スキップ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.67
  • (517)
  • (563)
  • (1017)
  • (79)
  • (24)
本棚登録 : 4296
レビュー : 554
  • Amazon.co.jp ・本 (571ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101373218

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 北村薫さんの「秋の花」を読んだのは、2014年5月。そのレビューに真理子には「スキップ」で会えると知って、読まなければ、と書いた。
    我が事ながら遅すぎるというか、よく忘れないでいたというべきかな。勿論、忘れたわけじゃない。

    本当を云えば、父と娘の心が入れ替わったり、男女の心が入れ替わったり(僕が思い浮かべたのは、「君の名は」ではなく、大林監督の映画)、未来と過去の自分の心が入れ替わる物語は読まないし、観ないことにしている。
    だって、そんなことある訳ないじゃないか。心も記憶も頭脳細胞と云う入れ物の中の電気信号なんだから。
    つまり、北村薫さんじゃなかったら手に取らなかった本。

    レビューは、どう書いてもネタバレになりそうで難しいなあと思ったけど、ミステリーじゃないし、他の方も普通に書いてるから、気にせず書くことにする。

    17歳の女子高生が昼寝から目覚めたら、25年経っていて、同い年17歳の娘がいる。当然、配偶者もいる。
    北村さんは上手いなあと思ったのは、その設定。42歳の真理子の職業が高校の先生で、娘はその高校の生徒。配偶者も同じ国語の教師で、タイムスリップは春休みの時。現在の情報の入手できるし、時間の猶予もある。勿論、北村さん自身の経験が活かすことができるメリットもある。

    でも読み進めていくと、そんな安易な考えで書かれているんじゃないと思い知らされる。42歳の身体と17歳の心で描かれる高校生たちの放つ輝き。
    それは、主人公真理子の経験できなかった時間の欠落でもある。その後に経験するはずの大学での学問との出会いや友との語らい、恋愛、結婚、出産、子育て。人生で一番の時間が失われている悲劇。

    その涙の後に、「昨日という日があったらしい。明日という日があるらしい」から続く数行。この物語の最後を美しいものにしている真理子の意志に心が震えた。

    余計な感想。
    僕は1960年生まれ。前の東京オリンピックの時は幼稚園生。タイムスリップ前の真理子から10歳は若い。でも、シャボン玉ホリデーも知ってるし、書かれた諸々は大体わかるし、楽しめた。
    そして、真理子がタイムスリップしたのは、僕が30代の頃。昭和40年と昭和65年の社会と生活の変化って凄かったなと、改めて思うよ。
    現代にタイムスリップしたら、ネットの情報が一番の違いということになるのかな。

    さらに余計な感想。
    17歳の僕の心が42歳の僕の躰と状況に移されたら、とても怖い。でも、妻の心が17歳に戻ったら、もっと怖い。何が怖いのか判らないけど、すごく怖いと思う。

  • いきなり17歳から42歳に飛ばされてもなおたくましく生きる真理子の強さに感服。
    しかし、両親にもう二度と会えない悲しみ、二度と17歳の生徒たちと同じ場所に行けない切なさが全編を通して伝わりました。「ターン」は甘酸っぱい恋愛小説でしたが、こちらは少しほろ苦いお話でした。

  • 絶望的につらい設定なんだけど、いい話にしてしまう北村さんはやっぱりすごいな、と思う

  • 17歳から突然25年後にスキップしてしまう女の人の話。北村薫は、日常生活を描くのがめちゃくちゃ上手い。何でもない日常が、ものすごく美しく意味があるものに見えてくる。また、北村薫の描く女性はみな芯が強靭。女性におすすめしたい。

  • 17歳JKの私が目覚めたら、
    いきなり42歳高校の先生、既婚子ありになってた....。

    設定的には、なんとなくありがちなかんじ。
    しかし本はいいかんじに読ませる。

    テンポのいい話運びと、読みやすさが相まって
    主人公に共感してしまう。
    なんといっても、現実に対する前向きさがいい。

    昭和30,40年代生まれが読んだら、もっと楽しめる...かな?

  • 17歳の女子高生が、目覚めたら42歳の高校教師になっていた、という話。
    本来の自分と同い年(と思っている)娘とのやりとりで、残酷にも時代が変わっていることを思い知らされる。

    25年後の親友との邂逅で、娘はいるが出産は二度と経験できないことに深く傷付く真理子に胸が痛くなりました。
    私には、まだまだ楽しいことが沢山あるじゃないか!
    42歳の私がどうなっているかはわからないけれど、
    これから起こるさまざまな事象に、真摯に向き合おうと思いました。

  • タイムスリップ系だけど、SFすぎないところが良い。女性に読んで欲しい。著者の北村薫さんも女の方だとしばらく思っていた(恥)

  • 昭和40年代の始め、17歳だった一ノ瀬真理子。ある日、突然、目覚めたら42歳の桜木真理子になっていた。夫も本来の自分と同い年の娘までいる。国語の教師という仕事も持っている。
    混乱しながら、孤独とたたかいながら生きていく。生きていかなければならない。

    「わたしはひとつの物語である。誰もが一冊の本であるように。
    しかし、その本が落丁だったら、誰に取り替えてもらえばいいのか。交換不可能なら、道は二つだけ。本を投げ捨てるか、読み進むか、だ。」

    タイムスリップ…ではなくて、本に例えて落丁、としているところが面白い。取り返しがつかないってことですよね。今までなら、ここで主人公はどうすれば元に戻れるかというお話になる所だけど、この話ではちがう。

    この世界ではこの世界の、桜木真理子の生活がある。とにもかくにも生きていかなければならない。だったら、ここでやらなければならないことを、一つずつやっていくしかない。
    そんな風に考え、行動できる主人公の強さには、脱帽です。
    作者が、元国語教師というだけあって、国語の授業がとても魅力的に書かれていたのもよかった。こんな授業、受けてみたい。

  • すこし不思議の方のSF、読みやすい

  • 主人公が最初から最後まで一貫しておばちゃんぽいと感じたのはその時代の女子をリアルに書いたということなのかな。彼女がスキップした現代も今となっては既にひと昔ですものね。

著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。高校教師を務めるかたわら、89年『空飛ぶ馬』で作家デビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞、09年『鷺と雪』で第141回直木賞、15年には第19回日本ミステリー文学大賞を受賞した。エッセイや評論、編集の分野でも活躍している。近著に『八月の六日間』『太宰治の辞書』『中野のお父さん』など。

「2019年 『覆面作家の夢の家 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

スキップ (新潮文庫)のその他の作品

スキップ 単行本 スキップ 北村薫

北村薫の作品

ツイートする