吐蕃の国での話。王弁がこれまでの無鉄砲さを脱ぎ捨て、強くなっていく過程をまざまざと読み取れて、ものすごく読み応えがあった。
薄妃と蒼芽香は手前の地に留まり、新たな旅の仲間が加わる。吐蕃の政のあれこれを読み進めるうちに、漠然と国家や統治者、良くも悪くも民の意向を整える政治のあり方の難しさがわかってきた。人間とは弱いから強くなるのか。
僕僕の人間社会に干渉しないけど王弁の成長のために末端で小さく関与するスタイルが好ましい。王子ドルマは民の中を放浪して王側の敷いたレール上の鍛錬だけではない、自分の頭で考え動く、見聞を広めて己を鍛える時間が必要だったと思う。王位を捨てきれない苦悩は決して贅沢ではない。苦悩も成長の糧になった。しかしそのドルマ他の動向をうまく影で操っていた輩がいたのには驚いた。
この巻から旅の終わりが始まった。もうじきすべて読み終えてしまうのが少し寂しい。