ターン (新潮文庫)

  • 新潮社 (2000年6月28日発売)
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  • 本 ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101373225

感想・レビュー・書評

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  • 時と人シリーズ2冊目。銅版画家の真希が交通事故に会い、生きているのか、死んでいるのか、分からない。1日過ごすと何故か15時15分にその日へ舞い戻る。しかも誰もいない世界。150日目に真希の下に電話がかかり、現実世界の1人の男性・泉との会話が始まる。主人公・真希の潔癖性と泉への強烈なカタルシスが真希の可愛らしさを表現していたのだが、その一方で、これまでの母親との薄い関係性が母との愛情を深くした。最初から登場する「君」の存在、最後の眼を開けた瞬間、君達同士の印象はどうだったのだろうか。

    まさかとは思うけど、泉さん、柿崎の病室に行っていないよね?まさか、行ってしまったのか?

  • 今だからこそ心に沁みた、一冊。

    どんな一日を過ごしても定刻がくると一日前に戻ってしまう、そして永遠にひとりぼっちの世界を繰り返すという物語。

    単調な毎日に心の疲れも蓄積され、孤独な世界が欲しいなんて思っていた自分にはこの物語に頭をコツンとされた気分。

    静寂と孤独、主人公の心の機微はもちろん、何をすべきか…徐々に心が起き上がっていくような過程は何度も胸を打った。

    人は完全な孤独では生きていけない。何かと誰かと繋がっていることの有り難さを改めて噛み締める。

    今だからこそ、この物語の世界、数々の言葉、思いが心に沁みた。

  • 426ページ
    590円
    5月26日〜5月29日

    事故にあった日を水泳のターンのように何度も繰り返す日々。自分以外の生き物が存在しない世界で、1日過ぎるとすべてがリセットされる。不思議な世界の理由と、その出口を探し求める日々。私だったらそんな世界で何をするのだろうと考えた。きっと今と変わらず、本を読んで過ごすのだろう。

  • 初の北村薫さん。文庫本の紹介文に惹かれて読みました。
    主人公の真希は内なる声といつも会話してるようだ。どうやら小さい時から。交通事故で意識不明の真希は誰もいない世界に入り込み、同じ日を数ヶ月孤独に過ごすのだか、やはり内なる声はそばに居る。突然、泉という男から電話がかかってきて現世との接点が出来るところから面白くなってきました。内なる声は泉なのか・・・。

  • 二十年ぶりくらいの再読。中学校生活という変わらない毎日(今にして思えばなんて貴重で密度の濃い時間)にうんざりしていた十三歳のとき、あらすじに惹かれて読んで、それからずっと宝物のように大事に思ってきた一冊。

    主人公の真希は、交通事故が原因で"くるりん"という輪の中に放り出され、七月のとある日から抜け出せずターンし続けることになってしまった。
    あんなに大人に思えた彼女よりも歳上になって、それでもあの当時と変わらないぐらいの瑞々しさを味わえたことが嬉しかった。
    それと、電話がつながった相手である泉さんが、これほどまでに救いだったとは。真希にとって大きなよりどころであり、無人島から脱出するための一艘のボートであり、繋がりを示す命綱でもある。
    まだ会ったことがないながらも、すでに唯一無二である二人の関係性が愛おしく、これまで憧れてきたものはここにあったのかと感じた。

    "時"という流れのなかで、私たちはちっぽけな存在だ。
    抗えない絶対的なものに身を任せることしかできないように思えてしまうけれど、どのようにその日を生きるか、その日をどんな一日にできるのかは自分次第。
    どれだけ変わらないと思っている日々でも季節は移ろいゆくし、その逆に、何年の月日が経っても変わらずに残るものもある。
    十三歳のときにはそこまで理解できていなかったとしても、本作にたどりついたこと、読んで心に残ったという事実は今もなお影響を与え続け、これから先もずっと残る。
    私もいつのまにやら、"くるりん"から抜け出していたようだ。

  • 時と人シリーズの3作品「リセット」「スキップ」と読んでの本作品「ターン」を読んだ。自分には合わなかったが、この話をどう収束させるのかと思っていたところに、同じくターン(くるりん)を繰り返している柿崎登場。期待したが、ただ何となくの収束で「自分は」物足りなかった。
    ただ考えさせられる読者もいると思う。

  • 北村薫の描く主人公が大好きだ。
    凛としてて、一本芯が通ってて、明るく前向きで、妙に生真面目だけどユーモアもある。
    読んでて爽やかで清々しく温かい。
    今回もそんな女性が主人公。
    「永遠であるというなら、一瞬さえ永遠だ。」
    そうなんだ!人生は目的ではなく一瞬一瞬の積み重ねの過程なのだ。
    人生が旅なら、どこへ行くかが問題なのではなく、どのように。どんな手段で、どんな景色を見ながら、何を感じながら、誰と出会い、誰とともに行くかが大切なんだ。それもひとつひとつの出来事を丁寧に感じ、味わいつくして楽しみながら。


  • 誕生日直前29歳の女性版画家が7月のある日自動車横転事故に遭い目覚めると誰もいない、どんな一日を過ごしても15:15になると昨日にリセットされる世界に。
    150日過ぎたある日電話が鳴り物語が動きます。毎日何事もなく繰り返す日常は尊くもあり年を重ねるごとに時間の流れがますます速くなる今日この頃、自問自答させて
    いただきました。後悔ない時間を過ごしたいものです。

  • 20年近く前の学生時代に一回読んでいたがその時の文庫を紛失してしまったので買い直し再読。

    たったひとり時の流れから弾き出された人の孤独と絶望はいかほどか。そんな中で鳴った電話の音はさぞ頼もしく響いただろうな。しかもそれが文字通りの‘運命の人’との繋がりになるなんて出来過ぎな程のロマンス。

    八章で語られる「内なる声」について。声は何故「わたし」に語りかけてきたのだろうか?こうなる 運命は決まっていたという事か。全ては昏睡状態が見せた夢か。

    そもそも‘こちら’と‘あちら’の違いなんてただの見せかけなのかもしれない。


    17刷
    2020.12.28

  • 序盤、少し退屈で 読むの やめようかとも思ったが
    文章がとてもきれいで そこから浮かぶ風景が良くて
    途中からはやめられなくなってしまった。

    北村薫さんて、女性だったっけ?と 検索してしまうほど
    とにかく 柔らかくて繊細な美しい文章を書く作家さん。

    ストーリーもとても素敵だった。
    感じの良い美しい映像が浮かびっぱなし。
    登場する人物も魅力的。

    独特の世界観があって、出会えて良かった作品。

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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