原節子の真実 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2019年1月29日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (464ページ) / ISBN・EAN: 9784101372525

作品紹介・あらすじ

14歳で女優になった。戦前、戦後の激動の時代に112本の作品に出演、日本映画界に君臨する。しかし42歳で静かに銀幕を去り、半世紀にわたり沈黙を貫いた。数々の神話に彩られた原節子とは何者だ ったのか。たったひとつの恋、空白の一年、小津との関係、そして引退の真相──。丹念な取材により、伝説を生きたひとりの勁い女性の姿を鮮やかに描き出す決定版評伝! 新潮ドキュメント賞受賞。

みんなの感想まとめ

彼女の人生は、若くして女優として華やかな舞台に立ちながらも、42歳で静かに引退し、半世紀もの間、表舞台から姿を消したという神秘に包まれています。多くの人が知る原節子の伝説的な存在は、実は徹底した隠棲に...

感想・レビュー・書評

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  • 著者が語る「原節子の真実」 石井妙子
    https://www.youtube.com/watch?v=KY3a3okPk8Q
    を聞いてから読んだ。
    ものすごく面白い本だった。
    著者曰く、
    「原節子とはなんだったかと聞かれたら私は迷わず日本と答えたい。」
    「原節子は時代を背負わされた存在である。これほど激動の歴史と重なる生涯を送った者は稀だろう。関東大震災・昭和恐慌・満州事変・日中戦争・三国同盟・太平洋戦争・廃墟からの復興・そして高度経済成長の最中に姿を消した。」
    「彼女らしい95年の人生だった。」
    つまり原節子の生涯の記述を通じて、戦前から戦後の文化史を見通す本でもある。
    デビュー当時、映画女優は賤しい職業と看做されていたとか、時代のギャップも。
    そして、義兄の熊谷久虎とか、清島長利という人物とか、濃い人物たち。
    この作者は徹頭徹尾、原節子自身の発言に基づいて、小津安二郎との恋を否定する。
    原節子伝説の解体であるとともに、小津安二郎神話の神話崩しでもあるのだ。
    読後に残るのは、会田昌江という女性の、生真面目なところと、きっぷのよさというのか、とにかくますます好きになった。



    その存在感と去り際、そして長き沈黙ゆえに、彼女の生涯は数多の神話に覆われてきた。真偽の定まらぬままに――埋もれた肉声を丹念に掘り起こし、ドイツや九州に痕跡を辿って浮かび上がったのは、若くして背負った「国民的女優」の名に激しく葛藤する姿だった。伝説を生きた女優の真実を鮮やかに甦らせた、決定版の本格評伝。

    まえがき 原節子と会田昌江
    第一章  寡黙な少女
    第二章  義兄・熊谷久虎
    第三章  運命との出会い
    第四章  生意気な大根女優
    第五章  秘められた恋
    第六章  空白の一年
    第七章  屈辱
    第八章  孤独なライオン
    第九章  求めるもの、求められるもの
    第十章  「もっといやな運命よ、きなさい」
    第十一章  生きた証を
    第十二章  それぞれの終焉
    第十三章  つくられる神話
    あとがき 会田昌江と原節子
    文庫版あとがき
    主要参考文献
    手帖抄 原節子
    解説 ヤマザキマリ

  • 原節子。
    日本人離れした美貌、きりりとした佇まいから、「永遠の処女」と呼ばれた、昭和を代表する美人女優である。
    小津安二郎の紀子三部作を始め、112本の映画に出演。燦然と輝くキャリアを持ちながら、42歳という働き盛りに引退し、銀幕から、いや世間からも身を隠し、半世紀もの間、隠遁生活を送った。2015年の逝去すら公表されたのは2ヶ月経った後だった。
    本書はこの原節子の真の姿に迫ろうとする評伝である。

    50余年、世間との関わりを断っていた人物の素顔に迫るのは容易ではない。著者は原の評伝を書くことを伝えようと、何度か自宅を訪ねている。だが、生前、一度も面会することができなかった。
    時には藪の中をさまようように感じながら、丹念な、執念を感じさせる調査・取材で、じわじわと伝説に隠された人間・原節子に近付いていく。
    そこに浮かび上がってくるのは、女優・原節子を演じ、それを自らの手で葬り去った1人の勁い女性、会田昌江の姿であった。

    原節子=会田昌江は、14歳で女優の道に進んだ。映画監督をしていた義兄に勧められてのことだが、必ずしも当人の希望ではなく、家庭の経済的理由が大きかった。成績はよかったが女学校を中退し、家を支える決心をしたのである。昭和10年のことだった。
    当時の映画界は、河原乞食と蔑称された演劇界よりもさらに一段下に見られており、一般家庭から女優になる例は少なかった。さらには監督が絶対的存在として君臨し、女優の地位は最下辺である。どこか身を持ち崩したような癖のある人物が多い映画界に、初めから原は馴染めなかった。
    世間ずれしていない無口な少女は、その清純さから、若き天才監督、山中貞雄に見出され、大きな役をもらう。その撮影中に、ちょうどスタジオに来ていたドイツ人監督ファンクとの記念撮影に応じる。のちにその縁で、日独合作映画に出演することになる。日独関係を強固にするための国策映画『新しき土』である。この映画の宣伝で原はドイツ、フランス、アメリカを回る。
    一躍スターとなった形だが、女優という仕事に真摯に向き合おうとする原の姿勢と、映画界や世間の思惑の齟齬は、すでにこのあたりで露わになりつつあったのかもしれない。原は清楚に見える一方で、言いたいことは主張する強さも持つ女優だった。水着やポートレートの撮影は女優としての仕事に関係があると思えなければ断った。女優ならば容姿でなく演技で評価されるべきだという考えからである。それが世間からは「大根役者なのに生意気だ」「洋行帰りでいい気になっている」と叩かれる元になった。
    戦時中は、戦意高揚映画にも出演する。凛として美しく、戦地に男たちを送り出す役どころである。原のイメージにはぴったり合っていた役ではあったのだろう。

    原の映画人人生で大きかったのは義兄、熊谷久虎の存在だったという。
    義兄は前のめりで、かつ少々偏った思想の持ち主で、九州に独立国家を建てようとしたこともあったようだ。原は監督としての義兄を評価しており、何本か、彼の監督で作品も撮っている。だが、どれもあまり世間的にはよい評価は得られていない。その上、この義兄との映画の撮影中に、カメラマンを務めていた実兄が不慮の事故で命を落としており、そのことがのちの引退につながる一因と見る向きもある。

    戦後は小津安二郎のほか、黒澤明や成瀬巳喜男など、名だたる監督とも仕事をともにする。
    だが往々にして、原自身がやりたいと願った作品は高評価を得られない傾向があったようだ。
    彼女が真にやりたかったのは、自己を持つ強い女性、お人形さんではなく主張する女性だったのだろう。終生、細川ガラシャを演じたいと願っていたというのが興味深い。
    おそらくは原が出演した作品の中で最も評価されている小津作品を、彼女自身は気に入っていなかったというのもおもしろいところだ。

    一見、華やかな女優人生の陰で、私生活は幸せとは言えなかった。
    彼女はただ一度の恋に破れている。あまり著名でなかった助監督・脚本家であるが、会社に仲を引き裂かれる形で別れている。
    終始、強いライトを当てられたために、目も病んだ。失明寸前までいったという。
    それでもなお、ストイックに演技に打ち込もうとし、それでもそれを正当には評価されなかったのが原節子という女優であったのかもしれない。
    確かに大女優とは言われた。だが、人々が見ていたのは、見たいと思ったのは、彼女の外面であり、演技者・原節子ではなかったのではないか。
    いいや、違う、私が演じたいのはこれではない、と原は叫びたかったのではないか。

    半世紀の隠棲生活を選んだ心情を外野が推し量るのは難しい。
    だがこれほどきっぱりと身を処したその陰には、やはり相当に強い決意があったのだろう。
    表紙のポートレートの凛としたまなざしの奥で、彼女は何を思っていたのだろうか。

    原節子という稀有な1人の女優の人生をたどるだけでもおもしろい。
    本書ではその上に、戦前・戦中・戦後の日本映画史が、またその時代を生きた映画人たちの息吹が重なる。
    読み応えのある評伝である。

  • 文庫化に伴い再読。

  • 親から「すっぱりと引退してその後全く表舞台に出てこない女優」として聞いていた原節子。原節子の女優人生と人柄が書かれたノンフィクション。彼女の映画を観たこともないのであまり興味もなかったがふと手に取って読み始めたら面白かった。ひょんなことから女優となるも流されず自分の意志を持ち凛と生きた。引退してからはほとんど人付き合いをしなかったという。意志の強い人との印象をうけるが束縛とも取れる義兄との関係は嫌ではなかったのだろうか。引退してからは家に閉じ籠る生活だったとのこと。孤独に強い人だったのだろう。人として強い。

  • まず小津安二郎に対する冷めたコメントに驚いた。確かに出演は六作、主演は三作であり短くはない彼女のキャリアの中で特別視するほどの監督ではなかったのかもしれない。
    また、彼女の引退への道筋がよくわかった。色々な要素があり、古い話しでもあり、何が真実かは言えない話しだが、当書に書かれている内容が決定版であるように思えた。
    義兄との関係は謎。
    そして思っていた以上に彼女の半生に影を感じた。

  • 知らない原節子がたくさんいた

  • 本人に寄り添った素敵な内容
    最高

  • 書評はブログに書きました。
    http://dark-pla.net/?p=1428

  • 原節子さんの映画を見たことがなく、名前を知っている程度でしたが、引き込まれました。戦前戦後の日本の雰囲気を感じ取ることもできました。
    最後の原節子さんの書いた文章、ヤマザキマリさんの解説もとても良かったです。

  • ノンフィクション作家の業のようなものを感じる。当人と会ったこともない人が良くぞここまで対象を掘り下げることに感嘆する。

    あの小池百合子を描いた「女帝」が面白くまた本当に内容を信じられるか微妙なところもあったので同じ作家の別の作品として本書を読んでみた。

    日本映画史上に残る女優原節子。40を過ぎて突然の引退。謎の多い生涯。雑誌、新聞記事から生涯を推測していく。人気女優でありながら実は映画界が嫌いであったというところ。代表作とされる小津安二郎の作品を当人は気に入らなかったところなど新鮮な内容が多かった。

    ずっと過去の膨大な資料を探し出す作家の力量はおそろしいほど。執念のようなものを感じる。

    ノンフィクション作家としての松本清張に匹敵する作家と言っても過言ではないように思えた。

  • たくさんのものを背負い、たくさんのものを失いながら、生きたかたなのですね。映画の中の姿からはとても想像が及ばないほど。
    女性としてこれ以上言葉になりません。

  • 原節子さんは これまでは 私の中では胸の大きい 歩き方がおしとやかじゃない女優さんというだけであった どんなに顔が綺麗でも歩き方が気になって私の中では美人ではなかった 本書における原節子さんの内面は どんなノンフィクションでもそうだが ようは筆者の意見である それはそれでよく 引き込ませ読ませる意見だった 私の心に一番残ったところは 「この戦争には勝たなくてはいけない」と原節子さんが思ったというところでした 自分で考え生きたのだということが伝わって来て感動した そういう気持ちを持ってこれから観返す原節子さんは どういう女優さんであったと自分は思うのであろうか そういう意味で本として 作品として 本書は読む者に届いて来るものを持っていた いいなと思う 筆者もたくさん思い考えた そのことがあふれ出している本だった 読む者もたくさん考え たくさん思い たくさん感じる 読書なのであった 読んだ人は次に向かって動くのだから

  • 最近のゆとり世代は原節子の写真を見ても恐らく誰かは分からないのであろう。全く嘆かわしい。原節子の写真を見てぱっと誰かを認識できないような人間は、リベラルアーツの欠片もないということであり、「(とても)若き老害」、「中道左派の保守主義者」を自称する私としては、文科省の教育プログラムの再考を促したいところである。

    さて、国民的女優として銀幕を舞台に活躍しながらも、42歳で引退した後、半世紀もの間、沈黙を貫いた名女優、原節子。本書は、第15回新潮ノンフィクション賞を受賞した、原節子の生涯を巡るノンフィクションであり、女優という仕事に対するプロフェッショナリズムの高さを痛感できる一冊である。

    本書を知って認識を新たにしたのは、日本においてはかつては女優という仕事が、低俗なものとみなされていた時期があった、ということである。そうした世間の風を背後に、ひたすらに自らの演技の質の向上だけを考えて生きたように見える彼女の姿は、現代においても珍しいほどストイックな印象を与える。それは「女優は恋愛・結婚すれば演技が磨かれるはずだ」という世間の批判に対する「じゃあ人殺しの役は人殺しにしかできないの?」という反論にも、端的に表れている。

    改めて小津安二郎の「東京物語」における彼女の美しい姿を見てみたいと思う。

  • 2019/02/24 蔦屋家電
    なかなか,根性のすわった女優さん。
    やはり,東京物語が面白い。

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著者プロフィール

太田・石井法律事務所。昭和61年4月弁護士登録(第一東京弁護士会)。平成30年経営法曹会議事務局長。専門分野は人事・労務管理の法律実務。

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