火車 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 2293
  • Amazon.co.jp ・本 (590ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101369181

作品紹介・あらすじ

休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して-なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか?いったい彼女は何者なのか?謎を解く鍵は、カード会社の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 20年ぶりの再読。
    1980年代後半から90年代にかけての懐かしい風景がよみがえってきた。まだ携帯電話が普及していない時代。人々のコミュニケーションの濃密さ、人間臭さに引き込まれていった。休職中の刑事、本間は、さほど仲のいいわけでもない従兄弟のため、私生活をなげうって失踪した「彼女」を探す。途中で知り合った保もまた、真相を突き止めたい強い思いから、本間に協力。さらに、本間の息子である智や、彼の面倒を見てくれる近所の夫妻、本間を助ける同僚の碇など、互いが互いのために動くのだ。(一体みんな、どこまでおせっかいなの?と言いたくなった。)

    本書の中心は、第三者になりすます女性、多重債務の問題である。物語は一貫して「喬子」を追う。遠い昔読んだ時は、最後に彼女がどのように姿を現すかに焦点を当てていたと思う。

    今回の読書では、作者、宮部みゆきさんの登場人物に向ける公平な眼差しに心が温かくなった。加害者、被害者の別なく、人間性に対して客観的、という意味である。

    再読のきっかけは同タイトルの韓国映画だった。映画を観ても遠い昔に読んだ本書を思い出せず、もどかしかったからだ。結果的には、内容を忘れていたからこそ、映画も、その後に読んだ物語も両方楽しめたのだと思う。

    あと20年もたてば本書の内容をかなり忘れているだろう。そのころ再読してみよう。時代の変遷をどのように感じることができるか、今から楽しみだ。

  • 韓国でリメイクされたのを観て面白くて、原作も読むことに。細かい設定、結末は映画とは違うものの大筋はあらかた同じで映画、原作と どちらもオリジナリティがあって楽しめた。

    カード、ことにクレジットカードって現金と違ってその場で札や小銭を出すものではないから、実際にはお金を使ってるんだけれど、使ってる意識がないというのは私も経験があって。
    自己破産はないけれど、カードの明細を見て、あっ!こんなに使ってたのか。。。ちょっと使いすぎたなぁ。と後悔した事は、何度かある。しかも、忘れた頃にカードの引き落としはやってくる。
    これが、クレジットカードの怖さかと思う。

    今でこそ自己破産という言葉、債務のご相談は〜なんていう弁護士事務所のCMも頻繁に耳にする。ただ、この物語の中ではそれがまだあまりメジャーじゃないようで、少しびっくりした。

    にしても、新城 喬子とは怖い女だ。彼女、出自が決して良いとは言えないし寧ろ、親のせいで自分の人生が狂ってしまったのは気の毒。気の毒だけれどだからって、そこまでするなんてあまりにもその犠牲になった人間が可哀想ではないだろうか。。。

  • 私はめったに、「この本読んだらいいよ」と人には勧めません。でも、この本を読んだことがない人は是非読んでみてください。単なる連続殺人や派手なトリックではなく、深く考えさせられます。
    感想を一言で言うと、「スゴイ!」です。もう、完全に脱帽です。一つ一つの文章自体はひねった比喩が使われているわけでもなく、淡々と書かれているのに、冒頭から引きこまれます。言葉の選び方にも彼女の洗練されたセンスが表れていますが、間の取り方や切り替えが絶妙なんです。
    ミステリーって、状況や登場人物を把握しないといけないですし、手がかりや伏線を見逃すまいと読むので、小説の最初の部分は面倒くさいのです。私が洋物ミステリーがあまり好きでない理由もここです。登場人物の慣れない横文字名を覚えていくだけで、疲れてしまいます。
    冒頭に大きな爆弾がドッカーンと落ちてそのままエンディングまで見逃せない、という東野圭吾さんのスタイルと、すーっとクレッシェンドがかかっていく宮部さんのスタイル。他人のアイデンティティを乗っ取る話は、東野さんの「幻夜」にもありました。二人とも、賢い悪女を描くのがお上手。東野さんが書く悪女は、得体の知れない女で、よく男が翻弄されてます(笑)。
    この本のテーマは「借金がいかに人生に影響するか」です。これから読む人のために詳しく書きませんが、印象に残った箇所は、自己破産が急増した背景には、昭和50年代後半のマイホームブームがあったという部分です。家を持つのが、一般市民であるサラリーマン達の一生をかけて実現する夢でした。これはまさにここ数年アメリカやイギリスが経験した不動産バブルと、払いきれなくなったローンが原因の破産を思い出させます。また、蛇がなぜ何度も脱皮するのか、という部分も面白かったです。今度こそ足が生えるはず、と思っていると。
    宮部さんがあとがきで、「大阪弁のチェックは東野圭吾さんに、大阪の街案内は高村薫さんにお世話になりました」とあり、私の大好きな作家達と付き合いがあることを知って嬉しくなりました。宮部さんは歴史小説も書かれているので、今度読んでみようと思います。

  • 3回目の読了。前回読んだのは6‐7年前だがストーリーはだいたい覚えてた。しかし、先がわかっていてもおもしろい。
    主人公である犯人自体は、最後の最後まで登場しないで話が展開していく。少しずつ、ちょっとしたことがきっかけで謎が解けていき、推理がいきずまってはまた進み、最後に犯人にたどりつく。

    昭和の終わりごろが時代背景なので少し古い感じがするが、自分としては同世代なので、かえってそこも共感ポイントとなる。

    個人的には宮部みゆき作品の中のNo.1、現代ミステリーの最高傑作だと思う。

    また、何年後かに読んでみたい。

  • 溝口弁護士のモデルになった人が宇都宮健二さんだったとは笑 タイムリーで少し驚きました。

  • タイムリーだったのかもしれない。「現実を知る」ことについて最近よく考えていたから。
    「成熟する」ということなんだろうか。難しい。
    多分、困難と向き合うことが必要になるから。
    夢だけ見てた自分から、困難、厳しさという現実を経験する。知る。
    するとどうなるのか、「自分を守る」力が身につくかもしれない。無謀なことはしなくなるから。
    でも、それだけじゃない。もっと大きい変化があるんじゃないか。
    意識して「知る前」に戻すことが必要なこともあるかもしれない。
    でも、そうだとしても、「知らないままでよかった」とは思わない。全てを知って、成熟していく。自分が芯から変化していく。
    その変化は「知る前」の自分では決して手に入れることができなかったものなのだから。

  • すごい!
    読み応え十分!!

    朝から晩までかかったけど1日で一気読み。
    徐々に核心にせまっていくので、おもしろくて読み飽きない。読み終わっての余韻もいい。

  • 最後、
    そこで終るか!!と
    思わず口に出してしました。

    もう少し書いて欲しかったような・・・

    いや、この終りがとてもいいのかもしれません。

    クレジットカードを持つことが当然の今、
    完全に別世界ともいえないような、
    また、別世界と言えるような。

    読み応えのあった一冊です。

    彼女はどんなに美しかったのでしょうか。。。

  • 朝日新聞が識者120人のアンケートによって「平成の30冊」を選んだそうな。
    “識者”というのが曲者で、どうしてこう小難しそうなものが並ぶのだろうと思ったが、その中から4位タイに並んだエンタメ系と思しき2冊をTSUTAYAで買い、まずはこの本から読み始める。

    甥から失踪した婚約者探しを頼まれた休職中の刑事・本間。
    調べを進める内に、頼まれて探している「関根彰子」は本当の「関根彰子」ではないことが明らかになり、もはや甥の依頼とは関係なく真偽二人の「関根彰子」を追っていく。
    本間が行く先々で当たる人々が悉く有益な情報をもたらしてくれるのがうまく行き過ぎで、個人情報保護法が行き渡った今ならとてもこうはいかないと思うが、そこらには目をつぶるとして、結構面白く読めた。
    本間が自分でどうしてこの事案を追うのかと自問する場面があるが、その時結論付けたように、登場人物にも読者にも共通してあるのは”好奇心”なんだろうか。色んな人のつながりを手繰り、「新城喬子」に辿り着く。
    そこにあったのは、借金地獄の悲惨。そして、自分の身に降りかかったことを、歪んだ形でしか外に向けて清算出来ない人の哀しさ。
    前半語られる「関根彰子」の生涯も憐れだが、後半明らかになる「新城喬子」の人生の凄惨さも哀れ。
    物語が解きほぐれかけてからも、様々な”何故””どうやって”は残ったまま、最後にはきれいに回収されて見事な収束。
    確かに本間同様に、「新城喬子」がひそかに積み上げてきた話を聞いてみたいと思わせる終景に余韻あり。

    小難しそうなラインアップからエンタメ系を選んだつもりだったが、これも結構社会派だったのだった。

  • クレジットカード社会に関わった題材であるため専門的な用語や説明が多いので読み慣れていないと厳しいと感じた。
    けれどその分複雑な仕掛けが施されていて読み応えは十分。

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著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。
1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。
大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。
『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。2018年10月、『宮部みゆき 全一冊』を刊行。

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