スキップ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.67
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本棚登録 : 4296
レビュー : 554
  • Amazon.co.jp ・本 (571ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101373218

作品紹介・あらすじ

昭和40年代の初め。わたし一ノ瀬真理子は17歳、千葉の海近くの女子高二年。それは九月、大雨で運動会の後半が中止になった夕方、わたしは家の八畳間で一人、レコードをかけ目を閉じた。目覚めたのは桜木真理子42歳。夫と17歳の娘がいる高校の国語教師。わたしは一体どうなってしまったのか。独りぼっちだ-でも、わたしは進む。心が体を歩ませる。顔をあげ、『わたし』を生きていく。

感想・レビュー・書評

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  • 全然覚えてないのだけど、こんなような夢を見たような
    でも全く覚えてないので、全然別のきっかけだったのかもしれないけど。

    なんか突然、この本が気にかかり、図書館で何気に目に入り、なんとなくそのまま借りてしまいました。
    懐かしいなぁ。
    すっごいむかしに読んだ気がしてたけど、今世紀になってからだし、そうむかしでもなかった。

    10年前の2003年だとちょっと最近な気がして感覚が変なんだけど、さすがに25年経つと人も世も変わるよね。
    タイムスリップもののSFファンタジーというイメージがあって、最後元に戻らないことにすごく衝撃だった記憶があるんだけど、これそういう話じゃないよね。

    まぁ、古き良き時代の優秀な文学少女だったとしても、どんなに聡明で柔軟な心の持ち主だったとしても、25年後の世界を受け入れて、高3の国語教師を果たせる17歳はあり得ないと思いますが、この話を通して伝わってくる、初心を忘れずおごらずに自尊心を持って相手の目線に合わせることの大切さだとか、そういう真摯で前向きな感じがすごくいい。

    高校生には絶対読んでほしい本だなぁと、今あらためて思いました。
    そして、桜木真理子先生に近い年の人が読んでも、現状で楽しく頑張れる気持ちをもらえると思う。

  • 「───わたしは、百人の男と寝たい」

    これが書き出しだったら、綿矢りさでしょうが、そういう話ではない。
    いわゆるタイムスリップもの。
    この本が何故に書棚の奥に入っていたのか、未だに分からない。
    本を整理していたら、にっこり笑いながら顔を出してきた一冊。
    北村薫がかなりの年配で、しかも男だったというのを初めて知った。
    だが、読み始めたら面白い。止らなかった。
    昭和40年代初めに17歳だった女子高生が突然25年後の未来に飛んで、42歳の主婦に。
    そのうえ高校の国語の先生。
    しかも娘が17歳。
    その娘が帰宅すると、主人公が「教えてください。ここどなたのお宅なんですか?」と訊ねる。
    娘の返事は「ふざけてるの? ───お母さん」
    ですよね、もちろん。
    そんなことあり得ない。ジョーク? 記憶喪失?
    いずれにしても現実ではそう簡単に娘は信じないでしょうが、まあ、そこは小説だからと軽く受け流したい。
    この作品はそんな陳腐なタイムスリップめいたものがテーマではないはずだから。
    とにかく、一瞬にして昭和から平成に飛んでしまった一ノ瀬真理子。失われた25年の間、自分がどういう人生を歩んできたのか全く知らない。それでもその理不尽さと今の世界に正面から向き合い、生きていこうとする。そして、それを支える娘と夫。
    人の絆、人の優しさを随所に感じさせる温かい作品だ。
    登場人物が魅力的で誰もが生き生きと描かれ、しかも優しい。
    現実にはこんな人間ばかりいないけれど。でも、自分の周りがこれほど優しい人たちばかりだったら、人生はどれほど楽しいものだろう。
    バレーボールの試合。
    真理子さんが語るように、東京オリンピックの決勝「東洋の魔女対ソ連」の試合を彷彿させた。(私は生で見てないが、その後のニュースで何度も放映されたので、神永がヘーシンクに敗れ日本柔道の未来に暗雲が立ち込めた試合と同様、記憶の片隅にある)
    「金メダルポイントです!!」有名な台詞だ。
    手に汗握りながら、ニコリ島原さんを応援した。

    泣けました。泣きました。
    読了後すでに一週間以上経つので、どこで泣いたんだろう?と再びページをめくった。
    かつての友人との再会場面か。それともバレーボールの試合終了後か。或いはやはり、
    「お父さん、お母さん、わたしはもう二度とあなた方に会えません」だったか。
    遥か忘却の彼方へと遠のいた時代と決別し、現実を受け入れ、前向きに生きていこうと決意する真理子。
    映画「ALWAYS三丁目の夕日」のように、ああ人間って素晴らしいな、としみじみ心に響いてくる逸品でした。
    生きるのが辛いな、と感じたときに読むのがいいような。

  • 「時と人」三部作の1冊目。3作の中では圧倒的に本書がお気に入りです。

    17歳の少女が自宅でうたたねをして、目が覚めると42歳。同い年の子供と-見知らぬ夫が居る。

    怖い。この設定はホラーそのものだと思います。久しぶりに再読してみましたが、なまじ展開を覚えているだけに、昭和40年代の日常の何でもない描写が痛々しくてドキドキしました。

    タイムスリップものは巷に溢れかえっていますが、時代を飛んでみていちばんの衝撃が「夫がいる」だった、というのはある意味斬新で、でもよくよく考えてみると当然の反応です。この辺り、男性でありながら女性の心理描写がびっくりするほどリアルな北村作品の特長が良く出ていると思います。

    そして、飛んだ後の展開がまた秀逸。普通なら「なぜ飛んだのか」「どうやって戻るか」に主眼が置かれるところですが、主人公はそれどころではありません。"昨日"までとまるで違う今日を、そして恐らくはやって来る明日をどう生きるか。そこにこそ作品の力点が置かれます。登場人物が現実を受け入れすぎている、リアリティがない、という批評ももちろんあるでしょう。でも、目の前の現実に対峙し、乗り越え、そして受け入れていくこと、それこそが彼女にとってのリアリティだったのだと思います。

    幕引きはとても哀しく、でも前を向いて本を閉じることが出来る。出会えて良かった。また読めて良かった。そんな貴重な1冊です。


    補足1:設定を抜きにして、教育論としてもこの本、面白いですよね。学級日誌を読んでいると、高校教師だった頃の北村氏は人気があったのだろうなあと察せられます。

    補足2:単行本の刊行からなんと20年近くが経とうとしています。今書いたならば、やっぱり主人公が一番驚くのはスマホなのでしょうか。

  • 北村薫さんの「秋の花」を読んだのは、2014年5月。そのレビューに真理子には「スキップ」で会えると知って、読まなければ、と書いた。
    我が事ながら遅すぎるというか、よく忘れないでいたというべきかな。勿論、忘れたわけじゃない。

    本当を云えば、父と娘の心が入れ替わったり、男女の心が入れ替わったり(僕が思い浮かべたのは、「君の名は」ではなく、大林監督の映画)、未来と過去の自分の心が入れ替わる物語は読まないし、観ないことにしている。
    だって、そんなことある訳ないじゃないか。心も記憶も頭脳細胞と云う入れ物の中の電気信号なんだから。
    つまり、北村薫さんじゃなかったら手に取らなかった本。

    レビューは、どう書いてもネタバレになりそうで難しいなあと思ったけど、ミステリーじゃないし、他の方も普通に書いてるから、気にせず書くことにする。

    17歳の女子高生が昼寝から目覚めたら、25年経っていて、同い年17歳の娘がいる。当然、配偶者もいる。
    北村さんは上手いなあと思ったのは、その設定。42歳の真理子の職業が高校の先生で、娘はその高校の生徒。配偶者も同じ国語の教師で、タイムスリップは春休みの時。現在の情報の入手できるし、時間の猶予もある。勿論、北村さん自身の経験が活かすことができるメリットもある。

    でも読み進めていくと、そんな安易な考えで書かれているんじゃないと思い知らされる。42歳の身体と17歳の心で描かれる高校生たちの放つ輝き。
    それは、主人公真理子の経験できなかった時間の欠落でもある。その後に経験するはずの大学での学問との出会いや友との語らい、恋愛、結婚、出産、子育て。人生で一番の時間が失われている悲劇。

    その涙の後に、「昨日という日があったらしい。明日という日があるらしい」から続く数行。この物語の最後を美しいものにしている真理子の意志に心が震えた。

    余計な感想。
    僕は1960年生まれ。前の東京オリンピックの時は幼稚園生。タイムスリップ前の真理子から10歳は若い。でも、シャボン玉ホリデーも知ってるし、書かれた諸々は大体わかるし、楽しめた。
    そして、真理子がタイムスリップしたのは、僕が30代の頃。昭和40年と昭和65年の社会と生活の変化って凄かったなと、改めて思うよ。
    現代にタイムスリップしたら、ネットの情報が一番の違いということになるのかな。

    さらに余計な感想。
    17歳の僕の心が42歳の僕の躰と状況に移されたら、とても怖い。でも、妻の心が17歳に戻ったら、もっと怖い。何が怖いのか判らないけど、すごく怖いと思う。

  • やはり間違いない一冊。
    初めて読んだ時はまだ学生で、
    いつかこんな授業がしたいと思ったものです。

    今、国語の教員として教壇に立つようになり、
    何度読み返したかわかりませんが、
    読むたびに、
    主人公のしなやかな強さに励まされます。

    さぁ、また頑張ろう。

  • 昭和30年代の女子高生がうたた寝から起きたら、意識はそのままなのに25年という時間を”スキップ”してしまい、突如42歳の中年女性になってしまったという、設定だけなら名作『リプレイ』の逆のことが起こるお話。あとがきで作者も『リプレイ』について触れていますが、当然ながら内容はまったく別ものです。17歳の心のまま、見知らぬ夫と娘に助けられながら、高校の国語教師という現在の役割りを誠実にこなそうとするなかで、時間とは、自分とは、若さとは何か、というようなことを見つめます。1秒ずつ過ぎてゆけば自然な変化もうたた寝の一瞬で過ぎるとギャップが大きくその差は歴然。同じなのに変わってゆくこと、変わっても同じであることなどなどを、考えたりしました。これぞ北村薫作品という凛としてきちんとした雰囲気のお話で大変おもしろかったです。

  • 何か不思議な作品。

    ストーリーとしては悲しくて切なくて、どうにもやりきれないものではあるんだけど、細かな状況描写から浮かび上がる登場人物が優しくて誠実で前向きなので、読んでて暗い気持ちになることがないです。

    自分ではどうにも出来ない事は生きていれば色々あるんだろうけど、絶望するではなくそんな環境でも生き甲斐を見いだして一生懸命頑張る姿っていいなぁと思いました。

  • 強くて美しくて、もろさを必死にこらえて生きる主人公、真理子に惹かれる。
    彼女に惹かれる娘や、旦那や、生徒たちとともに心が躍る。
    でも、時は戻れない。戻れないのだろうか。
    真理子は40代としては「強くて美し」いし、だからそこ、「もろさを必死にこらえて生きる」姿に惹かれる。
    しかし彼女は17歳なのだ。
    親友が、同様に歳をとって現れて、「一ノ瀬」って呼んでいたのに「真理子」なんて呼ばれたら、どれだけ絶望するだろう。どんなに苦しいだろう。彼女は17歳なのだ。17歳が懸命に生きた姿が、みんなには「おばさん」が「強くて美しく」見えているのではないか?
    だとすればあまりに残酷だ。

    最後に引きつけられ、私は絶望する。
    「お母さん」
    娘にそう言われる。受け入れる。
    17歳ではないのか、いいのかそれで。

    受け入れてしまったら、もう17歳に戻れないのではないか?25年もの時を、失ってしまったままでいいのか?好きな人と恋をして両思いになって手を繋いでキスをして、そんな時間を、諦めてしまうのか。

    次を読まなければ。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    昭和40年代の初め。わたし一ノ瀬真理子は17歳、千葉の海近くの女子高二年。それは九月、大雨で運動会の後半が中止になった夕方、わたしは家の八畳間で一人、レコードをかけ目を閉じた。目覚めたのは桜木真理子42歳。夫と17歳の娘がいる高校の国語教師。わたしは一体どうなってしまったのか。独りぼっちだ―でも、わたしは進む。心が体を歩ませる。顔をあげ、『わたし』を生きていく。

    17才から一気に42才になったらそりゃ可哀想だわー。しかも自分の親がそれを言い出したら間違いなく若年性アルツハイマーをまず最初に疑うと思います。心は少女、体は大人ってコナンの逆ですからね。人生が25年くらい短くなっているようなもんですので、あらゆる意味で悲惨です。でもこの話好きなんですよね、自分も40才を過ぎた今、振り返ると不器用に生きていた17才の頃の自分が愛おしいんですよ。で上手く立ち回れるようになった自分も好き。
    この話みたいに時空をすっ飛ばして大人になってしまったら、自分の人生に何の愛着も持てないだろうと思います。北村先生やさしげだけど意外と容赦ないです。

  • ――先生、新田君がいった。いつもの彼のようではない声だった。
    ――何、と答えた。
    ――やっぱりぼくでは駄目ですか、と新田君は聞いた。
    その言葉の底にある哀しみの深さに、わたしは動きを失った。

    新田君はいった。
    「――好きです」
    足元で光がはじけ、音楽が爆発した。





    ぜひ、ぜひ一読を。

    なんとも言いようがないくらい、繊細で、優しくて、眩しくて、きらきらした、一冊なのです。

    オススメ。かなり、すき。

  • 北村薫さんの作品二作目。最初のほうはペースが上がらず読み進めるのが辛い。しかし中盤までいくと、あ〜終わらないで〜!ってなるくらい素敵な話になってきます。北村さんの作品って何でこんなにも暖かくて深いんだろう。薄っぺらくなくて、ずっと読んでいたい充実感がある。最高の作品。

  • 北村薫さんの小説は,この本が初めてです.読むきっかけとなったのは,演劇集団キャラメルボックスのお芝居として上演されることが決まったから.
    上演前に読みましたが,この小説の透明感にびっくりしました.これまで読まなかったのが不思議なくらい.
    キャラメルボックスの脚本家・成井豊さんがこの本をお芝居にしたいという気持ちがわかります.成井さんの読書量は半端ではなく,従って成井さんがお薦めする本は,ハズレがありません.
    スキップから始まるシリーズは,この本をきっかけにすべて読むことになりました.3冊のなかではやはりこの本が一番という気がします.

  • この本を読むチャンスは4回与えられている。
    17歳。42歳。
    教師になったとき。母親になったとき。
    4回のチャンスのうち、1つはもう永遠に叶わないし、1つはあるかどうかわからない。でも、1つは実現する可能性が高いだろうし、そして1つは必ず私を待ってくれている。
    どうか、22年後の私の本棚に、この本がありますように。

  • ミステリかと思って読んでたらミステリじゃなかった。
    17歳からいきなり42歳に飛ばされたらそりゃショックでかいだろうなと思う。
    それが記憶の欠落であれほんとに時間がすっ飛んだのであれ本人にしたら同じことだろう。
    でも本人も辛いけど周りの人間も辛いよなぁ。
    旦那なんか何十年も一緒に過ごした時間がなんだったの?
    ってなっちゃうよね。
    ただ物語としては爽やかな青春小説だし真理子がとても前向きでハッピーエンドなのは良かった。

  • いきなり17歳から42歳に飛ばされてもなおたくましく生きる真理子の強さに感服。
    しかし、両親にもう二度と会えない悲しみ、二度と17歳の生徒たちと同じ場所に行けない切なさが全編を通して伝わりました。「ターン」は甘酸っぱい恋愛小説でしたが、こちらは少しほろ苦いお話でした。

  • 北村薫さんの文章を読むたびに、美しい、という言葉がただ浮かぶ。美しく清冽な感覚と意志。

    私は真理子のようにありたいと願い、いつしか願ったことすら忘れて、そして思い出したとて、真理子のようにはなれないと今は思うけれど。
    17歳の自尊心は確かにこの胸にもあったのだ。そのことを、様々な記憶を、喚起させる読書だった。そんな風にして、真理子のスキップは、私自身の過去や未来にも橋を架けている。

    人生に対し、こんなはずではなかったと思わないことが全く欠片もない、なんてことはないのだ。そんな想いへの返答が綴られている。
    かろやかでありたいと、読み終えた今の私は痛烈に願っている。

    なぜ今まで読まずに置いてきたのだろう。今読めて本当に良かった。まさしく名作である。

  •  まぁ、一風変わった小説、とでもいうかな。内容が、ではなくて、文章が。
     内容は、とっても魅力的。真理子は17歳の少女。高校2年生。女子高へ通っていて、好きな人がいるわけでもなく、のんびりと学生生活を送っていた。そんなある日、ちょっと仮眠をとっただけのある日。真理子は自分が知らない場所にいることに気づいた。そこにいた女の子は自分のことをこう呼ぶ。「お母さん」…。そこは、25年後の自分の家だったのだ。
     とまぁ、こんな感じ。
     文章は、とっても細かい。小説で右手と左手を書き分ける人ってのは、なかなかお見かけしません。ものの名前も、実名を使っている。マンガや小説ってのは、けっこう仮の名前を使いがちだけど。これは違う。「氷点」、「布施明」等がひょこひょこと登場してます。
     そこで、考えてしまうのは、私が未来へ飛んだら、どうなるかってこと。私が25年後へ飛ぶのは、高校時代の私が25年後へ飛ぶのよりは、楽だろう。自分の学歴がどんなものかも知っている。高校時代って、自分が1年でも、何をしているか知らないものじゃないですか。
     それでも、私が25年後、例えば結婚して子供がいる光景を見ることになったら、やっぱりとても苦痛でしょうね。その結婚相手が、もし今自分が好きな人だったとしても。結婚や出産といったイベントを見ることも無く、年を取ったその人と、知らない子供と、急に年をとってしまった自分が一つ屋根の下に生活しないといけないとしたら、やっぱり苦痛でしょうね。
     たとえば、高校時代の私が、今の私に飛んでくる、というのでも、すごいパニックを起こすと思いますから。あの頃の私は、自分がどんな大学に行くのか知らなかった。どんな仕事につくのか知らなかった。今好きな人の顔すら、知らないわけですから。すごい、ショックでしょうね。
     そんなわけで、「スキップ」では、どんな風に話が進むんでしょう。太い本なわりには、すらすら読めてしまいそうな空気がとても不思議です。これからが楽しみですね。


     読んでいると、些かくやしくなってくる小説です。だって北村薫さんて、所謂おっさん、なんです。年代や性別に限った話で。たいていこういった人の小説は…おもしろいんだけど、やっぱり年代が違う、と思わせられてしまうものが多いです。難しい漢字や、火サスのような内容や、そういうイメージ、強いんですけど。この人のは、そうじゃない。主人公は乙女心…まぁ、理解できているかは置いといて…内容もおもしろい。さらさらと読みすすめることができてしまう本のようです。


     これで約3分の1くらいでしょうか。4章まで。
     家族の人たちとも、なんとかコミュニケーションがとれるようになりました。学校へいって騙さなければならない人たちも、たくさん出てきました。
     でも、私が考えてしまうのは、やはり恋愛のこと。その人生のなかで結婚したいと思えた人が、その恋愛期を知らないで、いきなり40過ぎのおじさんで、好きになれるかどうか。愛しい妻がいきなり自分の存在を知らないと言い出して、受け入れられるかどうか。私だったら、絶対無理です。


     さくさく読めて、その本のサイズから、本を読んでるっていう気にもさせられる。5章まで。話にのめりこんでしまう。箱入り娘は?桜木さんと真理子の関係は?真理子の行く末は?
     桜木さんは、ときどき先生みたいなことを言う。私は、その言葉を、大人の人が言うのを聞くように読む。納得半分、反抗心半分。素直だけじゃきいてられない。それがまたいい。
     改めて、真理子の新しい生活が始まった。いろいろ知っているふりをするのは、はたしてここまでうまくいくものだろうか。


     6章まで。昔を思い出した。真理子の授業は、私の学校の授業を思い出した。今まで人に説明するのが難しかったものだけれど、毎日真理子の授業だといったらわかりやすいだろうか。私が好きなタイプの授業だ。
     現代の学校。そこは真理子とはかけ離れた世界であり、どこよりも身近な世界です。そこで話をする真理子は、桜木さんとは違い一生懸命さがあって新鮮な感じです。
     私が好きな言葉は何?ってきかれたら何と答えるだろう。好きなものは多すぎて、きっと答えられません。


     第7章までです。物語の山場として、文化祭が用意されているみたいです。演劇部の新入生集めから、クラスのイベントやら。
     真理子はがんばっている。現代の文化をたくさん勉強しながら、真理子はがんばっている。そこで思うのは、どうして池ちゃんを探さないのかってこと。親がダメでも、池ちゃんなら…と思わないだろうか。家族の人は味方で理解者だけど、知らない人です。知っている人を探したいと思わないでしょうか。私だったら知っている人、探してしまうかもしれません。


     第8章ですね。文化祭の内容を決めるシーンでは、少なからずドキドキしました。昔を思い出してか。高校時代にかえりたくはないけど。また高校の文化祭、やりたいなって思いましたね。
     あとやっぱり考えてしまうのが桜木さん。やっぱり無理だと思うんです。出会った瞬間や一番甘い時期を忘れて、いきなりおっさんだしてこられても、絶対困ります。それこそ家出してしまうかもしれない。万が一好きになれたとしても、また甘い時期がくるかしら。光のことなんて考えられません。


     第9章。第9章はバレー大会の章。真理子のクラスの目立ったいい子、ニコリが壁をこえるところです。生徒は、そのへんの小説よりリアル。女の子は泣く。男の子は騒ぐ。冷めた目で女の子を見る。北村薫は、先生だったこともあってリアルが描ける人なんでしょう。ただ、真理子は違う。17歳はこんなこと言いません。私が聞いたことのあるこの口調は、10年は国語の先生をやってきた人間の台詞です。「嫌いな言葉は《どうせ》だと書いた人がいるわ――わたしも嫌いよ。」これ本当に17歳?


     第10章。9の最後の部分が印象的でした。《いいえ、初めましてなのよ》と説明してあげよう。ハンドルを軽く手に握り、説明する真理子が心に浮かぶような気さえしました。昔の自分の面影を見つけつつも、現在の自分にむかっていこうとする真理子。それは偉いと思うけれど、本当にそれでいいの?真理子。現代になじんでいく真理子。でも考えてしまいます。現代に存在していた桜木真理子は、どこへ行ってしまったんだろう。桜木真理子は真理子と本当に同じ人生の同じ人なのだろうか。


     第11章。文化祭が始まった。ということで。
     印象的なのは里見はやせの劇の内容。怪しい父、死んだらしい母、気持ちが暗いのはわかるけれどでも、何が暗いのかよくわかりません。だから何度も読み返してしまいます。
     あと、不良生徒に助けられるシーンね。ここはほほえましいけれど。やっぱり桜木真理子は必要だと思ったシーンでした。この世界に、ちゃんと時間を歩んできた、生徒の顔をすべて思い出せる、桜木真理子が。でないと、生徒達が、かわいそうだと思うのです。


     第12章。微妙にエピローグだけを残しつつ読みました。えーって思いました。年をとった体に入ると、心まで年をとってしまうんでしょうか。まだ17歳の少女が、昔は、なんて言えるでしょうか。新田くんのことを受けとめられるでしょうか。私が今時間を飛んだら、そんなこと絶対にできない。新田くんのようなことがあったら、きっともっと目を回してしまうことでしょう。桜木さんと1度は見比べてしまうでしょう。どんな姿になったって、その姿に合わせて生きるなんて、できないです。


     「スキップ」、読み終えました。普段の私なら、えーって言って終わるようなこの作品。でも、この本ではこういった終わり方を許せてしまいました。そうなんだよね。わかってたんだよね。過ぎてしまったことだっていうこと。これが、本当に時間を飛んでしまった話なのか、でも実は記憶喪失だったのか、とかいうお話はあまり関係なくて、そんなことが起こって、過去のことっていうのはやっぱり自分の気持ちひとつで乗り越えないといけないことってありますから、乗り越えて、生きていこう、って思う話なんですよね。
     その気持ちは、真理子のこの言葉、「昨日という日があったらしい。明日という日があるらしい。だが、わたしには今がある。」にもあらわれています。
     しかし、私が過去のことを…つまり、今まできめてきたことや、できなかったことへの後悔なんかに対して、どうにか乗り越えてきているのは、私自身がそのとき下した決定を知っているからです。私がそのとき本気で考えたことや選んだことを、知っているからです。じゃあ、真理子は?真理子は、その決定を知りません。もともとその選択を与えられてすらないのですから。その決定を下したのが自分だと思えるものだったとしても。それはやっぱり自分ではないと思ってしまうんじゃないでしょうか。私がそんな立場だったら、やっぱり納得いかないかもしれません。どうしてこんなことになったのだろうと、自分が昨日までその歳だった若い人を見つめては毎日を過ごしてしまうかもしれません。
     真理子は強すぎます。こんなことがあったら、私だったら、絶対に乗り越えられません。
     なんにしろ、「スキップ」、おもしろい話でした。老若男女の方々にお薦めいたします。

  • 読後とても不思議な気持ちになりました。
    突拍子もない話なのに、どうしてこんなに心にしみるんだろう。ヒロイン真理子さんの言動や、高校生たちの姿がキラキラして、一瞬一瞬がかけがえのないものだと感じられる。何があっても、私たちは今を生きることしかできない。
    それにしても、北村薫さんの描く人物はなんで毎回、こんなに皆魅力的なんだろう。

  • うたた寝から目覚めると、17歳の私は25年後の42歳にタイムスリップしていた…。
    17歳からの25年という人生にとって一番輝かしい時期をスキップすることは、身体的な“美”の盛衰だけでなく、精神的な成熟もままならないと思いきや、主人公のなんと素敵なこと!こんな先生に出会いたかったー。
    人生をスキップしてしまった真理子さんを支える家族も、一所懸命でとっても温かい。心がホンワカして、ギュッと感動する作品でした。

  • 17歳の女子高生、一ノ瀬真理子が眼が覚めると知らない人の身体に魂が移っていた。しかもどうやら結婚して17歳の娘をもつ25年後の自分に。
    ギミックとして特に目新しいものではないのですが、授業で生徒たちに語りかける内容、娘や夫との会話、周囲の人たちへ注ぐ目線、他にも1つ1つのさりげないエピソードや描写が秀逸。優しい目線で捉えたものを、豊富な語彙と、繊細で美しい文章で綴ると、かくも素敵な作品になるものか。
    この良さを理解できるであろう知人に紹介し、お気に入りの表現や結末の解釈について語り合うのも楽しそうです。

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。高校教師を務めるかたわら、89年『空飛ぶ馬』で作家デビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞、09年『鷺と雪』で第141回直木賞、15年には第19回日本ミステリー文学大賞を受賞した。エッセイや評論、編集の分野でも活躍している。近著に『八月の六日間』『太宰治の辞書』『中野のお父さん』など。

「2019年 『覆面作家の夢の家 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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