模倣犯1 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 7810
レビュー : 600
  • Amazon.co.jp ・本 (584ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101369242

作品紹介・あらすじ

墨田区・大川公園で若い女性の右腕とハンドバッグが発見された。やがてバッグの持主は、三ヵ月前に失踪した古川鞠子と判明するが、「犯人」は「右腕は鞠子のものじゃない」という電話をテレビ局にかけたうえ、鞠子の祖父・有馬義男にも接触をはかった。ほどなく鞠子は白骨死体となって見つかった-。未曾有の連続誘拐殺人事件を重層的に描いた現代ミステリの金字塔、いよいよ開幕。

感想・レビュー・書評

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  • 以下ネタバレあるかもです。

    この「模倣犯」は1995年から連載が開始され2005年から文庫が発売された、1冊500ページほどの文庫5冊からなる大部の作品です。

    再読です。
    文庫版が刊行されてすぐ購入し一読、今回改めて1巻から5巻までを通して再読、さらにもう一度1巻を読んだうえでこれを書いています。
    何でわざわざこんなことを断ったかというと、まずは本作のストーリーテリングの力のせいです。
    初めて読んだときは、その息をもつかせぬストーリー展開に夢中になり、一気呵成に読み進んでしまいました。いえ、一気呵成なんてかっこいいものではありません。実は、ストーリーの先を知りたいがあまり、途中ほぼ斜め読みや飛ばし読みになったところもあるほどで、何と「模倣犯」というタイトルの意味を読み返すまで思い出せなかったのですから、その力の凄まじさを感じる反面、自分の読み方の拙さが恥ずかしくなります。

    今回、逸る気持ちを抑えてきちんと内容や表現も追うつもりではあったのですが、それでも再読を始めるにあたってはやや抵抗がありました。ジェットコースターのようなストーリーのあちらこちらで、傷つけられる人々の多さと受ける傷の深さを覚えていたからです。
    勧善懲悪や傷ついた人たちへの救いと再生のようなものがこの大作の中心にはなってはいません。勝者が最後にかろうじて掴み取った勝利の証は、多くの人が当たり前のように手にしている平凡なものであったり、自分の心を振り返って覗き込む冷静さであったり、堪えていた想いを初めて表に出した泥酔しての号泣だったりします。いずれも勝者がそれまでに失ったものとは比べ物にならないささやかなものです。読み終えて溜飲が下がるようなものではありません。

    そんな中、再読に踏み切る背中を押してくれたのは、3巻の帯にある「究極のエンターテインメント」というコピーでした。
    酷い目に合わされる人たちはいるけれど、でもこれはエンターテインメントなんだ、彼らは最後には勝利するんだ、と自分に言い聞かせながら読み進めないと、冒頭の塚田真一のエピソードも、続く有馬義男のエピソードも、直接グロテスクな描写があるわけではないけれど「正視に耐えない」というか、彼らの心の裡を想像すると熟読するのが辛いエピソードが続きます。
    でもそれは最後の勝利の前振りだ、って自分に言い聞かせながら、1ページずつページを繰りました。

    そのようにして読み進むにつれ、この巻の中盤、有馬義男(彼こそがこの大部の作品の主人公だと、再読して思うようになりました)が犯人に振り回されているあたりから、ぼんやりと、この作品は「悪」対「善」の戦いなんだなあと思い始めました。

    なにしろ、有馬義男は日本中の善を集めるとこうなるというキャラクターを作者が造形しているように思える人です。単なる善人、お人よしではない、額に汗して実直に働き、人の話をよく聞き、その中のうさんくさいものをしっかり見抜く人です。その言動を武上に「ごく普通の人のごく普通の言葉、態度、生き方の在りように、いずまいを正さずにはいられないような気持ちになることもある」と評されています。

    宝物だった孫娘の死も、かつて美しかった一人娘が心を閉ざしてしまったことも、何十年と地元に根を張ってきた店が傾いてゆくことも、そして犯人グループからのあまりに酷い仕打ちも、社会正義の実現を叫びつつその実は中身はまったく空虚な前畑滋子をはじめとするマスコミたちも、義男を打ち負かすことはできません。
    迫り来る老いと死に対してさえも「酒も飲まず、煙草も止め、降圧剤はきちんと飲み、眠れない夜でも横になって体を休め、味気ない飯も薬だと思って喉に押し込」むような戦いを挑んでいます。

    そうしてとうとう義男は犯人グループに一撃を食らわせます。これは小さな一撃のようで実は蟻の一穴です。

    善の最初の勝利であり、その小ささに反して、再読を始めたときに思っていたのよりはるかに大きなカタルシスを感じました。
    なにしろ、この戦いは悪が圧倒的に有利です。警察が犯人チームを追い詰めるのには時間と手続きが必要で、攫って殺して埋めるだけの犯人に対し、警察は捜査して、資料を作って、逮捕して、マスコミ発表して、裁判をして勝訴し、刑を執行しなければなりません。
    不眠不休で捜査に当たる警察メンバーですが、読者はその職業的正義感を大きく超える献身に声援を送りつつも、歯がゆさを抑えることができません。
    そんな中で有馬義男は善が善であるゆえの世間知だとか常識だとか人生経験だとか、そういったもののみで悪に一撃を加えてくれました。
    再読をしてよかったと感じた瞬間です。


    一方の悪代表。
    犯人グループは自らのしていることをまったく悪いことだと思っていません。何かの劇かショーを演出しているだけ、状況を完璧にコントロールして楽しんでいる超越者を気取っています。
    それがいかに幼稚なものかは第二部で、そして善がいかにして不利な戦いを制して悪に打ち勝つかは第三部で語られています。

    最後に一言。
    宮部みゆきさんの小説は、初期の作品であっても古さを感じないものが多いのですが、本作については古さを痛感する部分があります。

    一つは喫煙。
    以前、ジブリの「風立ちぬ」で喫煙が話題になったことがありました。喫煙を推奨しているように見えるという禁煙ファシストの意見に、当時の時代感には欠かせない小道具だ、って常識的な意見が対立してました。
    本作では、作者がスモーカーだからか、喫煙者、喫煙シーンが多く、あまつさえ前畑滋子を初めとする女性の登場人物にも多くの喫煙者がいます。
    いい悪いではなく、ここに古さを感じてしまいます。
    もう一つは携帯電話を巡る状況。犯罪やその捜査を警察が行う状況では、どうしても携帯電話の有無がトリックやアリバイに大きな影響を与えます。本作は携帯電話が普及し始め、ポケベルもよく使われているという微妙な状況だけに、一層時代を感じてしまいます。

    逆にそんなことを感じない部分もあって、これはもうマスコミの愚かしさがそれ。30年近く前から、全く変わっていないその浅薄さ、浅ましさに今さらながら鼻白む思いです。

    蛇足ですが、エピグラフは「くじ」の一節。
    『贈る物語 Terror: みんな怖い話が大好き』(光文社文庫)(https://booklog.jp/users/hanemitsuru/archives/1/4334741630)で読むことができます。
    SNSでいい気になって石を投げているあなた、いつ逆に投げられる立場になるかわかりませんよ…。
    このエピグラフを1995年に引いた宮部みゆきが偉いのか、1995年のエピグラフが十分に通用する現代の私たちが愚かなのか、どちらでしょうね。

  • 【感想】
    多くの方に薦められていたものの、中々手出ししなかった宮部みゆきの代表作「模倣犯」にようやく着手。
    これまで「火車」「レベル7」等、色々と宮部みゆきの作品を読了したが、読み終わってみて本作「模倣犯」が宮部みゆきの作品の中で1番と評される理由が物凄く分かった気がする。
    (とは言っても、まだ5巻中1巻を読み終えたにすぎないが・・・笑)

    勿論、宮部みゆきの作品にはハズレがないというのは大前提として、、、
    ジャンルとしてミステリアスな作品が多いにも関わらず、宮部みゆき著の他作品にはどこか「おふざけ」というかユーモラスな台詞であったり箇所が多く存在している。
    だから、ある程度は朗らかに読めて息抜きの出来る、どこか滑稽なシーンも多いのが宮部みゆきスタイルだと思っていた。
    しかし、本作品「模倣犯」はそういった「ユーモラスさ」が今のところ殆ど見受けられない。
    読み進めていて心に響くのは、絶望感と恐怖だけだ。
    同作家の作品とは思えないほどに、見事に他作品と一線を画し、かつ異彩を放つ作品だと読んでいて肌で感じた。

    本作品は、残虐な連続誘拐殺人がテーマである。
    被害者の心情の移り変わりやや事件解決に手間取る警察の焦燥感、そしてコイツは愉快犯なのか?と疑うくらいの犯人の人物像とその手口。
    勿論、この事件と(現時点では)直接関係のない登場人物も多く出てはいるが、この本を通して共通して言えるのは「世の中には自分や世間の価値観とこうも異なる人間が一定数は存在する」という事実である。
    フィクションではあると充分承知の上で尚、この世の中は本当に何を考えているか分からない人が多くて怖いなと改めて実感し、戦慄したなぁ・・・・

    また、5巻中の1巻と思えないくらいに次々と急展開していく話の構成には、読んでいて鳥肌が立つ。
    ・冒頭、公園のゴミ箱から切断された腕が発見されたシーン。
    ・TV番組での犯人との2回目の通話時に、「こいつ、人が変わっていないか?」と武上が気づくシーン。
    ・巻末畳みかけるようなストーリーのスピードの中で、ガラっと急展開するような、容疑者2人の遺体発見シーンなどなど・・・
    中でも特に、個人的に衝撃が走ったのは、やはり古川鞠子の遺体発見シーンだ。
    何の進捗もなく膠着状態が続き、1週間という時間がただただ流れていったような描写からの「古川鞠子の遺体が出た。」の一文。ある程度覚悟していた状況ではあったが、本当にゾっとした。。。

    というわけで、寝る間も惜しんで読み終えた1巻目だったが、個人的に消化不良の気が強い。
    回収されていない伏線だらけだし、そもそもまだまだ明かされていない謎が多いし、1巻の呆気ない終わり方が故に続きがとても気になる!!
    そして、宮部みゆきならではの、「凝ったタイトルに対する伏線回収」がまだされていないではないか!!
    1巻を読んだ限りでは、タイトルである「模倣犯」の理由すら分からない。それが1番の消化不良の原因だ。

    とにかく、すぐにでも続きを読みたい!!!!


    【あらすじ】
    墨田区・大川公園で若い女性の右腕とハンドバッグが発見された。
    やがてバッグの持主は、三ヵ月前に失踪した古川鞠子と判明するが、「犯人」は「右腕は鞠子のものじゃない」という電話をテレビ局にかけたうえ、鞠子の祖父・有馬義男にも接触をはかった。
    ほどなく鞠子は白骨死体となって見つかった――。

    未曾有の連続誘拐殺人事件を重層的に描いた現代ミステリの金字塔、いよいよ開幕!



    【内容抜粋】
    1.思わず顔をしかめた真一は、キングの強い顎に噛みしめられ、紙袋から引っぱり出されたものの正体を、まともに目にした。
    人間の手だった。肘から下。指先が真一の方を向いていた。こちらを指さし、差し招くかのように。訴えかけるかのように。

    2.武上をデスクとして有能たらしめている所以は、実はこの記憶力にもあった。
    映像的というより、どちらかといえば活字的な記憶力ではあったが、多くの事象が彼の頭の中にコンパクトにたたまれて収納されており、彼はそれらを一瞬で引き出すことができる。
    誰かが質問に来ることも多いが、武上はすぐに答える。そして堆く(うずたかく)積み重なっているファイルの中から目的の調書を取り出し、相手の目当ての言葉が述べられているページをすぐに開いて差し出す。
    相手が驚きつつそのファイルのページをめくり始める頃には、武上はもう次の仕事にかかっている。

    3.それから一週間後のことである。
    進展のないままの一週間、すべてが水面下の一週間、膠着状態でありながら瞬く間の一週間、(中略)
    マスコミ方面においても、犯人が再び有馬家に電話してきたという事実の衝撃もいくらか薄らいだその一週間の後ーー
    古川鞠子の遺体が出た。

    4.この世に満ち溢れているのは、みんな犠牲者ばっかりだ。真一は考えた。それならば、本当に闘うべき「敵」は、一体どこにいるのだろう。

    5.ふたりのやりとりを聞いていて、唐突に、ふと寒気が走るような感覚と共に、武上は思いついた。
    こいつ、人が変わっていないか?
    こねている理屈に変化はない。事件関係者やマスコミに対する斜(はす)に構えた姿勢も同じだ。そして同じきいきい声だ。言葉遣いも変わっちゃいない。
    だがしかし、何かが違う。微妙だけれど、決定的に違うような気がする。コマーシャルに邪魔されたことで怒って電話を切った人物と、今ここで評論家とやりあっている人物が同一人物だとは、武上には思えないのだ。

    今までの奴は、余裕たっぷりの様子をつくろいながらも、いつだって自分かま一番熱くなってしまっていた。確かに頭は悪くないが、ちょっとしたことですぐカッとなり、言葉遣いも乱れた。
    しかし、このきいきい声の主は違う。今までの奴よりもずっとーーそう、ずっと「大人」だ。

    6.犯罪者に限らず、ある種の事件を起こし易いタイプの人間をして事件の方向へ向かわしめるのは、激情でも我執でも金銭欲でもない。「英雄願望」だ。
    酔っ払って喧嘩の挙句他人を殴り殺してしまうのも、銃器を手に強盗に入った先で必要もなく人質を撃ち殺してしまうのも、(中略)すべては英雄願望のためだ。
    自分は英雄だ、ほかの連中とは違う、俺は英雄なのだ、きっとそうなのだ、その俺様に向かって注意をするとは何事だ、盾突くのは生意気だーー。



    【引用】
    模倣犯

    呆気ない終わり方が故に、つづきがとてもきになる!!
    タイトルは??




    p19
    思わず顔をしかめた真一は、キングの強い顎に噛みしめられ、紙袋から引っぱり出されたものの正体を、まともに目にした。
    人間の手だった。肘から下。指先が真一の方を向いていた。こちらを指さし、差し招くかのように。訴えかけるかのように。

    キングの飼い主が、早朝の空気を切り裂くような鋭い悲鳴をあげ始めた。棒立ちになったまま、真一は反射的に手をあげ、耳を覆った。
    これと同じような出来事が、ほんの一年ほど前にもあった。
    同じことがまた繰り返される。悲鳴と、血と、そしてただ呆然と佇むだけの俺と。


    p149
    武上をデスクとして有能たらしめている所以は、実はこの記憶力にもあった。
    映像的というより、どちらかといえば活字的な記憶力ではあったが、多くの事象が彼の頭の中にコンパクトにたたまれて収納されており、彼はそれらを一瞬で引き出すことができる。
    誰かが質問に来ることも多いが、武上はすぐに答える。そして堆く(うずたかく)積み重なっているファイルの中から目的の調書を取り出し、相手の目当ての言葉が述べられているページをすぐに開いて差し出す。
    相手が驚きつつそのファイルのページをめくり始める頃には、武上はもう次の仕事にかかっている。


    p177
    数年前に幼女連続誘拐殺人事件が起こったとき、「そうか、ついに日本でもこういう事件が起こるようになったか」と社会は悟った。
    そういう社会の身構えるような雰囲気に呼応して、またそういう空気があるからこそ、この手の犯罪者が出て来るのではないかと武上は思う。
    誤解を恐れずに言うならば、犯罪もまた「社会が求めている」形でしか起こり得ないものだからだ。


    p362
    「あの女の子は」塚田真一は話し始めた。
    「樋口めぐみっていいます。本当は高校二年生なんだけど、今は学校をやめてる。やめざるを得なかったんだって」
    「樋口秀幸はね、僕の親父と、おふくろと、妹を殺した犯人なんです。めぐみはそいつのひとり娘なんですよ」

    樋口秀幸は、社員たちの信頼を集めていた。それなのに会社を倒産させてしまい、自分を頼っていた彼らとその家族を路頭に迷わせてしまったことに、痛切な責任を感じていた。
    銀行も公共の金融機関も、むろん樋口にはにこりともしてくれない。景気も傾いてゆく一方だ。
    時代の大津波にあっという間に財産を飲み込まれた樋口は、失ったものを一度に、手っ取り早く取り返そうとしたのだ。


    p433
    それから一週間後のことである。
    進展のないままの一週間、すべてが水面下の一週間、膠着状態でありながら瞬く間の一週間、(中略)
    マスコミ方面においても、犯人が再び有馬家に電話してきたという事実の衝撃もいくらか薄らいだその一週間の後ーー
    古川鞠子の遺体が出た。


    p459
    ふと、真一は考えた。この事件の犯人、いつかは捕まるのだろうか。
    捕まってほしい。でも捕まったときには、きっとまた、こいつをかばう人たちが登場するのだろう。犯人もまた、社会の犠牲者だと。それに反論する声は、小さくてか細くてかき消されてしまう。
    この世に満ち溢れているのは、みんな犠牲者ばっかりだ。真一は考えた。それならば、本当に闘うべき「敵」は、一体どこにいるのだろう。


    p517
    ふたりのやりとりを聞いていて、唐突に、ふと寒気が走るような感覚と共に、武上は思いついた。
    こいつ、人が変わっていないか?

    こねている理屈に変化はない。事件関係者やマスコミに対する斜(はす)に構えた姿勢も同じだ。そして同じきいきい声だ。言葉遣いも変わっちゃいない。
    だがしかし、何かが違う。微妙だけれど、決定的に違うような気がする。コマーシャルに邪魔されたことで怒って電話を切った人物と、今ここで評論家とやりあっている人物が同一人物だとは、武上には思えないのだ。


    p521
    「Tさん、本当によろしいんですか?」
    田川はまた座ってしまう。それでもたけがみには、彼がきいきい声の言った「一部分でも英雄になった方が」という言葉に引きずられつつあることが手に取るように判った。

    犯罪者に限らず、ある種の事件を起こし易いタイプの人間をして事件の方向へ向かわしめるのは、激情でも我執でも金銭欲でもない。英雄願望だ。
    酔っ払って喧嘩の挙句他人を殴り殺してしまうのも、銃器を手に強盗に入った先で必要もなく人質を撃ち殺してしまうのも、(中略)すべては英雄願望のためだ。
    自分は英雄だ、ほかの連中とは違う、俺は英雄なのだ、きっとそうなのだ、その俺様に向かって注意をするとは何事だ、盾突くのは生意気だーー。


    p522
    今までの奴は、余裕たっぷりの様子をつくろいながらも、いつだって自分かま一番熱くなってしまっていた。確かに頭は悪くないが、ちょっとしたことですぐカッとなり、言葉遣いも乱れた。
    しかし、このきいきい声の主は違う。今までの奴よりもずっとーーそう、ずっと「大人」だ。

  • 大川公園のゴミ箱に人間の腕が・・・
    残酷で冷徹、意地悪な殺人犯からの電話による挑発とそれに振り回されるマスコミ、警察、被害者家族

    白骨死体となって帰ってきた孫 鞠子と対面する祖父 有馬義男は、
    「 鞠子、お帰り、よく帰ってきたな。もう大丈夫だ。もう
    何も怖いことはないよ。」と語りかける。
    どれほど辛いことであっても、いたずらな希望的観測にすがることを自分で自分に固く禁じ、事実に向き合おうとする祖父の姿に胸が締め付けられ、涙が出てきた
    1巻の最後には犯人二人に天罰が下ったかのように見えたが、
    果たして???

  • ミステリーの最高峰。

    事件をきっかけに関係者らは何らかの形で辛い目に遭うわ、犯人の手口がゾッとするし、その犯人自体がグロい。

    徹夜で読むぐらい、本書は狂おしいほどの魅力に溢れている。

    注意点としては、殴ったり包丁で刺すようなグロシーンが語りのように淡々と書かれているので、ホラーすぎる表現が苦手な人は読まないでください。

    スリルを求める人は別ですが、そうでない方が読めば、下手をすると鬱になる可能性大です。

    しかし、内容は神に誓って保証します。

    めっちゃ面白いです。

  • どこから感想を書いたらいいのか分からないというのが正直な感想です。「火車」ほどの衝撃は無いにしても、とても面白いです。読み終わるのが惜しく、ゆっくり読みました。
    読みやすいですが、物語が多層になっていて深いです。構成や場面(視点)の移り変わり、間の取り方は、特に前半は天才的だと思いました。
    連続殺人事件が起こり、その犯人は優秀でクールでカリスマティックな青年であることは、読者には早い段階で知らされます。なぜそんな犯罪を犯すのか、彼がなぜ自らマスコミに出てきたのかという疑問が提示され後に分かりますが、物語のテーマは最終的にはそれらではなく、最後まで明かされないまま進みます。完全犯罪を成し遂げたかに見える主犯はあっけなくぼろを出すのですが、このしょぼさこそがこの小説のテーマになるのです。
    登場人物がたくさん出てきて、それぞれの絡み合いが興味深く印象的です。被害者の遺族の心、加害者の家族の心などが痛々しく描かれています。有馬義男という、孫を殺害された豆腐屋の主人が魅力的でした(最後はちょっとつまらなかったですが)。被害者の身内である有馬がジャーナリストの滋子にたたみかける言葉にはぐっと来ました。また、犯罪者に仕立てられて不運な死を遂げたカズも素晴らしくカッコいい青年でした。
    本書を読む前に読んだ書評には「悲惨すぎて救いが無い」とあり、懸念したものの、思ったよりスッキリしたと感じました。宮部ファンには「長すぎる」と厳しい意見も見受けられますが、私は読んで良かったと思います。

  • 今年の年末はこれを読もうと全巻そろえてみた。夢中に読めると楽しいが、、、宮部さんの読みやすいストーリーテリングで十分楽しませてもらえそうな予感なする第1巻でした。今から読むと少し時代の古さを感じるかと思ったのですが、ほとんどそういう部分もありません。90年代半ばが舞台なので、バブルの後の日本、ちょうど猟奇的な殺人事件が実際に起こっていた時代、ワイドショーが警察まがいに犯人を追いかけて劇場型の犯罪にしてしまうのは今も同じ。だが最後に犯人は死んだのか?

  • 読み終わった直後に感想書けばよかった。Ⅱを読んでしまったから何を思ってたか抜け落ちに落ちてる。犯人がほんとに自分と同じ人間とは思えなくて途中まで現実離れしたファンタジーとは言わないまでも似たようなものに思えてた。現実味が無さすぎて、何が起きてるのか分からなすぎて止まらなかった。

  • ホント久々の宮部みゆき。ボリュームありすぎてなかなか手に取れなかった本作、やっと読み始めた。

    隅田川沿いにある大川公園のゴミ箱から、切断された人の手が見つかるところから事件はスタート。第一発見者は、高校生の塚田真一と水野久美。真一は、佐和市の教師一家殺害事件の被害者。同公園からは、行方不明の古川鞠子のハンドバッグも見つかリ、母親の真智子は半狂乱になってしまう。犯人は、マスコミに電話で犯行を告げ、鞠子の祖父、有馬義男にも電話を掛けてきた。犯人は、用意周到に準備した上で、マスコミや捜査当局を翻弄しつつ次々犯行を重ねていく(第一巻で既に、おそらく女性三人と男性三人を殺害している)。

    気になる登場人物は、考察の鋭い捜査本部デスク係、竹上刑事、直感で犯人像に迫る有馬義男、深いトラウマを抱えつつ事件に巻き込まれてゆく真一、そして事件を題材にルポを書こうとしている(そして恐らく功名心と良心の板挟みになるだろう)フリーのライター、前畑滋子。

    何しろ全五巻の長い話だから、事件が今後どう展開していくのか全く分からないなあ。

  • 相変わらず、おじさんやおじいさんを活躍させるのがうまい。今回犯人と目される奴らや、塚田君の家族を襲った奴らは、真犯人ではない、という匂いを漂わせているが…果たしてそんなことが可能なのだろうか。それが納得のいく方法だとしたら…病んでるなあ、この社会。

  • 昔、映画を見て、微妙な感想だったので、敬遠してました。今になって何気なく手に取ってみたら、手が止まりません!かなり読み応えがあります。義男さん、被害者家族の気持ち、涙が止まりませんでした。

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著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。2019年7月10日『さよならの儀式』を刊行。

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