孤宿の人〈下〉 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 273
  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101369327

作品紹介・あらすじ

加賀様は悪霊だ。丸海に災厄を運んでくる。妻子と側近を惨殺した咎で涸滝の屋敷に幽閉された加賀殿の崇りを領民は恐れていた。井上家を出たほうは、引手見習いの宇佐と姉妹のように暮らしていた。やがて、涸滝に下女として入ったほうは、頑なに心を閉ざす加賀殿といつしか気持ちを通わせていく。水面下では、藩の存亡を賭した秘策が粛々と進んでいた。著者の時代小説最高峰、感涙の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • いい本に違いないのはわかっていた。間違いないんですよ、宮部お姉さんは。よーくわかっているので、それゆえについ後回しにしてしまう。今頃読んでほろほろと泣く。

    上下巻をたっぷり読んでいる間ずっと、私は丸海のどこかで生きていたと思う。ひたひたと胸に迫ってくるこのリアリティは他の時代物にはないものだ。ほうも宇佐も加賀様もみんな切なくなるほど身近に感じられて、心から離れない。

    宮部さんにはどっちかというと現代物を書いてほしいと思うけど、こういうのを読むと、苦手だった時代物にフラフラと手が伸びる。そう、「おまえさん」読まなくちゃ。

  • すごかった。
    読み終わった後に吐き出した息が深く重く、魂の一部まで持っていかれたかと思った。

    下巻では加賀様をとうとう涸滝の屋敷にお迎えする。
    江戸の町では疫病が流行り、町民は皆加賀様の祟りだと恐れる。
    そんな中涸滝の屋敷で働いていた女中が頓死し、代わりの女中をということで身寄りのないほうに白羽の矢が立つ。
    ほうはひょんなことから加賀様と出会い、対話し、ものを教わるまでの関係になっていく。
    いっぽう下町では疫病、落雷、信心の揺らぎから領民の心が荒れる。加賀様は「鬼」で、丸海藩の人々を皆殺しにしようとしているのだといううわさがまことしやかに流れる。もっともそれは、加賀様の処置を考える匙家と幕府の仕組むたくらみ通りではあったのだが。
    加賀様を鬼と仕立てる裏で交錯する幾重もの陰謀。
    ほうを救う加賀様、加賀様を慕い始めるほう、そしてそのほうを手放したことを悔やむ宇佐、宇佐を気にかけ琴絵の死を嘆く渡部。
    それぞれの思いを抱いて、事態を収めるべく丸海藩が激震する・・。

    加賀様がほうを救い、ほうに心を開いてゆく様子も、ほうが一途に加賀様を慕う様子も、宇佐が一心にほうを思う気持ちも、すべての人物が誰かを思い、誰かのためを思って生きている。
    そのまっすぐさがこそ胸を打つ。
    ほうには幸せになってほしいなあ、と思っていたんだけど・・。
    「孤宿の人」はほうのこと・・かな・・加賀様っぽくもあるな・・。でもほうはこれまでいろんな家をたらいまわしで帰る場所がなかったから宇佐さんと幸せになってほしかったな。
    まあそんなほうが「方」を決め、唯一の「宝」となるということに加賀様が噛んでくる意義があるのだろうから、一人になるので正しいような気もするけど。
    切なく美しく優しくほろ苦く、でも感動のラスト。
    一気に読んでしまいます。

  • 久しぶりに本でぼろぼろ泣いた。人がたくさん死ぬけど、人の命ってそんなものなんだろうなとも思う。下巻は映画を観てるような感覚があった。左手に残るページの厚みが薄くなってくると寂しくなった。 読んでると夏のむせかえるような草の匂いやら高いところから見る海や風とかが感じられるようなお話だった。

    宇佐と渡部さん結婚して欲しかったなぁ。


    なんでかずっとよしながふみの絵柄で脳内再生された。とくに石野様とかよしながふみの本に出てきそうだったし。ただよしながふみがかくならほうは男の子で宇佐も男の子なんだろうなと思うけど。それはそれで読んでみたい。

  • この時代に生まれた人の「命」とは、なんと儚いものなんだろう。何の為に生きているのか。何が正しい事なのか。すごく考えさせられました。望まれずに生まれてきた幼子が生きていく苦境の中で、出合う人々との暖かく、悲しい物語です。最後は感動で涙が溢れてました。

  • 最後にほうが床下を這って加賀様に会いに行くときの場面を3回読み直した。ある場面に戻って繰返し読むことは久しぶり。ほうの子供独特のふっくらとした手と加賀様の年輪のごとく皺が重なっている手がそれぞれきちんとひざに置かれ、静かながらも命をかけた言葉が交わされているようすは激しい感動を呼んだ。
     悪者を作れば団結力が強くなるということはよく言われるけど、そういう団結力は疑心暗鬼を生み最後には崩壊するということも感じられた本だった。

  • 人の心は弱い。やるせなくて涙が出る。
    でもね、不安と動乱の連鎖の中、立ち上がる人々の心の強さにも泣けてくる話です。

    加賀殿と ほう は、支え合っていたのでしょう。
    強く優しい人たちの心を惹きつけ、自分なりに前向きな気持ちを持ち続けて生きる ほう が、ちょっと羨ましくなりました。

    宮部さん、ありがとう。

  • 本当に、宮部みゆきは人の心の闇、有り様、そしてとてもキレイで大切なものを描くのがとてつもなく上手いと思う。

    今回の作品も、人の心の闇を、人の性を、世界の理を、驚くほど上手く表現していた。

    そして、とても悲しい話だけれども、真っ直ぐに向き合って、「ほう」に心底救われる。そういう物語でした。

    何もかも素晴らしかった。

    正しい事が、必ずしも正しいと認められる訳ではなく、真っ直ぐな想いが決して報われるとは限らない。理不尽な事で溢れかえった世界で、しかし、救いは必ずある。と信じたい。
    運と心根と努力で。

  • 丸海藩に次々と起こる厄災。それは加賀様の祟りなのか。不幸な生い立ちのほうを中心に、小さな藩の存亡を賭けた人々を描く宮部さんの傑作時代小説。
    たくさんの人が犠牲になった。人の心には鬼が棲みついている。そして天にも鬼はいる。でも、それ以上に人には他人を思う優しさがあり、天も自然の恵みを与えてくれる。ほうの名前が『呆』から『方』に、そして『宝』になったように、人間は過去を教訓にして進歩しなければならない。時代小説だが現代人の戒めとなる物語だ。

  • 加賀様は悪霊だ。丸海に災厄を運んでくる。妻子と側近を惨殺した咎で涸滝の屋敷に幽閉された加賀殿の祟りを領民は恐れていた。井上家を出たほうは、引手見習いの宇佐と姉妹のように暮らしていた。やがて、涸滝に下女として入ったほうは、頑なに心を閉ざす加賀殿といつしか気持ちを通わせていく。水面下では、藩の存亡を賭した秘策が粛々と進んでいた。著者の時代小説最高峰、感涙の傑作。(裏表紙より)

    久々に一気読みしてしまいました!前半は私にとって毎度おなじみの「時代小説アレルギー」が出てしまいなかなか読む手が進まなかったのですが、後半はそれこそノンストップでした。
    大人たちのそれぞれの思惑の中で翻弄されながらも、何とか自分なりに生きようとするほうの健気さ、それを表から陰から支える周りの人物の温かさ、そして宇佐とほう、ほうとあの人物との間に芽生えた儚くも強い絆。読み終えたときには思わずホロリと来てしまいました。これからほうはどのような人生を歩むのか。きっと凡庸ながらも力強く生きていってくれるのだろうなと思います。

  • ぅーん。
    号泣ですね。最後の最後で、もう涙が止まらない感じでした。
    人の優しさ。
    人を掛け値なしに信じられる心の美しさ。

    ふと、仮にどんなに悪い人であっても、とある誰かにとっては神だったりとか、最愛の人だったりとか、そういうことってあるよなぁと思った。
    それは、別に愛は盲目とかそういうことではなくて、人間の多面性とでもいうもので、ある面ではA、ある面ではB、ということが、普通にあり得るよなぁとふと思った作品。

    宮部さんは、「異世界」感はなくて、さらっと読める割に、心の動きが静かに激しく興味深い。
    久々に号泣本に出会った感じ。

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プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。
1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。
大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。
『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。

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