魔術はささやく (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.51
  • (706)
  • (1430)
  • (2735)
  • (177)
  • (40)
本棚登録 : 13720
感想 : 979
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (476ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101369112

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 幻想的なタイトル。自殺へと仕組まれた3人の女性の死と次は自分ではないかと怯える4人目の女性。彼女たちが隠し持つ現実的な社会問題。そして彼女たちともその社会問題とも関係のなかった16歳の少年。
    全く接点が見えなかったものたちの糸が次第に結ばれ絡まり、徐々にほどけて最後に1本の糸となる、そんな社会派ミステリー。

    父が失踪し母が病気で亡くなったあと、伯母のより子一家と暮らすことになった16歳の少年、日下 守。
    守を通して事件は解明されていくのだけど、この物語は単なるミステリーではなくて、守を救済するための物語でもあったんだろうなぁ。
    だって守がいい子すぎなんだもの。本当に聡い子。
    そしてその賢さが彼の過去を通じて身についたものなんだとしたら……
    わたしはなんだか彼の頭を撫でてあげたくなった。

    伯母のより子が、「あんたは強いからね、心配なんだよ。強い人間は独りでいたらいけないんだ。みんな自分で抱えこんじゃう」みたいなことを守に話すんだけど、本当にそうだよ。
    守自身は気づいてないのかもしれないけど、すでに人生を悟ったと思い込むことで、ギリギリのところで立ってるんだろうなと想像せずにはいられなかった。
    守はどうなっていくのだろう、どうすればいいのだろう。そんなことを考えてるうちに、善と悪、過去と現在、そういうものを単純に2つに分けることってできないよねと改めて気づく。
    感情って簡単に割りきれるものじゃない。
    赦すことと赦さないことも然り。
    だから心は揺れ動く。

    わたしにとってこの物語は単なるミステリーでは終わらなくて。守が独りでかかえこんでいた何かから解放される、そんな救いの物語でもあったのだ。

    • 地球っこさん
      insectofbooksさん、はじめまして♪

      「まもるぅぅぅぅ!!!」となりますよね~
      宮部みゆきさんの作品は数えるほどしか読めて...
      insectofbooksさん、はじめまして♪

      「まもるぅぅぅぅ!!!」となりますよね~
      宮部みゆきさんの作品は数えるほどしか読めていませんが、しんどい思いをしてる子どもたちの作品もありますよね。
      でもどの作品のラストも、かすかにでもちゃんと光が見えてくるような物語になっていて、子どもたちへの宮部さんのエールがこめられてるのかなぁと思ってます。

      フォローしてる方にも宮部さんファンは多いので、つい皆さんのレビューから読んだつもりなってたのですが、ぼちぼちこれから読んでいこうかなと思ってたところです。

      insectofbooksさんのレビューも楽しみにしてます。
      どうぞよろしくお願いします(*^^*)
      2021/05/21
    • insectofbooksさん
      ほんとそうですね!かすかに光が見えてくるような物語になっているのがこの作家さんを好きな理由かも…。お読みになっているものもあると思うのですが...
      ほんとそうですね!かすかに光が見えてくるような物語になっているのがこの作家さんを好きな理由かも…。お読みになっているものもあると思うのですが、宮部さんのでブックリスト作ってみます♪ ♪ 地球っこさんも、オススメリストぜひお願いしまーす^_^
      2021/05/21
    • 地球っこさん
      insectofbooksさん、おはようございます。
      ブックリスト楽しみにしてます♪
      わたしはブックリスト、あまり活用できてないなぁ……...
      insectofbooksさん、おはようございます。
      ブックリスト楽しみにしてます♪
      わたしはブックリスト、あまり活用できてないなぁ……f(^_^)
      2021/05/22
  • 三人の女性がそれぞれ自殺、この三人は関連性があるらしい、その死もどうやら仕組まれたらしい、残るはあと一人…。
    その謎や真相を少年が追う。
    そしてすべてを知った時、少年は裁く側に回るのか?果たして……?──

    仕組まれたのは○○術とは予想外で拍子抜けした。現実的には立証できそうにもない事件に、これはサスペンス小説だからと割り切って読む。
    少年のエピソード、彼を取り巻く人々、社会問題も絡め、特にラストの急展開が面白い。

    「悪意はなかった。知らなかった。自分も騙されていた。金が欲しかった。私も被害者だ」
    犯罪にはこんな言い訳がそこらじゅうにありそうな気がする。
    最後にあの女性は猛省しているのか、許されるのか、「償い」「正しい裁き」って何だろう?とモヤモヤが残る。

  • こんな悲しい境遇の高校生 守くんが立派に成長して行くだけで満足や!
    ( 完璧に親目線^^; )
    まぁ、現実としては、あり得ない設定のように思うけど、読んでる時は実際に起こってる気がする。
    (宮部さんマジック?)
    真相が判明した後のラストも良かった!
    でも、私が主人公なら、
    そんな実体験ないからか?年取って、人間が丸くなったのか…
    「東京は今夜も霧ですね」

    「魔術師の幻想」
    もナシかも?

  • 日下守は叔母の家族と暮らしていた。なぜなら母は亡くなり、父は失踪していたからだー横領犯としてー。犯罪者の子供としてあからさまに阻害されながら育った守は若くしてなんだか悟ったような一面を持つ高校生だ。しかし、今度は伯父が仕事中女子大生を轢いてしまう。女子大生が亡くなったり目撃者もいなかったため、「すごい勢いで赤信号を飛び出してきた」という伯父の言葉は裏付けがとれない。叔母や従姉の様子をみて、守は女子大生の足取りを追う。そこから見えてきたのは亡くなった娘の裏の顔からつながる不可思議な事件だった。

    なんとか的確なあらすじ的導入部分を書こうと思ったんですが、どこまで書いても導入にならない!!どんどん話が展開してたくさんの問題、たくさんの人、たくさんの後悔とかたくさんの怒りとかもう、どこも面白くて・・・!!!
    ミステリーで社会派でファンタジーで青春小説で、いろんな顔を持った本です!
    あ・・・まさかこれが魔術・・・か・・??

  • 宮部みゆきさんの小説は起伏に富み読みやすいので、さくさく読めるが、本作も面白くて一気読みした。いろいろなキーワードも複合的に取り入れられていて野心作だったといえるだろう。少々文章に無理をして力みすぎる傾向があるが、若々しくもあり、そこがまた面白い。

  • レベル7の時も思いましたが、宮部みゆきさんは読者をワクワクさせるのが上手いと思います。読み終えるまでペースが落ちないまま、ページをめくることができました。「魔術」と「ささやく」にはそれぞれ2つの意味が含まれていると感じ、いいタイトルだなと思いました。

  • 宮部作品に最近ハマってて、3冊目となりました、
    この魔術はささやくは少し変わった内容のミステリーに戸惑いながら読み進めるうちに物語がはっきりしてくる…そんな印象を受けました。

  • 2023.12.1読了。

    おそらく、初めて宮部みゆきさんの作品を読んだ。
    一度も読んだことがないからと思って、夏の新潮文庫の100冊の時に買っておいたもの。
    平成元年の12月に刊行されたそうなのでちょうど34年前の本。ケータイ電話やスマホが一切出てこないところが今と大きく違うと言えば違うけど、全く違和感なく読めた。
    主人公はつらい環境で育ってきたのにめちゃくちゃ前向きで良い子。色んな登場人物が代わる代わる各々の視点で過去や現在を語りながらラストに向かっていく形で書かれており、先が気になりおもしろかった。

  • この本のメインは謎解きではなく、裁く側にまわった守の心の揺れ動きであり、宮部みゆきの真髄を容易に受け入れることができた。「親父を殺したヤツなのに、僕にはできなかった。殺せないよ。笑っちゃうよ。」。過去に守の父親を誤って轢き殺した吉武に対する裁きを目前に心の動揺が感じ取れる。義父の逮捕、同級生からのいじめ、友人達からの助力、殺人回避、守にはあっという間の出来事であったが、彼の成長を余すところ無く全てが伝わった。父親が自首するつもりだったという下りは安堵と共に救いでした。5年振りに再読(図書館本)。

  • 30年前の作品にも関わらず色褪せていない。素晴らしい。
    ただ催眠術というのはどうかと思う。雑に読んでしまったからか、いまひとつ盛り上がれなかった。

全979件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

宮部みゆきの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮部 みゆき
宮部 みゆき
伊坂 幸太郎
宮部みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×