消された一家―北九州・連続監禁殺人事件 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101368511

感想・レビュー・書評

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  • 愛人とその親、妹、甥、姪、知人等を監禁したうえ、互いに殺し合いをさせ七人を己の恣意のままに殺害した犯罪者のドキュメント。この男と関わる前はどこにでもいるような家族たちが、その男へ団結し立ち向かうことも、逃げることもせず、互いに監視しあい監禁生活を送り、あげくの果てに殺しあう、というような異常な状況が起きたのは、その男の暴力と虐待による支配のせいなのだが、著者がいうように、この事件の本質は、人をここまで極限に追い詰め支配することができるという暴力や虐待というものの在り様であると思う。サイコパスと言ってしまえばそれまでだが、なぜこの犯罪者がここまで鬼畜で変態な所業を重ねていくのか、やはり著者と同様にこの男の心性について知りたいと思うが、そこにはいまだたどり着けない。

  • 天才殺人鬼 松永太の凶行について書かれた一冊。人を使うことで責任をとらなくてよい、この松永のポリシーで自らの手を直接下すことなくDVによるマインドコントロールを駆使し、一家、計7名を殺害した。それは周到で繊細な計画であった。
    なぜ、被害者は松永による支配から逃げられなかったのか。それは被害者自らの意思決定により、人間関係を崩壊させることによる支配をおこなったこと、被害者間に序列をつくり、お互いをライバル視させたこと、電気ショックによる恐怖感により、合理的な行動選択を奪ったことがあげられる。これに松永の天才的話術による洗脳も加わることで被害者は松永から逃げられなくなった。
    まさに松永は悪魔である。そしてこのような悪魔はまだどこかに潜んでいるかもしれない。松永のケースを知っておくことは、回避の一助となるだろう。

  • いろいろと謎の多い事件ではありますが、なるほどDVとゆー視点で見ればすべてが府に落ちる。

    それにしても主犯男性の人心掌握っぷり!天賦の才とはこのことか?!おそろしや、おそろしや。しかも、彼の内面がまったく見えてこない。コンプレックス強そうだなぁ、とは感じるのだけれど、塀の中でも異様だし、マジキチのひとことではくくれない恐ろしさがある。

    この事件に教訓があるとすれば、「己の弱さに向きあえ」ってことなのだろうか。弱みを突かれてもひるまないこころがあれば最悪の事態は回避できたのではないか。保身がもたらした悲劇とも言える。なんども脱出の機会はあった筈。通電はそんなにも強烈な罰だったのか。そればっかりは想像するしかなのだけれど。

    家族の絆、みたいな神話はこの場所では通用しない。
    駄菓子菓子!本書を読み終えてそれでもなお「にんげんばんざい!」と叫ばずにはいられないのです。

  • 読んだ衝撃が強かったかな。
    純子さんの量刑をどう思うかは難しい。
    行われたことがあまりにも凄惨かつ人数も凄いので簡単に判断できる気はしない。
    遺族だったらきっと許せないだろうし。
    でも、その反省からくる全容解明への協力と贖罪の気持ちそのものは社会の一員としてなら人の再生として受け止めたいかなと思わせるものだったかな。
    主犯に関しては最後まで人の道を歩くことを拒否した態度で残念。
    極刑ですら生温いと思わせる人物だった。

  • 【その男に命じられるまま家族は殺しあった】

    日本史上最も残忍といわれるマインドコントロールによる連続監禁殺人事件のルポルタージュ。
    ※実際にあった事件なので、事件の内容ではなく、全体の構成の読みやすさ、著者のこの事件を通して読者に訴えたい事が伝わったかどうかで評価

    当時、報道規制がかかる程の残忍な事件の内容が詳しく記されているので読むには覚悟が必要だ。
    メンタル弱めの人は注意。

    事件の発覚は監禁されていた1人が逃げ出したことだったのだが、もし逃げ出していなかったらどうなっていたか。
    監禁は複数の集合住宅で行われていたのだが、通電による拷問、遺体損壊による匂いや騒音などでまわりの住人は気づかなかったのだろうか。
    もし自分の身近でこんな事件が起きていたとしたら夜も眠れないだろう。

    著者は裁判を幾度となく傍聴し、主犯と共に逮捕された女と面会をするなどしており、女の心境は読み取れるものの、主犯の男の一族が取材拒否しており、幼少期の家庭訪問も何かと理由をつけて断られていたため、どのようにしてサイコパスが生まれたかは謎のままだ。

    男に会うまで女は普通の一般市民であり、殺し合いをした一家は中には元警察官や名士もいたというのだからマインドコントロールの恐ろしさは計り知れない。
    実際、主犯の男の裁判中、男の発言で傍聴席から笑いが起こる程の口の上手さだったらしい。

    現代もカルト宗教によるマインドコントロールやDVの問題は解決に至っていない。
    この事件をより深く知ることで、マインドコントロールに負けない強いメンタルを持つ重要性、何かトラブルに巻き込まれた時助けを求められる環境作り、知識を身につける事の大切さに改めて気づかされた。


    こんなひとにおすすめ .ᐟ.ᐟ
    ・ルポルタージュが好きなひと
    ・社会派が好きなひと
    ・社会問題に関心があるひと

  • これは実際あった事件なのか?こんな残酷な事が現実の日本で行われたのか?と疑いたくなるほどに残虐的で悲惨なドキュメンタリーだった。そして洗脳の恐ろしさを知る。

  • 終始ため息が漏れてしまうような展開。

    凄惨な事件の記録としてとても貴重な本であることは間違いないと思います。
    淡々と、遠回しの表現も少なくて読みやすいものでした。

    主犯の松永の巧みな話術、やり口は胸糞悪い気持ちになる反面、感心してしまうほどでした。
    そんな感心してしまう自分もなんだか嫌になってしまうような。。。そんな作品でした。

    読了後は手元に置いておくのもしんどいなぁという気持ちになりましたね。。。

    ただ、読む価値はあります

  • 当たり前だけど、やっぱり一番怖いのは人間ですね。本文で描かれる凄惨な事件はあまりにも恐ろしく、それなのに怖いもの見たさで読んでしまう。

  • こんな事件あったんだ、という軽い気持ちで手に取りましたが、凄い内容でした。

    規模は小さいですが、私の父親もこういうタイプの人間なので、支配の手口はどこも似たようなモノだと思いました。

  • こんなにも残虐な事件が自分が生まれ育っている時に裁判が行われている事を知って驚いた。
    酷すぎて読み進めるのが難しいかもしれないと思った所もあったが緒方の裁判での心情の変化などを読み進めているとやるせない気持ちが出てきてとても悲しくなりました。
    事件の詳細をよく理解できてよかったです。

著者プロフィール

1966(昭和41)年、東京生れ。早稲田大学第一文学部卒。ニューヨークの日系誌記者を経て、ノンフィクション作家に。戦争、犯罪事件から芸能まで取材対象は幅広く、児童書の執筆も手がけている。『ガマ 遺品たちが物語る沖縄戦』(講談社)は、厚生労働省社会保障審議会の推薦により「児童福祉文化財」に指定される。著書に『妻と飛んだ特攻兵 8・19満州、最後の特攻』(角川文庫)、『消された一家』(新潮文庫)他多数。

「2018年 『ベニヤ舟の特攻兵 8・6広島、陸軍秘密部隊レの救援作戦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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