ソロモンの偽証: 第I部 事件 上巻 (新潮文庫)

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レビュー : 395
  • Amazon.co.jp ・本 (515ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101369358

作品紹介・あらすじ

クリスマス未明、一人の中学生が転落死した。柏木卓也、14歳。彼はなぜ死んだのか。殺人か、自殺か。謎の死への疑念が広がる中、“同級生の犯行”を告発する手紙が関係者に届く。さらに、過剰報道によって学校、保護者の混乱は極まり、犯人捜しが公然と始まった――。ひとつの死をきっかけに膨れ上がる人々の悪意。それに抗し、真実を求める生徒たちを描いた、現代ミステリーの最高峰。

感想・レビュー・書評

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  • 祝・文庫化☆
    中学生の転落死を発端に描く大長編~宮部みゆきの話題作。
    現代ミステリは5年ぶり?
    さすがの描写力で、長さを感じさせません。

    雪が積もったクリスマスの朝、中学の裏庭で2年生の柏木卓也の遺体が発見された。
    屋上から転落死したらしい。
    一ヶ月前に不良グループ3人と揉めた後、不登校になっていた。
    大出俊次をリーダーとする不良グループのせいという噂も流れるが、卓也の親が自殺と認めるような発言をしたことから沈静化する。
    ところが、連鎖するように事件は起き続けて‥
    大出の父親は横暴なタイプで、世間に対してはむちゃくちゃな態度で息子をかばうが、家では暴君という。

    同級生の急死に女子は泣くが、クラス委員の藤野涼子の目は乾いていた。
    友達ではなくほとんど知らなかったためだが、自分が冷たいのかと内心悩む。
    剣道部でも活躍する文武両道の涼子のりりしさはすっきり輝いていて、親子関係も含めて、重い話の希望になっていますね。
    優等生(しかも美人)は嫉妬されることもあるけれど。

    柏木卓也が頭はいいが超然とした孤立しがちな性格だったので、教師達は家庭訪問を重ねてはいたが、あまり急いではいなかった。

    大出らにいじめられていた三宅樹理は、柏木が突き落とされるところを見たという告発文を作成、学校と、担任の森内恵美子と、藤野涼子に送りつけます。
    藤野の父・剛は警視庁の捜査一課の刑事で、娘に来た見るからに不審な手紙を開け、学校へ向かいます。

    森内はモリリンとあだ名される若い教師で、男子にアイドル的な人気はあった。
    校長らが生徒のことを考えて伏せたことも裏目に出て、学校側のことなかれ体質が批判を浴びることにも。
    相次ぐ事件が噂ばかりで解明されないことに憤りを感じた涼子は‥?

    一人々々がそこにいるかのようにありありと描写されていきます。
    それぞれの家にある思いがけない事情。
    親の影響を強く受け、意志は持ち始めていても上手く伝えるすべも知らない子供達。

    時代がバブル末期の1990年という設定なので、まず携帯が出てきません。
    他にどんな意味があるのだろうか‥?
    いじめの質やスクールカーストは違うのでしょうか。
    重い内容だけど、重苦しすぎることはなく、先が知りたくなるばかり。
    さすが宮部さんというか~最近のものでも、かなりいいほうですよね。

    それぞれの弱い面悪い面はしっかり出てくるけれど、そうなった理由もさりげなく描かれ、していない罪を噂される理不尽さからは解き放たれることに。
    最後まで筆裁きの密度は落ちませんよ!

  • 全部で三部に分かれており、各部が二冊で構成されている。全部読むと、六巻の物語を読むことになる。読み始めるには長さが気になる。
    しかし、読み始めたら、乗せられるようにぐいぐい読めてしまうのが宮部みゆきなのだろう。特にこの物語はそうである。的確でわかりやすく、かつ緻密な心理描写。リズム感のある文章。登場人物もいちいちキャラクターが立っている。
    物語はまだ1/6が進んだに過ぎない。しかもさまざまな人物の視点から語られる物語は、決して直線的ではない。いろいろなエピソードが絡まりながら、やがて一つの物語の軸に収れんされてゆくのだと思う。
    ここまで読んだだけでは、十分な感想は書けない。ただ、六巻からなる物語も、さほど長いとは感じなくなった。この先が楽しみだ。

  • 90年の12月24日、そのとき30歳の誕生日を前日に迎えたばかりの宮部みゆきは何をしていただろうか。長編3作目SFサスペンスの「龍は眠る」を一生懸命書いていたのだろうか。それとも、後に社会派の傑作と言われる「火車」の構想を練っていたのだろうか。私には、何故か彼女には世の独身女性が謳歌していたはずのバブル期のクリスマスイブのイメージが湧かない。あの夜の寒々とした風景は、彼女の記憶だった気がする(←失礼だなぁ)。宮部みゆきがこの夜を起点にしてこの長編を書き始めたのは、この日がバブル崩壊前夜だけとは思えないのだ。もちろん彼女には異才とも言えるカメラアイ(昔の記憶を細部に渡るまで表現して見せる能力)があったので、24年前のこの夜の雰囲気はいくらでも再現出来た。

    冒頭の数ページは、まるで独立した短編だ。小林電気店の主人は長いこと電話ボックスで話をしていた中学生の男子が気になって仕方なかった。

    三つの事件以来、修造は、この電話ボックスで起こる出来事はー特に、若者たちを巻き込んで起こる出来事はーどんどん世間から離れて穏和な老後を送ろうとしている自分たち夫婦にとっての貴重な"窓"なのだと考えるようになった。そこから見えるものは、どれほど信じ難くてもたぶん真実で、ひょっとすると時代の最先端の心情なのかもしれない。ただしその"最先端"は、怖ろしく先が鋭いが脆いものでできており、ある限られた期間だけ、時代の流れの一端がそこにあるのだろうけど、けっして長続きはしない。というより、ここに映し出される心情が長続きして一般化するような社会だったら、それはもはや社会とは呼べないのだろう。少なくとも、昭和7年生まれの修造は思う。(12p)

    だから、修造はそのときの男子の服装、仕草、か細い言葉をすべて覚えていた。まるで戦争のときに死に別れた母のときのように、ふと振り返った男子の表情まで。

    修造さんの観察はおそらくずっと後々まで発掘されることはないだろう。また、この男子ー柏木卓也くんが自殺だったのか、殺人だったのか、その決定的な証言になり得るかどうかは、また別の話となる。「模倣犯」以来の新潮文庫の大長編、じっくりと楽しみたい。
    2014年9月27日読了(なお、4巻まで読み進んでいる今、ここに書いていることの一部分を訂正しなくちゃいけないことになっているが、あえてこのまま載せる14.10.11記す)

  • 相変わらず、宮部みゆきのミステリー小説には引き込まれてしまう。全六巻に及ぶ大作の第一巻であるが、綿密に練られ、細部まで丁寧に描かれているように思う。しかし、まだ物語は始まったばかり。この先、どういう展開を見せてくれるのだろうか。

    クリスマスに発見された14歳の中学生の転落死体…様々な憶測と疑念が渦巻くものの、真相は見えて来ない。

  • ソロモン?と聞いて学の無い私は、ソロモンの鍵という昔のゲームタイトルしか頭に浮かばなかった。長そうだなーと躊躇するも一冊手に取る。どうなって行くのかが気になり、立て続けに読みまくり。長さが読みごたえに変わっていく。良かった。

  • 私たちが生きる社会は、大人も子供も大して変わらない。差別や区別はそこら中に転がっているし、誰だって自分が一番可愛い。自分を騙しながら、時には自己嫌悪で傷つけながら、他人と自分を比べ、価値を擦り合わせ、居心地の良い場所を選んで生きていく。大人と子供で決定的に違うのは、その社会の大きさと、感情の濃さだろう。学生にとっては「学校」が社会の全てであって、その小ささゆえに感情の密度も濃い。外側に、あるいは内側に向かうエネルギーが、大人のそれよりも切実で、重くて、刹那的だ。

    誰もが体験しただろうあの頃の感情を、そのベクトルを、軽薄なのにとてつもなく重いややこしさを、ものすごく的確に、かつ端的に、見事に表していると思う。説明しすぎず、感情的にもならない、冷静で計算され尽くされた文章が読んでいてとても心地良い。

    さすが宮部みゆき、当たり外れがない安定感。まだ6分の1だという安堵と期待で駆け足になりそうだけど、この先もじっくり読みたいと思う。

  • 電子書籍にはならないのかなーっと待ち切れずにとうとう読みはじめました。
    模倣犯はじめ、宮部みゆきの現代ものの長編は夢中になって読めるので、この作品も期待大。
    とにかく、すーっと話に入りこめるところはいつもながらさすが。登場人物が多いけれど、それぞれが単なる駒みたいじゃなくて、ちゃんと人物背景があって読ませる。
    今のところ中学二年生がらみの事件でいわゆる学校のヒエラルキーだとかが描かれている。中学二年生くらいの考えとか気持ちとかありありと。でも、わたしにもわかるわかるわかると思う。
    80年代の話なので、そのころの社会情勢なども。

  • ついに最終巻も文庫化されたので読むことに。

    宮部さんのミステリーは久しぶりで、『模倣犯』も『火車』も楽しめたのでハードルは高い。
    『ソロモンの偽証』という難しそうなタイトルもあいまってなかなか手をつけられなかった。

    しかし、あらすじを見てみるとなんてことはない、学校内裁判の話しだそうだ。
    これなら自分でも読める!と軽い気持ちで読んだのだがこれが間違い。

    全体の6分の1、事件が起こったイントロにしかすぎないこの巻でもすでに面白い。徹夜必死。
    しかも、中学生の考え方や行動が真に迫っている。自分でもこんな感じで考えてたな、なんてことが思いだされる。

    これがあと5巻も続くだなんて、幸せだ。噛み締めて読みたいが止まらない。

  •  1990年のクリスマス。校内で一人の男子中学生が転落死をしているのが発見される。自殺か、殺人か。彼はなぜ死んだのか。そして、事件から時間を置き関係者に、三人の生徒を名指しで告発する告発状が届く。

     今作もさすがの筆力! さまざまな登場人物の一人称で物語は語られますが、それぞれの心理描写や鬱屈具合というものがとてもよく書き込まれています。

     特にすごいな、と思ったのが外見にコンプレックスを抱える三宅樹里や自身の境遇から隣人の森内を恨む垣内美奈絵の心理描写でした。
    三宅樹里の場合はこの年代の女子らしい、自分ではどうしようもない外見によるいじめに対する悔しさや苦しさ、そしてそこから生まれる呪詛の念、自身がコンプレックスを抱えるからこそ生まれる同族嫌悪というか、相手を見下してしまう心情というものが非常に伝わってきて、
    垣内美奈絵の場合は一種の狂信的な印象も受ける恨みの念に、読んでいて思わずぞくぞくしてしまいました。

     そして、そうした鬱屈を抱える彼女たちの人を見る目(今回の場合は、樹里の担任で、垣内の隣人の森内に対するそれぞれの見方)というものも非常に恐ろしく感じました。

     そして、もう一つ印象的なのが、時々出てくる各子ども親のどうしようもなさ。転落死した柏木卓也の母親、事件の第一発見者の野田健一の父親、樹里の父親、そして不良グループの親たち。

     そのどうしようもなさには、同情すべき理由もあったりはするのですが、それでも読んでいてモヤモヤが止まりません。
    それはきっと彼らの子どもたちが、年齢や生活の理由、もしくは心情的なものから親と完全に距離を取ることができないためだと思います。

    だから彼らの語りで語られる親たちのどうしようもなさというものの中に、それでもこの親と縁を切れないというような一種のあきらめのようなものも感じられて、モヤモヤしたのだと思います。

     事件の経過ももちろんですが、それぞれの親子関係がどうなってしまうのか、という点も気になるところです

     状況的にも、証拠的にも自殺で終息しつつあった事件に突如舞い込んだ告発状。それをめぐってさらに事件も人間関係もややこしくなりそうです。

    2013年版このミステリーがすごい!2位
    2013年本屋大賞7位

  • 今更ながらの本作安定の面白さ。

    これ映像化されているはず。
    長いよね?
    まだ文庫本6冊あるけれど、どうやって映像化したんだろう。

    次巻へ続く

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著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。2019年7月10日『さよならの儀式』を刊行。

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