スキップ (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (571ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101373218

感想・レビュー・書評

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  • 図書館のレファレンスコーナーを利用したことはありますか?
    本書は普段行く図書館の司書さんに選んでいただいた物。
    私の話をメモしながら聞いてくださり、「これがいいですよ!」と出してきたのが、北村薫さんの「スキップ」「ターン」「リセット」であった。

    不思議な体験(冒険物以外)をしつつ心温まる話を求めていた。自分で調べて借りても好みが違い、返却することを繰り返し、自力で探すのは難しいなと困っていた。
    そこであのコーナーに勇気を出して一度飛び込んでみるかと。
    でもレファレンスコーナーは、何か調べ物があり、その資料を探してくれるような所、小説まではどうなのよ…!?とうろうろしていたところ、
    「どうしましたか?どうぞ、何でも相談してください」って。
    そんな経緯で青山美智子さんの「お探しものは図書室まで」、みたいな体験をした。
    そして「またいらしてくださいね」とまで言ってくだすって…(;_;)行くわ〜また。
    ヨシタケシンスケさんの「あるかしら書店」にあったように、「(図書館で働く人は)本が好きな人のことが好きな人」ってホントなのかなと信じたい(^_^)

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    17歳の「私」が25年後の「私」にスキップしてしまう。
    私は後者の年齢層なので、少女時代もあった私の懐かしさと、今を生きる私とどちらも感情移入できた。

    25年後の「私」は家庭を持ち、高校の国語の教師になっていた。
    スキップしたことを受け入れ、適応しようとする「私」の意思の強さや行動力が素敵であった。とてもできることではない。
    その一方、現実も目の当たりにする。
    両親は?私は帰れるのか?
    そして記憶喪失の状態なのではないか?という疑問……
    いや、違う。私の25年間は、忘れてしまいたくなるほどの生き方をしてきたと言うのか?
    結局、元に帰れないのだ…。両親にも会えない。
    この描写には泣いた。

    二度と手にできないもの(過去)がある一方、今のこの時を大切に過ごそうと思った。
    また基本的に変わらず、しかし色々な経験を積み重ねて少しの知恵や知識を得ている今の自分を肯定しつつも、
    若々しいあの頃の純粋なキレイな気持ちみたいなのはどこに行ってしまったのか…取り戻したい、取り戻せるはずとも思った。

    しかしよく考えると空白の25年間は何だったのか。もやもやしている。描かれていないことがいいのかもしれないのだが…。
    読解力の問題か。また読み返してみよう。

    • ポプラ並木さん
      楽しんで下さいね
      楽しんで下さいね
      2022/05/08
    • ひまわりめろんさん
      なおなおさん
      こんばんは!

      「本が好きな人のことが好きな人」いっすね
      絶対そうですよ

      そしてなんかちゃんと素敵な体験もしてるんすね
      良か...
      なおなおさん
      こんばんは!

      「本が好きな人のことが好きな人」いっすね
      絶対そうですよ

      そしてなんかちゃんと素敵な体験もしてるんすね
      良かった
      心配して損したw(なにそのコメント!)
      2022/05/21
    • なおなおさん
      ひまわりめろんさん、おはようございます。

      この"お探しものは図書室まで"体験は最近で、あの図書館本濡れ衣事件とは別の図書館です(引っ越した...
      ひまわりめろんさん、おはようございます。

      この"お探しものは図書室まで"体験は最近で、あの図書館本濡れ衣事件とは別の図書館です(引っ越したので)。
      あの事件で嫌な思いもしましたが、自転車で5分と近く、子供ボランティアスタッフによる活動やブラインドブックフェアなどもあって、良い図書館でした。
      ご心配いただき、ありがたい…なおなおは元気です^^;
      ひまわりめろんさんの本棚は駆け込み寺でもあるの?w
      困ったことがあったらまた伺います(`・ω・´)ゞ
      2022/05/21
  • 主人公の桜木真理子さん。いや、この場合は一ノ瀬真理子さんになるのか?何れにしても、ユーモアに溢れていてチャーミングで、とても素敵な女性だと思った。

    美也子さんも、桜木さんも、とても懐が開く、素敵な家族だなぁと思った。
    自分の母が、妻が「わたし、17歳なんです」なんて言ったら、びっくりするよね。
    確かに最初は二人ともびっくりしてたし、信じてはなかったけれど…今までは親子と夫婦、と言う関係だったのが、人間対人間の関係に変わっていって…その過程がとても良かった。

    また、新学期が始まる!と言うので、家族一丸となって対策を練ったりしていたシーンがとても楽しかった。

    10数年振りに読み返したが、当時とは思うことが全然違ったのも、個人的にはとてもいい読書体験になった。他の2作も読み返そう。

  • 北村薫さんの「秋の花」を読んだのは、2014年5月。そのレビューに真理子には「スキップ」で会えると知って、読まなければ、と書いた。
    我が事ながら遅すぎるというか、よく忘れないでいたというべきかな。勿論、忘れたわけじゃない。

    本当を云えば、父と娘の心が入れ替わったり、男女の心が入れ替わったり(僕が思い浮かべたのは、「君の名は」ではなく、大林監督の映画)、未来と過去の自分の心が入れ替わる物語は読まないし、観ないことにしている。
    だって、そんなことある訳ないじゃないか。心も記憶も頭脳細胞と云う入れ物の中の電気信号なんだから。
    つまり、北村薫さんじゃなかったら手に取らなかった本。

    レビューは、どう書いてもネタバレになりそうで難しいなあと思ったけど、ミステリーじゃないし、他の方も普通に書いてるから、気にせず書くことにする。

    17歳の女子高生が昼寝から目覚めたら、25年経っていて、同い年17歳の娘がいる。当然、配偶者もいる。
    北村さんは上手いなあと思ったのは、その設定。42歳の真理子の職業が高校の先生で、娘はその高校の生徒。配偶者も同じ国語の教師で、タイムスリップは春休みの時。現在の情報の入手できるし、時間の猶予もある。勿論、北村さん自身の経験が活かすことができるメリットもある。

    でも読み進めていくと、そんな安易な考えで書かれているんじゃないと思い知らされる。42歳の身体と17歳の心で描かれる高校生たちの放つ輝き。
    それは、主人公真理子の経験できなかった時間の欠落でもある。その後に経験するはずの大学での学問との出会いや友との語らい、恋愛、結婚、出産、子育て。人生で一番の時間が失われている悲劇。

    その涙の後に、「昨日という日があったらしい。明日という日があるらしい」から続く数行。この物語の最後を美しいものにしている真理子の意志に心が震えた。

    余計な感想。
    僕は1960年生まれ。前の東京オリンピックの時は幼稚園生。タイムスリップ前の真理子から10歳は若い。でも、シャボン玉ホリデーも知ってるし、書かれた諸々は大体わかるし、楽しめた。
    そして、真理子がタイムスリップしたのは、僕が30代の頃。昭和40年と昭和65年の社会と生活の変化って凄かったなと、改めて思うよ。
    現代にタイムスリップしたら、ネットの情報が一番の違いということになるのかな。

    さらに余計な感想。
    17歳の僕の心が42歳の僕の躰と状況に移されたら、とても怖い。でも、妻の心が17歳に戻ったら、もっと怖い。何が怖いのか判らないけど、すごく怖いと思う。

  • 記憶が飛んでしまったら?それってボケじゃないの?
    思い出だしたくない過去だけ忘れられたら?そりゃ気楽で良いじゃないの?

    いえいえ、そんな気楽なお話でなく、せつない、せつない物語。
    だって、大切な人生の歩みの証が何処かにいってしまったのだから。

    17歳の高校生の「一ノ瀬真理子」は昼寝から目覚めると、42歳になっていた。
    夫と17歳の娘がいる高校の国語の先生。思い出は17歳まで。「25年という時をロスした」感じ。

    心は17歳の高校生でも身体は42歳の国語教師を、持ち前の「自尊心」で乗り切るその苦闘。
    といっても、しゃかりきに見えないところがいい。17歳の若さの柔軟性がある。
    自分という存在が好きで、信用しているからやっていける。

    初めて北村薫さんの作品を読んだが、語り口がやさしく機知に飛んでいるのはさすが。
    こんなに女性をつつむように描く男性作家は珍しい。

    それから、なんといっても国語の授業の秀逸さ、冴えたる素晴らしさ。ああ、こんな授業を受けたかった。17歳だから出来るというのか。

    そしてせつなさは、果たして17歳の高校生だったいとしい時代に戻れるのかということからくる。

    はてなく 流れる
    時さえ 停まれよ
    輝く 光 今日の日
    今は 美しい

    はてなく 流れる
    時さえ 停まれよ
    輝く 命 今こそ
    君は 美しい

    (作中、真理子さんの作詞した『文化祭序曲』の詩の一部)

    文庫本の解説が母娘なのもしゃれているし、付録「昭和40年代初め」用語ミニ注解なるものも読まずに済む便利さ(単に年くってるだけ)も気に入った。

    なかなかよろしかった。

  • 学校から帰宅し、レコードを聴きながらうたた寝してしまった17歳の女子高生、一ノ瀬真理子。どの位寝ただろう、レコードは止まってる、と目を覚ますと、部屋も違う、服も違う。17歳の娘がいる高校教師である42歳の桜木真理子になっている!?という事が段々分かっていき…という設定で、先の展開が楽しみなスタート。
    17歳の娘が寝て目が覚めたらおばさんになっていた、同い年の娘がいる、夫がいる、教師をやっているらしい、等の到底受け入れる事の出来ない状況に戸惑い苦しみながらも、そこから何とか家族の理解、協力を得ながら、受け持ちの生徒とも心を通わす事の出来る所まで成長していく健気な様や、高校生活の様々なエピソードを丁寧に描いていて、好感度高いが、中盤たれ気味、ラストももう少し盛り上げられる展開もあった?、で少々残念。

  • 勝手に(垣谷美雨のリセット)の逆バージョンの様な気がして読んだせいかいまひとつ。

  • テーマは本当に斬新で面白いなぁと。
    17歳の女子高生が起きたら40歳すぎ。

    残酷ともいえるし、自分なら到底前に進めなさそう。

    なんでタイムスリップしたのかと
    40歳すぎの自分はどこにいったのかを
    わかる内容だったらさらに面白い

  • とても丁寧に書かれている長編だった。突然高校生が教師になったら。突然母親になったら。主人公や主人公の周りのキャラクターが良くて「いやいや、あり得ない。無理がある」と思わせない物語だった。ただ昔の芸能ネタや社会ブーム的なものが古臭かったかな。書かれた時代が古いのが残念。同じ設定で現代バージョンにしてみて欲しい。スマホのある世界、コンプライアンスに縛られる世界、希薄な人間関係が当たり前の世界に飛んできたらどうなるんだろう?

  • 絶望的につらい設定なんだけど、いい話にしてしまう北村さんはやっぱりすごいな、と思う

  • 17歳から突然25年後にスキップしてしまう女の人の話。北村薫は、日常生活を描くのがめちゃくちゃ上手い。何でもない日常が、ものすごく美しく意味があるものに見えてくる。また、北村薫の描く女性はみな芯が強靭。女性におすすめしたい。

著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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