おそめ―伝説の銀座マダム (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 36
  • Amazon.co.jp ・本 (476ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101372518

作品紹介・あらすじ

かつて銀座に川端康成、白洲次郎、小津安二郎らが集まる伝説のバーがあった。その名は「おそめ」。マダムは元祇園芸妓。小説のモデルとなり、並はずれた美貌と天真爛漫な人柄で、またたく間に頂点へと駆け上るが-。私生活ではひとりの男を愛し続けた一途な女。ライバルとの葛藤など、さまざまな困難に巻き込まれながらも美しく生きた半生を描く。隠れた昭和史としても読める一冊。

感想・レビュー・書評

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  • [無垢なる夜の精]戦後間もない頃に「おそめ」という名のバーを京都と銀座に開き、文芸界に属する人々をはじめとした著名人を文字通り虜にした上羽秀。そんな彼女に期せずして魅せられてしまった著者が、浮き沈みのあった秀の人生と、一筋縄ではいかなかった往時の人間模様を記した作品です。著者は、約5年をかけて本作を執筆したという石井妙子。


    川端康成や大佛次郎、小津安二郎や白洲次郎と、「おそめ」に通った人物たちの名前をあげれば、いかに「おそめ」がとんでもないバーであったかが察せられると思うのですが、本作では何故に「おそめ」がこれらの人々を魅了したか、そしてその魅力ゆえに彼女自身はどのような苦労を経験しなければいけなかったかが丁寧に記されており、(まったくもって良い意味で)まるでよくできた脚本を読んでいるかのようでした。石井女史により書かれなければ、「おそめ」は誰しもの記憶からいつか消えてしまったであろうことを考えれば、単なる読み物以上の意味を有しているのではないでしょうか。


    「おそめ」を軸に戦後から高度成長期にかけての京都、そして銀座の変貌ぶりがわかるのも興味深い点。特に(?)一世代ぐらい前までの人々にとって「銀座」という響きが有していたであろう艶やかかつ「大人もの」の雰囲気の淵源が、「おそめ」を始めとした銀座のバー、そして雇い上げた(当時は女給と呼ばれていたようですが)ホステスではなく、自身の魅力で勝負を賭けたママたちにあったことがよくわかりました。

    〜うちはほんまに可愛がられました、せやけど、その分、憎まれました。〜

    自分もいつかは銀座が似合うオトナに......☆5つ

  • サブタイトルの通りの伝説の銀座マダム。男の小説家が書くヒロイン(化粧をしなくても美人、いるだけでそこが輝いている、芯が強いけど男を立てて万事に控えめ、自分からなにもしなくても男たちが寄ってたかっていろいろとやってくれる、etc…)って、女の私から見てどうもピンと来なくて、そんなキャラって男が都合よく作っているだけじゃないのか?って思っていましたが、「おそめ」を読んで、そういうキャラの人がほんとうにいたんだ、ということにまずびっくり。これでは錚々たる文士たちが放っておかないわけだ、と納得しました。おそめと対比されて登場するエスポワールのマダム川辺るみ子はおそめとは対照的に一所懸命にがんばっちゃうキャラで、晩年は辛いことが多かったようだけど、凡人の私としてはるみ子さんのがんばりに1票投じたい感じでした。

  • サブタイトルの通り、戦後の銀座マダム おそめ こと上羽秀の伝記。何故かモテる女、人を虜にする魅力的な女性っているんだな。羨ましい限り。そんな人に限って、金は使いたい放題、妻子を隠して付き合い、バレたら開き直ってもろとも世話になる典型的ダメ男に尽くしに尽くし、70を超えてからついに籍を入れる。

  • 競争戦略を本分とする楠木建が自著『戦略読書日記』の中で「改めて『商売は理屈じゃない』というどうしようもない真実をイヤというほど思い知らされた」と脱帽した一冊。
    「おそめ」と呼ばれた祇園の芸妓が天賦の才と強運を味方にして、昭和財界の大御所や文豪たちが集う銀座のバーのマダムとして一斉を風靡する。当時は「癒し」なんていう言い方はなかったと思うけれども、おそめが殿方たちに提供していたものは間違いなくそれ。川端康成、白洲次郎、小津安二郎らが通ってしまうほどの癒し。しかも、その提供を「仕事だと思ったことがない」と言い切ってしまうのだからまさに天性。
    バーのマダムをやるために生まれてきたのではと思わせる彼女の一生が、著者の抑えた筆致で活写される。その頂点への駆け上がり方の鮮やかさだけでなく、その後の凋落の哀しさも含めて。ノンフィクションの傑作。

  • 作者のおそめへの溢れる愛情、眼差しが素晴らしい。

  • この本を読了して暫くしたら、モデルとなった「おそめ」さんが亡くなったと新聞記事に書かれていた。

  • 2014.01.26 朝活読書サロンで紹介される。

  • 昭和30~40年代に銀座と京都で隆盛を誇った「バーおそめ」のマダム・おそめの評伝。文化や政治など世のなかを動かしていた人々のサロンのような役割を果たしていた場を仕切っていたおそめこと秀の人生をたどる。
    著者は老境の秀と会っては昔の思い出を聞こうとするが、秀からは確たる話はあまり出てこない。きっとそれが秀という人であり、愛された理由なのだろう。
    でも一方ではあまり主体性のない人のようにも思える。私は意思的に生きる女の一代記のようなものが好きなので、周囲の逸話などからくる面白さでどんどんページはめくっていけるのだけど、読み進めるほどに秀に対する興味はなくなっていくような気がした。むしろ、天性と思われる天衣無縫さで誰にも愛される秀の周りで苦労を重ねた母・よしゑや妹・掬子の人生や思いのほうが知りたい。

  • 「血の通った人間というより、何かの精のようだった」

    京都の花街にある店で、友人が祇園のバーで見掛けた
    という美しい老女。過去に「おそめさん」と呼ばれた老女は、
    川口松太郎の小説『夜の蝶』のモデルともなった、有名な
    バーのマダムだった。

    会ってみたいと、著者は思う。表舞台から「おそめさん」が姿を
    消して数十年が経つ。それでも、会ってみたい。話を聞きたい。

    著者が「おそめさん」との邂逅を果たす、この序章だけでがっし
    と心を鷲掴みにされた。

    京都と銀座にバー「おそめ」を開き、飛行機で二つの街のを
    行き来したことから「空飛ぶマダム」と言われた伝説のマダム。

    その生涯を追う作業は決して楽ではなった。著者が念願叶って
    会うことが出来た「おそめさん」こと、上羽秀は穏やかだが寡黙
    な人だった。

    秀さんご本人から話を引き出すことが難しかった為か、彼女を
    取り巻く人々やモデルとなった作品、週刊誌等の報道から
    ひとりの女性の反省を描き出している。

    文壇や政財界、映画界の多くの男たちを魅了し、同性からは
    嫉妬のまなざしに晒され、それでも天性のものなのか誰の
    悪口も言わず、流れに任せたように見えながら強靭な芯を
    持った女性だった。

    商売も損得ずくではない。お客さんに気持ち良く遊んで欲しい。
    そして、そんなお客さんたちの相手をして飲んでいるのが楽し
    くて仕方がない。

    天真爛漫とでもいうのだろうか。世間のことには疎く、金銭に
    もこだわならい。華美に着飾ることはしないが、気前はいい。

    本書にはいくつかの写真が掲載されている。確かに美しい
    人ではあるが、絶世の美女ではない。だが、本書を読み進み、
    上羽秀という女性を知るごとに、奇跡的な魅力を備えた人
    だったのだろうなと感じた。

    昭和30年代の銀座で、「そそめ」と覇を競った「エスポワール」
    のママ・川辺るみ子や、秀の母・よしゑ、妹・掬子、娘・高子等、
    秀を取り巻いた人々も興味深い。

    そして何よりも本書に惹きつけられるのは、著者の上羽秀と
    いう女性に向けられた深い愛情だろう。

    食事を終え、迎えの車を待つ秀と著者。その夜の情景を描いた
    ラストシーンは、読み終わってじわじわと胸に迫り、切なさと
    温かさの余韻に包まれた。

    本当なら一気に読んでしまいたかったのだが、読み終わるのが
    惜しくて少しずつ読んだ。こんな作品、久し振りだ。

  • 内容(「BOOK」データベースより)

    かつて銀座に川端康成、白洲次郎、小津安二郎らが集まる伝説のバーがあった。その名は「おそめ」。マダムは元祇園芸妓。小説のモデルとなり、並はずれた美貌と天真爛漫な人柄で、またたく間に頂点へと駆け上るが―。私生活ではひとりの男を愛し続けた一途な女。ライバルとの葛藤など、さまざまな困難に巻き込まれながらも美しく生きた半生を描く。隠れた昭和史としても読める一冊。

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著者プロフィール

石井妙子 (いしい たえこ)
1969(昭和44)年、神奈川県生まれ。白百合女子大学卒、同大学院修士課程修了。2009年『おそめ―伝説の銀座マダム (新潮文庫)』を執筆。綿密な取材に基づき、一世を風靡した銀座マダムの生涯を浮き彫りにした同書は高い評価を受け、新潮ドキュメント賞、講談社ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞の最終候補作となった。『原節子の真実』で第15回新潮ドキュメント賞を受賞した。2019年、「小池百合子『虚構の履歴書』」で第25回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞を受賞。

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