スキップ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.67
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本棚登録 : 4308
レビュー : 555
  • Amazon.co.jp ・本 (571ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101373218

作品紹介・あらすじ

昭和40年代の初め。わたし一ノ瀬真理子は17歳、千葉の海近くの女子高二年。それは九月、大雨で運動会の後半が中止になった夕方、わたしは家の八畳間で一人、レコードをかけ目を閉じた。目覚めたのは桜木真理子42歳。夫と17歳の娘がいる高校の国語教師。わたしは一体どうなってしまったのか。独りぼっちだ-でも、わたしは進む。心が体を歩ませる。顔をあげ、『わたし』を生きていく。

感想・レビュー・書評

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  • 全然覚えてないのだけど、こんなような夢を見たような
    でも全く覚えてないので、全然別のきっかけだったのかもしれないけど。

    なんか突然、この本が気にかかり、図書館で何気に目に入り、なんとなくそのまま借りてしまいました。
    懐かしいなぁ。
    すっごいむかしに読んだ気がしてたけど、今世紀になってからだし、そうむかしでもなかった。

    10年前の2003年だとちょっと最近な気がして感覚が変なんだけど、さすがに25年経つと人も世も変わるよね。
    タイムスリップもののSFファンタジーというイメージがあって、最後元に戻らないことにすごく衝撃だった記憶があるんだけど、これそういう話じゃないよね。

    まぁ、古き良き時代の優秀な文学少女だったとしても、どんなに聡明で柔軟な心の持ち主だったとしても、25年後の世界を受け入れて、高3の国語教師を果たせる17歳はあり得ないと思いますが、この話を通して伝わってくる、初心を忘れずおごらずに自尊心を持って相手の目線に合わせることの大切さだとか、そういう真摯で前向きな感じがすごくいい。

    高校生には絶対読んでほしい本だなぁと、今あらためて思いました。
    そして、桜木真理子先生に近い年の人が読んでも、現状で楽しく頑張れる気持ちをもらえると思う。

  • 「───わたしは、百人の男と寝たい」

    これが書き出しだったら、綿矢りさでしょうが、そういう話ではない。
    いわゆるタイムスリップもの。
    この本が何故に書棚の奥に入っていたのか、未だに分からない。
    本を整理していたら、にっこり笑いながら顔を出してきた一冊。
    北村薫がかなりの年配で、しかも男だったというのを初めて知った。
    だが、読み始めたら面白い。止らなかった。
    昭和40年代初めに17歳だった女子高生が突然25年後の未来に飛んで、42歳の主婦に。
    そのうえ高校の国語の先生。
    しかも娘が17歳。
    その娘が帰宅すると、主人公が「教えてください。ここどなたのお宅なんですか?」と訊ねる。
    娘の返事は「ふざけてるの? ───お母さん」
    ですよね、もちろん。
    そんなことあり得ない。ジョーク? 記憶喪失?
    いずれにしても現実ではそう簡単に娘は信じないでしょうが、まあ、そこは小説だからと軽く受け流したい。
    この作品はそんな陳腐なタイムスリップめいたものがテーマではないはずだから。
    とにかく、一瞬にして昭和から平成に飛んでしまった一ノ瀬真理子。失われた25年の間、自分がどういう人生を歩んできたのか全く知らない。それでもその理不尽さと今の世界に正面から向き合い、生きていこうとする。そして、それを支える娘と夫。
    人の絆、人の優しさを随所に感じさせる温かい作品だ。
    登場人物が魅力的で誰もが生き生きと描かれ、しかも優しい。
    現実にはこんな人間ばかりいないけれど。でも、自分の周りがこれほど優しい人たちばかりだったら、人生はどれほど楽しいものだろう。
    バレーボールの試合。
    真理子さんが語るように、東京オリンピックの決勝「東洋の魔女対ソ連」の試合を彷彿させた。(私は生で見てないが、その後のニュースで何度も放映されたので、神永がヘーシンクに敗れ日本柔道の未来に暗雲が立ち込めた試合と同様、記憶の片隅にある)
    「金メダルポイントです!!」有名な台詞だ。
    手に汗握りながら、ニコリ島原さんを応援した。

    泣けました。泣きました。
    読了後すでに一週間以上経つので、どこで泣いたんだろう?と再びページをめくった。
    かつての友人との再会場面か。それともバレーボールの試合終了後か。或いはやはり、
    「お父さん、お母さん、わたしはもう二度とあなた方に会えません」だったか。
    遥か忘却の彼方へと遠のいた時代と決別し、現実を受け入れ、前向きに生きていこうと決意する真理子。
    映画「ALWAYS三丁目の夕日」のように、ああ人間って素晴らしいな、としみじみ心に響いてくる逸品でした。
    生きるのが辛いな、と感じたときに読むのがいいような。

  • 「時と人」三部作の1冊目。3作の中では圧倒的に本書がお気に入りです。

    17歳の少女が自宅でうたたねをして、目が覚めると42歳。同い年の子供と-見知らぬ夫が居る。

    怖い。この設定はホラーそのものだと思います。久しぶりに再読してみましたが、なまじ展開を覚えているだけに、昭和40年代の日常の何でもない描写が痛々しくてドキドキしました。

    タイムスリップものは巷に溢れかえっていますが、時代を飛んでみていちばんの衝撃が「夫がいる」だった、というのはある意味斬新で、でもよくよく考えてみると当然の反応です。この辺り、男性でありながら女性の心理描写がびっくりするほどリアルな北村作品の特長が良く出ていると思います。

    そして、飛んだ後の展開がまた秀逸。普通なら「なぜ飛んだのか」「どうやって戻るか」に主眼が置かれるところですが、主人公はそれどころではありません。"昨日"までとまるで違う今日を、そして恐らくはやって来る明日をどう生きるか。そこにこそ作品の力点が置かれます。登場人物が現実を受け入れすぎている、リアリティがない、という批評ももちろんあるでしょう。でも、目の前の現実に対峙し、乗り越え、そして受け入れていくこと、それこそが彼女にとってのリアリティだったのだと思います。

    幕引きはとても哀しく、でも前を向いて本を閉じることが出来る。出会えて良かった。また読めて良かった。そんな貴重な1冊です。


    補足1:設定を抜きにして、教育論としてもこの本、面白いですよね。学級日誌を読んでいると、高校教師だった頃の北村氏は人気があったのだろうなあと察せられます。

    補足2:単行本の刊行からなんと20年近くが経とうとしています。今書いたならば、やっぱり主人公が一番驚くのはスマホなのでしょうか。

  • 北村薫さんの「秋の花」を読んだのは、2014年5月。そのレビューに真理子には「スキップ」で会えると知って、読まなければ、と書いた。
    我が事ながら遅すぎるというか、よく忘れないでいたというべきかな。勿論、忘れたわけじゃない。

    本当を云えば、父と娘の心が入れ替わったり、男女の心が入れ替わったり(僕が思い浮かべたのは、「君の名は」ではなく、大林監督の映画)、未来と過去の自分の心が入れ替わる物語は読まないし、観ないことにしている。
    だって、そんなことある訳ないじゃないか。心も記憶も頭脳細胞と云う入れ物の中の電気信号なんだから。
    つまり、北村薫さんじゃなかったら手に取らなかった本。

    レビューは、どう書いてもネタバレになりそうで難しいなあと思ったけど、ミステリーじゃないし、他の方も普通に書いてるから、気にせず書くことにする。

    17歳の女子高生が昼寝から目覚めたら、25年経っていて、同い年17歳の娘がいる。当然、配偶者もいる。
    北村さんは上手いなあと思ったのは、その設定。42歳の真理子の職業が高校の先生で、娘はその高校の生徒。配偶者も同じ国語の教師で、タイムスリップは春休みの時。現在の情報の入手できるし、時間の猶予もある。勿論、北村さん自身の経験が活かすことができるメリットもある。

    でも読み進めていくと、そんな安易な考えで書かれているんじゃないと思い知らされる。42歳の身体と17歳の心で描かれる高校生たちの放つ輝き。
    それは、主人公真理子の経験できなかった時間の欠落でもある。その後に経験するはずの大学での学問との出会いや友との語らい、恋愛、結婚、出産、子育て。人生で一番の時間が失われている悲劇。

    その涙の後に、「昨日という日があったらしい。明日という日があるらしい」から続く数行。この物語の最後を美しいものにしている真理子の意志に心が震えた。

    余計な感想。
    僕は1960年生まれ。前の東京オリンピックの時は幼稚園生。タイムスリップ前の真理子から10歳は若い。でも、シャボン玉ホリデーも知ってるし、書かれた諸々は大体わかるし、楽しめた。
    そして、真理子がタイムスリップしたのは、僕が30代の頃。昭和40年と昭和65年の社会と生活の変化って凄かったなと、改めて思うよ。
    現代にタイムスリップしたら、ネットの情報が一番の違いということになるのかな。

    さらに余計な感想。
    17歳の僕の心が42歳の僕の躰と状況に移されたら、とても怖い。でも、妻の心が17歳に戻ったら、もっと怖い。何が怖いのか判らないけど、すごく怖いと思う。

  • やはり間違いない一冊。
    初めて読んだ時はまだ学生で、
    いつかこんな授業がしたいと思ったものです。

    今、国語の教員として教壇に立つようになり、
    何度読み返したかわかりませんが、
    読むたびに、
    主人公のしなやかな強さに励まされます。

    さぁ、また頑張ろう。

  • 昭和30年代の女子高生がうたた寝から起きたら、意識はそのままなのに25年という時間を”スキップ”してしまい、突如42歳の中年女性になってしまったという、設定だけなら名作『リプレイ』の逆のことが起こるお話。あとがきで作者も『リプレイ』について触れていますが、当然ながら内容はまったく別ものです。17歳の心のまま、見知らぬ夫と娘に助けられながら、高校の国語教師という現在の役割りを誠実にこなそうとするなかで、時間とは、自分とは、若さとは何か、というようなことを見つめます。1秒ずつ過ぎてゆけば自然な変化もうたた寝の一瞬で過ぎるとギャップが大きくその差は歴然。同じなのに変わってゆくこと、変わっても同じであることなどなどを、考えたりしました。これぞ北村薫作品という凛としてきちんとした雰囲気のお話で大変おもしろかったです。

  • 何か不思議な作品。

    ストーリーとしては悲しくて切なくて、どうにもやりきれないものではあるんだけど、細かな状況描写から浮かび上がる登場人物が優しくて誠実で前向きなので、読んでて暗い気持ちになることがないです。

    自分ではどうにも出来ない事は生きていれば色々あるんだろうけど、絶望するではなくそんな環境でも生き甲斐を見いだして一生懸命頑張る姿っていいなぁと思いました。

  • 強くて美しくて、もろさを必死にこらえて生きる主人公、真理子に惹かれる。
    彼女に惹かれる娘や、旦那や、生徒たちとともに心が躍る。
    でも、時は戻れない。戻れないのだろうか。
    真理子は40代としては「強くて美し」いし、だからそこ、「もろさを必死にこらえて生きる」姿に惹かれる。
    しかし彼女は17歳なのだ。
    親友が、同様に歳をとって現れて、「一ノ瀬」って呼んでいたのに「真理子」なんて呼ばれたら、どれだけ絶望するだろう。どんなに苦しいだろう。彼女は17歳なのだ。17歳が懸命に生きた姿が、みんなには「おばさん」が「強くて美しく」見えているのではないか?
    だとすればあまりに残酷だ。

    最後に引きつけられ、私は絶望する。
    「お母さん」
    娘にそう言われる。受け入れる。
    17歳ではないのか、いいのかそれで。

    受け入れてしまったら、もう17歳に戻れないのではないか?25年もの時を、失ってしまったままでいいのか?好きな人と恋をして両思いになって手を繋いでキスをして、そんな時間を、諦めてしまうのか。

    次を読まなければ。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    昭和40年代の初め。わたし一ノ瀬真理子は17歳、千葉の海近くの女子高二年。それは九月、大雨で運動会の後半が中止になった夕方、わたしは家の八畳間で一人、レコードをかけ目を閉じた。目覚めたのは桜木真理子42歳。夫と17歳の娘がいる高校の国語教師。わたしは一体どうなってしまったのか。独りぼっちだ―でも、わたしは進む。心が体を歩ませる。顔をあげ、『わたし』を生きていく。

    17才から一気に42才になったらそりゃ可哀想だわー。しかも自分の親がそれを言い出したら間違いなく若年性アルツハイマーをまず最初に疑うと思います。心は少女、体は大人ってコナンの逆ですからね。人生が25年くらい短くなっているようなもんですので、あらゆる意味で悲惨です。でもこの話好きなんですよね、自分も40才を過ぎた今、振り返ると不器用に生きていた17才の頃の自分が愛おしいんですよ。で上手く立ち回れるようになった自分も好き。
    この話みたいに時空をすっ飛ばして大人になってしまったら、自分の人生に何の愛着も持てないだろうと思います。北村先生やさしげだけど意外と容赦ないです。

  • ――先生、新田君がいった。いつもの彼のようではない声だった。
    ――何、と答えた。
    ――やっぱりぼくでは駄目ですか、と新田君は聞いた。
    その言葉の底にある哀しみの深さに、わたしは動きを失った。

    新田君はいった。
    「――好きです」
    足元で光がはじけ、音楽が爆発した。





    ぜひ、ぜひ一読を。

    なんとも言いようがないくらい、繊細で、優しくて、眩しくて、きらきらした、一冊なのです。

    オススメ。かなり、すき。

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。高校教師を務めるかたわら、89年『空飛ぶ馬』で作家デビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞、09年『鷺と雪』で第141回直木賞、15年には第19回日本ミステリー文学大賞を受賞した。エッセイや評論、編集の分野でも活躍している。近著に『八月の六日間』『太宰治の辞書』『中野のお父さん』など。

「2019年 『覆面作家の夢の家 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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