龍は眠る (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 10650
感想 : 797
  • Amazon.co.jp ・本 (537ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101369143

作品紹介・あらすじ

嵐の晩だった。雑誌記者の高坂昭吾は、車で東京に向かう道すがら、道端で自転車をパンクさせ、立ち往生していた少年を拾った。何となく不思議なところがあるその少年、稲村慎司は言った。「僕は超常能力者なんだ」。その言葉を証明するかのように、二人が走行中に遭遇した死亡事故の真相を語り始めた。それが全ての始まりだったのだ…宮部みゆきのブロックバスター待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • サイキック…小さい頃は、憧れてたな。今も変わりないと言えばそうやけど。
    でも、自分にはそんな力ないんで、何とか頭で考えて、突き進むしかないんやけどね^^;
    ここでは、眠れる龍と表現してる。誰でも一頭の龍を飼っていて、凄い力を持っているけど眠っているだけと。
    それがひとたび起きたら、祈る事しかできないと。
    起きたら大変な力で、自身を翻弄する。止められない…
    でも、この話しのように、龍が起きるのは、自身が苦しむかもしれんけど、良心のある、優しさのある人たちだけにして欲しいな。

  • SFなんだ…と思い読んでいく。
    中学生主役だと思って読むとそうじゃない。SF感が思いっきり全面に出てこず、私達にも通ずるヒューマンドラマを先行しながらSF要素を入れて、グイグイと引き込まれていく。

    私達にも言えるけど、人を信用するって中々難しいと思える。他にも相手の事がその時、相手は何を考え、感じていると不安になる事って多々ある…そんなとき相手の心が読めたら苦労しない…と考えるはずだし、何考えてるかわからん!と怒りさせ覚える事もあるが…

    この本を、わからないからこそ良いんだと思えた。もし、相手の考えがわかったら逆に苦しみだけが残るかもしれない。

    そして、私達の自分自身の能力ってわかってそうでわかってないのかな?それをどう上手く利用していくか考えるだけで自分の価値が変わるかと考えた。

    沢山本を、読みましたが中々ヒューマンドラマで良い作品だと私は思いました。
    流石、宮部さん!

  • 宮部みゆき初期の傑作。
    文庫化は1995年、初出は1991年(平成3年!)と30年も前に書かれた作品で、そこここに古さを感じる部分はあるものの、今でも十分面白く読むことができます。
    「古いけど十分面白い」を例えてみれば、好きだったアナログ時代のサスペンスドラマをBlu-rayで見ている感じ。最初の「うわっ、古っ」という第一印象を乗り越えればあとはぐんぐん引き込まれてラストまでノンストップです。

    【以下、ネタバレあります】













    そして、これは自分が「宮部みゆきにハマっている」ことを初めて自覚した作品です。

    もともと人から勧められて初めて読んでみた宮部作品「魔術はささやく」「返事はいらない」「レベル7」の3冊が面白く、新潮文庫のカバーの折り返しにある「宮部みゆきの本」を頼りに買ってきたのがこの本です。
    初読時は、スリリングでサスペンスフルなストーリーが面白く、人情味を感じさせる人間関係が導くハッピーエンドに感動して気持ちよく本を閉じることができる、という自分の宮部みゆきに対する「期待値」を100%満足させてくれて、大変楽しく読み終えることができました。

    今回は、「読んだはずなのに手元に本が無い」既読未登録のうちの一冊として買いなおし、久しぶりに再読したのですが、初読の時の感想と、一部分ではあるものの内容を覚えているのです。自分にしては珍しいことです。
    これは、当時ミステリ作家だと思いこんでいた宮部みゆきの作品が「超常能力者(サイキック)」を扱っていた意外性と、「発話障害を抱える人」と「人の心が読める超能力者」の交流(友情?)という卓越した着想に感心したことがとても大きかったからです。
    とりわけ印象的だったのは、高坂を心配して手話で「心配」と伝える七恵と、手話がわからないのに七恵の表情でその言わんとすることを察する高坂のシーン。サイキックでなくとも言葉を使わないコミュニケーションが成立する様子は、七恵と高坂の心の交流の細やかさを浮かび上がらせる反面、人の心が読めなくても発話ができない人と心を通わせることができる高坂の様子が、社会の中で居場所を無くして追い詰められていくサイキックへの追い討ちに感じられて、とにかく寂しかったのです。
    「てか、このシーンだけで小説1本書けるじゃん、どうせならサイキックと発話障害を抱える人を恋人関係にして、発話障害者視点かサイキック視点の話にすればいいのに」という当時の自分の感想をありありと思い出すことができます(後に「不器用な男が心の底に沈めた恋心まではサイキックでも読み取れない」話(「鳩笛草」)があって、ああ、ここに着地したんだと今これを書きながら気付きました)。
    サイキック達の身の振り方については、「社会に受け入れられないサイキック」の話として、筒井康隆の「家族八景」「七瀬再び」「エディプスの恋人」の七瀬三部作を思い出しながら読んでいたからでしょうか、どんどん狭いところに追い込まれていくような生活をつづけた七瀬が「エディプスの恋人」で迎えた悲劇的な最後に比べて、慎司や、最後まで人の役に立とう――社会に受け入れられようとしていた直也が意外に前向きで、やっぱり宮部みゆきは人情味のある大団円を書く人で、安心して読めるなあと、この頃はそんなことを思っていました。
    その後、「クロスファイア」できっちり引っ繰り返して見せてくれましたが…。まあ、どちらかと言えば自分は「クロスファイア」的な終わり方のほうが好みです。とんでもない能力を持った何でもできる人たちが世俗にまみれている様子は美しくないと感じてしまうのです。一年戦争後のアムロよりシャアの生き方のほうがドラマチックですよね。
    それか能力が失われていく様子が「アルジャーノンに花束を」を思い起こさせる「鳩笛草」か。

    一方で全体のストーリーやプロットはすっかり頭から蒸発していて、サスペンスとしては宮部みゆき作品を読むときの通例どおり、ページを繰る手が止まらずにラストまで一気に読み切ってしまいました。
    心に残ったゲームや映画などに対して、「記憶を消してもう一度楽しみたい」という賛辞が贈られることがありますが、この本の再読に関してはこの言葉どおり記憶を消してたっぷりと楽しむことができました。
    …と言えばいいことのように聞こえますが、初読の時に自分の悪い癖が出て、ストーリーの先が気になるあまり斜め読みや飛ばし読みを多用して一気読みした影響に違いないと思います。

    再読に当たってあまり先を急がずに読むようにしたら、ストーリーの勢いに押されて当時はあまり気にならなかったご都合主義や、古臭さが意外に目につくことに気づきました。
    特に「実行犯は金で雇われた名前もわからない人」設定は、またかぁ、そんな都合のいい人なんかいないよ…と思わされてなりません。初期作品にはこのパターン多いんですよね。「レベル7」や「ステップファザー・ステップ」にも出てきます。

    きっと、たくさんある「書きたいこと」(初期は、「〇〇みたいなもの」を書きたい…が多いように思えます。例えば「ハヤカワのポケミスみたいなもの」とか)が先走って、それ以外の要素が後回しになっているのでしょう。初期には、作品にこんな症状が見られる他、「シリーズ化してすぐに放置」という悪癖も目立ちます。
    「現代ものが書けなくなった」中期を抜けた近作ではこの辺りはようやく落ち着いたように思えます。
    …その代わり、1作品当たりの枚数が激増していますw。書きたいこと以外のディテールにも手を抜かなくなった影響ですね。

    一方で、意識的に採用したのであろうハードボイルド的な文体が次々と新たな展開が起きるこの作品のテンポの良さに大きく貢献していると思います。書こうと思えばとても饒舌にいろいろな描写ができる宮部みゆきですが、書かずにおこうと思えば削ぎ落すこともできる器用さには感嘆します。テンポ・疾走感を追求しすぎてそれ以外が疎かになってしまった「スナーク狩り」みたいな例もありますが…。
    また、過去に傷を持つ者同士が惹かれ合い結ばれるのも「ハードボイルドっぽさ」に磨きをかけています。

    ちなみに、自分は宮部みゆきのことを知ったばかりの頃は「ミステリ作家」だと思っていました。もちろん面白いミステリをたくさん書いているミステリ作家であることは間違いありませんが、作品をたくさん読んだ今では、宮部みゆきのホラーや超能力への傾倒を知っています(なにしろ、デビュー前の習作( http://osawa-office.co.jp/blog/miyabe/images/%E6%86%91%E3%81%8B%E3%82%8C%E3%81%9F%E5%AE%B6.pdf )がホラーです…)。
    なのに、近作ではあんなに好きだった超能力ものを見かけなくなりました。「クロスファイア」や「鳩笛草」、「蒲生亭事件」、時代物でも「あかんべえ」、「震える岩」や「天狗風」…。最後は「楽園」でしょうか。代わりに「悲嘆の門」みたいな「異世界もの」が目立ちます。意識的に時流に合わせているわけではないでしょうけれど、ラノベなんかの流行りと歩調を合わせているようで面白いですね。

    あと、再読するまでちょっとしっくりこないと思っていたのがタイトル「龍は眠る」。
    本文中で言及されているのは2ヶ所。一つを引用してみます。
    「我々は体のうちに、それぞれ一頭の龍を飼っている。底知れない力を秘めた、不可思議な形の、眠れる龍を。そしてひとたびその龍が起きだしたなら、できることはもう祈ることだけしかない。
     どうか、どうか、正しく生き延びることができますように。この身に恐ろしい災いの降りかかることがありませんように。
     私の内なる龍が、どうか私をお守りくださいますように――
     ただ、それだけを。(615ページ)」
    【龍】はサイキックのような「(超)能力」のことかと思っていましたが、そうではなく、「意志」のことでしょうか。
    直也が乗りこなせなかった龍を、慎司は無事に乗りこなせるでしょうか。川崎明男は暴走した龍に食われて身を滅ぼしました。高坂が抑えている龍は暴走したりしないでしょうか…、そんな含意を持つタイトル、でしょうかね。

  • 職場の上司から薦められたミステリー小説。
    宮部みゆきさんの長編ミステリー。
    人の心の中を読める超常能力者(サイキック)と共にとある台風の夜の死亡事故に遭遇し、その真相を明かされる。それが始まりだった。
    「こいつが犯人か?いやこいつか?」読みながら、自分の推理が二転三転する。そして複雑なトリックを解いた時の爽快感。ミステリー好きに是非薦めたい作品です。

    「我々は本当に、自分の中に一頭の龍を飼っているのかもしれません。底知れない力を秘めた、不可思議な姿の龍をね。それは眠っていたり、起きていたり、暴れていたり、病んでいたりする。」
    作中にとある刑事のワンフレーズ。
    ミステリー要素だけでなく、人間の苦悩や煩悩を描写している。サイキックも普通の人間も生き辛さを感じている点では同じ。そんな人間の心理も窺える作品でした。

  • ある台風の夜に通りかかった道で高坂は少年を拾う。偶然のりあげた口を開けたマンホールに危険を感じた矢先、台風に飛ばされる学童用の黄色い傘を見る。嫌な予感が走る中、拾った少年慎司が次々と漏らす言葉が示すものとは。
    そこからはじまる高坂と慎司の間についた傷や悲しみや信頼のお話。

    すっごい面白かった・・・。
    たくさんの人が出てくるんですが、それぞれが生き生きと自分の思った通りに動いていて、その中には「なんでそんなことするのかなぁ」な行動もあるんですが、それはそれなりに筋は通っている(というかわからないでもない)。
    いい人ばかりではなく、といって悪いことする人に理がないわけではなく。実社会に似ていて、受け入れるしかない世界。彼らがやることは悪意があったりなかったり、実を結んだり結ばなかったり。よくないことだけど、よくあることでもあるなーとか思いつつ読んでたら終わってた・・・!
    たとえば障害があったり、超能力を持ってしまっていたり、何もなくてもそこそこめんどくせーのに、何かあった場合もひとつ面倒でタイヘンなんだろうな、でも疲弊するだけの毎日じゃなければいいなと願いました。あなたも、わたしも。

  •  ある嵐の晩、雑誌記者の高坂は、自転車をパンクさせ立往生してしまっている稲村慎司という少年を拾うことになる。
     慎司を送り届けることにした高坂だが、その途中で子供がマンホールの穴に落ちたと思われる事故に遭遇。そのとき慎司は、その事故の真相を語り始める。慎司は超能力者で、事故の原因となった情景が見えたというのだ。高坂は、慎司の言う通り、犯人の車を探し始めるのだが……

     宮部さんのすごいところは、人物描写や心理描写もそうなのですが、登場人物それぞれが抱えるエピソードの分厚さもあると思います。上で簡単に書いたあらすじも、これはプロローグみたいなもので、短編、あるいは中編でも使えそうなプロットを惜しげもなく長編の中で使い、そしてそれを登場人物の葛藤を伝えるのに機能させ、なおかつ冗長に感じさせない、それが宮部さんの一番すごいところではないでしょうか。現にこの小説でも、最初のプロローグが、慎司の人間性や超能力を持ったが故の苦しみをしっかりと伝えてくるのです。

     そして、話は超能力を持った人物たちの真偽を探る展開に加え、高坂の過去を巻き込み二転三転としていきます。慎司の超能力を嘘だと言い切る青年や、高坂に届く謎の脅迫状、かつての婚約者の登場など、場面場面で謎や引きを配置し、どんどん読まされます。ほんと宮部さんの作品は、初期作からうまいなあ。

     サスペンスとしての引っ張り具合も一流ですが、ラストに至るまでの、ある登場人物の動きや心理も読んでいて泣かされます。サスペンスとしても、特殊な能力を持った人間のドラマとしても一級品の出来です!

    第45回日本推理作家協会賞
    1992年版このミステリーがすごい!4位

  • 宮部作品は結構読んでいるのですが、先日、BS11の読書番組で特集が組まれていて、読むつもりで購入済みだったので本棚から、数十冊の読みたい本の順番を早めて読んでみた。

    予想通りの宮部流の読ませるテクニックは、最高ですね。
    読みだすと長編なのにノンストップで最後まで・・・。本当に疲れます(笑)
     いつも思うのだが、読書中に、犯人が表れているのかいないのか?と思うのです。(本書の性格上明かせない内容ですが)読めないのではなく見えないのです。おそらく見えないように作り込んでいるのでしょうね。
    だから、興味津津と深々と我を忘れて没入してしまいます。そこに宮部作品の特徴があると感じました。

  • 家にあったので、何となく読み始めたら、少しずつ引き込まれ読み通してしまった。

    高坂さんが織田直也に頭の中で話しかけて、能力を使うことの大変さを実感するシーンが印象に残っている。織田直也の体の負担を理解して、読みながら心が痛くなった。

    このお話の終わり方は、ハッピーエンドと言えるのだろうか。
    綺麗すぎる終わり方ではなくて、そこがまた現実味があっていいなぁと思った。

  • 流石に今読むと設定や、台詞回しが古い印象は否めない。
    サイキックの設定からして、ミステリよりSFなのか?
    ちょっと、そのあたりもあいまい。

    物語も、もっとギュッと密度を上げることができたのかもしれない。キャラの印象付けがくりかえされ、若干くどいような印象を受ける。好みの問題だろうか。
    味付けで言うとかなり濃い目。

  • 二人の不思議な能力を持つ少年と
    二人の犯罪行為に苦しむ青年と
    主人公に愛された二人の女性のお話。



    読みやすさは勿論なのですが、「能力者ストーリー」と知っていたので
    変に考えながら読むことも無く、素直に楽しめたのでした。

    登場人物の一人一人にちゃんと歴史と感傷があって
    「今までこうだったんだろうな」と言うのが想像できるのです

    とんでもなキャラクターやとんでもな設定。
    好きなのですけどね。はい。

    SFや能力物と言うと、上遠野浩平が真っ先に浮かんだのですが
    そう言うファンタジーではなく、どちらかと言うと
    リプレイものの様に、サイキックな内容なのです。

    主人公は至って一般の(?)雑誌記者。
    その主人公と偶然出会って事件に巻き込まれ、心を通わせていくのがサイキック少年。
    ドラマの『メンタリスト』と言った感じでしょうか

    好きなのですよ。パトリックジェーン。
    ただパトリックジェーンは何て言うか意地悪で……とそれは別の話。

    「そう言うものだから」と念頭に置いておけば、特に疑問も無く二人の少年を思い浮かべることが出来るのです。

    ストーリーはだいたい予想通りに進んでいくのですが
    文頭での予告通り、切ない別れと喪失感は、悲しいながらもそれでも前向きに生きて行くんだろうなって、残った人達の負った傷の深さをしみじみと感じさせてくれるのでした

    タイトルの『龍は眠る』なのですが
    誰の「龍」の事だったのでしょう。
    読み終わった後、やっぱり考えてしまったのです。

    そしてやっぱり所々に見える女性ならではなのか、宮部みゆきならではなのか

    女性についての、はっと息を飲む表現が良いのですよね
    引用はしないのですが
    主人公と元婚約者の会話での事だったり
    主人公と同僚の、秘書に関する会話だったり
    思わず2度3度と読み直してしまうほど。

    こう言う表現や主張は今まで読んだことなかったなーと、宮部みゆきを読んで発見することが多々あったのでした。


    次は連城三紀彦を読むことになりそうなのですが、「蒲生邸~」先に読みたいのです。見つからないのですが。

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。87年「我らが隣人の犯罪」でオール読物新人賞を受賞。『龍は眠る』(日本推理作家協会賞)、『本所深川ふしぎ草子』(吉川英治文学新人賞)、『火車』(山本周五郎賞)、『理由』(直木賞)ほか著書、受賞歴多数。

「2021年 『ブレイブ・ストーリー 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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