その街の今は (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 750
感想 : 104
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  • Amazon.co.jp ・本 (158ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101376417

作品紹介・あらすじ

ここが昔どんなんやったか、知りたいねん-。28歳の歌ちゃんは、勤めていた会社が倒産し、カフェでバイトをしている。初めて参加したのに最低最悪だった合コンの帰り道、年下の良太郎と出くわした。二人は時々会って、大阪の古い写真を一緒に見たりするようになり-。過ぎ去った時間やささやかな日常を包みこみ、姿を変えていく大阪の街。今を生きる若者の日々を描く、温かな物語。芸術選奨文部科学大臣新人賞、織田作之助賞大賞、咲くやこの花賞の三賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 日日是好日。上がりも下がりもない 劇的に事件もない 何かが起こって起承転結もない、んー凄く良い感じの柴崎友香さんだった。良太郎とベタベタの飲み会の次の日にお互い酔ってたと言いズバッと闇金と聞く あー友達になるんだろうなと 友人から恋愛の仕方が間違っているのではと疑問を投げかけられ、なるほどと付き合うことを意識すればいいのにせずに ラスト良太郎の家に行きランチの約束をするが、幕ですか、気になる人と何かある訳でもない 嫌な気持ちにならない平坦な気持ちのまま幕でした。これ気になってて取り寄せて読んだ、通ってる本屋にはこういう本を並べて欲しいものだ、本棚減らすとか意味がわからない。悲しいかな本屋がどんどん潰れてないんだよ

  • 大阪が舞台の話なので会話が関西弁で、同じ関西に住んでる私にはすごく自然に頭の中へ入ってくるので、めっちゃ読みやすかった。

    私も去年あたりから自分の住んでる、よく知ってる場所の昔の写真やらYouTubeに転がってる昔の映像やらを見るのにハマったので、主人公の歌ちゃんの気持ちにとても共感した。私は京都で育って今も京都に住んでるから、京都は昔も今もそんなに変わらないことを知って、すごく不思議な気持ちになった。お寺なども変わってないし、見覚えのある建物も沢山あったし、車や人々のファッションなどが違うだけで、ほとんど同じような景色を見ながら現代とそんなに変わらない暮らしをしていたのかなぁ〜って思った。昔から沢山の人が同じ景色を見てきたんだと思うと妙な気持ちにもなる。

    この本自体も平成18年、つまり2006年に発行されたものだから(私は元号より西暦のほうが分かる世代)、またその時と比べて大阪の街並みも変わってるかも。2006年は私もまだピカピカの小学1年生だったので、心斎橋にソニータワーというビルがあったこともこの本を読んで初めて知った。検索してみるとすごくかっこいい姿だった。今はもうとっくに解体されてしまい実物を見れないのがとても残念。読んでると頭の中で懐かしい平成の雰囲気が蘇ってきたのも面白かった。

    最近、京都でも老朽化などであちこちが変わっていく姿を目の当たりにしてちょっぴり寂しい気持ちになってたので、この小説を読んでより何気ない普段の街並みも愛おしく感じたし、私も積極的に写真に残そうと思った。もしかしたら未来の人たちが今の街並みの写真を見て、歌ちゃんや私と同じような気持ちになったりするのかもしれない。

  • 柴崎友香らしい作品。やはり舞台は大阪。
    飽きずに最後まで読み進められた。
    良太郎との関係が気になるけれど、はっきりさせずに終わらせるところがまた良いと思った。

    終盤のお好み焼き屋さんの場面が好きだなぁ。
    「智佐はうれしそうでおいしそうで楽しそうだった。」
    すごく好きな一文。微笑ましい。

  • 至極退屈でドラマがなく、かすかに起承転結がある感じ。いいねー。
    合コン、クラブ、といった若者の普通の日常が描かれていて、森見登美彦みたいな非モテ芸・自虐芸しか引き出しがなくて笑えない感じになってきているような作品群よりも全然リアルな青春。そりゃレコード集めたり写真集めたりするわいな、普通の人間は。くっつき別れたり。
    そして、一々屈託にフォーカスせずに淡々と進行する人間関係もいい。眉間にしわ寄せて苦悩するばかりがおブンガク様ではない。
    何より、登場人物が別に善人でないのか素晴らしいね。その点、原田マハより全然好きだなー。
    保坂和志に近いかも、と思った。女子で、大阪で、若干リア充=人並みに努力してる人たち、な保坂和志。

  • 古書店で購入したまま、いわゆる積ん読になってしまっていたが、「千の扉」購入をきっかけに、こちらを思い出して読んだ。
    結果的に、あまり意図していなかったが、「千の扉」と関連する内容でもあり、続けて読むことで面白く読むことができたと思う。
    こちらは大阪の街をめぐる物語であり、端的に著者自身の大阪への愛着のようなものも現れているのではないだろうかとも感じた。
    ただ、私にとってはあまり馴染みのない街であり、具体的な通りや土地の名前からその場所に思いを致すことができず、その点は残念であった。
    また、生まれて以降ずっと住んでいる土地の過去の風景、出会うこともないはずの過去の人たちの暮らし、そうしたものに興味を持つこと自体は、大いにあり得るし私自身面白いと思う。一方で、あえて極端に言えば、それを興味以上の、その人に固有の意味のあるものとして表現することは難しいのではないかと思うし、一読した後に、歌子にとって例えば過去の写真や映像に興味があるということとはどういうことなのかが、私には少し見えづらかったようにも思う。
    その点、「千の扉」では、千歳の人物像にも独特な要素というか、変な表現かもしれないが、同じように過去のことを知ろうとしているのにもその人なりの「理由づけ」があるようにも感じた。
    ただ、本書は全編を通して、万事順調とは言わないまでも、爽やかな調子で物語が進んでいき、読みやすかった。自分の若い時の生活を思い出して、こんな風に暮らしていたこともあったと、大阪に住んだことはないのに、どこか懐かしいとさえ思える作品だった。

  • 大阪のことはそんなに知らないので、自分の生まれ育った街に当てはめてそういう気持ちになるかな?とか考えながら読んだりして…
    (大阪は特殊なので違うとは思いますが)
    ちょっとあんまり共感できず…
    惹かれるとっかかりもなく…

  • 写真の表象の不在性と小説の境界横断性を巡る感

  • 大阪ってこんな街なんだなぁ、って感じられる。
    街に愛着を持って生きるって悪くはない。当たり前すぎて、なんなの?って思う人もいるかもしれないけど、日常生活ってこんな感じなのかも。

    夜の神宮球場から見える新宿の小田急本社ビルってきれいだな、そんな感じでした。

  • 喫茶店でアルバイトをしている「私」の残暑の日常。と要約。
    友達や客や知り合いや、情報やものが行き来するという点で、まずは喫茶店を舞台にしたことが巧みだ。

    次に筋は二本。
    1、男性関係。合コン。似た趣味を持つ良太郎。出張にかこつけて会いに来た既婚の男。の間をふらふら。
    2、いまいるこの街の過去を想起させる、古写真、お客さんの話、古いフィルムやテレビの映像。

    昔の映像が映っている、とメールで教えてもらい、離れた場所で見ながらメールで短くやりとりする場面があるが、
    ここは時間も空間も離れているのにつながっているという、何でもないのに何だかすごい箇所。
    突然「こういう映像を見てると、どこぞで同じ時間を父母が行きとるんや、とか思う。自分の死後を見ているかのような気分にもなる」という文面が来たりして。

    客が見せてくれた社史からぽろっと落ちた白黒写真の薔薇が頭に残っていて、いま薔薇を目の前にして、同じ色だと感じる、
    というラストシーンは、マジでキマってる。クールな幕引きだ。

    「この街の昔は」を変換して「その街の今は」と、ふわっとした印象にするのは、柴崎友香のやはり巧みさ。

  • 勤めていた会社が倒産し喫茶店でアルバイトをする、昔どんな風だったのか知りたいから古い写真がすきという二十八歳の歌の、女友達や恋人未満の男友達との日常の大阪弁が良い。古風な感じのする喫茶店もほっこりする。お好み焼きが美味しそうだった。縁あって手元に来た誰とも知れない人たちの写真という有り様が印象的。

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著者プロフィール

柴崎 友香(しばさき・ともか):1973年大阪生まれ。2000年に第一作『きょうのできごと』を上梓(2004年に映画化)。2007年に『その街の今は』で藝術選奨文部科学大臣新人賞、織田作之助賞大賞、咲くやこの花賞、2010年に『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞(2018年に映画化)、2014年『春の庭』で芥川賞を受賞。他の小説作品に『続きと始まり』『待ち遠しい』『千の扉』『パノララ』『わたしがいなかった街で』『ビリジアン』『虹色と幸運』、エッセイに『大阪』(岸政彦との共著)『よう知らんけど日記』など著書多数。

「2024年 『百年と一日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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