消された一家―北九州・連続監禁殺人事件 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 1705
レビュー : 239
  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101368511

作品紹介・あらすじ

七人もの人間が次々に殺されながら、一人の少女が警察に保護されるまで、その事件は闇の中に沈んでいた-。明るい人柄と巧みな弁舌で他人の家庭に入り込み、一家全員を監禁虐待によって奴隷同然にし、さらには恐怖感から家族同士を殺し合わせる。まさに鬼畜の所業を為した天才殺人鬼・松永太。人を喰らい続けた男の半生と戦慄すべき凶行の全貌を徹底取材。渾身の犯罪ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • あまりに胸の悪くなる事件の内容に、読み続けることが苦痛なほどでした。
    そこからくる怖ろしさと憤りは、身体的な虐待ももちろんですが、それ以上にここで描かれる主犯の人物の、解説ではサイコパスとされる、あまりにもエゴイスティックな精神性のおぞましさによるものです。本書でもたびたび触れられるとおり、主犯は容姿に恵まれた爽やかな好青年でああることはネット上でも確認することができ、そのような人物が多くのケースで直接は自分の手を汚さず、「学習性無力感」状態に陥れた罪のない人々を「操り人形」として意のままに操り、凄惨な殺人を含む数々の凶行に及んでいます。

    そのような犯人の特徴を知るとともに、それが、本書とは直接は関連のない二つの著書で著されていた、以下のような「悪魔」の特徴と合致することに思い至りました。

    ----------
    『悪の正体』佐藤優
    「何も命令せず、要請せずに、人を自在に動かす。権力における自らの優位性は手放さない。そんな人物には気を付けた方がいい。これこそ典型的な悪の技法にほかならない」

    『アンの愛情』のジェムシーナ叔母さん
    「わたしは悪魔がそんなにひどく醜いはずはないと思いますよ。もしもそんなに醜いなら、たいした害をしないわけですよ。わたしはどちらかといえば悪魔を美しい紳士としていつも考えていますよ」
    ----------

    本書で扱われたのは、そう遠くない過去に、市井に暮らす普通の人びとを地獄に落とした、現実に起きた事件です。つまりこのような身近に存在するかもしれない「悪魔」による凶行が、誰の身にも起こりうるという事実に戦慄せざるをえません。

  • 2021/3/5読了。

    事実は小説より奇なり。

    徹底した肉体的、精神的な支配により、多数の人間を極限状態に陥れた松永死刑囚の手腕に圧倒されつつも、当事件のサイコパスな所業にはただただ恐怖と怒りを感じた。

  • 誉田哲也「ケモノの城」のモデルになった
    現実に起きた事件のルポルタージュ。
    現実に起きた?信じられない。

  • 凄惨な事件。どこにでもいる普通の家族が肉体的、心理的な松永の支配によって、互いに殺し合いを始めると言う恐ろしい事件。最後まで読んで著者の豊田氏の言う通り順子の松永の支配から逃れ、人間的な心を取り戻しつつあることが救いだった。松永に反関しては全く反省がなく、恐ろしい人間だと思った。嘘だらけの人生

  • なんでこんな本買ったんだろうと思うけれど、新潮45の文庫シリーズを意外と読破しているので、好きなのかもしれない。

    タイトルの通り、北九州であった事件をテーマにしたもの。
    とにかく酷い。グロい。えげつない。
    世の中で一番怖いのは、やっぱり人間。

  • これからこの本を読む人がもしこのレビューを見たなら、ぜひこの事件で保護された息子の言葉を探してほしい。検索したら見つかるはず。
    この本の内容では「松永の息子は優遇され」感を感じると思いますが、息子がどうあったのか、実の息子ですらどういう扱いをしていたのか、知ってあげてほしい。保護された子どもたちの描写はほぼないので、それだけでも印象は変わるかと。
    モンテクリスト伯の「父の罪が子に問われる時代じゃない」を思い出す。

    二度と読まないと自信をもって言える。でも読めば現実に起こったのだと再確認できる。
    だいぶ昔にwikiで読んで、概要を知っていたはずでも胸糞悪くなる。心が荒む。
    すべての描写がすさまじい。イライラして腹が立って心が荒むから早く読み切りたい、その一心で途中から一気読みした。電車で少しずつ読んでいた間、数日間の私の不機嫌さは仕事に支障すらあったと思います。
    自分で決定させる、だから勝手にやった、自分は悪くない。とんでもなく胸糞悪い。
    関わった人間すべてを不幸にする才能なんてとんでもない。

    世の中では気づかれないだけで、知られていないだけで死体の見つからない・発覚していない事件はまだあるのではないか、と最近また思いました。
    逃げてくれてよかった、保護してもらえてよかった、未成年の彼女の話を聞いてくれる世の中でよかった。保護された子、過去の被害者、遺族、本当に救われてほしい。

  • 以前から興味があった事件で読んでみたかった本。いろいろなネットの情報や紹介文にはほぼ、内容が凄惨すぎて読むと後悔するといったたぐいの文句が踊っていたから、読むのを躊躇していたけど、kindleで買ってあったので、読んでみた。確かに凄惨っていえば凄惨で、とくに子供に手をかけるところなんかは嫌ーな気分になることが必至だけれど、望めば、ネットでいくらでも世界中の嫌な話や、グロい情報が手に入る現在にあっては、そのうちの一つといった感もないではない。ただ、そういう風に書かれているからなのか本当にそうかはわからないけれど、松永太のサイコパスぶり加減が、私たちが住む世界の側と、理解不能な人間が住む世界の境界線のギリギリこちら側にいるような塩梅で、全く理解できないわけではない(異常にコントロールフリークな人間とかいるので延長線上じゃないかと思ったり)今後の人生、ミニ松永のような人間と関係を持たざるを得なくなったらどう対処したらいいのかなんてことに思いがいたって、それがきつかった。あと、松永のセリフが、変な造語とか横文字を混ぜていたり、理屈が独善的で幼いところとかが読んでいて気持ち悪かった。

  • 興味がある事件のノンフィクション本だったので、買って読んでみたが、この松永という殺人者があまりにも酷過ぎて、作中の描写も犯罪模様をリアルに再現し過ぎていて、途中で気持ち悪くなって、読み進められなくなった。人間はここまで残酷に、人を道具や家畜のように扱えるのかと恐ろしく、悲しくなった。

  • たかしげ 逢瀬を重ねた 懐柔 居丈高 詰問しながら殴打を加える バタードウーマン(DVの被害女性) 安全ピンと墨汁を使って 心的外傷をシステマティックに反復して痛めつける 死人に口なし 柳川市 一連托生の逃亡生活 JR小倉駅 競馬予想のビジネス 無頼漢気取り 事実関係証明書 身体への通電 亀の子束子 蹲踞の姿勢 肉が溶けてケロイド状になり、骨が見えていた。 絶対服従の奴隷を何人も従え 秩序型通電 大分県の湯布院 解離症状 暗澹たる気持ちになった 関門海峡 富士の樹海 門司駅 松永の巧みな誘導術 理事長の座を虎視眈々と狙っていた学習性無力感 倒錯的な心理段階に至ったようだ ナチス収容所 カポー 誰が聞いても荒唐無稽な死因だが 静美は皮下脂肪が多かったので、大腸を切断すると多量の便が出てきて、強烈な悪臭が漂った。 肉片を煮込む鍋に大量の茶の葉を入れたり、内臓を泥状にするミキサーに大量の生姜を入れたりといった処置がなされた。 オールP この種の供述は、枚挙に暇がない。いずれも法廷が寄席と化したかのように笑いに包まれた。 哀悼の意を表しますが 両被告は善悪のタガが外れた発案者と、その指示にひたすら従う忠実な実行者として、車の両輪と言える関係だった。 かつての『天動説』の信者みたいなものです 激しい徒労感に苛まれた 僥倖 岩波明 アーサー・ウィリアムズ 「私の解体方法はオリジナルです。魚料理の本を読んで応用し、佃煮を作る要領でやりました」 復讐するは我にあり サイコパス(精神病質) 情動麻痺 離人症 群馬県榛名山 永田洋子 酸鼻な犯罪

  • 強烈な本だった。休暇に持って行こうと思って手に取ったら、ページをめくる手が止まらず、あっという間に読み終わってしまった。
    あまりにも残虐な事件だったため、一部報道規制がしかれたという、北九州連続監禁殺人事件。なんとなく知ってはいたが、恐ろしくて、詳しく調べる気にならなかった。サイコパス関連の書籍を読み、本書も読んでみることにした。松永という支配的な男に虐待で反抗心を奪われ、子どもを含む家族同士で殺し合いや遺体の処理をさせられ、殺人の被害者が7人に及んだ事件。たまたま逃走した少女が保護されて、発覚したという。
    DVという言葉が一般的になる少し前の事件だが、電気ショックを与え、食事、睡眠、排せつの自由を奪うことにより、被害者たちの感情や判断能力はなくなっていく。一方、松永は指示をするだけで、自らは手を下さないのだ。詐欺の常習犯でもある彼は、魅力的な外見と巧みな話術で、男女問わず次々とターゲットにしていく。
    本書では、裁判の行方も焦点になった。殺人の実行役で内縁の妻、緒方に責任はあるのか。緒方自身も、20年にわたる虐待を受け、反抗することができなくなっていた。一審で死刑判決が出たが、精神科医の鑑定が控訴審の法廷で証言として取り上げられ、裁判ですべてを話した緒方に情状酌量が認められるのか。
    日本でほんの十数年前に起こったことが信じがたい事件である。「凶悪」に次ぐトラウマ案件だが、事件の全体像を知ることができてよかった。

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著者プロフィール

1966(昭和41)年、東京生れ。早稲田大学第一文学部卒。ニューヨークの日系誌記者を経て、ノンフィクション作家に。戦争、犯罪事件から芸能まで取材対象は幅広く、児童書の執筆も手がけている。『ガマ 遺品たちが物語る沖縄戦』(講談社)は、厚生労働省社会保障審議会の推薦により「児童福祉文化財」に指定される。著書に『妻と飛んだ特攻兵 8・19満州、最後の特攻』(角川文庫)、『消された一家』(新潮文庫)他多数。

「2018年 『ベニヤ舟の特攻兵 8・6広島、陸軍秘密部隊レの救援作戦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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