消された一家―北九州・連続監禁殺人事件 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 1298
レビュー : 206
  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101368511

作品紹介・あらすじ

七人もの人間が次々に殺されながら、一人の少女が警察に保護されるまで、その事件は闇の中に沈んでいた-。明るい人柄と巧みな弁舌で他人の家庭に入り込み、一家全員を監禁虐待によって奴隷同然にし、さらには恐怖感から家族同士を殺し合わせる。まさに鬼畜の所業を為した天才殺人鬼・松永太。人を喰らい続けた男の半生と戦慄すべき凶行の全貌を徹底取材。渾身の犯罪ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は北九州・連続監禁殺人事件の全貌を明らかにしたノンフィクション作品である。明るい人柄と巧みな言葉で人々を操り、一家全員を監禁した挙句、虐待をし、自らの奴隷にさせた。さらに、恐怖感から家族同士を殺し合わせるといった、残虐極まりない事件を起こした松永太の半生とその心理について迫っている。松永の大きな特徴として、「相手を誘導させ、最終的な決断は必ず本人に下させ、自分は責任をとらない。」ということが挙げられる。彼は、被虐待者の心理を理解し、徹底的にマインド・コントロールを行った。その結果、逃げる機会はあったにも関わらず、ほぼ全員が殺害されてしまった。このような事件は類を見ないが、いつどこで起きてもおかしくはなく、他人事ではないのである。松永は最古パス、一種の精神病ではないかと考えられているが、私たちの身の回りにも多く存在するというのが事実なのだ。本書を読み、事件の裏側を知る大切さを痛感した。

  • これからこの本を読む人がもしこのレビューを見たなら、ぜひこの事件で保護された息子の言葉を探してほしい。検索したら見つかるはず。
    この本の内容では「松永の息子は優遇され」感を感じると思いますが、息子がどうあったのか、実の息子ですらどういう扱いをしていたのか、知ってあげてほしい。保護された子どもたちの描写はほぼないので、それだけでも印象は変わるかと。
    モンテクリスト伯の「父の罪が子に問われる時代じゃない」を思い出す。

    二度と読まないと自信をもって言える。でも読めば現実に起こったのだと再確認できる。
    だいぶ昔にwikiで読んで、概要を知っていたはずでも胸糞悪くなる。心が荒む。
    すべての描写がすさまじい。イライラして腹が立って心が荒むから早く読み切りたい、その一心で途中から一気読みした。電車で少しずつ読んでいた間、数日間の私の不機嫌さは仕事に支障すらあったと思います。
    自分で決定させる、だから勝手にやった、自分は悪くない。とんでもなく胸糞悪い。
    関わった人間すべてを不幸にする才能なんてとんでもない。

    世の中では気づかれないだけで、知られていないだけで死体の見つからない・発覚していない事件はまだあるのではないか、と最近また思いました。
    逃げてくれてよかった、保護してもらえてよかった、未成年の彼女の話を聞いてくれる世の中でよかった。保護された子、過去の被害者、遺族、本当に救われてほしい。

  • 強烈な本だった。休暇に持って行こうと思って手に取ったら、ページをめくる手が止まらず、あっという間に読み終わってしまった。
    あまりにも残虐な事件だったため、一部報道規制がしかれたという、北九州連続監禁殺人事件。なんとなく知ってはいたが、恐ろしくて、詳しく調べる気にならなかった。サイコパス関連の書籍を読み、本書も読んでみることにした。松永という支配的な男に虐待で反抗心を奪われ、子どもを含む家族同士で殺し合いや遺体の処理をさせられ、殺人の被害者が7人に及んだ事件。たまたま逃走した少女が保護されて、発覚したという。
    DVという言葉が一般的になる少し前の事件だが、電気ショックを与え、食事、睡眠、排せつの自由を奪うことにより、被害者たちの感情や判断能力はなくなっていく。一方、松永は指示をするだけで、自らは手を下さないのだ。詐欺の常習犯でもある彼は、魅力的な外見と巧みな話術で、男女問わず次々とターゲットにしていく。
    本書では、裁判の行方も焦点になった。殺人の実行役で内縁の妻、緒方に責任はあるのか。緒方自身も、20年にわたる虐待を受け、反抗することができなくなっていた。一審で死刑判決が出たが、精神科医の鑑定が控訴審の法廷で証言として取り上げられ、裁判ですべてを話した緒方に情状酌量が認められるのか。
    日本でほんの十数年前に起こったことが信じがたい事件である。「凶悪」に次ぐトラウマ案件だが、事件の全体像を知ることができてよかった。

  • 松永太、緒方純子による緒方家一家皆殺し事件。
    自分では手を汚さず、マインドコントロールによって、一家全員を殺してしまった事件。
    何とも言えない。
    誰かが勇気を持って松永に向かっていく機会はいくらでもあったと思われるのだが、誰も立ち向かっていけない。
    マインドコントロールされるとそんなになってしまうのかと恐ろしさを覚えてしまう。

  • 恐ろしくて腹がたつ。
    ここまで人は暴力で支配されるということに嫌悪。
    なぜ被害者達は逃げ出さなかったのか、または協力して抵抗しなかったのか。逆を言えばそれをさせなかった松永太という怪物に得体のしれない恐怖を感じた。

    緒方順子については著者が本人にも面会して話しを聞いているがもう少し松永太の人間性を掘り下げて欲しかった。
    なぜ奴は怪物に成り得たのか?

  • 世にも恐ろしい事件である、北九州一家拉致監禁致死事件についての本である。と言いながらも、著者は犯人の一人である女性について、男性からの暴力の支配下にあったために犯行に至ったとしてかなり同情的である。
    私は本書を読むまで本事件の2名の犯人はどうしようもない畜生であると考えていたので意外であった。
    犯行はかなり悲惨で思い出しただけで吐き気を催すものであった、またこの一家は犯人からの暴力等の支配に元警察官ですら従っており、人間とは非常に脆い存在なのだと思いかなり悲しくなった。

  • 暴力によって人間の心がどのように支配され思考停止に追いやられていくか、が当事者の独白を基に淡々と綴られている。読んでいて、こんなに無力感が読者を襲う本はないと思った。フィクションであって欲しい、現実と認めたくないけれど、全て過去に起こった事実。子どもから老人まで7人の命が、たったひとりの男の生活費や遊興費のために消えた。この事件や尼崎の事件、さかのぼればオウム真理教事件や浅間山荘事件を「常軌を逸した」というひと言で、自分たちとは関係がないもの、にしてはいけないと思う。事件が発覚するまでは、みな一般市民として一般市民のすぐ近くで生活していたのだから。暴力で、自らの権力を誇示し集団を統率しているという点でDVも体罰も構造は同じ。体罰という言い方はもうやめて「暴行・傷害」という呼び方に替えてはどうか。罰というのは悪いことをした人に課されるもの。少なくともこの本の中の被害者は、基本的に悪いことは何ひとつしていない。ただひたすら脅されて、思考停止に至っただけ。

  • 人間って怖い

  • 天才殺人鬼 松永太の凶行について書かれた一冊。人を使うことで責任をとらなくてよい、この松永のポリシーで自らの手を直接下すことなくDVによるマインドコントロールを駆使し、一家、計7名を殺害した。それは周到で繊細な計画であった。
    なぜ、被害者は松永による支配から逃げられなかったのか。それは被害者自らの意思決定により、人間関係を崩壊させることによる支配をおこなったこと、被害者間に序列をつくり、お互いをライバル視させたこと、電気ショックによる恐怖感により、合理的な行動選択を奪ったことがあげられる。これに松永の天才的話術による洗脳も加わることで被害者は松永から逃げられなくなった。
    まさに松永は悪魔である。そしてこのような悪魔はまだどこかに潜んでいるかもしれない。松永のケースを知っておくことは、回避の一助となるだろう。

  • 実際に起きたノンフィクション小説。
    人は追い詰められた危険な状況で、思考が狭まり、こんなにも操られた状態にされてしまうのか?
    目の前からの恐怖から逃れることだけしか考えられないように混乱させ、ゆがめた思考にしてしまうところは怖い。
    死を感じるような拷問を繰り返されたとき、人は服従してしまうものなのか・・・。

    弱み、プライド、引け目、迷惑をかけたくないという気持ちさえも巧みに利用して操る松永は、なぜそこまで冷酷になったのだろう?松永という人物が作られてしまった環境はどんなものだったのだろう?

    『死ぬ気になれば何でもできる』、とよく言われるが、『人は追い詰められた時に、逃げられない状態になってしまう』という事実が世間一般に認知されると自殺の数も減っていくのではないか?

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著者プロフィール

1966(昭和41)年、東京生れ。早稲田大学第一文学部卒。ニューヨークの日系誌記者を経て、ノンフィクション作家に。戦争、犯罪事件から芸能まで取材対象は幅広く、児童書の執筆も手がけている。『ガマ 遺品たちが物語る沖縄戦』(講談社)は、厚生労働省社会保障審議会の推薦により「児童福祉文化財」に指定される。著書に『妻と飛んだ特攻兵 8・19満州、最後の特攻』(角川文庫)、『消された一家』(新潮文庫)他多数。

「2018年 『ベニヤ舟の特攻兵 8・6広島、陸軍秘密部隊レの救援作戦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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