- Amazon.co.jp ・本 (311ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101369136
感想・レビュー・書評
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2015年2月19日読了。「このミステリーがすごい!」1992年度の第20位の作品。宮部みゆきの最初期の短編集。『火車』の原型になったと言われる、クレジットカードの多重債務を抱える女性の死の真相を追う『裏切らないで』や、得意の少年もの『聞こえていますか』『私はついてない』など、驚くほどレベルが高い。「見知らぬドライバーから『あの人だ!』と指差されたら?」「古い電話機に盗聴器が入っていたら?」など、魅力的な「if」を立てて、そこに人情と都会の寂しさ的な要素を絡めたストーリーを作るのが抜群にうまい人だ、うますぎてつるつる読めてしまうのが欠点だと思ってしまうくらい。
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息子の学校の「読書手帳」の課題だったので,彼のあとに読んでみた.(宮部みゆきさんの作品ははじめて)
1.返事はいらない:
ATMの盲点をついた(義憤による,とでもいう動機の)犯罪に,自殺しかけた傷心のOLが加担する.
2.ドルシネアにようこそ:
ドルシネアというのは高級ディスコの名前.そんなところに入れない青年が,表題のような伝言を渋谷(?)駅の白板に書いておいたら,レスポンスがあってーー
3.言わずにおいて:
「あ,あいつだ!」と車を運転していた見知らぬ男性が叫び,かれのクルマはそのまま壁かなにかにぶつかって炎上,乗っていた夫婦は死亡.名指しされたOLは,心当たりないよ,と訝りつつ,謎解きへ
4.聞こえていますか:
独居だった老人男性が亡くなったあとの家に引っ越して来た一家.そこの一人息子がひょんなことからその家にあった旧式の電話機にしこまれた盗聴器を発見!
5.裏切らないで:
軽佻浮薄な尻軽女が歩道橋から落ちて死亡.自殺か他殺か?→アパートのとなりに住む30代の女がけっきょく下手人だったのだが,その動機というのがおれになちょっとも理解できなかったです.
6.私はついてない:
これも軽佻浮薄な尻軽女の話.婚約指輪を借金のカタにとられてまっつぁおになるのだが,その指輪を巻き上げた職場の先輩OLというのが,”籠ぬけ詐欺”(=というのがあるんですな)を仕組んでいた.それを高校生が見破るのだ.
→どうしてこの種類の小説が,学校の課題になるのか「??」だったが,まあいろんな種類の本を読んで,活字に親しむ,ともかく読書習慣をつけましょう,というのは意味のあることだと思う. こういうストーリーなら,生徒諸君もたぶん楽しんで読むだろうし.
→※しかし,「この感想をさあ書きなさい」と言われると,どう書いていいんだか,ちょっとこまるかもね.
まさか 「おもしろかった」で済ますわけにはいきませぬし. -
短編集で、どれも良かったです。宮部さんの作品は、切ないけど、温かい。そこにミステリーが加味された、ついつい読み進めてしまう物語でした。何度でも読みたくなる一冊です。
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失恋からコンピューター犯罪の片棒を担ぐにいたる微妙な女性心理の動きを描く表題作。『火車』の原型ともいえる「裏切らないで」。切なくあたたかい「ドルシネアにようこそ」など6編を収録。日々の生活と幻想が交錯する東京。街と人の姿を鮮やかに描き、爽やかでハートウォーミングな読後感を残す。宮部みゆきワールドを確立し、その魅力の全てが凝縮された山本賞受賞前夜の作品集。
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とても、良かった。
宮部みゆきの現代小説では、一番だった。
ミステリーなので、悲しい出来事も起きるし、嫌な目にも合うが、終わり方が、良いので、読んだ後
気持ちがいい。 -
初の宮部みゆき作品。
「言わずにおいて」の主人公が上司に向かって啖呵を切ってしまったところは良かった。そしてその後の後悔している場面が一生懸命仕事して女としてを上手く表現していた。彼女の心情のの表し方が現実的で共感を覚えた。
短編集として全ての物語が意外な展開が面白かった。
2013.12.10読破 -
短編だけど、社会の闇を鋭く描かれていて、読了後、考えさせられるものばかり。時代を感じさせられるものもあるが、さすが社会派ミステリーがうまい宮部作品だなぁと思いました。
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短編で読みやすかったので、一気読みしてしまいました。
ちょっと切ない話が多かったのですが、読後はなにか爽快な感じがするのは宮部さんならではですね。
面白かったです。 -
宮部みゆきらしい短編集。
『返事はいらない』
付き合っていた男に振られるOL、銀行のキャッシュカードの磁気テープの暗証番号、狂言誘拐、その事件を追った刑事、そして。
今はもう解決された問題、懐かしさと切なさ。
『ドルネシアにようこそ』
今はヒルズ、で鬼っ子だった六本木駅も綺麗になしました。
そう、小さくて汚かったんだよね、前は。あの駅。
速記も駅の伝言板も消えていくもの。
『言わずにおいて』
自分を見て「あいつだ!」という言葉を残し事故を起こした車、
その事故で亡くなった夫婦を追いー、
この作品はひろげた風呂敷の畳み方は上手くないような気がするw
『聞こえてますか』
母親と祖母の嫁姑の不仲で引っ越した先の一軒家の電話で
不審な黒い機械を発見する少年。
前の住人はスパイ疑惑のあった老人、さてこれは。
『裏切らないで』
火車の前身のようなクレジットカードによる借金と、
「東京に住む若い女性」であることへの執着と苦しみ。
「お風呂に入ってるんです!」はこれでしたw
『私はついてない』
会社の先輩に借りた50万の借金のかたに婚約指輪を
とられてしまった従兄の為に奔走する男子高校生、そして。
どれもトリックよりも、物語を通じて人間のやるせない感情、
でも決して救いのない絶望は感じない、どこかで温かみの残る
実に、宮部みゆきらしい、短編集。