物部氏の正体 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.14
  • (4)
  • (15)
  • (21)
  • (6)
  • (5)
本棚登録 : 227
感想 : 16
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101364735

作品紹介・あらすじ

仏教導入を巡る蘇我氏との対立で知られる物部氏。古代史を代表する大豪族でありながら、正史から抹殺され、その全貌は多くの謎に包まれている。天皇家の神事と奇妙な接点を持ち、『日本書記』で「天皇家より先にヤマトを統治していた」と記される彼らは何ものか。出雲、吉備、出自に迫る論考は、やがてヤマト建国の真相へと辿り着く。既存の歴史を根底から覆す三部作、堂々の完結編。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 聖徳太子以来、何故天皇家が神道に携わっているにも関わらず仏教導入に熱心だったのか分かったような気がした。

  • 藤原に葬られた蘇我、そして物部。古代史の主役であったはずの氏族が何事もなかったかのように歴史から消えていったのはなぜか。
    正史である書紀は当然その時点での権力側に都合の悪いことは書かない。
    触れたくないことに敢えて触れていないからではないか?そしてそれはいったい何だったのか?
    物部は蘇我との宗教戦争で表舞台から消えたようでいながら、実際には平城京遷都時点まで石上麻呂が左大臣という朝廷の最高位に居た。
    それくらい古代では物部というのは圧倒的な力を持った存在であったのでは?という見立てから始まる。
    蘇我が担いだ外来新興宗教である仏教に反対するのは既得権側の当然の反応ではあるが、当時の神事を司って権力の中心にいた氏族だったとの仮説を、古墳の形態や土器等の物証、北九州(邪馬台国?)勢との力関係や半島との交易、瀬戸内海と日本海の海運、政治の中心(大和)に対する経済の中心(河内)等のキーワードから導き、
    ・物部は吉備を中心として関門海峡から河内までに至る瀬戸内海航路(半島との交易ルート)を牛耳っていた大和朝廷設立以前からの海洋系氏族
    ・北九州と出雲が提携して関門海峡を封鎖されないように北九州からの大和朝廷の祖(神武?)を迎えいれ、既存の神事を受け入れさせた
    ・同時に天然の要塞である大和に政治中心を引き渡し、自らは出雲(日本海側交易ルート)を封じ込めて河内を窓口とした交易窓口を確保した(名より身を取った)

    すなわち物部は大和朝廷設立以前の畿内から瀬戸内にかけての有力氏族グループの実質的中心にいたのではないかと結論づけている。
    その後の展開は憶測も交じるが、古代日本の中心であった物部は、同じく強大な氏族であった蘇我が聖徳太子をシンボルとしてすすめようとしていた中央集権国家建設に向けて、既得権を捨ててまでも協力しようとしたのではないか(物部守屋のひと悶着は、あくまでも傍流の起こした反乱であったからこそ物部はその力を保持できた。)
    その動きに対してクーデターを行ったのが天智・鎌足であり、それをすぐにひっくり返して元に戻したのが天武であった。
    その後蘇我に物部が協力して進めていた改革を不比等が巧妙に私物化してしまった。これは以前の著書でも触れられていたとおり。
    後に度重なる疫病や天災を、過去に葬ってきた人々の祟りと藤原がおびえるほどその私物化は露骨なものだったのであろう。
    無秩序で不安定な「平安」時代になっても、それが安定に向かう「戦国」時代に移っても、結局藤原は生き延び続けるのだが、私利私欲で動くのは現代でも同じ。人間は昔から何も変わっていない。

  •  自説の根拠提示にちょっと強引なところがないわけじゃないが、自分の視点を変えてみる役には立つ。
     日本書紀もちゃんと読み込めば面白い歴史書らしい。

  •  古墳時代から飛鳥期の日本史も私が中高生のころに学んだ内容とは大きく異なる説が数多く唱えられています。
     本書で説かれている「物部=吉備」説についていえば、当時から何となく疑問に思っていた「豪族吉備」が忽然と表舞台から消えた“からくり”を、素人でも「そうかも」と思えるようなレベルで解説してくれていると感じました。私も“吉備”にはある程度の土地勘があるので、なおさらそういう印象を抱いたのかもしれません。

  • 読みづらく、苦痛でしかなかった。

  • 蘇我と物部が共に倒れて、藤原の世に...

  • 「古代史謎解き紀行」を読了してから、ちょっと間が空いた。著書の作品は面白かったが、森浩一先生の著書なども読んだ後、著者には幾らか距離を置いたという心境。
    森先生は物部の祖、饒速日の東征が神武のエピソードに転用されていると云われる。つまり、天皇家につながる王朝の始祖は応神なのだろう。平和的にヤマトに迎えられたので、征服者としての神話の必要性から神武を創造したということか。
    著者の論旨もこの筋は同じで、応神以前のヤマトは各地の勢力が集結し、特に物部は中心的存在。
    無理に自説を展開するところは少なく、仮説はあくまで仮説としているのは、他の作家より良いと思う。それでも、物部氏の出自は神話ではあやふやにされているとあるけれど、神武が先に天の鳥船で大和に降りた天孫がいると云ったのは同じ九州出自と考えられてきたはずなのに。吉備がその出自との先人の説をそのまま展開するけれど、論拠が弱いな。北九州から吉備、河内まで瀬戸内海全体を抑えていたとの話は納得する。
    著書も三輪山の大物主を出雲系の信仰としているけれど、ヤマト側の日本書紀の記述に騙されているんじゃないかなあ。大国主と大物主は繋がらないのでは。
    終盤は他の著作にもあった神功皇后=トヨは卑弥呼を殺したという話。これは無理筋でしょ。神功皇后と応神天皇は何だったのか。もっと違う可能性を考えたいね。

    物部の神事が天皇家に伝承されているという話は面白かった。

  • 物部は吉備 説

  • 飽きた。。。。
    一度に読みすぎた。。。

  • 「藤原氏の正体」「蘇我氏の正体」からさらに進んで物部氏にせまる本書。

全16件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

歴史作家

「2023年 『日本、中国、朝鮮 古代史の謎を解く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

関裕二の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
冲方 丁
湊 かなえ
山本 兼一
東野 圭吾
伊坂 幸太郎
伊坂 幸太郎
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×