幻色江戸ごよみ (新潮文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784101369198

感想・レビュー・書評

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  • 江戸の四季折々の行事や情景を含ませながら、長屋住まいの、貧しくも健気に生きる人達を 怪異等の幻色に染めて描く短編集。巧いなあと思う。
    短編とはいえ、一編ずつ江戸の庶民の生活の趣向を変えて、濃いお話になっています。江戸時代の厳しさもあり、全てがハッピーな話ではありませんが、全体のバランスが良いかと思います。
    第二話の紅の玉が、切なく良い。貧しい飾り職人が、高額な飾りかんざしの作成を引き受ける。丹精込めた作品に、自分の名を入れる。しかし、そのかんざしは、仇討ちの際に使われてしまう。病気がちな妻を残して、男は捕えられることになる。理不尽な悲劇。
    12話あるので、12ヶ月かなと思って、月を確定できる行事を気をつけて読んだつもりですが、
    7月と9月が複数あるかな。第二話は、王子の初午が出てくるので、2月だと思います。
    江戸ごよみですので、四季を楽しめます。

    • みんみんさん
      おびさん夜分遅くに失礼♪
      時代小説を読む時はちょっぴり姿勢を正して読むわたしです(^ ^)
      時々無性に読みたくなる♪
      おびさん夜分遅くに失礼♪
      時代小説を読む時はちょっぴり姿勢を正して読むわたしです(^ ^)
      時々無性に読みたくなる♪
      2023/04/29
    • おびのりさん
      おはようございます。
      なるほど、わかる気がします。史実が多い系は、つい調べながらで、もたつきます。
      先日、川端康成の古都を読んだ時は、読み始...
      おはようございます。
      なるほど、わかる気がします。史実が多い系は、つい調べながらで、もたつきます。
      先日、川端康成の古都を読んだ時は、読み始めて、着物の話になるので、まだ着物着れるか心配になって、突然着付けて、着物着たまましばらく読みました。あとは、虫干しでーす。
      2023/04/29
    • みんみんさん
      朝っぱらから笑わせないでください( ̄▽ ̄)
      着物がたくさん箪笥の肥やしになってます〜♪
      岩下志麻ばりの渋いヤツ笑笑
      朝っぱらから笑わせないでください( ̄▽ ̄)
      着物がたくさん箪笥の肥やしになってます〜♪
      岩下志麻ばりの渋いヤツ笑笑
      2023/04/29
  • 摩訶不思議な物語。
    12話を短文でまとめてみました。

    【鬼子母火】
    娘が、亡くなった母の髪の毛を神棚の注連縄に隠すと、そこから火が出て仏間が燃える。

    【紅の玉】
    嫁に行く孫娘に美しい紅珊瑚を簪にと、作った錺職人の佐吉に降りかかる災難とは。

    【春花秋灯】
    嫁に行った娘の祝いに作った昇竜の行灯が、夫婦が夜毎ことに及ぶとあかあかと灯る。

    【器量のぞみ】
    醜女(しこめ)のお信は、美男に美しい女と言われて嫁に行く。そこには、ある女の怨念が。

    【庄助の夜着(よぎ 寝具用の綿の入った着物)】
    庄助は、夜着を買ってから幽霊を見るようになり、その幽霊に恋をして痩せていく。

    【まひごのしるべ】
    たえは、我が子を死なせた。その代わりに攫った子を育てていたが、その子が居なくなった。

    【だるま猫】
    臆病者の火消の角蔵は、火事場が怖く。だるま猫の頭巾を被ると。目が黄色く爛爛と輝く。

    【小袖の手】
    孤独な三造は、小袖と話をしている。三造しかいないのに小袖から手が伸びてくる。

    【首吊り御本尊】
    奉公が辛くて死のうとする小僧に、お店の隠居が怪異な首吊り御本尊の話をする。

    【神無月(十月)】
    毎年、神無月に盗みを行なう盗人と、その盗みを止めさせようとする岡っ引きが。

    【侘助の花】
    行灯に描いた侘助の花が話題になり、嘘の隠し子の話をしたら。隠し子があらわれた。

    【紙吹雪】
    金貸しに借りた金が返済できずに自殺した親子の生き残りの娘が、金貸しに復讐する。

    【読後】
    面白くて笑いがでて、悲しくて涙がでて、恐くて背筋が寒くなったりしながら。テンポもよく、読みやすく。本当に、よくここまでいろんな話を作れるなと思いながら、いろんな思いを抱きながら12話の怪異な物語を読み終りました。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    【音読】
    2022年10月1日から12日まで、音読で宮部みゆきさんの「幻色江戸ごよみ」を大活字本で読みました。この大活字本の底本は、1998年9月に新潮文庫から発行された「幻色江戸ごよみ」です。本の登録は、新潮文庫で行います。埼玉福祉会発行の大活字本は、上下巻の2冊からなっています。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    幻色江戸ごよみ
    2000.09埼玉福祉会発行。字の大きさは…大活字。
    2022.10.01~12音読で読了。★★★★☆
    鬼子母火、紅の玉、春花秋灯、器量のぞみ、庄助の夜着、まひごのしるべ、だるま猫、小袖の手、首吊り御本尊、神無月、侘助の花、紙吹雪、の超短編12話。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

  • 12の怪異と人情の混じり合い短編集の一冊。

    一話目から、巧いね〜と思わざるを得ない。

    そこかしこに誰もが持っている人の心をひょいとさらって怪異とコラボ、さすがだ。「春夏秋燈」と「小袖の手」の一人語りでゾクり感を醸し出す魅せ方も巧い。  

    なんだか蝋燭の火がちらちら心もとなく揺れながら、ふっと消えるような、そんなさまがちょいとした怖さを残すようで…。

    終盤は心情人情色が濃さを増してくる。「神無月」の神様の絡め方とせつない余韻がたまらない。「紙吹雪」の終幕は茜色の空、情景とせつなさがいつまでも心に残る、深い味わい。

  • 妖しげな幽鬼がただよう江戸下町を舞台背景に、困窮生活に喘ぐ薄幸の老若男女の人情と哀歓を、切々と語り紡いだ<宮部ワールド>12編の短編集です。 「神無月 (第十話)」と「紙吹雪 (第十二話)」に登場する人物には、憐みをこえた深い想い入れに胸が焦げつきます。 生きていたなら〝情状酌量〟のお裁きを願いたくなる、そんな哀切あふれる作品です。

  • 12編の短編を1月~12月の風物に事寄せた短編集。作者の時代物の書かれた順で言えば、「かまいたち」、「本所深川ふしぎ草紙」に次ぐ3冊目となるようです。

    収録作のうち、数本の突出した出来がまず目立ちます。「器量のぞみ」「神無月」のどちらかは、きっと多くの人が「この本で一番心に残った」一本にあげることでしょう。この二本に加え、自分は「紙吹雪」の凄みを推しておきたいと思います。これらはいずれも、内容ももちろんですが、それ以上に表現の力を感じます。読者が望んだ一言をラスト一行でポンと投げ出してみた「器量のぞみ」、現在形で書かれ疾走感(時代物に疾走感です!)を感じる「神無月」、そして聞き書き(インタビュー)と一人称でヒロインの行動を浮き彫りにした「紙吹雪」、いずれもこれまで読んだ最初期の作品を超える表現力だと感じました。

    もう一つ、この作品の前後で繰り返し作者に取り上げられているテーマが目に付きます。遠慮なく作者が好きなこと、書きたかったことを書いているようで、面白くなるのは当然です。
    「庄助の夜着」の恋心を物の怪に紛らわすさまは「送り提灯」を、「だるま猫」の猫頭巾所有者の末路は「猿の手」を思わせ、「小袖の手」の女の情念が纏わりつく小袖と袋物売りは「天狗風」の原型です。

    ただ、作品の傾向がバラバラなのはなぜだろうと思います。「幻色」なので全て怪異が扱われているのかと思ったら、「紅の玉」や「まひごのしるべ」など怪異のかけらもない作品も混じっています。また「こよみ」に関しても、「器量のぞみ」から「首吊りご本尊」にかけては季節色が薄く、風物も出てこないように思えます。怪異については「本所深川ふしぎ草紙」に、風物に関しては「初ものがたり」に引けをとっているように思えて、ちょっと残念です。

    以下、各話に一言ずつ。

    「鬼子母火」
    おっかさんの遺髪をお札と一緒に神棚に飾ってもらえば「お灯明も上げてもらえるし、お榊も飾ってもらえるし、お餅も供えてもらえるし」という発想がいじらしい。
    巻頭作のこの1本で、「暦+怪異+人情話」の12編で編まれた1冊、という印象を植え付けた、のだろうと思ったんだけど…。

    「紅の玉」
    他の11本と比べ、突出して救いの無い1本。怪異も登場しません。「余計な功名心で身を滅ぼす」展開が、作者の好きなホラーにあるのかとも思いましたが、そうでもなさそうです。
    せっかくの巻頭作で作った印象があいまいになってしまいました。

    「春花秋燈」
    一人称の語りが落語を聴いているかのよう。
    因果応報の話と本人たちには深刻で笑っちゃいけないけれどでもちょっと笑える艶笑話の2本が楽しめます。どちらも膨らませることができそうなネタなので、近作で読めるかも。

    「器量のぞみ」
    この1冊を読んだ人のほとんどが「これがよかった」にあげるであろう一編。読者が「こうなってほしい」「多分こうなるだろう」と考えるだろう結末どおりで意外性がまったく無いにもかかわらず、簡潔な表現で「落ち」になっているのが見事です。

    「庄助の夜着」
    物の怪に恋心を紛らせるのは「本所深川ふしぎ草紙」の「送り提灯」にもありました。
    世界の善きものをすべて集めたような「こういう男をつかまえて役立たずと呼ぶのなら、世の中は役立たずで足の踏み場もなくなってしまう」ような庄助は、どこから来てどこに行ったのか気になります。伏線があるわけではありませんが、昔五郎兵衛が助けた狐狸の類って言われたらしっくりくるような、そんな素朴さ善良さです。

    「まひごのしるべ」
    まひごのしるべ=迷子の標。迷子を「捜しています」「預かっています」が行き交う当時の掲示板です。
    自分が子を持って初めて子を亡くした親の思いが身に染みて想像できるようになりました。自分だったら耐えられない…。

    「だるま猫」
    プロットに違いはありますが、猫頭巾が人手から人手へ渡っていく様子に「猿の手」を思い出しました。
    「臆病な自分を認めよ、それから逃げてはいけない」のはそのとおりかもしれませんが、でもちょっと説教くさいかな。どちらかと言えばそれができずに破滅していくほうに共感してしまいます。

    「小袖の手」
    女の情念が宿った萌黄色の小袖と袋物売りはそっくり「天狗風」のプロットになっています。
    周囲が何と言おうと、三造にとってこの結末は本望だったんでしょう。「孤独は死に至る病」とはホロの台詞ですが、孤独は孤独から脱出して初めて孤独であることの辛さを痛感するものです。気ままだった頃の孤独に遠い憧れを抱きつつ、自分はもう二度とそこには戻れません。

    「首吊り御本尊」
    奉公辛い話。
    帰る家が無いと実感することは、幼い子供にとってどんなに辛かったろうと思います。

    「神無月」
    現在形で書かれた「疾走感のある時代物」。なかなか珍しいと思います。どうなったか結末が書かれていないのも疾走感を盛り上げます。
    でも、「器量のぞみ」同様、読者がこうなってほしいと思うラストが待っていることでしょう、きっと。
    事件の概要を聞いただけで真相に辿り着く飲み屋の親父は「初ものがたり」の稲荷寿司屋の親父を思わせます。あと、文庫の表紙はこの作品をモチーフにしているのでしょうけれど、一冊読み終わらないとわからない、というか読み終わってからでもこのイラストってどの作品なんだろう、ってよく考えないとわからない感じです。

    「侘助の花」
    寂しい心に生き別れの家族という作り話がするっととり憑いてしまった囲われ者の話。
    彼女はどこへいってどうしているのか、知らないほうがいいに決まっていますがでも気になって仕方がありません。

    「紙吹雪」
    一人称の語りと聞き書きで事件を見事に浮き彫りにした作品。夕陽に照らされ、木枯らしに吹かれながら、屋根の上から紙吹雪を撒く姿に凄みを感じます。
    てか、これ時代物でなく現代ものでもまったく同じプロットで本が一冊書けますよね。…火車?

  • 江戸庶民の暮らしの中の出来事を描く12の話からなる短編集。
    第一話 鬼子母火・・・小火の原因は?母の、子の想いが胸を打つ。
    第二話 紅の玉・・・御禁制のかんざしを注文した侍の真の目的。
    第三話 春花秋燈・・・二つの行灯、それぞれに秘められた話。
    第四話 器量のぞみ・・・醜女のお信が嫁いだ家の呪い。器量とは?
    第五話 庄助の夜着・・・幽霊に恋した庄助。だが本当の想いは。
    第六話 まひごのしるべ・・・この子何処の子、迷子の子。母の悲哀。
    第七話 だるま猫・・・火事場で勇気を与える猫頭巾の怖ろしき代償。
    第八話 小袖の手・・・妖か、霊か?古着の小袖から覗く白い手。
    第九話 首吊り御本尊・・・辛抱を教える御本尊が現れる姿は首吊り!
    第十話 神無月・・・娘のために。捕らえるために。行動する理由。
    第十一話 侘助の花・・・淡い恋の想い出が赤の他人に影響を・・・。
    第十二話 紙吹雪・・・一世一代の晴れ舞台。過去はこの日のために。
    暦を例えに、12の江戸庶民の生活を描いた短編集です。
    神仏や妖、霊が身近に感じられた時代、締め付けるお上も妖怪か。
    江戸庶民のささやかな生活に潜む、不可解な出来事、不条理。
    短い話の中に、日常を非日常に変える一瞬が描かれています。
    人だからこその喜怒哀楽。願うささやかな幸福。
    だが、一瞬で壊れてしまうモノ有り、一瞬で知る真理有り。
    憑りつかれて死ぬ一瞬は果たして幸せだったのか。
    短編の特性を活かした無駄の無い文章は、
    奥が深いし、味わいのあるものでした。

  • 宮部さんの歴史小説は、引き算の美学とでもいいましょうか。書き過ぎず、説明し過ぎず。魅かれます。情景、人間関係、心情もあまり細々と読者を説得しようとせず、一定の距離をもって、さらりと書いているので、逆にこちらがあれこれと思いを巡らせて、豊かな時間を過ごせます。科学や技術で説明のつかないことが多かった時代、人の執念、怨念、業などがきっと形を変えて、こうした物語になったのだろうなとどこかに自分の気持ちを重ねられました。「神無月」は新潮文庫「親不孝長屋」で既読でした。

  • 元々、怖い系の物語は好き好んで読まないが、本書は程よい具合にヒヤッとハラハラとでき、どの物語も楽しんで読めた。というのは、時代が江戸で現代とはかけ離れていて、非日常的に捉えることができたからなのだろうか。また、怖さのなかに感動がある物語や希望が見える物語も含まれていたからか。どちらにせよ、解説の縄田氏のおっしゃる通り、過去の時代は私たちの先祖が生きた証であるから日常のように捉えられることによってはじめて時代を知ることになるのだと感じた。
    多様な物語で、どの人の世界も味わい深かったが、特に「器量のぞみ」と「庄助の夜着」が印象に残っている。

  • この本読んだかな?読んでないかな・・・
    宮部さんにはこういう時代物の短編集が結構あるから、手に取り迷ってしまいましたが、読んだでたらまあやめればいいやと。
    かなり以前に出版されたものですが、なんと未読でありました。
    母親と死に別れて奉公に出た女の子、飾り職人の拵えた簪が引き起こす騒動、醜女と器量よしの基準がずれた話、火事で幼子を失った母親の悲哀、長らく使い込むほどに取りつくという付喪神の話、などなど、等々。
    どれもこれも、江戸の庶民が主人公の話です。
    悲しい、切ない、哀れ、人間の負の感情をえぐる話ばかりです。
    中でも「神無月」年に一度、国々の神様が出雲においでになるという10月に盗みを働く男、人は傷つけない、大層な額は盗らない、そんな男と、不審に思う岡っ引き、男の事情を知れば同情せずにはいられない。
    どうか今年も捕まらず、無事家に帰って欲しいと願ってしまうのです。

  • 宮部みゆきの時代小説。江戸時代の下町の人情あふれる話から背筋がぞっとする怪談話までを集めた12編。宮部みゆきは久しぶりに読んだがやはり面白い。これを機にもう少し読んでみたい。詳細→http://takeshi3017.chu.jp/file7/naiyou11005.html

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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