ターン (新潮文庫)

  • 新潮社 (2000年6月28日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (432ページ) / ISBN・EAN: 9784101373225

みんなの感想まとめ

ある事故をきっかけに、同じ時間をループする主人公の物語は、ファンタジーでありながら深いメタファーが織り込まれた作品です。前半は孤独で静かな世界が描かれ、主人公の心の機微や葛藤が丁寧に表現されています。...

感想・レビュー・書評

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  • 『スキップ』に続く『時と人シリーズ』3部作第2弾。

    ある事故をきっかけに同じ時間をループしてしまうというファンタジーな設定でありながら、北村薫らしく多彩なメタファーが組み込まれており、純文学的要素もあって正直なかなか手強い一冊だった。
    まぁ、そこが北村薫作品の面白さでもあると思うんだけどね。

    冒頭に登場するカミーユ・クローデルとロダンの話など何の意味があるのか、「何のこっちゃ」と最初は良く分からなかった。
    二人称で語られる見守るようなあたたかな眼差しの語り口が、あるときを境に「あなた」から「君」に変わる。そして、ラスト主人公・真希が目を開き発した一言で、バラバラだったパズルのピースがピタッとはまったような嬉しさと納得感は言葉に出来ないほど心地よい。

    前半は正直、少々退屈だ!なぜなら真希と同じように一日過ごすと必ず前日の15時15分に戻ってしまう無限ループ。真希以外虫も動物も存在しない「くるりんの世界」自由だけど孤独で寂しい世界だ。いつかは帰れるのか?それともこのまま……
    しかーし、150日目の一本の電話を境に物語は急速に動き出す。ここからはもう夢中で一気読み。後半のヒヤッとするシーンに焦燥感を覚えながらも、二人の絆は偶然ではなく運命だったというロマンチックな筆致にグングン引き込まれた。

    ふと考えると、都会の喧騒、仕事と日常に追われる現代の私達も、ある意味「くるりんの世界」に生きているのかもしれない。
    でも、毎日を完璧に生きようとしたら、いつか窒息してしまいそう。だから、たまには不毛な日もあって良いのかな?なんて自分を甘やかす内なる心の声が聞こえてくる。この声は誰だろう?……もしかして運命の人?
    すみません私既婚者です。

  • 時と人シリーズ2冊目。銅版画家の真希が交通事故に会い、生きているのか、死んでいるのか、分からない。1日過ごすと何故か15時15分にその日へ舞い戻る。しかも誰もいない世界。150日目に真希の下に電話がかかり、現実世界の1人の男性・泉との会話が始まる。主人公・真希の潔癖性と泉への強烈なカタルシスが真希の可愛らしさを表現していたのだが、その一方で、これまでの母親との薄い関係性が母との愛情を深くした。最初から登場する「君」の存在、最後の眼を開けた瞬間、君達同士の印象はどうだったのだろうか。

    まさかとは思うけど、泉さん、柿崎の病室に行っていないよね?まさか、行ってしまったのか?

  • 今だからこそ心に沁みた、一冊。

    どんな一日を過ごしても定刻がくると一日前に戻ってしまう、そして永遠にひとりぼっちの世界を繰り返すという物語。

    単調な毎日に心の疲れも蓄積され、孤独な世界が欲しいなんて思っていた自分にはこの物語に頭をコツンとされた気分。

    静寂と孤独、主人公の心の機微はもちろん、何をすべきか…徐々に心が起き上がっていくような過程は何度も胸を打った。

    人は完全な孤独では生きていけない。何かと誰かと繋がっていることの有り難さを改めて噛み締める。

    今だからこそ、この物語の世界、数々の言葉、思いが心に沁みた。

  • はじめ、馴染むまで時間がかかった。
    なんで二人称なんだよ読みづらい…えっ…あぁそういう事…えっどういう事?

  • 交通事故に遭ったその日から、同じ一日を繰り返すようになった版画家の主人公森真希。

    彼女もそんな状況が理解不能であった。しかも、
    その領域には人が存在せず、がらんとした孤独の世界が広がっている。
    もちろん苦痛や困難に悩まされていたが〝とあること〟が起きたことをきっかけに、段々と自分の置かれている事態を把握していく。

    読んでいてとても切なくなる物語だった。愛することや生きることの意味を考えさせられる場面が何度かあり、自分がもし彼女と同じ状況に置かれたら、どういう行動をとるだろうと考えた。

    人は一人では生きていけない。季節が移ろい、変わり映えていく日々で、新しいものを生み出せることの喜びを知れた。

  • 426ページ
    590円
    5月26日〜5月29日

    事故にあった日を水泳のターンのように何度も繰り返す日々。自分以外の生き物が存在しない世界で、1日過ぎるとすべてがリセットされる。不思議な世界の理由と、その出口を探し求める日々。私だったらそんな世界で何をするのだろうと考えた。きっと今と変わらず、本を読んで過ごすのだろう。

  • 初の北村薫さん。文庫本の紹介文に惹かれて読みました。
    主人公の真希は内なる声といつも会話してるようだ。どうやら小さい時から。交通事故で意識不明の真希は誰もいない世界に入り込み、同じ日を数ヶ月孤独に過ごすのだか、やはり内なる声はそばに居る。突然、泉という男から電話がかかってきて現世との接点が出来るところから面白くなってきました。内なる声は泉なのか・・・。

  • 二十年ぶりくらいの再読。中学校生活という変わらない毎日(今にして思えばなんて貴重で密度の濃い時間)にうんざりしていた十三歳のとき、あらすじに惹かれて読んで、それからずっと宝物のように大事に思ってきた一冊。

    主人公の真希は、交通事故が原因で"くるりん"という輪の中に放り出され、七月のとある日から抜け出せずターンし続けることになってしまった。
    あんなに大人に思えた彼女よりも歳上になって、それでもあの当時と変わらないぐらいの瑞々しさを味わえたことが嬉しかった。
    それと、電話がつながった相手である泉さんが、これほどまでに救いだったとは。真希にとって大きなよりどころであり、無人島から脱出するための一艘のボートであり、繋がりを示す命綱でもある。
    まだ会ったことがないながらも、すでに唯一無二である二人の関係性が愛おしく、これまで憧れてきたものはここにあったのかと感じた。

    "時"という流れのなかで、私たちはちっぽけな存在だ。
    抗えない絶対的なものに身を任せることしかできないように思えてしまうけれど、どのようにその日を生きるか、その日をどんな一日にできるのかは自分次第。
    どれだけ変わらないと思っている日々でも季節は移ろいゆくし、その逆に、何年の月日が経っても変わらずに残るものもある。
    十三歳のときにはそこまで理解できていなかったとしても、本作にたどりついたこと、読んで心に残ったという事実は今もなお影響を与え続け、これから先もずっと残る。
    私もいつのまにやら、"くるりん"から抜け出していたようだ。

  • 時と人シリーズの3作品「リセット」「スキップ」と読んでの本作品「ターン」を読んだ。自分には合わなかったが、この話をどう収束させるのかと思っていたところに、同じくターン(くるりん)を繰り返している柿崎登場。期待したが、ただ何となくの収束で「自分は」物足りなかった。
    ただ考えさせられる読者もいると思う。

  • 20年近く前の学生時代に一回読んでいたがその時の文庫を紛失してしまったので買い直し再読。

    たったひとり時の流れから弾き出された人の孤独と絶望はいかほどか。そんな中で鳴った電話の音はさぞ頼もしく響いただろうな。しかもそれが文字通りの‘運命の人’との繋がりになるなんて出来過ぎな程のロマンス。

    八章で語られる「内なる声」について。声は何故「わたし」に語りかけてきたのだろうか?こうなる 運命は決まっていたという事か。全ては昏睡状態が見せた夢か。

    そもそも‘こちら’と‘あちら’の違いなんてただの見せかけなのかもしれない。


    17刷
    2020.12.28

  • 北村薫の描く主人公が大好きだ。
    凛としてて、一本芯が通ってて、明るく前向きで、妙に生真面目だけどユーモアもある。
    読んでて爽やかで清々しく温かい。
    今回もそんな女性が主人公。
    「永遠であるというなら、一瞬さえ永遠だ。」
    そうなんだ!人生は目的ではなく一瞬一瞬の積み重ねの過程なのだ。
    人生が旅なら、どこへ行くかが問題なのではなく、どのように。どんな手段で、どんな景色を見ながら、何を感じながら、誰と出会い、誰とともに行くかが大切なんだ。それもひとつひとつの出来事を丁寧に感じ、味わいつくして楽しみながら。


  • 誕生日直前29歳の女性版画家が7月のある日自動車横転事故に遭い目覚めると誰もいない、どんな一日を過ごしても15:15になると昨日にリセットされる世界に。
    150日過ぎたある日電話が鳴り物語が動きます。毎日何事もなく繰り返す日常は尊くもあり年を重ねるごとに時間の流れがますます速くなる今日この頃、自問自答させて
    いただきました。後悔ない時間を過ごしたいものです。

  • 序盤、少し退屈で 読むの やめようかとも思ったが
    文章がとてもきれいで そこから浮かぶ風景が良くて
    途中からはやめられなくなってしまった。

    北村薫さんて、女性だったっけ?と 検索してしまうほど
    とにかく 柔らかくて繊細な美しい文章を書く作家さん。

    ストーリーもとても素敵だった。
    感じの良い美しい映像が浮かびっぱなし。
    登場する人物も魅力的。

    独特の世界観があって、出会えて良かった作品。

  • 交通事故をきっかけに、私は同じ1日を繰り返し過ごすようになる。


    現代のルーティーンにかけている。


    主人公は、時の意味を見出だしたから、そのルーティーンから抜け出すことができたとしている。

    そう考えていると、現代の人たちの多くは「くるりん」しているのかなあ、と。

  • スキップの後に読んだ。
    スキップの、お昼寝から起きたら時が進んでいたと言う状況も辛いが、わたしならこっちの方が辛い。
    初めはいいかも知れないけど、ずっと独りぼっちだし、戻れる保証もない。自分が何かを残しても、翌日には元通り。

    最後の方で、第2の若い男が出てきて「やだやだヤバい逃げて!」と思ったが…無事に戻れてよかった。
    真希はとても強くて前向きで、素敵な女性だった。
    勿論、彼女の母も、電話の相手も。

  • 最初は二人称に慣れなくて、読み進めるのに時間がかかりました。
    でもその秘密が明かされてからは一気!
    ふたりのやり取りが清らかに甘くて、昔の純文学を読んでいるよう。
    想像の余地があって、ひそやかな感じ。贅沢だなぁ。

  • 中学生の時に読みました。
    今思えば、恋や愛やものの考え方等、多くをこの本から学びました。
    今でも読み返す大好きな一冊です。

  • 不意に巻き込まれた事故のせいで、同じ1日を何度も何度も「くるりん」と繰り返すことになってしまった真希。

    気が遠くなるような孤独の中でも絶望することなく、お店で買い物をすれば誰に咎められるわけでもないのにきちんとお金を払い、庭に水を撒く真希は、やはり北村さんが描く女性ならではの、清潔感とひたむきさを持っていて、すがすがしい。

    「君は。。。」という主語で書かれる地の文に戸惑う方も多いようですが、ラストまで読み進むと、そうでなくてはならなかったのだ、とすとんと腑に落ちて感動が深まると思います。

    それにしても、運命の人にしかつながらない電話!今、恋をしている人にも、恋にあこがれている人にも読んでもらいたい作品です!

  • 今年読んだ本の中で間違いなく1番面白く、読み終わった後2周してしまった。
    まずストーリー展開が引き込まれる上に、「日々の繰り返しを不毛と思わずに、一瞬一瞬を大切に生きる」というテーマが心に響く。
    初めは読みづらい文体(地の文が「君は〜する」なところ)だと思ったけど、それにもちゃんと仕掛けがあってえー!となったり、他にも母の主人公を思うセリフが胸を打って涙してしまったり。
    泉さんの、「ピザなんかも飽きたりするけど結局戻ってくる。(森さんとの会話も)そういうことってあるよ」「面と向かってるのに会っていない人なんてたくさんいる」という考え方が素敵だと思った。

  • 今日より明日のほうが希望があると思うのは若いうちだけではない。
    年をとるのはいやだけれど、明日があるさと思うのは明るい方向をめざしていて好きだ。

    しかし、明日が来ず、昨日今日を繰り返すことになったとしたらどうなる?
    ターンテーブルはレコードをのせて繰り返し音楽が聴ける。くるくるくる。
    そんな「ターン」の物語。

    作者の語り口がおもしろい。耳元でささやかれているような気がする。
    それにはあっというカラクリがあった、後でわかる。

    主人公版画家の森真希はある日、自動車事故にあう。
    気を失って目覚めたら、昨日に戻っていた。
    なあんだ夢だったのかと思ったのもつかの間、そこには誰も生き物すらもいなかった。

    29歳の真希の冒険が始まる。
    けれど誰もいない世界で何をしていても、一日が過ぎるとまた昨日に戻る。
    それは怖かったし、淋しかった。151日。

    そしてある日偶然に「明日へ」一本の電話がつながる。

    一本の電話で明日へつながる相手。理解よきおのこ、泉さん。
    これはもう熱烈な恋愛小説だということ。

    真希ともにボルテージが上がる。
    でも現実には会えない相手。真希には明日がないから。

    『「会っているじゃないか」
      そういわれて一瞬、震えた。泉さんは続けた。
     「面と向かったって、会ってない人たちはいくらもいるよ」』

    北村薫描く主人公の女性は、芯はしっかりしているのだが楚々としている。
    ちょいとおかしみもある。

    「スキップ」「ターン」「リセット」と読み進み、描くところの女主人公にあやかりたく、ほっとするのはどうしたことだろうか

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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