月の砂漠をさばさばと (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (173ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101373270

作品紹介・あらすじ

9歳のさきちゃんと作家のお母さんは二人暮し。毎日を、とても大事に、楽しく積み重ねています。お母さんはふと思います。いつか大きくなった時、今日のことを思い出すかな-。どんな時もあなたの味方、といってくれる眼差しに見守られてすごす幸福。かつて自分が通った道をすこやかに歩いてくる娘と、共に生きる喜び、切なさ。やさしく美しいイラストで贈る、少女とお母さんの12の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 行きつけの図書館で、司書さんお勧めのコーナーにあった一冊。北村薫によるお話と、おーなり由子のほんわかとし雰囲気のイラストが続きます。

    想像力豊かな作家のおかあさんと、ちょっと大人びたさきちゃんの日常のやりとり。新井さん宅に住み着いた白熊が”アライグマ”になってしまったり、初めの数話では「おちはどこだ!」と期待しながら読んでいました。

    読み進めると、二人の会話にほんわり、しんみりとされてきます。親子と言うよりは友達同士のよう。お父さんが登場しない理由もそれとなく理解。こんな感受性豊かな親子の関係っていいですねえ。

    「聞き間違い」では笑みがこぼれ、「連絡帳」ではニンマリ。「猫が飼いたい」では少し切なくしんみり。

    月の砂漠をー
    さーばーさーばと
    さばのー 味噌煮がー
    ゆーきーました

    さばが歩いている?どんな風景なんだ!

  • 9歳のさきちゃんと、もの書き作家のお仕事をするお母さんは
    二人暮らしの仲良し母娘。二人のまいにちの暮らしには
    新しい発見があり、嬉しいことあり、おいしいこともあり。
    だけど時には悲しいことや怖いことだってあったりします。
    そしてさらには不思議な体験をすることになったり
    ミョーにへんてこりんなことが起きたりもするのです。

    おーなり由子さんの素朴でふんわり優しいイラストが添えられた
    12のお話の一つ一つ、どれにも平凡な日常の中にある
    こどもあるあるとお母さんあるあるの懐かしさが漂って
    自分が9歳の女の子のお母さんだった頃がふと蘇りました。

    「ヘビノボラズのおばあさん」の
    朝の旗振り(...ってやっぱり言うのね。^^)の光景や

    「ふわふわの綿帽子」の犬の名前を考えたり
    子供につけた名前の由来のお話をするところ。
    大事にしていた綿菓子がつぶれてしまって
    悲しくなったこと....。

    「連絡帳」では、頭に(れ)(しゅ)(も)と書いたりすることに
    あら...それってどこでもやっていたことなのね~なんて。(笑)
    隣の席のムナカタくんとお母さんが、こっそり秘密の(?)
    交換日記をするのもとてもいいお話でした。^^

    「猫が飼いたい」で、なかなか叶えてもらえない
    (+あげられない)ことには、自分がこども時代に味わった
    いいようのない悲しみと、子供を持つ母としての
    切ない気持ちの両方がぐぐっと胸をつきます。

    そして「聞き間違い」はこどもあるあるの究極。
    その親子と家族だけにしかわからない
    大笑いするへんてこりんな聞き間違い。あるよね~。^^

    お母さんあるあるの究極はやっぱり「さばのみそ煮」かな。
    世のお母さんたちは少なからずやきっとみんなやっていると思います。
    私もやってました。実は今でもやっていますが...(笑)

    "月の~砂漠を~さば~さばと~...♪"

    さきちゃんのお母さんは「月の砂漠」で替え歌。

    "うん、あのね。さきが大きくなって、台所で、さばのみそ煮を作る時、
    今日のことを思い出すかな、って思ったの"

    さきちゃんはきっと思い出すはずです..♪
    母親の作る得意料理をまねているとき、ふと子供時代のことが
    思い出されるというのはほんと至福なんです。にまにまします。^^

    それからさきちゃんのお母さんの
    まったくでたらめのおかしな歌を口ずさむところや
    何がどうしたらそんなメロディになるの?といういわれようまで
    も~自分とそっくりで..! 大笑いしてしまいました。^^

    さきちゃんとお母さんの、二人の楽しい掛け合いに
    ほっこりほのぼの。心温まります。

  • おーなり由子さんの優しい絵。
    9歳のさきちゃんと作家のお母さんとのユーモアがあって想像力豊かな会話。素敵な親子だな。
    絵本を読んでいるようなとても優しいお話だった。

  • なんて事のない日常を優しく切なく描いた母娘の12の物語。

    さきちゃんとお母さんの可愛く心温まるお話が私を過去の世界へ誘う。母を思ったり娘を思ったりしながら物語を進めていく。
    名札のつけ忘れ、補助なし自転車の練習、交通旗振り当番、名前の由来、連絡帳のチェック、動物を飼いたいと言われた時、新聞紙を持っての前髪をカット…。
    ある、ある、思い出される愛おしい日々。喧嘩もたくさんした、もっと違ったやり方もあったのかな?
    だけど、さきちゃんのお母さんならこれでいいんだよ〜と優しく笑ってくれるはず。

    • kyocooさん
      ついこの間、長女が小学生になる手前でこの本を読み終わりました。現実を見がちなわたしは、さきちゃんのお母さんに影響されて日常のワクワクが増えま...
      ついこの間、長女が小学生になる手前でこの本を読み終わりました。現実を見がちなわたしは、さきちゃんのお母さんに影響されて日常のワクワクが増えました。
      2016/04/10
    • あいさん
      kyocooさん♪

      コメントありがとうございます(^-^)/

      娘さんが小学生になる手前ならちょうどこの世界ですよね〜♪羨ましい...
      kyocooさん♪

      コメントありがとうございます(^-^)/

      娘さんが小学生になる手前ならちょうどこの世界ですよね〜♪羨ましいです。
      私の娘はもう成人しているので過去に戻って妄想してワクワクいました。
      私妄想大好きです!
      ちょっと変かもしれませんがよろしくお願いします。

      それから、kyocooさんとベストワンを話してからずっと頭の中を探しています。
      また決まったらお話しさせてください(⁎˃ᴗ˂⁎)
      時代小説なら間違いなく「影法師」です!
      2016/04/11
    • kyocooさん
      成人されているのですね♩
      その時はまた別の楽しみがあるのだろうなぁと思います(*´˘`*)♡
      ベストワン、選ぶの難しいですよね!わたし...
      成人されているのですね♩
      その時はまた別の楽しみがあるのだろうなぁと思います(*´˘`*)♡
      ベストワン、選ぶの難しいですよね!わたしも時代小説なら間違いなく「影法師」ですね!というか時代小説は苦手であまり読んでないのですが…^^;
      またお話しさせてくださいね♩
      2016/04/12
  • もう何度読み返してきたかな。お話を書く仕事をするおかあさんと、9歳のさきちゃん、2人の日々の記録。
    小学生のときに、母親から「読んでみたら」と手渡されたのを憶えている。
    さそりの井戸、川の蛇口、さばの味噌煮。文章、挿絵のままの空想や光景を、まるで今目にしたばかりかのようにありありと思い出すことができる。台風一過の水たまりにうつるお日さまのキラキラを、私はさきちゃんとまったくおなじ瞳で見てきたのだ。
    そして、夕飯がさばの味噌煮だったときに母と交わした、共犯者のような目配せ。

    それから20年近く経ってもこうして読み返していて、今や私に9歳の娘がいるんだから驚いてしまう。母親から娘へ、伝えたいこと、共有したいこと、そういうのはきっといつまでも変わらないんだろうな。娘がいつか大人になってふりかえる今のこの日々を、ひとつでも多く楽しいものにしてあげたい。母もきっとそう思っていたのだと思う。
    (2021.5.21 再読)

  • 9歳のさきちゃんと作家のお母さん
    おーなり由子さんの挿し絵

    優しく、穏やかで2人の会話に癒される
    可愛い中に
    時々どきっとするさきちゃんの言葉
    子供はまさに可愛くも時に
    どきっとする大人な目線をもつ

    横並びに近い縦並びの我が子との関係
    いつでもあなたの見方だよと伝え続けている
    ユーモアと愛をもって子育てを続けたい

  • 北村薫さんって、こんな作品も書くんだ、とビックリした。
    同一人物ですよね、「私」シリーズの北村薫さん。「ベッキーさん」シリーズの北村薫さん。
    母子家庭の二人の心情がホッコリと時には寂しく伝わってくる。
    まるで母親目線。
    女性が書いたように感じてしまう。

  • 小学3年生のさきちゃんとお母さんの日常を描いた物語。
    作家の仕事をしているお母さんから毎晩出来立てホヤホヤのお話を聞かせてもらえるさきちゃん。
    だからこんなに想像力豊かで素直な子供に育つのだろう。
    さきちゃんの聞き間違いには思わずくすり。
    うちの娘達とまるで同じ。どうして子供ってわざわざヘンテコな言葉に変換するのだろう。
    そして作品のタイトルの由来がとても微笑ましい。
    お母さんもさきちゃん位の年齢の頃、お父さんからとても可愛がられていたことの分かるエピソード。
    さきちゃんもきっとこの可愛い替え歌を大人になっても忘れることはないだろう。

    親子のようで友達のような仲良しの二人。
    大人になったさきちゃんは、きっとさきちゃんのお母さんのような母になるのだろうな…。
    おーなり由子さんの挿し絵が物語全体をほのぼのと優しく包み込む素敵な素敵な物語。

  • お母さんと娘であるさきちゃんの日常を綴った短編集。
    さきちゃんの日記を覗いているかのような展開で、2人の掛け合いや発想にほのぼのとしたり、はっとさせられる。母娘の仲睦まじいやり取りを余所に、父が不在であることの切なさも垣間見え一辺倒にはいかない流れはさすが。

    年齢を重ねても、いつまでも2人のような柔軟な発想を持っていたいなぁと思う。傍に置いておきたい1冊です。

  • 『月の砂漠をさばさばと』というタイトルのリズムの良さにひかれて、本書を読みました。9歳のさきちゃんと作家のお母さんの優しくてあったかい物語です。さきちゃんとお母さんの、親子というより友達みたいな関係にほっこりします。それから、おーなり由子さんの絵に癒されました。

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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