その街の今は (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 528
レビュー : 87
  • Amazon.co.jp ・本 (158ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101376417

作品紹介・あらすじ

ここが昔どんなんやったか、知りたいねん-。28歳の歌ちゃんは、勤めていた会社が倒産し、カフェでバイトをしている。初めて参加したのに最低最悪だった合コンの帰り道、年下の良太郎と出くわした。二人は時々会って、大阪の古い写真を一緒に見たりするようになり-。過ぎ去った時間やささやかな日常を包みこみ、姿を変えていく大阪の街。今を生きる若者の日々を描く、温かな物語。芸術選奨文部科学大臣新人賞、織田作之助賞大賞、咲くやこの花賞の三賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 至極退屈でドラマがなく、かすかに起承転結がある感じ。いいねー。
    合コン、クラブ、といった若者の普通の日常が描かれていて、森見登美彦みたいな非モテ芸・自虐芸しか引き出しがなくて笑えない感じになってきているような作品群よりも全然リアルな青春。そりゃレコード集めたり写真集めたりするわいな、普通の人間は。くっつき別れたり。
    そして、一々屈託にフォーカスせずに淡々と進行する人間関係もいい。眉間にしわ寄せて苦悩するばかりがおブンガク様ではない。
    何より、登場人物が別に善人でないのか素晴らしいね。その点、原田マハより全然好きだなー。
    保坂和志に近いかも、と思った。女子で、大阪で、若干リア充=人並みに努力してる人たち、な保坂和志。

  • 写真の表象の不在性と小説の境界横断性を巡る感

  • 勤めていた会社が倒産し喫茶店でアルバイトをする、昔どんな風だったのか知りたいから古い写真がすきという二十八歳の歌の、女友達や恋人未満の男友達との日常の大阪弁が良い。古風な感じのする喫茶店もほっこりする。お好み焼きが美味しそうだった。縁あって手元に来た誰とも知れない人たちの写真という有り様が印象的。

  • 柴崎友香らしい作品。やはり舞台は大阪。
    飽きずに最後まで読み進められた。
    良太郎との関係が気になるけれど、はっきりさせずに終わらせるところがまた良いと思った。

    終盤のお好み焼き屋さんの場面が好きだなぁ。
    「智佐はうれしそうでおいしそうで楽しそうだった。」
    すごく好きな一文。微笑ましい。

  • 柴崎友香は、一貫して土地や建物の新陳代謝や、その過程でそこに折り畳まれた記憶に関心を傾け続けてきているが、本書はそのタイトルからも明らかなように、この関心が全面に出ている作品。

  • なにか事件があるわけでもなく、心踊るようなこともないのだけれど大好きな大阪の町の丁寧な描写や関西弁に癒される。淡々と進む毎日が心地よい。

  • うまれ育った街・大阪の古い写真を集めることが好きな、28歳の歌ちゃん(女性)の、どうにもうまくいかずに過ぎ行く日常と、今昔の大阪の街が、淡いタッチで緩やかに優しく描かれた小説です。

    劇的な展開があるわけでもなく、抱える問題も何一つ解決せぬままに日々にたゆたう歌ちゃんの等身大の姿と、歌ちゃんがこよなく愛する大阪の今昔の街の姿が静かに描写されていくだけのシンプルな作りですが、自分が住む街や周囲の人たちを愛おしみながら日々を過ごしている歌ちゃんは、とっても素敵です。でも、小説の主人公には似つかわしくないくらい、歌ちゃんは平凡生身で、ものすごく感情移入してしまう部分が多々ありました。

    「…わたしがまだいない時間の、この街の風景。知っている建物だけが、そことわたしを繋ぐ。…」

  • 結構レビューでは良い評価だけれど、私はあまり何も感じなかった。ミナミの様子を思い浮かべながら読めたのは面白かった。

  • 大阪の(たぶん)ミナミあたりで日々を送っている20代後半の男女の普通の普通で普通な日常が描かれる。主人公の歌子は大阪の昔の写真を集めるのが趣味で、それを見て「この写真の人も私たちみたいに……」みたいな会話もあるから、それが「その街の今は」につながっているんだろうな。
    歌子と友人の智佐、歌子の彼氏になりかけの良太郎という主要な3人とも、正社員としてバリバリ仕事をしているわけでなく、腰かけ仕事のような、人どうしのつながりで紹介されたような仕事で日銭を稼ぎながら生きている。でもそのある意味、不安定な浮遊したような立場でもそれなりに楽しく暮らしている印象。知らない街の話だからそう思うのかもしれないけど、大阪ってどこかそういう空気があるような気がするな。同じような小説を東京を舞台にしたらどうだろうって思った。みんなもっと真面目に仕事も遊びもしてるような毎日が描かれるんじゃないかと思う。
    何が起こるわけでもない淡々とした小説なんだけど、ほっこりした気分になれる。それって大阪が舞台であることが大きいと思ったんだけど、川上弘美が解説でこの小説の「感心した」点をいくつか挙げていて、それがけっこう自分の印象とも重なったので、大阪の魅力だけじゃなく、柴崎友香の筆力でもあるんだろうな。
    ちなみに、川上弘美が感心した点は以下のとおり。
    ・出てくる人たちがいやな人たちじゃない。
    ・出てくる人たちはいやな人じゃないけれど、いわゆる「いい人」でもない。
    ・年の違う人が出てきても、作中の人たちは年の差を言い立てたりしない。
    ・環境や性格の違う人たちが出てきてもそれぞれが違いを言い立てたりしない。
    ・作中の人たちが作中の人たちの話をちゃんと聞く。
    ・大阪に行きたくなる。
    ・大阪ではない場所が書いてあると、そこにも行きたくなる。
    ・都会が描かれていても「都会」っぽい都会にみえない。
    ・かといって「なつかしい匂いの町」というのではない。
    ・女の子たちがかわいい。
    ・男の子たちもかわいい。
    ・お互いの呼び方(名前を呼びつけにしたり、さんづけしたり、くんづけだったり、あだ名だったり)に、必然性がある。その人にはその呼び方以外はもう考えられない。
    ・甘いものがおいしそう(わたしは甘いものに興味がないので、小説の中に甘いものが出てきてもたいがいは無関心なのに)。
    ・作中の人のお金の使い方が自然。外食をする頻度とか、お店の選び方とか。

  • 自分の住んでいる街の、昔の写真や映像を見たくなった。

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著者プロフィール

柴崎友香(しばさき ともか)
1973年、大阪府生まれ。大阪府立大学総合科学部国際文化コース人文地理学専攻卒業。大学卒業後4年OLとして勤務。1998年、「トーキング・アバウト・ミー」で第35回文藝賞最終候補に残る。1999年、「レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー」が『文藝別冊 J文学ブック・チャート BEST200』に掲載され、同作が収録された『きょうのできごと』が2000年刊行、単行本デビュー。その後同作は2003年に行定勲監督により映画化された。2007年『その街の今は』で芸術選奨文部科学大臣新人賞・織田作之助賞大賞、2010年『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞、2014年『春の庭』で芥川賞を受賞。
主な著作に『次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?』『わたしがいなかった街で』『週末カミング』『パノララ』『かわうそ堀怪談見習い』『千の扉』『公園へ行かないか? 火曜日に』など。『寝ても覚めても』が東出昌大主演、濱口竜介監督で映画化されカンヌフェスティバルに出品された。2018年9月1日公開。書籍の増補新版も刊行されている。

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