模倣犯3 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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レビュー : 281
  • Amazon.co.jp ・本 (476ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101369266

作品紹介・あらすじ

群馬県の山道から練馬ナンバーの車が転落炎上。二人の若い男が死亡し、トランクから変死体が見つかった。死亡したのは、栗橋浩美と高井和明。二人は幼なじみだった。この若者たちが真犯人なのか、全国の注目が集まった。家宅捜索の結果、栗橋の部屋から右腕の欠けた遺骨が発見され、臨時ニュースは「容疑者判明」を伝えた-。だが、本当に「犯人」はこの二人で、事件は終結したのだろうか。

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    これまで同様、ページを繰る手が止まらないくらいの面白さ。
    高井由美子と樋口めぐみ、石井良江の出会い等、これまで点でしかなかった登場人物がつながり合って、徐々に線となっていく様子が読み取れた。
    しかしやはり、読んでいて気になったのは2巻の続きである、高井和明と栗橋浩美の事故死までのストーリーにまつわるエピソード後半部だろう。

    3巻は、栗橋浩美だけでなく高井和明目線でのエピソードも多く加えられていた。
    事件の真相を誰よりも早く察知し、何とか自分がヒロミを救おうと働きかけるカズ。
    カズの洞察力の高さに動揺しつつも、必死の説得についに揺さぶられ始めるヒロミ。
    特に3巻の後半では、本当にスピーディに物語が展開し、読んでいて涙が止まらなかった。。。
    何とかうまくいってくれ!ヒロミ、カズの言っていることを理解してくれ!と、2人の最期を既に分かっているということを抜きにして、読んでいてそう願った。
    親友として幼馴染として、ヒロミの事を心から案ずる高井和明の説得の台詞1つ1つが自分の心にも刺さった。

    また、これまで全てにおいて完璧だったはずのピースにも、何か「ほつれ」のようなものが生じ始めている。
    各所各所で大きなミスを犯し、それをリカバリーしようとまたミスにミスを重ね、徐々に綻びが肥大しているところが今後も気になる。
    何せ、2人が馬鹿にしていたあの「カズ」にさえ見抜かれていたというのだから。。。
    「ピース」は天才だとはいえ、やっぱりただの人間なんだなと思ってしまう。

    事件そのものもさることながら、ピースがこの後どうなるのか?
    高井和明の冤罪は晴れるのか?
    彼の命すら賭けた説得は、今後何か良い兆しを生むのか?

    そういう事にも期待しつつ、4巻と5巻を早く読みたいものだ。


    【あらすじ】
    群馬県の山道から練馬ナンバーの車が転落炎上。二人の若い男が死亡し、トランクから変死体が見つかった。
    死亡したのは、栗橋浩美と高井和明。二人は幼なじみだった。
    この若者たちが真犯人なのか、全国の注目が集まった。

    家宅捜索の結果、栗橋の部屋から右腕の欠けた遺骨が発見され、臨時ニュースは「容疑者判明」を伝えた――。
    だが、本当に「犯人」はこの二人で、事件は終結したのだろうか?


    【内容抜粋】
    1.ピースの新しい筋書き。それは、高井和明にすべての罪を押しつけるということだ。

    2.ヒロミは一人じゃない。それだけは確実だ。誰か、ヒロミを操っている人間がいる。
    高井和明にとっては、一連の事件を終わらせることと同じくらいに、栗橋浩美をその人物から助け出すことも、重要なのだ。
    なぜなら、それができるのは、たぶん高井和明ただ一人だけだから。
    彼らは幼馴染なのだから。

    3.「大丈夫です。声紋は、ボイスチェンジャーを通しても変わらないんですよ。ごまかすことはできません」
    栗橋浩美は、身体中の血液が、ゆっくりと心臓に集まってくるのを感じた。どくん、どくん、どくん。
    「あわてるなって。僕は新聞を買ってくる。三大新聞じゃなんて言ってるかな」
    「ピース」
    「何だよ?」
    「パジャマのまま行くつもりか?」
    ピースも声紋鑑定のことは知らなかったのだ。だから今、あんなに泡を食っているんだ。

    4.ピースが居なくなると、栗橋浩美は、急にがっくりと気落ちするのを感じた。そのままがくんと膝を折って、高井和明のそばにへたりこんだ。
    「幽霊の話なんか、しないでくれ」と、小声で言った。生まれて初めて、高井和明に向かって頼んだ。「幽霊のことなんか、聞きたくないんだ」
    「お願いだ」高井和明はうめくように呟くと、ぼろぼろと涙をこぼし始めた。ピースの存在が消えたことで、突っ張っていた何かが折れたことは、カズも同じであるらしかった。彼は手放しでおいおい泣いた。
    「お願いだよ、こんなことはもうやめてくれ。人殺しはいけない。いけないんだ」
    「だけど・・・」もう後戻りはできないのだ。


    【引用】
    p131
    ピースの新しい筋書き。それは、高井和明にすべての罪を押しつけるということだ。
    身動きのとれないような物証、死にたてピチピチの犠牲者の遺体をくっつけて、社会に提供してやる。


    p138
    切れた電話の向こう、その暗闇のなかで、高井和明は考えていた。闇よりもなお暗く沈んでゆこうとする心を懸命に励ましながら、考えていた。
    ヒロミはオレに嘘をついている。
    でも今はまだ、その嘘がどこから来るものなのか、じっと見極めるしかない。

    ヒロミは一人じゃない。それだけは確実だ。
    誰か、ヒロミを操っている人間がいる。
    高井和明にとっては、一連の事件を終わらせることと同じくらいに、栗橋浩美をその人物から助け出すことも、重要なのだ。
    なぜなら、それができるのは、たぶん高井和明ただ一人だけだから。
    彼らは幼馴染なのだから。


    p187
    「脅かしているわけじゃない。冷静に考えているだけだ。それに、こっちに打つ手がないわけじゃない。」
    「打つ手?」
    「今後のために、カモフラージュが必要だ。木を隠すなら森の中さ」

    「関東のあちこちで、同じような女性の失踪事件を起こすのさ。そしてある時点で、充分時間が経過したところで、『犯人』が活動を始める。最終的には、岸田明美も、彼女と一緒に死んだあの家出中学生も、その『犯人』の手にかかったというふうにもっていく」


    p208
    同席していたもう一人のジャーナリストが、
    「大丈夫です。声紋は、ボイスチェンジャーを通しても変わらないんですよ。ごまかすことはできません」
    と、答えた。

    栗橋浩美は、身体中の血液が、ゆっくりと心臓に集まってくるのを感じた。どくん、どくん、どくん。
    彼のなかの負けん気は、たとえこっちが二人だってことを気づかれたところで、それが犯人逮捕に直結するわけじゃないと主張している。
    しかし彼の本音、彼の魂の本音は、ごく気の小さい半ズボンの少年のように、警察に、社会に、多数の人々に自分たちの正体の一端でも知られたという事実に、その場でおもらしをしてしまうほど震え上がっていた。


    「あわてるなって。僕は新聞を買ってくる。三大新聞じゃなんて言ってるかな」
    「ピース」
    「何だよ?」
    「パジャマのまま行くつもりか?」
    ピースも声紋鑑定のことは知らなかったのだ。だから今、あんなに泡を食っているんだ。


    p355
    栗橋浩美を見上げるカズの目の底に、ほんのかすかではあるけれど、初めて対抗心のようなものが閃いた。栗橋浩美は自分で自分の目を疑った。
    こいつ、本当にカズか?
    いつもいつも、ちょっと揺さぶってやればバカみたいに金を出すし、犬みたいにお手でもお回りでもなんでもやった、あのカズなのか?

    「こんなことで慎重にしてたって、いいことない。警察に行った方が早いや。俺、これ持って警察へ行く。ヒロミも来るだろう?」
    じわじわと感じていた違和感が、今やはっきりときた形を成し、栗橋浩美の前に結論を突きつけていた。
    ーー計算違い。カズを見くびっていた。カズは思ったほどバカじゃなかった。


    p388
    ピースが居なくなると、栗橋浩美は、急にがっくりと気落ちするのを感じた。そのままがくんと膝を折って、高井和明のそばにへたりこんだ。
    「幽霊の話なんか、しないでくれ」と、小声で言った。生まれて初めて、高井和明に向かって頼んだ。「幽霊のことなんか、聞きたくないんだ」
    「お願いだ」高井和明はうめくように呟くと、ぼろぼろと涙をこぼし始めた。ピースの存在が消えたことで、突っ張っていた何かが折れたことは、カズも同じであるらしかった。彼は手放しでおいおい泣いた。
    「お願いだよ、こんなことはもうやめてくれ。人殺しはいけない。いけないんだ」
    「だけど・・・」もう後戻りはできないのだ。

  • ピースとヒロミは、連続殺人というゲームに興じる。

    ピースのシナリオ通り「女優たち」は演じ、着実にゲームは進行し、日本中を手玉にとってきた。
    そして、その殺人ゲームの犯人としてカズ(高井和明)を巻き込もうとする。

    カズは、二人が描いたシナリオを全て信じたふりをして、アジトの山荘に入っていく。

    山荘で簀巻きにされながらも懸命にヒロミを説得するカズ。
    「.ヒロミがあの女の子たちを殺したんだろう。ずっとそう思って
    いた」
    「じゃなんでノコノコここまで来たんだよ」
    「やめさせたかったからだ。一緒に警察に行こう。こんなことを
    重ねちゃいけない。」

    カズは、いつもヒロミとピースの掘った穴にハマるために存在し
    ピースとヒロミの用意した観客に笑われるために存在すると思っていたのに、死に直面しても冷静な態度に動揺するヒロミと、激昂し怒鳴るピース、この両者の対決が圧巻だった。

    そして、転落する車の中、死を目前にしてお互いを思う。

    カズ。カズ。カズは生きているだろうか。生きていてほしい
    俺も生きたい。生き直すんだ。

    ヒロミ、ヒロミは、大丈夫だろうか?これから一緒に考え直さなくてはならないことが山ほどある。死ぬわけにはいかない。

    どうして、ヒロミは本当の友達を見抜けなかったのだろう。
    もっと早くカズの真心に気づくことはできなかったのだろうか。

    小さい頃から愚鈍で、バカにされ、笑われるばかりの人生だった
    高井和明の人間としての深さ、大きさ、温かさに、胸が締め付けられるとともに、こんな終わり方でいいのだろうかと切なくなった。

  • カズの必死の説得にはこちらまで心打たれ、胸くそ悪くてしょうがなかったヒロミについても、最後の最後でこれからの希望が見えてくるような想いを抱けた分、2人が死んでしまったことがなんともやりきれない。
    読者は全てを知ることができたけど、一番知るべき話の中の人々がこの真実を知る由がないなんて...。続きが増々苦しい。

  • 一筋縄ではいかない物語が進行中。

    ページを繰る手が止まらない!

    次!次を早く読もう!!

  • カズは死なないでほしかった。
    被害者の背景まで細かく綴られるから、感情移入してしまう。切ない。
    浩美も、許せないけどあんな過去を経験したら歪むだろうとも思う。
    そしてずっとピースと浩美の計画は完璧だと思い込みながら読んでいた自分がいたので、カズの指摘には、まるでわたしが浩美になったように、計画に対して一気に疑惑、不安が広がった瞬間だった。三巻は特に辛かったけど、本当に面白い。

  • 犯人サイドの視点の話が続く第三巻

    人間の光と闇の面をありありと見せつけられた感のある巻となっています。光の面では犯人の幼馴染の犯人に示す限りない優しさが読んでいてまぶしくて、とても切ない気持ちに……。一巻でその後の展開については軽く触れられているので、余計にその感情があふれてきます。

    闇の面ではやはり犯人の人間性が薄ら寒さすら感じさせます。いろいろな小説やドラマで、サイコパスの恐ろしさについて感じることは多いのですが、宮部さんの描くサイコパスは静かに心の深いところに迫ってくる怖さを感じます。
    そして犯人以外でも怖いのが樋口めぐみの存在。彼女は一巻に登場した右腕の第一発見者の少年とある因縁をもつ少女なのですが、彼女の常人から見ると非常にずれた行動が怖いです。というよりその行動自体よりも、その行動に対する彼女の並々ならぬ決意と行動力が怖いというか……

    犯人の闇と幼馴染の光。この二つの面がとてもドラマチックにまじりあって三巻の後半は一気読みでした!

    この巻で犯人サイドの話は終わり、いよいよ事件のその後の経緯に話が移っていきそうな感じです。事件の結末も気になるところですが、なぜこの物語で樋口めぐみという存在を出したのか、ということも考えつつ四巻に入っていこうと思います。

    第55回毎日出版文化賞特別賞
    第52回芸術選奨文部科学大臣賞(文学部門)
    2002年版このミステリーがすごい!1位

  • カズと浩美がすでに一巻の終わりで死んでいるので、その経緯を逆に追う形で物語は進行する。最後まで浩美の事を思うカズはやさしくてかわいそうな人。すでに分かっている死にむかって物語は進む。これで1巻から始まった物語の内容はすべて明らかになっている。残るは「ピース」の事だけ。「ピース」は何者?結果的には「ピース」のもくろみどうりの犯人死亡という結果になったのだろうか。

  • たぶん、3巻までがこの物語のプロローグなんだと思う。
    次巻から物語の本筋が始まるんじゃないかな。
    本当に面白い。

  • 高井和明の、浩美に対する想いは感動です。

  • とてもおもしろい

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著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。2019年7月10日『さよならの儀式』を刊行。

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