インドの時代―豊かさと苦悩の幕開け (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101365718

感想・レビュー・書評

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  • ヒンドゥー・ナショナリズムの研究者が、近代化、西洋化するインド都市生活者の実像を描いた書。2006年出版。

    西欧型の大量消費社会へと大きく変革する中で、古き良きインド、ヒンドゥーの伝統を復活させようとするヒンドゥー・ナショナリズムの動きには、多分に政治的な思惑が含まれているという。

    第四章で著者が力説している、「多一論」(世界に存在する宗教的差異を「一なる真理に至るためのアプローチの違い」と認識して、宗教的な対立を乗り越えようとする考え方)が印象的でした。

  • インドと長く関わっていながら、「ヒンドゥー・ナショナリズム」など、言葉としてはよく聞くものの、意味がよく分からない・・・が、まあいいや、とそのまま放置していたイシューを分かりやすく描写しており、勉強になりました。

  • 消費社会に突入したインド社会のレポート。その様相は、日本も含めていろいろな国が経験してきたもので既視感がある。もちろんインドには、ヒンドゥー教・キリスト教・イスラム教等の問題やそれにからむカーストの問題があり、それらの動きについてもわかりやすくまとめてある。ただ、レポートの対象を、インドの中間層に限ったため話はわかりやすいが、レディメイドの消費社会論をインドの現実にあてはめただけのような印象は残る。しかしそれもまたインドのひとつの現実であるだろうし、欲を出して、よく調べもせず他の階層のことを書くよりはよいと思う。

  • コード化された商品を消費する中間層の台頭。
    近代化されたインドとヒンドゥの聖、その狭間で苦悩する彼らに関する本ですます。
    ヒンドゥ・ナショナリズムの煽りをモロに受け止めたのも彼らであった。
    苦悩の内に佇む人たちにとって、彼らの宣伝はストレートであるがゆえに受け入れられ易かったという事か。言葉は悪いが、洗脳に近いものがあるかもしれない。

  • インドの知識が深まってから読み直したら、うんうん、そうそう、ってのが多かった。

  • 中島岳志著「インドの時代」を読んだ。30年前、一ヶ月余りインドのプーナという町に滞在したことがある。当時はヒッピーブームに代表される若者文化の風が吹いていた時代で、ビートルズなどもインドのグル(日本の禅の高僧みたいな存在)を訪れていた。私も青春の迷いの中で、「究極の詩」という本に出会ったのがきっかけで退職し、日本から遠く離れたの異国の田舎町に飛んだ。生まれてはじめての海外への旅であった。その町にはこの本でも紹介されている和尚(当時はバグワンと呼んでいたグル)のアシュラムがあった。今で言う自分探しの若者が、小さなインドの町に世界中から集まっていた。当時私が解決しようともがいていた自身の問題は、ここ10年くらいでようやく少しは答えが見えたような気がする。

    ただ私がどうあれ、永遠に答えのないのがこの世である。
    サブプライム、世界同時不況、人口・食料・環境・エネルギー問題・・・・・・
    深刻に考えるつもりはない。
    この世界の不条理と悲惨に絶句することはあっても、悲喜こもごもすべて受け入れて生きていかざるを得ない。

    今後の日本、世界の運命は?
    書物やマスコミやインターネットなど素人が手に入る情報だけを前提の話。
    1.このままでは地球のエネルギーは数十年後には人類に必要な量は確保できなくなる。
    2.エネルギーが確保できないということは、まず食料が確保できないということ。
    食料だけでなく石油に依存してきた現代の都市環境全般が維持できないということ。
    その原因のなかで大きいのは、中国・インドの人口の加速的な増大。
    野生動物は自然環境によって生息数が淘汰されるが、知恵のある人間は自然を超えて増殖する。
    単純明快な解決策は勿論ないが、人口13億の中国と11億のインドの今後の趨勢がこれからの世界に大きな影響を与えることはあきらかである。
    脱化石燃料で太陽エネルギー(太陽光、風力等)の利用や省エネの推進で、中国やインドを含めた世界の人口増を維持できるかが21世紀最大の課題である。
      

    本の読後感を書くつもりが大きな話から入ってなかなか書評に入れない。この本は以上の人類的課題に関連して興味深い本なのです。

    少しお疲れなので、つづきは又。

  • 経済成長やら教育やらIITやら格差問題やら「わかりやすい」方面の切り口ではなく、カースト制度、ヒンドゥー教とナショナリズム、という「わかりにくい」(これは、そうしたことを紙の上でしか知らない私のような人にとって、という意味)方面の切り口から、しかしそれゆえに、インドの今の姿をよりくっきりと映し出すことに成功していると感じました。

    拭いがたいカーストの残り香と、経済成長に伴なう歪みによるヒンドゥーへの回帰、そうしたインド固有の事情の記述は大変参考になります。

    ひとつ残念なのは、感情的な記述がやや多いように思えたこと。感情的な記述をゼロにせよというつもりはないのですが・・・

  • K子ちゃんに借りて読んだ本。
    Sri Sri Ravi Shankarのことも書いてあるし、
    今まで読んだことなかったインド人の内面について書かれてて、おもしろかった。

  • courrier japonで連載を持つ筆者の現代インドについてのエッセイ。インド旅行にここ数年で数回行ったので、インド情勢については割と気にしており、その意味でも興味深かった。写真などの図版も多数。ヒンドゥーナショナリスムについてもわかりやすく説明、こうしたグローバリスムとナショナリスムが矛盾せず辻褄が合う形でともに発展していく、というのはインド特有ではなく世界的な流れになっていくのだろう。

  • 前半は、戦後の日本を見ているようで面白い。
    「アメリカナイズする」という仕組みが
    どこかでパッケージ化されて売っているのでは、と思うほど似ている。
    (といっても自分は「戦後の日本」を映像や資料で知っているだけなのだけど)

    後半はインド人の宗教観の移り変わりなどで、
    もともとインドに興味がないと退屈かも。
    新興宗教の流行廃りは作者のバイアス?がかかっているようで
    ちょっと気持ち悪い。
    「xx教は○○なインド人につけ込んでいる」的な表現が鼻につくというか。
    もともと興味がない人間から見ると、「必死w乙www」という印象をうけてしまう。
    事実のみを書いた方がより客観的に読めるのになぁと思った。

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著者プロフィール

1975年大阪生まれ。大阪外国語大学卒業。京都大学大学院博士課程修了。北海道大学大学院准教授を経て、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。専攻は南アジア地域研究、近代日本政治思想。2005年、『中村屋のボース』で大佛次郎論壇賞、アジア・太平洋賞大賞受賞。著書に『思いがけず利他』『パール判事』『朝日平吾の鬱屈』『保守のヒント』『秋葉原事件』『「リベラル保守」宣言』『血盟団事件』『岩波茂雄』『アジア主義』『保守と立憲』『親鸞と日本主義』、共著に『料理と利他』『現代の超克』などがある。

「2022年 『ええかげん論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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