ソロモンの偽証: 第I部 事件 上巻 (新潮文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784101369358

作品紹介・あらすじ

クリスマス未明、一人の中学生が転落死した。柏木卓也、14歳。彼はなぜ死んだのか。殺人か、自殺か。謎の死への疑念が広がる中、“同級生の犯行”を告発する手紙が関係者に届く。さらに、過剰報道によって学校、保護者の混乱は極まり、犯人捜しが公然と始まった――。ひとつの死をきっかけに膨れ上がる人々の悪意。それに抗し、真実を求める生徒たちを描いた、現代ミステリーの最高峰。

感想・レビュー・書評

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  • 雪が降り積もったクリスマスイブの翌朝、一人の中学生、柏木卓也の死体が学校の通用門の近くで、同級生の少年野田健一によって発見される。

    映画化され、当時話題になりましたので、多少あらすじはわかっているものの、六巻を読んでいませんでした。そして、「夜の道標」を読んで、少し似たような構成だったような記憶があって、良い機会なので通読しようかなと。さすがに、6巻まとめて読めないかもしれないので、珍しく登場人物を把握しておこうかなと思います。

    事件 上巻
    柏木卓也 2-A 不登校から自殺
         父 則之 自動車製造部品製造会社
         母 功子 
         兄 宏之 祖父母の家で暮らす
    藤野涼子 2-A クラス委員 美人成績高剣道部
         父 剛 刑事
         母 邦子 司法書士 バリキャリ
         妹 翔子、瞳子
    野田健一 2-A ひ弱で寡黙
         父 健一 鉄道会社
         母 幸恵 虚弱 女子大卒
    向坂行男 2-A 太め 成績低
    父 印刷所
         母 新潟出身
         妹 晶子
    大出俊次 2-A 不良
         父 勝 材木屋社長
         母 
         祖母 認知症
    橋田祐太郎 中2 不良 居酒屋「あずさ」息子
         母 光子 再婚の夫と 妹
    井口充 中2 不良 雑貨屋息子
         父 賭ケグルイ
    倉田まり子 2-A 成績低
         父母 食品会社勤務
         弟 大樹 小学4 賢い
         祖父母
    三宅樹里 2-A 気難しい ニキビがひどい
         父 日曜画家 家電会社勤務
         母 
    浅井松子 2-A 太め 音楽部 人柄が良い
    吉野幸子 2-B 演劇部 分別ある 創作欲あり
    須藤明彦 2-A
    田島房江 2-A
    一瀬裕子 2-C

    さてと、大人たちは、次巻で把握。

  • 【感想】
    映画にもなった宮部みゆきの超大作、「ソロモンの偽証」。
    文庫版だと6冊に及ぶ長編ですが、ようやく6分の1読了しました!
    (かなり前に映画版を観たのですが、内容全く覚えていない・・・笑)

    学校内で発生した同級生の転落死の謎を、生徒のみによる校内裁判で追求しようとする中学生たちを描く物語。
    物語の節々にアナログな表現が多々あったので、バブル終末近くの1990年代あたり?
    文庫の発行が2025年頃だったので、「なぜ時代背景が1990年代なのかな~」とそのタイムラグを不思議に思いましたが、原作自体は2002年に小説新潮にてスタートしたらしいです。
    (それでもタイムラグあるけども・・・)

    時代が時代なだけに、中学生ヤンキーの粗暴な感じや校内暴力などがガッツリと描かれていました。
    僕の中学時代は2000年はじめ頃ですが、地元には中学生ヤンキーがいっぱいいたな~
    ただ、大人になって思いますが、中学生のヤンキーって大人からしてそんなに怖いものなんですかね?
    中学生なんてまだまだ子どもですし、腕力ひとつとってもいざとなったら絶対に大人のほうが強いでしょ(笑)
    このご時世なので、さすがに体罰で粛清することはできないでしょうが、、、「中学生にビビる大人」という構図には納得できないなぁ。

    全6巻もあるので、1巻目は登場人物それぞれの背景や性格など、本当にサワリだけでした。
    なので、まだまだ面白いかどうか、全貌は読めませんね・・・
    伏線がかなりあるため続きは気になりますが、1巻目からのインパクトは今のところあまり感じられませんでした。



    【あらすじ】
    クリスマス未明、一人の中学生が転落死した。
    柏木卓也、14歳。彼はなぜ死んだのか。殺人か。自殺か。
    謎の死への疑念が広がる中、“同級生の犯行”を告発する手紙が関係者に届く。

    さらに、過剰報道によって学校、保護者の混乱は極まり、犯人捜しが公然と始まった。
    一つの死をきっかけに膨れ上がる人々の悪意。それに抗し、死の真相を求める生徒達を描く、現代ミステリーの最高峰。


    【メモ】
    p229
    なぜかしら今、涼子は柏木卓也が怖い。とてもとても怖い。
    早くあたしから離れて。そう願う。
    でも、彼が離れていかないことも知っている。
    そう、正確に言うならば、柏木卓也は涼子に憑いたのではなく、元々あった涼子のある一面を掘り出したのだ。
    死によって。


    p429
    幼さは、若さは、すべて同じ弱点を持っている。「待てない」という弱点を。
    事を起こせば、すぐに結果を見たがる。
    人生とは要するに待つことの連続なのだという教訓は、平均寿命の半分以上を生きてみなければ体感できないものなのだ。
    そして、うんざりすることではあるけれど、その教訓は真実なのだと悟るには、たぶん残りの人生すべてを費やすまでかかるのだ。

    三宅樹里も待てなかった。
    だから、自分ではよく考えているつもりでも、その思考は上滑りしているだけだった。

  • 何とも嫌な予感しかしない展開にドキドキ。
    主要人物の中学生達には少年少女らしい楽観は無い。それぞれが複雑な感情を抱き、それを形容できず、吐き出せず、無力感や喪失感に包まれている。溢れる憎悪から、復讐を企てる者がいて、そこから始まる嘘がある。
    登場人物は多め。彼らの性格や行動がハッキリとしているので話には付いていけているはず......
    展開が全く読めない状態で一部上巻は終了。物語は始まったばかり。偽証というタイトルなだけに、嘘が嘘を呼び、無実の人物たちが巻き込まれていく展開になるのだろうか。

    ゆっくり読みたい。次巻へ。

    以下、ネタバレ有り(備忘録)。

    クリスマスの日。学校内で柏木卓也が亡くなったいるのが発見される。死因は自殺か。

    中学二年生。複数の男女の視点で物語は進行する。自己嫌悪や他者への憎悪。優越感と劣等感。思春期を過ごす、それぞれの子供たちは、同級生の死をきっかけに、何かを思い、感じ、行動する。

    小林修造老人が見かけたのは、電話ボックスにいた男の子。少年の様子がおかしかったので、お節介にも小林は声をかけた。男の子は大丈夫と断り去った。そして最後に振り返った。小林は彼を引き留めて話を聞くべきだったと感じた。あの男の子は、どこの誰だったのだろう。

    藤野涼子は優秀な学生だった。妹二人に刑事の父、仕事に励む母。そんな母に理想の女性像を重ね、自らを戒める涼子。だが、自分の心の底にある感情に気づいている。何かが欠けているのだろうか。同級生が死んだのに、涙を流さない私はおかしいのだろうか。図書館で男に絡まれているところを、野田健一に救われて、少し男の子に対して浮かれる気持ちが芽生えるがすぐ冷めている。

    野田健一は柏木卓也の遺体を発見した生徒。
    涼子と同じクラス。病んでいる母と、忙しい父と暮らしている。病的な母の世話や行動に嫌気が指し自由を欲する。その気持ちを汲まない父にも苛立つ。そして両親を殺すことを考え始める。図書館で毒物の本を読んでいるところを見られている。

    大出俊次、井口充、橋田祐太郎は大出を中心とした三中の不良仲間。柏木卓也の死に関わっている可能性があるとされている。過去に三宅樹里のことをニキビ顔という理由で虐めている。

    三宅樹里は柏木卓也をきっかけに、犯人を目撃したという匿名の告発状を学校、藤野涼子、担任の森内恵美子に送っている。過去に大出俊次たちに虐められていた恨みを晴らすために、報復として告発状に彼らの名前を書いている。人気者の藤野涼子のことも憎んでいる。
    友人の松子のことを内心では見下しながらも、心の拠り所のようにして利用している。

    浅井松子は三宅樹里の友人であり理解者。優しい性格だが鈍感なところがあり太っている。

    佐々木礼子は少年課で、本件の担当刑事。

    森内恵美子は主要人物たちのクラスで担任を受け持っている教師。独身でスタイルも良い女性。一部の生徒からは人気だが、その反面、目立たない生徒を見下すような一面を持ち合わせている。告発状は彼女に届かず、隣人に盗まれている。

    垣内美奈絵は森内教員の部屋の隣に住む女性。夫から別れを告げられるが、それを拒んだまま夫の持っている部屋で暮らしている。夫は出ていき、離婚を求め続けている。夫の不倫の末に捨てられた女として、悲観に暮れ、部屋を訪れた夫に縋りついた際に、隣に住む森内に出くわし、森内の笑みを浮かべた表情を見て、劣等感からくる憎悪をむき出しにする。そして三宅樹里の出した告発状を森内のポストから盗み取り、内容を確認して興奮している。

    他にも登場人物はいるがとりあえずメモからは割愛。

    次巻へ進む。

  • ※全巻通しての感想です。

    クリスマス未明、中学生の男の子が学校の屋上から転落死する。当初は自殺と考えられていたが、同級生による犯行だと告発する手紙が関係者に届いたことで、事態は大きく動き出す。
    情報を公開しない学校、センセーショナルに煽るマスコミ、さらに騒ぎに便乗した悪意。
    同級生の死という衝撃の事実について考える間も与えられず、不確かな情報に振り回される状態を打破すべく、捜査一課の刑事を父に持つ藤野涼子は「学校内裁判」を開くことを提案する。

    本書にはたくさんの人物が登場するが、メインキャストは、前述の藤野涼子、遺体の第一発見者で学校内裁判でも活躍する野田健一、他校生ながら学校内裁判に弁護士として参加する神原和彦、そして物語が始まってすぐ亡くなってしまう柏木卓也である。
    涼子は、健全な家庭と健全な精神を持つ物語の良心のような存在である。正義感が強く、クラスでも頼りにされる存在だが、そんな優等生の彼女が学年主任に反抗してまで学校内裁判の開催に向けて動き、検察側としてグレーな立場の同級生の側に立つことで、これまでの自分から大きく成長する。
    健一は、ほとんど家にいない父親と、体が弱く何かと手のかかる母親のもと、波風を立てないよう、目立たないように生きてきた。そんな彼も、学校内裁判に参加することで、学校や家庭での自分の新たな立ち位置を見つけることになる。
    和彦は謎の多い存在として描かれる。卓也の死の真相について何か知っているようにも思われるが、最後の最後まで謎は明かされない。
    そして影の主人公といえるのが卓也である。彼に関する情報は初めのうちはほとんど言及されない。ただ、学年一の不良グループとトラブルになった後に学校に来なくなったことが健一と友人の行雄との会話によって明かされるのみである。本書は、卓也の死の真相を明らかにすると同時に、卓也自身がどのような人物だったのかを探っていくことが主題の一つとなっており、その過程は宮部みゆきさんの代表作『火車』に通じるものが感じられる。

    彼らは中学生、14歳、15歳という年齢である。小学生のように大人の言うことを素直に信じられないけれど、高校生ほど大人に対して力を持っているわけではない。そんな微妙な年齢の彼らがあえて起こした裁判だったからこそ、現状に対する切実な思いが伝わってくる。
    彼らは犯人を見つけ出し、断罪したいわけではない。裁判を通じて真実を知り、関わった人物たちの気持ちを理解することがなにより大事なのだ。そして彼らが最後に出した結論は清々しく、いたましい事件で沈む気持ちを少し救ってくれる。

    ミステリの要素を兼ね備えながら、社会問題や少年の心の内を丁寧に描いた読み応えのある作品。最後に収録されている杉村三郎シリーズの中編で、彼らのその後を垣間見ることができるのもうれしい。

  • 祝・文庫化☆
    中学生の転落死を発端に描く大長編~宮部みゆきの話題作。
    現代ミステリは5年ぶり?
    さすがの描写力で、長さを感じさせません。

    雪が積もったクリスマスの朝、中学の裏庭で2年生の柏木卓也の遺体が発見された。
    屋上から転落死したらしい。
    一ヶ月前に不良グループ3人と揉めた後、不登校になっていた。
    大出俊次をリーダーとする不良グループのせいという噂も流れるが、卓也の親が自殺と認めるような発言をしたことから沈静化する。
    ところが、連鎖するように事件は起き続けて‥
    大出の父親は横暴なタイプで、世間に対してはむちゃくちゃな態度で息子をかばうが、家では暴君という。

    同級生の急死に女子は泣くが、クラス委員の藤野涼子の目は乾いていた。
    友達ではなくほとんど知らなかったためだが、自分が冷たいのかと内心悩む。
    剣道部でも活躍する文武両道の涼子のりりしさはすっきり輝いていて、親子関係も含めて、重い話の希望になっていますね。
    優等生(しかも美人)は嫉妬されることもあるけれど。

    柏木卓也が頭はいいが超然とした孤立しがちな性格だったので、教師達は家庭訪問を重ねてはいたが、あまり急いではいなかった。

    大出らにいじめられていた三宅樹理は、柏木が突き落とされるところを見たという告発文を作成、学校と、担任の森内恵美子と、藤野涼子に送りつけます。
    藤野の父・剛は警視庁の捜査一課の刑事で、娘に来た見るからに不審な手紙を開け、学校へ向かいます。

    森内はモリリンとあだ名される若い教師で、男子にアイドル的な人気はあった。
    校長らが生徒のことを考えて伏せたことも裏目に出て、学校側のことなかれ体質が批判を浴びることにも。
    相次ぐ事件が噂ばかりで解明されないことに憤りを感じた涼子は‥?

    一人々々がそこにいるかのようにありありと描写されていきます。
    それぞれの家にある思いがけない事情。
    親の影響を強く受け、意志は持ち始めていても上手く伝えるすべも知らない子供達。

    時代がバブル末期の1990年という設定なので、まず携帯が出てきません。
    他にどんな意味があるのだろうか‥?
    いじめの質やスクールカーストは違うのでしょうか。
    重い内容だけど、重苦しすぎることはなく、先が知りたくなるばかり。
    さすが宮部さんというか~最近のものでも、かなりいいほうですよね。

    それぞれの弱い面悪い面はしっかり出てくるけれど、そうなった理由もさりげなく描かれ、していない罪を噂される理不尽さからは解き放たれることに。
    最後まで筆裁きの密度は落ちませんよ!

  • 90年の12月24日、そのとき30歳の誕生日を前日に迎えたばかりの宮部みゆきは何をしていただろうか。長編3作目SFサスペンスの「龍は眠る」を一生懸命書いていたのだろうか。それとも、後に社会派の傑作と言われる「火車」の構想を練っていたのだろうか。私には、何故か彼女には世の独身女性が謳歌していたはずのバブル期のクリスマスイブのイメージが湧かない。あの夜の寒々とした風景は、彼女の記憶だった気がする(←失礼だなぁ)。宮部みゆきがこの夜を起点にしてこの長編を書き始めたのは、この日がバブル崩壊前夜だけとは思えないのだ。もちろん彼女には異才とも言えるカメラアイ(昔の記憶を細部に渡るまで表現して見せる能力)があったので、24年前のこの夜の雰囲気はいくらでも再現出来た。

    冒頭の数ページは、まるで独立した短編だ。小林電気店の主人は長いこと電話ボックスで話をしていた中学生の男子が気になって仕方なかった。

    三つの事件以来、修造は、この電話ボックスで起こる出来事はー特に、若者たちを巻き込んで起こる出来事はーどんどん世間から離れて穏和な老後を送ろうとしている自分たち夫婦にとっての貴重な"窓"なのだと考えるようになった。そこから見えるものは、どれほど信じ難くてもたぶん真実で、ひょっとすると時代の最先端の心情なのかもしれない。ただしその"最先端"は、怖ろしく先が鋭いが脆いものでできており、ある限られた期間だけ、時代の流れの一端がそこにあるのだろうけど、けっして長続きはしない。というより、ここに映し出される心情が長続きして一般化するような社会だったら、それはもはや社会とは呼べないのだろう。少なくとも、昭和7年生まれの修造は思う。(12p)

    だから、修造はそのときの男子の服装、仕草、か細い言葉をすべて覚えていた。まるで戦争のときに死に別れた母のときのように、ふと振り返った男子の表情まで。

    修造さんの観察はおそらくずっと後々まで発掘されることはないだろう。また、この男子ー柏木卓也くんが自殺だったのか、殺人だったのか、その決定的な証言になり得るかどうかは、また別の話となる。「模倣犯」以来の新潮文庫の大長編、じっくりと楽しみたい。
    2014年9月27日読了(なお、4巻まで読み進んでいる今、ここに書いていることの一部分を訂正しなくちゃいけないことになっているが、あえてこのまま載せる14.10.11記す)

  • 全巻読了。
    重たい、辛い、なんとも言えない。中2のナイーブさと、厚顔無恥と、大人の傲慢と無責任さと、自意識過剰な人々の織りなす悪意の連鎖。読んでて辛いし、この設定で宮部みゆきは何を描きたいのかと気になったことだけが、読み続ける動機となった。が、こういうネタバレ的な展開はミステリーなのかと疑問を持ちどうもしっくりこない。6巻全て一気読させられたのは、筆者の力なのだろうけれども、自分の求めるエンタメ観や世界観には合わなかった。
    死んだ松子やその両親が酷すぎて、少しも報われてないし、津崎校長が失策を犯したとは思えないし、加害者となった者達が償えたものは何なのかもわからずモヤモヤして読後もスッキリ出来ず、時間がたって残りのみんなは仲良く大人になりましたっていうのは無責任な感じがして、唖然とする。何とも救いが得られずに後味の非常に悪い物語であった。

  • 文庫本で全6巻。全部読み終わった。
    友人に勧められて手に取った本。
    長いし、裁判とか頭の悪い私には向かない…
    と正直乗り気じゃなかったけど、あっという間に
    引き込まれてしまった。

    長くて登場人物もすごい多いけど、
    これ誰だったっけ?みたいなこともなかった。
    全ての登場人物をうまく良いタイミングで出してくる。すごい。

    1人の中学生の死について周りの生徒が校内裁判をやる。
    読んでいて、現実には有り得なそうなのに有り得そうと思えるくらいリアリティがあった。
    ちゃんと中学生らしさも感じられるところがいい。

    個人的には、主人公とも言える男の子の正体?意図?と、ずっと引っかかってた出だしの1場面の謎が知りたくて読んでいたようなもんで、裁判の内容とかに差し掛かったら飽きてくるかなーと思ったけど、全然そんなことはなく、登場する生徒の心情やその親、周りの大人の描写にも惹き付けられたし、最後の方のある証人と弁護人のやり取りには涙が出た。

    わたしが知りたかった真実は、やっぱり!感と、その真意にもものすごく心撃たれることはなかったのに、最初は興味がわかなかった裁判の行く末がこんなにも自分の中に残ったのが衝撃。
    それだけ登場人物の描写が素晴らしいんだと感じた。

    私の中の今年の最高本トップ3ブックリストに入れた時はまだ4巻くらいまでしか読んでなかったけど、6巻まで読み終わった今でも間違いなくトップ3に入る作品だと思う。

  • 全部で三部に分かれており、各部が二冊で構成されている。全部読むと、六巻の物語を読むことになる。読み始めるには長さが気になる。
    しかし、読み始めたら、乗せられるようにぐいぐい読めてしまうのが宮部みゆきなのだろう。特にこの物語はそうである。的確でわかりやすく、かつ緻密な心理描写。リズム感のある文章。登場人物もいちいちキャラクターが立っている。
    物語はまだ1/6が進んだに過ぎない。しかもさまざまな人物の視点から語られる物語は、決して直線的ではない。いろいろなエピソードが絡まりながら、やがて一つの物語の軸に収れんされてゆくのだと思う。
    ここまで読んだだけでは、十分な感想は書けない。ただ、六巻からなる物語も、さほど長いとは感じなくなった。この先が楽しみだ。

  •  この長〜い小説の始まりは「事件」なのだが、この著者についてはいつも感じるのだが、展開が遅い。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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