悲嘆の門(下) (新潮文庫)

著者 : 宮部みゆき
  • 新潮社 (2017年11月29日発売)
3.57
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  • 27レビュー
  • Amazon.co.jp ・本 (395ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101369440

作品紹介

おまえは後悔する――。度重なる守護戦士の忠告に耳を貸さず、連続切断魔の特定に奔走する三島孝太郎。なぜ、惨劇は起きたのか。どうして、憎しみは消えないのか。犯人と関わる中で、彼の心もまた、蝕まれていく。そうした中、妹の友人・園井美香の周囲で積み重な った負の感情が、新たな事件を引き起こす。都築の、ユーリの制止を振り切り、孝太郎が辿りついた場所。〈悲嘆の門〉が、いま開く。

悲嘆の門(下) (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 連続殺人事件も、物語?
    殺醍醐の状況から作り出された物語・・・
    主人公の青年と元刑事は、事件の真相を求めて、それぞれ事件の現場へ奔走する。
    度々語られる「存在するが実在しない」。
    彼らは問答する。それは、言葉であり、物語であり、概念とも言う。それらは目には見えないが、存在する。
    フェイクニュースが論じられ、ネット上には偽情報が氾濫する現代。それらに対する免疫力をつけ、惑わされないように、そして被害者とならないようにとの意図を、著者はこの作品に込めているのではないだろうか。

  • 再読。やっぱり再読してよかった。1回目はこのラストに向かうあたりから小難しくて退屈になってきたのに、2回目はすんなりと入ってきて登場人物の心情に入り込めた。最後の「生きていけばいいのよ」「生きてゆくよ」は泣けた。宮部さんからの強烈なエールがストレートに響いた。久しぶりに宮部さんを読むと、手練れの語り手だなあとつくづく恐れ入り楽しませてもらった。

  • 「英雄の書」より遥かに面白かった。

    ―というような〈言葉〉を、作者は欲していたのかもしれない。いや、ホントに面白かった。前回が物語と言葉をめぐる概念の「思想書」だとしたら、今回はその思想に影響を受けた人々の「実践の書」であり、人々に普及するための「物語」でもあるだろう。 ―前回は少し難解だったかもしれない。今回はエンタメに振り切ろう。 ―そう作者が考えて、それを実践したようにも思えた。

    たいへん面白い物語を紡いだ作者に言いたい。やはり貴女(あなた)が一番物語を〈渇望〉している。その証拠に、こんな物語世界を実現させても、まだ満足していないでしょ?この30年間で紡いだ貴女の〈物語〉を、ガラの眼で見ればどんな形をしているんだろ。貴女が心配だ。この巨大な〈物語〉に、貴女は潰されることはないのだろうか。

    「あれからいろいろ考えたよ。それで ―思うんだ。ガラが君に教え、君がいろいろ経験してきて思う、その〈言葉〉と〈言葉の残滓〉のことをね、昔から人は、こう呼んできたんじゃないかねえ」
    業、と。
    「人の業だよ。生きていく上で、人がどうしようもなく積んで残してゆくものだ。それ自体に善悪はない。ただ、その働きが悪事を引き起こすこともある」(376p)

    作者とは全く関係ないけれども、年末年始にかけて、今年も様々な事件が起きた。言葉を操って自殺願望者を引き寄せ連続殺人をした男に影響を受けたのか、その模倣犯が未遂で捕まった。自殺願望者たちが道行の結果1人だけ生き残った。またこの小説の中にもあるように、親族同士の諍いの末に幾つもの殺人が起きた。

    第三者の私たちにとり、小説世界の殺人も、ニュースとして見聞きする殺人も、「情報としては等価だ。ーこれって、〈物語〉じゃないか。」(195p)と、孝太郎同様、私も思う。


    だから、貴女は最後に〈メッセージ〉を残したのだろう。物語の行き着く先は、そうでないとならないのだと。

    「ここが〈輪〉だ。物語が続き、命が巡り、祈りが届き、嘆きが響く。ー〈輪〉の小さき子よ、生きなさい。」(386p)

  • 残念ながら、ガラが語る世界観というか、
    異世界があんまり理解できない。
    いろんなものがよく練られたものなんだろうなということは、わかるけれど。
    最後はめんどくさくなって、流し読み。

  • 最後まで主人公に共感できなかったことが全て。宮部みゆきは好きだが、これは自分には合わなかった。

  • 世界は言葉に溢れている。幸せを象徴する言葉から不幸を象徴する言葉まで。ひとが言葉を覚えるのはそれがコミュニケーション手段であり、感情を表現する手段だからと思う。

    孝太郎はガラの力を借りて、ひとの闇の部分を嫌と言うほど見せつけられてきた。どんなに幸せに見えるひとでも闇の部分を持っている。言葉から逃れることが出来ない以上、それがひとを表現する。だから完璧な人間なんて存在しない。言葉の残滓と言うけど、ささやかな言葉がそのひとを形作り、運命を決めることもある。

    ひとは自分の言葉から逃れることは出来ない。改めて言葉の持つ重みを感じ、言葉がその人を現すんだなと実感せずにはいられません。

  • 読み終えました。
    以下ネタバレ。



    上巻でどう繋がるんだろうと不思議でいたけれど、ガーゴイルのガラが出て来てからは『英雄の書』の世界にドーン。
    チートな能力を手に入れた孝太郎くんが、分かりやすく暴走していく。
    マコちゃんの過去とそれに対する孝太郎の煽りシーンが良かっただけに、カナメとマコちゃんと三人のラストシーンが見たかったー。

    クマーの社長のみならず、美香を殺す必要性ってあったのだろうか、とか。
    森永さんにとって救いとは何なんだろう、とか。
    〈渇望〉に身体を委ねてしまった人間は、そこから逃れることは出来ないのだろうか、とか。
    まあ、取り返しのきかない部分で、色々考えることはあった。

    言葉というものの捉え方は面白かった。
    ガラという概念とは戦いようがない、というようなことを書いていたけれど。
    人間は、果たして概念と戦うことは出来ないのだろうか。

  • 作者の言いたいこと、伝えたいことはわかる。が、それがファンタジーである必要性はあったのか。もったいない気がする。

  • 2018年2月15日読了。
    想像していたよりファンタジーだったけど、面白かった。
    テンポが良かったせいか、夢中になって読んでたから、終わった今は喪失感。
    宮部みゆきは優しいな。

  • じっくり読もう、と思っていたのに、速攻で読み終えてしまいました。勿体ないなあ、、、という気持ちもありつつ、この、「読まずにはいられない」「早く読み終えてスッキリしたい。解放されたい」っていう思いを、ガッツリ感じさせる宮部さんの、語り部としての、物語を紡ぐ存在としてのデカさ。凄いですよねえ、、、

    上、中、下、通して読み終えた感想としては、すっごい満足、では、ありません。上巻終了時点での「この小説はリアルな現代ものなのか?ファンタジーへ舵を切るのか?」という、この先の展開へのドキドキワクワク感が、一番だったなあ、というのが正直な思い。中巻以降、ファンタジーものである、ということが完全に分かったあとは、まあ、残念ながら、「何でもアリですな」って思いながら読んでいたのは、正直な事実です。

    といいますか、「英雄の書」の続編、というか、同じ世界観の作品だということを知らずに読み始めたのが、一番の失敗だったか、、、という思いもアリ。くう。其れを知っていたら、物語の入り込み方からして、全然違ったのになあ、、、しまったなあ、、、まあでも、コレも一つの、読書の醍醐味か、ということですよね。しゃあない。

    下巻で明らかになる、いわゆる「指ビル」事件の真相。中巻で、山科鮎子の殺害が、別件、いわゆる「模倣犯」で有ることは明らかだったのですが、それ以外の3件が、実は、全然連続殺人事件では無かった。というオチは、なんだか、凄くこう、斬新でした。面白い結末だなあ、と。わたしたち、日本という範囲に住んでいる我々自身が、無意識のうちに、なにか凄い事件を無意識に求めてしまっている。という感覚?集団潜在意識?シンクロニシティ―?というかね、そんな感じを思いました。木を見て森を見ず、ではなくて、森を見て木を見ず、ということか。

    人は無意識のうちに、物語を望んでしまう。そしてその物語は、壮大であればあるほど、カタルシスがデカい、ということかなあ?なんといいますかね、人間って、欲深いなあ、とか、よおわからんことを思ったりしましたね。

    それにしても、現代殺人事件を、異形の者の力を借りたり、ありていに言えば超常現象の力を借りて解決するのは、まあ、やっぱズルいよなあ、という思いは、どうしても、抱いてしまうのですよねえ。孝太郎が、田代慶子(山科社長の同級生)と中園孝介(花屋の人)を狩ったこと、都築が、中目(なかのめ)史郎の店で、ガラの能力を通して?七夕の短冊から犯人を読み取ったこと、あっこらへんとかね、こうね、単純に、ズルいよなあ、、、何でもアリじゃん、って、思っちゃうんですよね。

    まあ「そういうものである」訳ですので、それはそれとして受け入れるのみ、でございますがね。宮部さんが、物語を「投げた」わけでは、無いと信じたい。エウス・エクス・マキナでは無いと、信じたい。「機械仕掛けの神」って、詩的な表現ですよねえ、、、スマッシング・パンプキンズのアルバム「マシーナ/ザ・マシーン・オブ・ゴッド」が好きです。関係ないですね。

    それにしても、この作品にも、今後、続編は作られるのだろうか?作られるとしたら、そらもう、読んでみたいですね。そういう求心力は、間違いなくある作品でした。ひとことでいうならば、結局は面白かった。そういうことなんですけれどもね。

    「狼」になった森崎友理子は、現実問題として、どういう生活を送ってるんでしょうねえ?架空の物語なのに、その登場人物の現実問題を心配することがあるか、って話なのですが、毎日なに食べてるんだろう?とか、生活の基盤はどこにあるのか?とか、眠るベットはあるのか?とか。余計な心配の極みですが、気になりますね。健やかな生活ができていますように、、、

    あと、上巻で行方不明になった、リヤカーじいさんこと、猪野幸三郎さん。森永健司君が探していた、おじいさん。あの人は、結局、どこへ行ったんだろうか?ガラの鎌の中?謎です。

    森永健司君も、ガラの大鎌が崩れ去った後には、何処にいったんだろうなあ?彼は、最後の最後には、心の安らぎを、得たのだろうか?気になります。そうでありますように。願うのみなのです。

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