暴力は親に向かう―すれ違う親と子への処方箋 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101375724

感想・レビュー・書評

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  • いつだったか
    もう10年以上前だったと思う
    重松清さんのお話を伺う機会があった
    「今の子供たちには
     周りの大人といえば
     保護者、学校の先生しかいないことが多い
     でも、今こそ
     第三の大人、それも
     その二者とは全く価値観の違う大人が
     いることが大事だと思う」
    というフレーズを思い出した。

    家庭内暴力に向かってしまった
    子どもたちの事例をベースにして
    ギリギリのところで
    その人々に手を差し伸べておられる
    二神さんのドキュメントと実践が
    この一冊で紹介されている

    「勝ち組教育」という価値観
    「友達親子」という脆弱性
    その危うさと問題点が
    浮かび上がってくる

  • 10年前の刊行なので、時代背景的には少し古いものになってしまったかもしれません。当時よりは学校教育の理解も進化し、多様な存在を受け入れる考えが広がっているのだと思います。
    しかし、親やましてやその周辺の人々(子育てが終わってしまった人を含む)にはこの進化が始まったことがわからず、いまだに10年前の方法論で悩む子供に接する人も多いのでは?
    本書はもはや捨て去るべき「勝ち組教育」への問題提起だけでなく、「ではどのように子どもたちと接すればよいのか?」までしっかり書かれています。

  • 暴力は親に向かう―すれ違う親と子への処方箋 (新潮文庫) 文庫 – 2010/1/28

    子供を大人に育てるには二人の親だけでは足りない
    2018年11月27日記述

    2010年2月1日発行(文庫本)
    単行本としては2007年1月東洋経済新報社より発行。
    二神能基氏による著作。
    1943年、韓国大田市生まれ、早稲田大学政治経済学部卒。
    松山市で学習塾、幼稚園経営のあと、35歳のときから世界各国を放浪し、各地の教育プロジェクトに参画。
    1993年から、日本の若者をイタリア・トスカーナ地方の共同農園に預け、農作業を通じて元気を取り戻そうというプロジェクトを手がける。
    その後、引きこもりや不登校、ニートの若者たちの再出発を支援するNPO法人「ニュースタート事務局」を設立。
    「世の中をよくする仕事、生きることが楽しくなる働き方を創り出す」ために、世界88カ所に「雑居福祉村」を創り出すのが夢。
    これまで早稲田大学講師、文科省、千葉県などの各種委員を歴任。
    2007年4月には内閣官房から地域活性化分野で活躍する
    キーパーソン「地域活性化伝道師」の一人に選ばれた。
    著書に『希望のニート~現場からのメッセージ』
    『暴力は親に向かう』(共に東洋経済新報社刊)がある。

    家庭内暴力、引きこもりの子供からの暴力に関して述べた本。
    勝ち組教育、受験教育の負の側面を見た思いがする。
    いわゆるマイルドヤンキーのような人たちでは無く
    両親以外に暴力行為をすることは殆ど無いのだという。
    また親も教育熱心で、いわゆる虐待、ネグレクトとは無縁。
    しかしだからといって問題が無い訳ではないのだ。

    ニートや引きこもりの問題には家庭内暴力の問題が潜んでいる。
    問題は核家族化が進んで、家庭が閉じていること。
    問題解決できないまま、ずるずる時間がたってしまう。
    著者が主催するニュースタート事務局など外部機関の協力を得ること。
    子育ては2人(父、母)だけでは不十分であると知ること。

    友達親子には問題が起こった時の解決能力が無い
    親は時に子供の壁となり指針を示すこと
    (無理強いするのは当然よくない。ただ最初にそれをきちんと伝えないことには何も始まらない)
    家庭内暴力の前に家庭内冷戦がある
    暴力が始まったから親子関係が壊れているのでは無く、
    暴力が始まる前から壊れている。

    いい学校、いい会社に向かって進む一本道だけの勝ち組教育が犯人。
    勝ち組教育にこだわってしまうと、親が子供のありのままの姿を受け止めてあげられない

    解決以前の5つの心構え

    1現実逃避をしない
    家族関係が悪化すると父親は家を建てたがる
    家族の関係が悪いからといって、家を建てることに逃げてはいけません

    2もう過去の話はしない
    親も子も出来損ないから始める

    3いたずらに悲観しない
    暴力をふるっているうちがチャンス
    おとなしい引きこもりはもう人生を諦めてしまっているケースも

    4特効薬は求めない-魔法のような解決策は存在しない
    安易に特効薬を求めてしまうと、薬で解決しようとする病院か体罰で解決しようとする戸塚ヨットスクールのような団体しかなくなります。

    5リスクのない解決策はないことを知る 
    100%の安全は無い
    どんなことにも失敗はつきものだ
    失敗したら、またやり直せばいい
    そう開き直ることが出来たらどれほど楽になるだろうと思う親御さんはたくさんいます。
    そんな親御さんはリスクを考えるあまり、現状を変えるチャンスまでを失っているのです。

    家庭内暴力がはじまったら家族以外の第三者に助けを求める

    失敗体験が大切
    失敗そのものよりも、それを克服する体験が大切
    子育てにマニュアルはない
    すべての子供が必ず立派な大人に育つようなマニュアルなどあるはずがありません。
    家庭内暴力も100点の解決策でなくてもいいのです
    50点、60点の解決でもいい
    家族をひらくこと、家族を密室にしないこと
    子供の前に立ちはだかる壁となって子供に指針を与える
    十分な反抗期を子供に与える
    子供を大人に育てるには二人の親だけでは足りない(宮川マリーサ)

  • ★個人的には『毒になる親』と一緒に読んでとてもスッキリできた★
    ■本質は同じところから来てるんじゃないかと思えて■
    ■あと、パワハラ・モラハラ・DV系も根源は同じなんじゃないのかな?と思っているんだよね。いじめも。■

    ■「怒りを向ける対象」が自分なのか、親なのか、その他身近な人なのか、会社の人なのか、っていう違いだけに見える。で、「怒り」をぶつけるべき対象にきちんと「気づく」ことが大事みたいな。気づかずに他の人にぶつけていっても何も癒せず、傷ついていくのは自分みたいに(なので、モラハラする人の理由・根元みたいなものが書かれている本を捜索中)

    ■2000年(平成12年)に発生した西鉄バスジャック事件。このときの被害者の中にとっても気になることばを言っていた人がいて、なんて言ったのかは忘れちゃったけど、印象みたいなのが残っていて、その人その間の恐怖じゃなくて、犯人の少年の心をはかる言葉を言っていたんだよね。その人がなぜそういった言葉を言えるのかず~っと気になってた。ここらへんに答えらしきものがありそう■

    30歳ひきこもり歴12年。14歳ひきこもりの息子。16年間で取り返しのつかなくなった若者31歳。20歳過ぎの娘さん。今年28歳になる。35歳のエリート銀行員の息子。

著者プロフィール

1943年生まれ。早稲田大学卒。愛媛県松山市での中学受験塾、幼稚園経営などを経て、99年、ニート支援のNPO法人「ニュースタート事務局」を千葉県に設立。幼児からニートまで、40年にわたって育成に携わった親子は4000組を超える。早稲田大学講師、千葉県・内閣府等の委員を歴任。21世紀の子育てを支援する「安心親子応援団」事務局長。

「2012年 『ニートがひらく幸福社会ニッポン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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