古典夜話: けり子とかも子の対談集 (新潮文庫 し 20-14)

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  • Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101379142

作品紹介・あらすじ

未だに多くの謎を残す日本文学の最高傑作、源氏物語。描かれた女たちから見えてきた、いつの時代も変わらぬ人間の業。光源氏を演じた歴代歌舞伎役者たちの知られざる素顔。世阿弥の「作家」としての類い稀なる力量。「物の怪(け)」とはつまり何なのか……。希代の女流作家と女性随筆家が、能、歌舞伎、文学などの古典名作の魅力を縦横無尽に語り合った、至福の対談。解説・坂東玉三郎

感想・レビュー・書評

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  • けり子とかも子こと、円地文子さんと白州正子さん。
    この二人が縦横無尽に古典作品について語った対談集。

    話題はもちろん伊勢や源氏といった古典文学、能や歌舞伎などの芸能。
    ただそれだけではなく、衣服や宗教儀礼、紀州などの地方の伝説など、古典の背景に連なる話もふんだんに盛り込まれる。
    だから、個々の話がとても面白い。

    例えば、伊勢物語の、筒井筒で、高安の女に男が幻滅する場面。
    高校の先生だったか、ここを貴族の女性が自ら杓文字を持って給仕するのがはしたなかったからだと説明していらした気がする。
    これが長いこと腑に落ちなかった。
    自ら杓文字を持つこともないほどの高貴な女性が高安という田舎に住むのだろうか?
    そして手づからよそうのが、離婚に値するほど不作法なのだろうか?
    そう思っていたら、本書では「手づかみで食べていた」と解釈されている。
    これなら納得だ。

    その他では、源氏では六条御息所は、死んでもなお光源氏を恨んでとりつき続ける、救われない女性としているのに、お能では成仏する。
    これはお能という芸能が鎮魂に関わるものだったからだという洞察も興味深かった。

    それから、文庫版では解説が坂東玉三郎丈。
    実は玉三郎さんの文章を読むのは初めて。
    理系の資質のある人のようだけれど、やはり文章はそういう要領のいい(けれども味わいのない)ものではなく、独時のリズムのある、個性的な文章だった。

    解説も含め、贅沢な一冊なのかも。

  • いくつになっても女友達との会話はいいですね。白洲正子氏の対談本はいくつか読んでいるけれど、男性相手の固い理詰めの対話とは違って、気ままで楽しいおしゃべりが新鮮でした。光源氏や西行や世阿弥に対してもファン目線。「好き」という言葉が頻出して、根底では高校生がアイドルの話をするのと通じています。古典に造詣が深いお二人だけに、話題があっちへふらふらこっちへふらふらと「好き」が連鎖するのも心地よい。私も女の特権の「好き」を大事にしようっと。

  • 円地文子さんと白洲正子さんが、自分たちの興味あることについて、自由気儘に対談されている。
    お二人の古典などに関する興味と知識には拍手を送りたくなるほど感心した。
    そして言葉づかいも丁寧すぎるというところがなく、かつ、しなやかで美しい。
    心和やかに楽しく読める対談だ。

  • 円地文子さんと白洲正子さん、お二人の古典芸能、古典文学に対する造詣の深さにただただ感心した。二人の歯に衣着せぬ物言いも爽快で楽しい。

  • これは面白い、たいへん面白い。古典夜話と題しつつも近現代までをカバーして、能、歌舞伎、小説、それらをめぐる民間伝承やら創り手にまで、著者二人が生き生きと語る。「お勉強」の成果発表ではなく日常見聞きしたものについて思うところを「そうそう、そうなのよ!」と話し合った記録、知識を増やすというよりは知ることの愉悦に触れる一冊として、もう私日本文化に興味ある人すべてにお勧めしてまわりたい。

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著者プロフィール

円地文子

一九〇五(明治三十八)年東京生まれ。小説家、劇作家。国語学者・上田万年の次女。日本女子大附属高等女学校中退。豊かな古典の教養をもとに女性の執念や業を描いた。主な作品に『女坂』(野間文芸賞)、自伝的三部作『朱を奪うもの』『傷ある翼』『虹と修羅』(谷崎潤一郎賞)、『なまみこ物語』(女流文学賞)、『遊魂』(日本文学大賞)など。また『源氏物語』の現代語訳でも知られる。八五(昭和六十)年文化勲章受章。八六年没。

「2022年 『食卓のない家』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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