日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101363516

感想・レビュー・書評

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  • 本も映画もよかった、と友人にお勧めされたので読んでみました。

    主人公が、お茶とともに歩んだ25年の日々を綴ったエッセイ的作品です。

    私自身は今までの人生で茶道との接点はなく、無理やりこじつけてみても千利休の本を何冊か読んだことがあるくらい。。
    それくらいお茶は遠い存在でしたが、五感を使って今を一心に味わい、日本の四季に癒されながら心を解き放ち自由になる哲学的な文化なんだと、この本を読んで初めて知りました。

    今流行りのマインドフルネスの一種とも言えるのではないでしょうか。
    戦国時代にも現代にも必要な文化だと感じました。

    哲学的なお茶の世界をなにげに受けとめやすく表現してくれるので、心にスッと沁みました。なので読みながらフセン貼りまくり(笑)
    忘れたくないのでちょっと書いておきます。。
    ・人間はどんな日だって楽しむことが出来る。そして人間は、そのことに気づく絶好のチャンスの連続の中で生きている。
    ・私たちはいつでも、過去を悔んだり、まだ来てもいない未来を思い悩んでいる。過去や未来を思う限り、安心して生きることはできない。今を味わうしかない。ただこの一瞬に没頭できた時、人間は自分がさえぎるもののない自由の中で生きていることに気づくのだ。
    ・学びとは、教えられた答えを出すことでも、優劣を競争することでもなく、自分でひとつひとつ気づきながら答えをつかみ取ること。自分の方法で、あるがままの自分の成長の道を作ること。気づくこと。一生涯自分の成長に気づき続けること。学びとはそうやって自分を育てること。

  • 何年もかけないと体験できない「お茶」の世界を疑似体験できる、お得な一冊。
    大学時代、授業でやっていたお茶を思い出した。
    当時はたった半年のみの授業で、単位と、タダで和菓子を食べられるお得さ、そして「我が校ならでは」感に惹かれてやっていたため、なにも感じていなかったことに口惜しく思う。
    もっと真面目に考えていればよかったし、疑問に思いながらも25年以上、お茶に通っていた筆者はそれだけで才能があると思った。

    <感銘を受けたこと>
    ・細かく決まった動作を"考えずに"行う。
    スポーツをやっていない私が、何も考えずに動くことなんて、やれたのは何年前だろうか…。
    何をやるにも論理的に考え、理論で覚える私にはほとんど経験がないことかもしれない。
    また、その動作、お点前に「心を入れる」
    心を入れた行動など、最近した記憶がない。その境地を経験してみたいと思った。

    ・二十四節気、四季の巡り、五感を使う
    都会に住み、東京のOLとして勤める私には最近四季は遠いものになっている。また、五感を感じることも、めっきり少なくなった。
    季節の匂いなんて、もう分からない。
    それがたまらなく、もったいない事のように感じた。
    掛け軸、茶花、お菓子…全てで季節を祝うお茶は四季の国日本に生まれたなら、是非とも理解したい伝統だと感じた。
    ふと、大学時代のお茶の先生も、掛け軸や茶花のお話をしていたのを思い出した。

    ・「雨の日は雨を聴こう。雪の日は雪を見よう。夏には暑さを、冬には身の切れるような寒さを味わおう。」
    「日日是好日」、全てが良い日。
    人生に無駄なんてない、とはよく聞く、綺麗事だと思っていた。でも、こんなに実体験に満ちた説得力のあるものがあったろうか。
    恐らく、筆者が長い年月をかけて、自ら「気づいた」ものだからこそ、ここまで感動してしまうんだろう。

    お茶の中には日々の暮らしを豊かにする知恵が詰まっている。
    文字にしてしまうと、非常に陳腐に感じてしまうが、長年お茶を経験することが、その気づきを与えてくれるのだと思う。
    この本はそれを疑似体験させてくれる、非常に素敵な一冊だと思った。

  • 久しぶりに自分にとっていいと思う本を見つけました。この本を読んでいると、茶道を習いたくなるのはもちろん、何事に対しても継続することの意味、またそこにある本当の自由について考えさせられます。終わりのない世界で成長し続ける、私も約15年、書道を続けてきたので著者の考えや思いに共感させられる場面が多々ありました。他人と比べずに、以前の自分と比較する。何年経っても上手にならず、まともに勉強もせずにだらだらと続けていた書道にも私は一旦区切りをつけました。書道から離れた今だこそわかります。機会があればもう一度始めたいと思います。茶道にもとても興味があります。たった1つの空間で、四季を感じ、五感で感じ、なんて不思議なんでしょう。茶道も是非、味わってみたい世界の一つです。

  • すばらしい。
    お茶を通して生き方を学んだ気がする。
    いつまで経っても完璧にできない中で
    気付く自分に気付く...そのためのお茶。。。
    とても奥が深くて興味が湧いた。
    機会があれば習ってみたい。
    もっと余裕のある心で四季を感じたい。
    そして自分を見つめ直したい。

    ◎人生は、長い目で、今この時を生きることだよ。
    ◎悪い天気なんて存在しない『日日是好日』

    にちにちこれこうじつ これを
    中国語でririshihaoriと読める自分を
    まず誇りに思おうっと♬

  • 【教えられた答えを出すことでも、優劣を競走することでもなく、自分で一つ一つ気づきながら、答えをつかみとることだ。
    自分の方法で、あるがままの自分の成長の道を作ることだ。
    気づくこと。
    一生涯、自分の成長に気づき続けること。
    「学び」とは、そうやって、自分を育てることなのだ。】

    言葉では言い表せない「感覚」を、ほんの少しでも共有出来るとしたら、なんて素敵なんだろう。
    過去を悔やみ、未来を心配して、心ここに在らずの日々。
    ただ「在る」という事、そして「生きる」という事を、色んなもので装飾して固めて過ごしているなぁと思った。
    もっとシンプルに。
    「今」を意識して一日を大切に重ねていきたい。

  • 日日是好日。「天気の日も雨の日も、すべていい日」。素敵な言葉を知ることができた。豊かであるということはこういうことなんだなと思った。
    ・「今」に気持ちを集中すること
    ・季節を味わうこと
    ・五感で自然とつながること
    ・自然に身をまかせ、時を過ごすこと
    ・雨の日は、雨を聴くこと
    ができる心の豊かさを持っていたい。
    特にコロナ禍のこのご時世おいては、いつも感じていたような季節の匂いや音から遠ざかり、とにかく時が過ぎて欲しいと願う間に、季節が一巡してしまった。改めてきちんと丁寧に、今の季節を味わって過ごすことの大切さを教えてくれた一冊だった。
    週末に季節のお花を部屋に飾って、季節の和菓子でも買ってこよう。

    "ある日突然、雨が生ぬるく匂い始めた。「あ、夕立が来る」と、思った。…前は、季節には、「暑い季節と「寒い季節」の2種類しかなかった。それがどんどん細かくなっていった。" 6

    "会いたいと思ったら、会わなければいけない。好きな人がいたら、好きだと言わなければいけない。花がさいたら、祝おう。恋をしたら、溺れよう。嬉しかったら、分かち合おう" 196

    "雨の日は、雨を聴きなさい。心も体も、ここにいなさい。あなたの五感を使って、今を一身に味わいなさい。そうすればわかるはずだ。自由になる道は、いつでも今ここにある…過去や未来を思う限り、安心して生きることができない。道は1つしかない。今を味わう事だ。過去も未来もなく、ただこの一瞬に没頭できた時、人間は自分がさえぎるもののない自由の中で生きていることに気づくのだ" 217

  • 【一つのことを続けていくと必ず自分のためになる】

    お茶を習うことを通して
    『自分はこれでいいんだ』『今ここを大切にすること』
    を学ぶという自伝的な小説

    はじめは『なんでこの作業をするのか』
    『覚えなくていいってどういうこと』と
    反発も感じていましたが

    次第にお茶のお稽古が心の拠り所になっていく様子が
    伝わってきました。

    一見意味がよくわからない所作の中にも
    実は意味があることが長く続けた結果わかってきます

    この本を通して私が一番感じたことは
    何か続けることは
    必ず自分に得るものがあるということ
    (言うのは簡単ですが)

    私は「茶道なんか絶対縁がない」って思っていましたが
    この本を通してお茶文化の魅力を少し理解できました。

    そして、お茶を長く習っている人でも
    はじめは渋々であるということが知れたのも
    親近感を感じました

    品のある家庭のみが嗜む敷居が高い習い事というイメージがあったからです。

    また、この本を読んで感じたように茶道は続けるのが
    とても難しいようです

    変わり続ける時代の中で茶道のように変わらない文化があるというのは意味があること

    しかし、やり方を引き継いでくれる人がいなければどんなに奥深い文化でも続きません

    茶道の裾野が広がる努力も必要なのではと感じました。

  • 歳を重ねて私もやっと、
    人生で一度はお茶のお稽古してみたいなぁと
    思うようになって手に取った本。
    気持ちだけだけど擬似体験できてよかった!
    母が、茶道が好きなのだけれど、
    その感覚が分かった気がした。

    私も、「お勉強って本当に楽しい」とさらっと言えるおばあちゃんになりたい!
    そのためには、細々とでも、やめないでいること。

    お茶の世界は、読む前は 静 とか、無 だったけれど、
    読後、流れる というイメージに変わった。
    そこで出会う人も、季節も、和菓子も、自分も、流れていく。その中で瞬間を味わうのだろう。
    季節は4つではなかった。
    濃茶も一度は頂いてみたいな

  • 茶道の話かと思って読んでいたら人生を考えさせるじーんと来る文がいつか出て来ます。特に良かった文を載せて感想としたいです。

    私たちはいつまでも、過去を悔やんだり、まだ来てもいない未来を思い悩んでいる。どんなに悩んだところで、所詮、過ぎ去ってしまった日々へ駆け戻ることも、未来に先回りして準備することも決して出来ないのに。
    過去や未来を思う限り、安心して生きることはできない。道は一つしかない。今を味わうことだ。過去にも未来もなく、ただこの一瞬に没頭できた時は、人間は自分が遮るもののない自由の中で生きていることに気づく。
    雨の日は雨を聞く、雪の日は雪を見る、夏には、暑さを、冬には、身の切れるような寒さを味う、どんな日も、その日を思う存分味わう。
    そうやって生きていれば、人間はたとえ、まわりが苦境と呼ぶような事態に遭遇してたとしても、その状況を楽しんで生きていけるかもしれない。
    いったい、本物の自由とはなんだろう?
    そもそも、私たちはなんと競っているのだろう?
    学校はいつも他人と比べ、お茶は昨日までの自分と比べること。この世には、習ったのとはまったく別の勉強がある。それは教えられた答えを出すことでも、優劣を競争することでもなく、自分で一つ一つ気づきながら、答えを掴み取ることだ。自分の方法で。あるがままの自分の成長の道を作ることだ。気づくこと。一生涯、自分の成長に気づき続けること。学びとは、そうやって、自分を育てること。

  • #読了 2023.7.21

    駆け足で読んじゃった感あるけどすごーく良かった。心豊かな一冊。習い事っていうと何かの技術を習得するかんじあるけど、お茶っていうのはお茶周りだけでなく、すべてを感じるお作法だなぁと思った。自然のことも自分自身のことも。

    著者の感受性豊かな感度もそれを表現する文章力も素晴らしかった。自然を表現する、自然を感じた心を表現するって本当に高度な文才が必要だなと思ったし、それが圧なくスッと伝わってくるのが心地よかった。

    柳家小三治さんの解説もとてもよかった。





    ◆内容(BOOK データベースより)
    お茶を習い始めて二十五年。就職につまずき、いつも不安で自分の居場所を探し続けた日々。失恋、父の死という悲しみのなかで、気がつけば、そばに「お茶」があった。がんじがらめの決まりごとの向こうに、やがて見えてきた自由。「ここにいるだけでよい」という心の安息。雨が匂う、雨の一粒一粒が聴こえる…季節を五感で味わう歓びとともに、「いま、生きている!」その感動を鮮やかに綴る。

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著者プロフィール

森下典子(もりした のりこ)
1956年生まれのエッセイスト。『週刊朝日』のコラム執筆を経て、1987年その体験を記した『典奴(のりやっこ)どすえ』を出版。代表作『日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』は、大森立嗣監督・脚本、黒木華主演により2018年10月13日映画化され、樹木希林の遺作ともなり、大きな話題となった。他に、『いとしいたべもの (文春文庫)』『猫といっしょにいるだけで』などの作品がある。

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