出すことでも、優劣を競争することでもなく、自分でひとつひとつ気づきながら答えをつかみ取ること。自分の方法で、あるがままの自分の成長の道を作ること。気づくこと。一生涯自分の成長に気づき続けること。学びとはそうやって自分を育てること。

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著者プロフィール

森下典子(もりした のりこ)
1956年生まれのエッセイスト。『週刊朝日』のコラム執筆を経て、1987年その体験を記した『典奴(のりやっこ)どすえ』を出版。代表作『日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』は、大森立嗣監督・脚本、黒木華主演により2018年10月13日映画化され、樹木希林の遺作ともなり、大きな話題となった。他に、『いとしいたべもの (文春文庫)』『猫といっしょにいるだけで』などの作品がある。

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