- Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101369839
感想・レビュー・書評
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高峰秀子『にんげんのおへそ』を読む。
名文家の誉れ高い女優が70代に書いた
最後の随筆三冊のうちの一冊。
テンポのいいキビキビした文章を愉しんだ。
文体は違うけれど向田邦子の文章を読むときのような
贅肉のなさ、伏線の張り方が小気味いい。
この女優の人生が主演した映画の物語以上に
起伏に富んだものであったことを知った。
しかしそれにしても最初にこの人の文章に目を止め
連載を書かせた編集者の慧眼には恐れ入る。
どの世界にも目利きがいるものだ。
2001年文春文庫。2012年新潮文庫。
(文中敬称略)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
作者がエッセイの名手だというのは有名だけど、読んだのは初めて。面白いし小気味よい文章です。名女優なのも、もちろん知っていましたが、子役出身とは知りませんでした。子役になるようお膳立てをした養母とのお話は壮絶で驚きました。やはり大金を稼ぐ子役って苦難の道を歩むものなんだ、とため息が出ます。画家の梅原氏や作家の谷崎氏など、交遊録はとても興味深く、さすが!と思いながら読みました。中国や中国人との親交も多く、ぞんざいな日本語を話す通訳に苦言を呈するところは、毅然とした、信頼できる人生の先輩という気がしました。
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わくわくしながら、われらがでこちゃんの映画を見る。至福のひととき、YouTubeで楽しむ。
銀幕のスターが、YouTubeで、見られるなんて、世の中、変われば、 -
母にすすめられて読んでみた。
文章が上手で、すーっと入ってきます。
他愛ない夫婦の会話のほっこり感と、母との長年の確執を綴った緊張感、これらのコントラストとテンポから、飽きないです。 -
友人に薦められて読んだ。
この軽快で気っ風のよい言葉遣い(そしてカタカナ使い)、今はあんまり見ないものだなぁ…なんて思いつつ、テンポの良さに乗りながら、読みすすめていき、「ひとこと多い」にぐいっと引き込まれた。義母との確執、生々しく迫ってまいりました…。 -
「渡世日記」に引き続いて読了。
ちょっとお腹一杯になってしまいました。実母との確執は、もっとすさまじいらしいですが、軽やかな文章運びでドロドロした感じがあっさりしているような気すらする。 -
「芸術新潮」のベン・シャーン特集号に載っていたクレー小論の前編を読みたくて、ひとつさかのぼって借りた「芸術新潮」が高峰秀子の特集号だった。彼女が映画に出ていた俳優デコちゃんであることくらいは知っていたが、といっても出演作をひとつも見たことがなく、没後一年になることも(それで年末頃には本屋の平台に本が並んでいたのだ)、たくさんの著作があることも、私はこの特集号で初めて知った。
先に、高峰の養女になったという斎藤さんの『高峰秀子の捨てられない荷物』が借りられたので読み、デコちゃんご本人の本もやっと借りてきて読んだ。
この本は、高峰が「筆を折る」前の、さいごの随筆集の一冊。70代になった高峰が「ドッコイショ!」と一つひとつ書いた話は、おもしろくて、ときどきげらげら笑えて、しんみりするところもあって、でもやっぱりおもしろかった。
▼私は現在、七十歳を越えて、日一日と老いてゆく自分に出会っている最中である。ボケ進行中の自分をじっと見ているのは結構面白い。次はどんなポカをやらかすだろうと、スリルもあってワクワクする。(p.200)
高峰夫妻が「人生の店じまい」について考えはじめたのは、四十歳も終りの頃だという。そして身辺整理にとりくみ、そのメドがついたころから老後の生き方について話し合い、「生活を簡略にして、年相応に謙虚に生きよう」と結論を出した。
思いがけず、ある日突然死んでしまうこともあるだろうと思う。祖母もそうだったし、母もそうだった。そのときが、いつやってくるかは分からないけれど、贔屓目にかぞえても、人生の店開きよりは、もう店じまいのほうが私には近いのだとあらためて思う。
(3/1了) -
この本をきっかけに高嶺秀子さんの随筆を読み漁ることになりました。
カラッとした文章で綴られる、著者の半生、食べ物、友人、日常。
素敵な本です。気持ちの良い読了感でした。
また読み返したくなるだろうし、☆4つ(=本棚在住)決定。