白鳥の歌なんか聞えない (新潮文庫 し 73-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101385327

作品紹介・あらすじ

淡い春の闇の中で、由美が突然ぼくに頬を寄せてきた。あの生意気で近寄りがたい女友達が、一体どうしたんだろう。まるで「白鳥の歌」に耳をすますように息をひそめ、滅びゆく生に魅了されていく由美。そして本来の彼女を取り戻そうとする薫の戦いは、限りないやさしさを求める「男の子」の、希有な恋物語を作っていく。切ないほど静かで、不思議に激しい、現代青春文学の金字塔。

感想・レビュー・書評

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  • 薫くん日比谷高校卒業後、モクレンが咲く春の6日間の出来事。
    これから、人生を歩もうとする青年達が、一人の老人の死に影響を受ける。
    影響受けすぎた由美ちゃんと、薫くんが大人になってしまうのを読んでしまうのか?とは、余計な心配。
    さらっりスマートな文章は相変わらず。だけど、謎の美女に語らせる生き方などは、若者へのメッセージなんでしょう。
    薫くんというキャラが、この世代あたりから求められていた青年像だったのかな。裕福な秀才、優しくて思慮深い。みんな好き。
    薫くんが、老人の読み込まれた大量の本に向かった時の「まるで敵の城塞の弱点を発見しようとでもいうように」って、表現好き。

  • シリーズものだったとは…。
    青年期のモヤモヤ感がよく描かれているのかなあと思います。言っていることはよく分からなかったけど。

  • 薫くんシリーズ2冊目。今回は、由美ちゃんとの関係性に大きな変化が訪れるのか?と思わせる展開。結局この後、2人が正式に恋人同士になったのかどうかは分からないけれど、付き合いましょうそうしましょう、なんて口約束は必要ないのかもしれない。だって、薫くんは由美ちゃんの、由美ちゃんは薫くんの、心の片割れなのだから。
    薫くんが自分自身と戦う様子は、今回も圧巻。でもね、そんなにずーっと色んなことを考えてたら、いつか気が狂ってしまうんじゃないかと心配になる。たまには、流れに身を任せてもいいんじゃない?

  • 木蓮の花が咲き始めて満開になる頃、浪人になった男の子とその周りの人たちの物語。

    真摯だけど少し突っ張っていて、どこか上品でエセではないインテリの香りがします。女中さんが出てきたり、樹木のある庭のある町並みとか、昔の山の手のイメージ。

    外国語の本を含んだ立派な蔵書から、その持ち主の豊かな知性や器の大きさを感じ取り、憧憬とも嫉妬ともいえる思いを抱く、彼のみずみずしい若さ。しかも、死に直面しているその蔵書の持ち主に女友達が寄せる感情の波に、彼も揺り動かされているところが、なんとも。

    死別という思いテーマを扱った青春小説でもあります。

  • どうにも評価が難しい。前作『赤頭巾ちゃん気をつけて』ほどのインパクトはないが、その流れを汲む本作品も当然それに準じる内容があるので、そこまでランク・ダウンするわけではない。でも、やはり前作と比較してしまうと、どこか物足りなさを感じてしまう。もちろん、おもしろさもあるにはあるが、どちらかというと、著者独特の冗長で不思議な感じの文章が、悪い方向に作用しているようにも思う。ただ、前作でさえ、一部を切り取ってしまうとやっぱりなにをいっているかわからない部分も多かったので、そう考えると本作も前作と比べたらなにも変わっていないような気もする。印象的な人物は、小林と小沢さんの祖父。とくに後者は物語中で亡くなってしまうわけであるが、それが主人公とのかかわりが強い人間ではないにしろ、「死」という重いテーマを扱いつつ、物語の雰囲気を悪くさせていない点は、さすがであると思う。この文体だからこそ、こういう表現ができるのかもしれない。そして、祖父の病状や最期にかんする内容は、そのほとんどが小沢さんどころか、それをさらに人づてに聞いたことによって主人公に知らされている。かぎりなく遠い描きかたをしているが、でも主人公になにももたらさないかといえば、けっしてそういうわけでもない。この微妙な距離感など、描写の仕方は巧い。人が死ぬことを書くことじたいはスゴく簡単で、だからこそそれを正確に成立させるのはスゴく困難なはず。そのあたりの違和感がなく読めたのは、著者の成せる業であろう。なんの小説かひとことでは答えづらく、たんに恋愛小説とか青春小説とかありがちなジャンルわけをするのも違う気がするのであるが、とにかく独特の世界が展開していることだけはたしかである。

  • (あんまりおもしろくない)

  • 庄司薫くんシリーズ2弾。薫くんは浪人で迎える春休み。相変わらず幼馴染の由美ちゃんとの攻防が面白い。由美ちゃんって繊細すぎる気がするけど、昔のインテリな女の子はみんなあんなだったのかな。それを言うなら今も薫くんのような男の子はいるのかしら。いたらいいなあ、と思いを馳せつつ再読。

  • 主人公薫くんの幼なじみである由美の物語の印象が強い。確かに彼女が大きな困難(?)に直面し、それを乗り越える話が大きなウエイトを占めるのだけど、実はむしろ、薫くんの成長の方がメインなのだと、再読をして初めて気がついた。もちろん、彼女も大きく成長しているのは確かで、感動的であるのだけれど。

    また、ずいぶん昔読んで以来、あまり印象に残っていなかった薫くんの男友達たちのエピソードもなかなかおもしろかった。こちらの方は、こう言っちゃ何だけど、身に覚えがあるというか、その「トタバタ」ぶりは、とっても懐かしく共感できるのである。こうやって、ほとんど無駄と行ってもいいくらいの堂々巡りを、思い切り真剣にやっていたなって自分や仲間のことを思い出したりする。今だって別の形でやっているんだけどね。

    でもやっぱり印象的なのは、薫くんと由美、それぞれの成長と関係。個人的には「お雑煮」の使われ方が、いかにも男の子のかっこ悪さを気持ちよく象徴していて好きだった。まあ、クライマックス(?)はとても印象的なんだけど、それはもしかしたら、僕自身はああいうかっこつけ方はたぶんできないって思うからかもしれない。今までちょっと余裕を持って眺めていたはずの薫くんが、すっと高いところへ行ってしまったような感じがすると言ったら言い過ぎだろうか。

    魅力的な冗長文体は健在。「赤頭巾ちゃん気をつけて」に比べてやや控えめな気がするのは、物語中で流れる時間が長くて、その分事件が起こりやすく、結果的に思索を書き表すことがメインになる箇所が減るからだろう。小説としては、こっちのほうがずっと読みやすく感じた。

  • 懐かしい

  • 青い。青臭すぎる。でも本当は薫くんみたいな男の子、女子はみんな大好きなんだよね。それは時代が変わったって変わらないと思う。生きること死ぬこと真正面から立ち向かって悩んで大事な女の子を一生懸命守る。もがき苦しまないと見つけられない答えがある。そこから逃げちゃいけないってこと、薫くんから叱咤激励された気分で読了。

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