鹽壺の匙 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 297
レビュー : 29
  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101385112

作品紹介・あらすじ

吉祥天のような貌と、獰猛酷薄を併せ持つ祖母は、闇の高利貸しだった。陰気な癇癪持ちで、没落した家を背負わされた父は、発狂した。銀の匙を堅く銜えた塩壷を、執拗に打砕いていた叔父は、首を縊った。そして私は、所詮叛逆でしかないと知りつつ、私小説という名の悪事を生きようと思った。-反時代的毒虫が二十余年にわたり書き継いだ、生前の遺稿6篇。第6回三島由紀夫文学賞。芸術選奨文部大臣新人賞。

感想・レビュー・書評

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  • 私小説短編集。掌編集になってる「愚か者」が、ちょっと幻想的な部分もあり好みだった。根底に関西弁のリズムがあるせいか文体がとても心地良いので書かれている内容にかかわりなく読むのが気持ち良かった。同じモチーフ(若くして自殺した叔父)が繰り返し出てくるあたり、中上健次あたりに近い印象も受けたけれど、中上よりもなんだろう、なにか描写が「丁寧」な気がする。

    恋愛もの(?)のせいか一番「小説」っぽい「萬蔵の場合」は瓔子という、とんだメンヘラ女性のキャラクターが秀逸。同じ女性から見ると大変イラッとさせられるタイプながら、こういう女性にずぶずぶはまってしまう男性は多いのだろうなあ。

    ※収録作品
    なんまんだあ絵/白桃/愚か者(死卵/抜髪/桃の木/トランジスターのお婆ァ/母の髪を吸うた松の木の物語)/萬蔵の場合/吃りの父が歌った軍歌/鹽壺の匙

  • 車谷長吉氏の初期作品を集めた短編集で有るが、読後感の重厚性は氏の作品群の中でも「赤目四十八滝心中未遂」と双璧をなしている。
    この重厚感の原因を見事に解析しているのは、巻末に有る吉本隆明氏の評論であり、作品と評論が一体となってこの書物を完成していると感じた。
    是非とも読んで下さい。久々の毒の有る私小説を読んで、爽快な気分が長く残りました。

  • 冒頭からの数編、とくに「萬蔵の場合」読み難し。私小説の性格がおおきく出てしまい、おのれに肯定的すぎる姿勢がいけない。好かない。
    おれはモテる
    おれは某大学を出た秀才だ
    おれが小説をひさぐ理由は…
    なんて、俗っぽいエゴを感じさせる書き方は、態とか態とでないかは、わからないが、「世捨て」へと走らせたのはこのエゴに他ならないんじゃないかと邪推させてしまう。
    「萬蔵の場合」では、おれが恋した女は特別でなきゃ、といった体で、櫻子の魅力がさまざまに語られるが、それが端からしたら、薄ら寒い。
    おのれについて殆ど語らない2編「吃りの父が-」「塩壷の匙」は、★4つ。

  • 三島由紀夫賞受賞作。あわだった。私の中では今のとこ、これが長吉っつぁんの最高傑作。

  • リリース:茂樹さん

  • 初読

    私小説という事もあり、
    読む時期次第では暗い影に囚われてしまったかもしれない。
    やるせなさを仕方ないと思えなかった若い頃は
    やはり何かを、いや何もかもをも諦めていなかったのかもしれないな。

    未来は暗い、日本は衰退する(している)
    と言いながら、すっかり明るく清潔な東京で暮らしていると
    父母、祖父母、曾祖父と少し遡るだけで
    ここまで影は濃かったと思い出す

    「吃りの父が歌った軍歌」
    は父母弟の回想。他人の過ちを見過ごす事の出来ない父、
    あまりにも自分と違う性質の弟。
    百舌を殺した猫への強烈な仕打ちをも書いているのだけど
    不思議と嫌悪は生まれない。暗く、哀しいのに、
    どこか感情から解き放たれてるような…不思議な文章だ。

    「鹽壺の匙」
    曾祖父、祖母、自殺した叔父。
    異質な静謐な叔父。
    婿養子の祖父のレコードの下り、ズシッとくるわー…

    巻末の吉本隆明の評論はかなりこの本の理解を深めるものなのだろうけど、
    悲しい事に字面を読めてはいても理解出来ているか大変心もとないのであった、、、

  • 2018/04/18

  • 短編集。中でも「鹽壺の匙」は圧巻。書くことでギリギリのところを生き延びている著者の呻きにも聞こえた。「夫 車谷長吉」を読んでからの再読。

  • 『愚か者』については小説ではなく、
    既に詩としての成り立ちを感じたのだがそれは、
    観念的に過ぎて思考が置き去りにされる感覚と、
    だからこそ見える不条理さの体現に、
    言葉を操るひとつの極みを見る。

    『鹽壺の匙』ですら25年前の作品であり、
    当時の作者が執拗なまでに求めているであろう、
    "悪作"の姿を借りた生への希求が、
    言葉が尖っているからこそ率直に、
    実直に感じられるようにも思う。

    おしなべて、
    主観に足をすくわれそうになるのは中途半端な自我肥大であって、
    実はどこまでも一貫する感情抑制と、
    どこまでも言語化しようとする飽くなき切望と、
    ある種の潔さの中からこそ、
    作者が語っている言語化についての、
    救済の装置
    一つの悪
    一つの狂気
    であることが可能になるのだろう。

  • 著者の肉親に関連する私小説が大半。
    一定以上の緊張感をもっているが、感嘆も共鳴もしづらい小説だった。

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