- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101373287
感想・レビュー・書評
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「時と人」3部作、ようやく本棚に並びました。
最初に読んだのはまだ学生の時で、
いまいちよく分からなかったのですよねぇ。
やっぱり『スキップ』の感動が大きすぎて。
でも、今、改めてこうして読み返してみると、
歳取ったから、分かる面白さ。
10代の時にしか味わえない感動がある一方で、
歳重ねなきゃ分からない感動もある。
この本は、そういう本だったんだ。
すっごく丁寧に書いてあるので、
途中でどこに向かっているのか
正直分からなくなる時もありますが、
負けずに最後まで読み進めてほしい。
恋愛小説好きとしては、
このロマンチックは味わわっとかないと。 -
結末がハッピーエンドならそれでよい…などと
もう軽々しく口にできなくなりました。
他の記憶を失くし 生まれ変わっても
胸に残り続ける想いのことを
何と呼ぶのでしょう。
執着ですか?
でも…2人の想いのどこからも
そのような暗い引力は感じませんでした。
第三者の予断を許さない厳しさが
この物語にはあるような気がします。
2人の想いは、理不尽に引き裂かれたからこそ
生まれ 継がれたものだからでしょうか。
この物語からは 軽々しく口にできない
さまざまな時代と文明と人間社会への
猛烈な憤激を感じてしまいます。
終わりがよければそれでよいと
いうものではない。
哀しみや罪悪感の代価としての幸せなら
そんなものを求めたくはない。
心からそう感じつつ、表紙を閉じました。 -
新手のタイムトラベルもの、心の時間空間遊泳。生きるよすが。
心のゆくえを文学は様々な描き方をしてくれる。それを楽しむ読者は幸せというもの。
「しし座の流星群」のことが印象深くあった「愛の一家」を子供のころ読みましたとも。
だから...。
ちょうど、私はヒロインまあちゃんこと、真澄とあの人こと、村上君の中間の世代に生きた。だから、お姉さまたちのまだ物のかろうじてあった時代(戦争が始まる前)の話はうらやましく、なつかしく、いぶし銀の輝きのごとく見える。そして、村上君の時代(戦後16年経って)は、私がもう成年になっていたからよく知っている、それはそれで懐かしい。
村上君の小学時代の日記(たぶん作者)の記述の数々から思い出す私の経験。
フラフープ、ホッピング。
そして、忘れもしない高校入学を果たしたので、家でも買うことになった白黒のテレビジョン。
アメリカTVドラマ『パパは何でも知っている』キャシーの初恋。
...。
ほんとに、作者は資料をよく調べこんで描いている。出てくる風物ことごとく懐かしくて、懐かしくて仕方が無かった。いずれにしても帰らない日々。
でも、『百年前の人は、今のものを見られないし、今の人は百年後のものを見られない。だからって、後の人のほうが得だってことはないと思うの。』という真澄の言葉。
感動の時の流れ!それしか言えない。読んでよかった。 -
時の流れが漣のよう。穏やかに寄せては返し、時々大きなうねりとなって。
戦時中に心は通い合ったが、終に一緒になれなかった二人の時間はそのまま永遠にバラバラになってしまうはずだった。時代を超えて再び出会えて、そしてまた別れ。次に出会えた時、戦争という悲しい過去によって交わらなかった時がようやく一つになったんだな、と優しい気分になれた。 -
時と人の3部作、スキップ、ターンに続く第三弾。
十数年ぶりに再読したが、すっかり内容を忘れてた。
スケールの長い話。戦中の第1部、戦後の第2部で全く別の話が語られるが、そこまではその意味がわからない。
最後の第3部でやっとそれらがつながる。
スキップやターンのような、シンプルな時間の移動の話ではなく、ちょっと趣が異なる。そこに好き嫌いは出るかも。
これ、二回続けて読まないと内容を味わえない話だと思う。個人的にはそれは面倒なので、シンプルな話のほうが好みではある。 -
時と人3部作、完結。
第1章は、昭和ヒトケタの芦屋のお嬢さん。子供の頃に出合った運命の人。太平洋戦争に突入してゆく世の中に巻き込まれ、別れを迎える。
第2章の主人公は昭和30年の子供時代を語る。
スキップやターンのような「事」は、読み進めて半ば過ぎても起こらない。その後、たぶん、こういう話になるかなと考えてたら、そのままだった。
ひねりが無いというか、「事」が起こる必然性もあまり無い。
二度の再会、つまり真澄さんと和彦君の出会い、和彦君と真知子さんの出会いは、都合良過ぎじゃないのか。それに記憶があっても、人格は別なのではないのか。それを運命と云っていいのだろうか。
そんな文句の付け処はあるけれど、でも、さほど不満を感じず、物語を楽しむことが出来た。
真澄さんの体験した学徒勤労動員の話は父母から聞かされていたし、和彦君の子供時代は、僕自身の少年期を思い出させてくれた。神は細部に宿るというが、その細部の一つ一つに胸を突かれる思いがする。
僕自身の子供の頃、スーパーなんて無いから、野菜は八百屋で買い、肉は肉屋で買っていた。豆腐売りから豆腐買っていた記憶はないけど(子供だから寝ていたのかな)、街で豆腐屋のラッパか鈴をつけた自転車を見掛けていた。そんなことを思い出しながら、読み進めた。
ただ、若い読者には無駄が多いと感じるかもしれない。
(引用)
ー帝国と我々ではなかったのか。それでは、どうして皆な、帝国と共に滅びないのか。
八千代さんには申し訳ありませんが、最悪の時に、最悪の人から、最悪の言葉をかけられたとしか、言いようがありません。
この著者の断罪の言葉が胸に刺さった。 -
「時と人」三部作の第3作。
太平洋戦争末期。
お嬢様学校に通う女学生の水原真澄は
結城修一という少年にほのかな恋心を抱いていたが
その想いは、あっさりと引き裂かれる。
そして時は昭和30年代前半に飛ぶ。
小学5年生の村上和彦は、ある女性と知り合うのだが
覚えのないことを記憶している自分に違和感を持つ。
そして、和彦も女性も気付いてしまった。
奇跡が起こっていたことを・・・
けれど、奇跡の全てが幸せをもたらすものではなかった。
やがて悲劇が訪れ・・・そして・・・
都合がいいと言われれば、それまでかもしれないが
二人の想いが起こした奇跡を信じたくなります。
それほど優しさに満ちている。
いやぁ~最後の豪快な笑いが最高でしたねぇ~
リセットって、そういう意味だったのかと
納得して読み終わりました。 -
一番好きな本。
もう、何度も繰り返して読んでいる本。
お互いがお互いを想う心がとても好き。
厳しい時代の中で、真摯に生きる姿がとても好きだ。
これからも何度も読んで、勇気をもらい続ける1冊。
著者プロフィール
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