疫病神 (新潮文庫)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (524ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101370132

作品紹介・あらすじ

建設コンサルタント・二宮啓之が、産業廃棄物処理場をめぐるトラブルに巻き込まれた。依頼人の失踪。たび重なる妨害。事件を追う中で見えてきたのは、数十億もの利権に群がる金の亡者たちだ。なりゆきでコンビを組むことになったのは、桑原保彦。だが、二宮の"相棒"は、一筋縄でいく男ではなかった-。関西を舞台に、欲望と暴力が蠢く世界を描く、圧倒的長編エンターテインメント。

感想・レビュー・書評

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  • 疫病神シリーズ第1作

    建設コンサルタントの二宮啓之(けいすけ)は、請け負った仕事で産業廃棄物処理場建設をめぐるトラブルに巻き込まれ、ニ蝶会の組員、桑原保彦と真相を探る事になる。

    建設会社と暴力団、市議会議員が複雑に絡み合い、よくわからないまま読み進めたが、途中にでてくる相関図で解説されてわかりやすくなっていた。

    最初は桑原に対して敬語で話していた二宮だったが、桑原と行動を共にしたばっかりに、かなり酷い目に遭い、その度に決死の覚悟でその場を切り抜け、最後には対等にものを言うようになる。

    途中で逃げ出すこともできたのに、(金のためとはいえ)最後まで筋を通しきった二宮はよくやったと思う。

    アクション・シーンはほとんどが素手での殴り合いで、この作中で人が死ぬことはない。
    大阪弁での二人のやり取りは地元民でも違和感なく楽しめた。

    お互いを疫病神と呼び合う二人のシリーズ、この先も読みたい!

  • スカパーのドラマ化作品を観て依頼、本も読んだつもりでいました。
    作品は違いますが、表面を擦った程度のドラマに比べると、小説の奥深さ、暖かさに改めて感謝!!
    読書好きになって本当にヨカッタ。

  • 専門用語がわからなかったり、産廃処理場開発に絡む輩の相関が紐解けなかったりしたけど、あまり深く考えず、疫病神同士の関西弁の掛け合いがなかなか面白かった。

    あまり、いや、絶対かかわりたくない世界だったけど、死人が不思議と出なかった?のが逆にリアル感あり。

  • 建設現場でのトラブル処理請負や裏社会との仲介で生計を立てる、自称コンサルタントの二宮。彼が軽い気持ちで産業廃棄物業者から引き受けた依頼業務は、あれよあれよと大問題に膨れ上がる。産廃業界とは、政治家にゼネコン、建設会社に暴力団とクセ者ばかりが集い、協力と裏切りを繰り返す魑魅魍魎な世界だった。そんな世界だからこそ、二宮はカネの匂いも嗅ぎつける。さらに、勝手に押しかけた現役極道の桑原も便乗、二宮と行動を共にする。

    こうして生まれた互いが互いを疫病神と罵り合う裏社会コンビ。睡眠も着替えもせず、大阪弁で暴言を投げあいながら大阪の街を駆け回る。片方が拉致されたり、ケンカに巻き込まれれば、結果的にもう片方が救い出すこともある。カネだけで結びついた2人だが、二宮が口八丁、桑原は腕力でいつのまにか互いの足りないところを補い合う。

    そんな血縁も友情もない破天荒で現実離れしたなコンビだが、その背景の産業廃棄物業界はものすごくリアルでドロドロとした複雑さ。そのギャップがこの作品のみどころ。

    そして、この疫病神コンビは次回作を重ね、10年以上も続き、ついには直木賞作品へとたどり着く。確かにこのコンビ、本作品だけで終わるにはもったいない。

  • 普段、絶対接することのない、ヤクザの世界を垣間見れる。こんなアプローチの仕方があるのか!確かに、ここは穴だな、、、気づきが満載。

    二宮と桑原のコンビは、こうして生まれたんだね!

  • 『スカッとする本教えて下さい!』と
    ブク友のbera5227さんにオススメしてもらい
    手に取った本。『疫病神』

    根っからヤクザ、桑原と
    黒ではないけれど真っ白でもない
    建設コンサルタント二宮。
    正反対の2人のタッグがサイコー‼︎

    2人の独特の会話リズムがとにかく面白く、
    一体どんな人がこんなに面白い会話を思いつくんだろう⁉︎とまだ本書を読んでいる途中で、
    作者のインタビュー記事を読みあさってしまった。

    二宮は危険な匂いのする
    産業廃棄物処理場をめぐる依頼を請け負う。
    その仕事にのっかり一儲けしようと
    ヤクザの桑原も参戦。
    仕事を受けてから任務完了まで、ヤクザや政治家、建設会社を相手に怒涛の5日間。
    2人は裏切り裏切られながらも協力し合う。

    先手必勝の頭脳プレイの桑原に二宮は激しく
    巻き込まれながら
    拉致監禁あり、逃亡劇あり、ステゴロあり、賭場での緊迫シーンあり…
    次から次へとスピーディーに手に汗握るシーンが続く。

    ハードボイルド好きにはたまらない

    ボロボロになっても、最後の最後まで
    クライアントに筋を通そうとする二宮が格好いい!
    そしてその結末に…ふふふ、大満足‼︎
    お互いを疫病神呼ばわりする、
    この2人のタッグがまた早く見たい。
    続きが楽しみー‼︎

  • 黒川博行氏といえば、筧千佐子のいわゆる「後妻業」を描いた同名の小説で一世を風靡したが、むろんその名は事件報道以前から知っていた。いわゆるハードボイルド小説をものしたら右に出るものはいないと思えるほどの作家である。黒川氏が書く二宮と桑原の「最凶」コンビと呼ばれるシリーズの第一弾が本作だった。

    ところで、ごく普通の市民として生きていると、極道の世界にはなかなか現実的な感覚が伴わない。考えてみれば、身近なところにありそうでありながら、実態はアンダーグラウンドな世界に遮蔽されていて実際に目にする機会などまずない。

    黒川氏は、そうした普段の我々からは闇に隠されている世界を、ハードボイルドという手法で描いてみせる。ハードボイルドゆえ、語り手の目や五感を通して得られる事実を粛々と書き連ねることとなる。読み手は緻密に描かれた物語の中の事実から立ち昇ってくる感情を、それぞれの読み手に応じて感受することとなるだろう。そのときに誰もが感じる感情こそ、畢竟、ワクワクドキドキといったものではないだろうか。

    黒川氏の描写は、どんなシーンをとっても緻密で、丁寧で、読み手は容易にビジュアル化できる。それでいて、文章のスピード感は損なわれない。場面の転換も程よいタイミングで行われる。読み手は心地よいスピード感に乗せられて、あっという間に物語を読み進めてしまうだろう。

    もちろん描かれている内容もスリリングだ。本作では、新たな産廃処理場建設を巡って、複数の極道が「シノギ」を求めて暗躍する。といっても、単なる極道同士の闘争ではなく、その裏でおのが手を汚さずに黒幕として姿を見せない奴らが存在するのである。黒幕の代表格は、政治家だ。彼らは極道に負けず劣らず、「シノギ」の匂いを嗅ぎ分けるのに長けている。おのが利権のためになら何でもする人種でなければ、少なくともわが国ではまともな政治家になどなれない。たとえ大馬鹿者であっても、金の匂いを嗅ぐことに長けていれば、政治家は務まる。ある意味では、一見「まともそう」に見える分、極道よりたちが悪い。極道や政治家が金の匂いをプンプンさせ始めると、そこには大手・中小のゼネコンやらヤクザのフロント企業やらが入り乱れ、互いに巧妙な策略を使い、容易に尻尾を掴ませないように複雑な構図を描いてみせる。

    最凶コンビは、絡まった糸をほぐすように事実を追いかけ、時には大胆な推測に基づいて思い切った行動をとる。少しずつ交錯した糸がほぐれてくる。その過程を描いた物語こそが本作であり、糸をほぐすプロセスは、絶えず危険な場面の繰り返しである。ゆえに我々はそれを読むことでワクワクドキドキの黒川ワールドに引きずり込まれることになる。いちいち細かな心理描写などが描かれていたら、スリリングさは半減してしまう。黒川氏がハードボイルドという手法を採ったのは、慧眼というほかない。

    疾走感あふれるハードボイルド=黒川博行ワールドは、かくも楽しいものであったか。これまで名前は拝見しつつも、作品を読んだのは初めてなことが悔やまれるほどである。黒川博行――またひとり、好きな作家が増えた。

  • 建設コンサルタントとヤクザの凸凹コンビが織りなす狂騒曲。シリーズ第1弾。産廃を巡るゼネコンとヤクザの絡みに巻き込まれていく流れは難しいながらも軽妙で面白い。テーマが重いわりに会話がテンポ良い関西弁なので関西住民としてはサクサク読めて楽しい。作品当時にあたるこの業界は闇がかなり深そうで実際にあったら恐ろしいな、と思いながら読めた。主人公の二宮が頭の回転が速く口も達者なので気後れしない所が何とも。そして黒川作品に共通していることなのだがラストの余韻がサッパリとしつつ後を残すのがたまらん。

  • ごりごりのヤさんの話でしたな。

  • 面白い!好き。

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著者プロフィール

黒川博行
1949年、愛媛県生まれ。京都市立芸術大学彫刻科卒業後、会社員、府立高校の美術教師として勤務するが、83年「二度のお別れ」でサントリミステリー大賞佳作を受賞し、翌年、同作でデビュー。86年「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞を受賞、96年『カウント・プラン』で推理作家協会賞を、2014年『破門』で直木賞、20年ミステリー文学大賞を受賞した。

「2022年 『連鎖』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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